ミスあったりしたらごめん。
女性とぶつかってしまった後、急いで面接に向かった。
安全を心がけ、通行人を避けて走っていたのだが、路地の角がら女性が出てきたため、止まる事もできずぶつかってしまった。
ぶつかってしまった女性に謝罪をしたのだが、その女性は何も言わずにじっとこちらを見ているだけ。
そんな、何も言わずに凝視してくる濁った目の女性を前に、気まずい、申し訳ない、怖いと言う感情が同時にやってきて、すごく複雑だった。
ぶつかってしまった俺が悪いのだが、何かしらは言って欲しい。めちゃくちゃ怖いから。
[すいませんでした.....急いでるんで、失礼しますっ]
気まずさと恐怖が申し訳なさより大きくなったのと、なんだか鳥肌が立つような視線を向けられていた俺は申し訳程度に二度目の謝罪をして、逃げるようにその場を小走りで立ち去った。
[やっと着いた.......帰りたい......]
なんとか面接の10分前に着くことが出来た。
あまり速度を出さずに走っていたので、体力には余裕があった。先程のハプニングなどもあり精神的にはかなりギリギリだが。
走った事で少し乱れた服を整えながら、店の扉を開ける。
(やばい.....心臓がうるっさい.....)
不安、緊張による動悸。
扉についていたドアベルの音。
中に入るとコーヒーなどの匂いがした。
社長がよく飲んでいるのとは少し違う匂いで、ちょっとだけ新鮮。
中に入り扉を閉める。閉めた衝撃で先程と同じようにドアベルがなった。
ドアベルの音なんて久しく聞いていない、そんな聞きなれない心地の良い音で少し落ち着きを取り戻す。
個人経営のカフェという事で広くもなく狭くもないほどの大きさ、客もちらほらといる。照明が明るすぎず、ジャズのような曲が流れている事も相まって、すごくおしゃれな感じだ。
[めっちゃお洒落だ....]
周りに聞こえない程の小声。
コーヒーとジャズ、これをおしゃれと言わずしてなんと言うのか。
コーヒーは少し苦手なのだが、こうゆう雰囲気でならたまには良いかもと思ってしまう。
本を読む人、パソコンを広げ仕事をする人、スマホを触る人など様々。
そのほとんどが何かしらを注文している、コーヒー、カフェオレ、カフェラテなどの飲み物やサンドイッチなどの食事類、パフェなどスイーツ類。
店に入った時微かに甘い匂いがしたような気がしたのもこれだろう。
[家にいた方がいいんじゃ.......]
仕事はともかく、本などを読むのであれば家の方がいいのでは?と予定がない日は四六時中、家の中にいるタイプである佐藤が小さく呟く。
目に入った店員に声を掛けた。
カフェの制服らしきものを着ている。
この店へ面接に来たこと話し、名前を名乗る
面接場所まで案内してくれるらしいので着いていく。
遅刻で依頼失敗とかいう、まじで最悪なことにならなくて済んだので、ひとまずは一息つくことが出来た。
[はぁ............うぅぅ]
通された部屋で深呼吸し、突っ伏しながら唸る。
数分経ち落ち着いてきた。
落ち着いた事で、先程まで感じていなかった面接への不安、緊張が押し寄せてくる。
時間が経つにつれて不安、緊張が増していく。
[やりたくない.....タスケテ社長。]
どんよりとした空気の中、ここにはいない社長に助けを求める。
結論から言うと、採用された。
[...以前から...このお店を見かけていて......雰囲気が...いいなって思って.....]
[ふーん、そうなんだ。]
志望動機を聞かれ、目を泳がせながらも答えると、なんとも言えない言葉でぶっきらぼうに返される。
面接官は女性の人だった。
社長からターゲットの顔写真を見せてもらっているので。この女性はターゲットでは無いと気づく。もしかすると被害者かもしれない。
[週にどれくらい入れるの?]
[えっと......4.....3回くらい....です。]
週にどれくらい入れるかを聞かれ、つまりながらも返答。
[3.........土日、祝日は?]
[.....は、入れます。]
志望動機や週にどれくらい入れるか、休日、祝日は入れるかなど色々と聞かれた。
面接とはどのような事を聞かれるのかを社長に説明されていたので、困るような事はなかった。
[なるほどねぇ.....]
[........]
先程からそうだが、少し冷たい口調。
どう返していいか分からず硬直、頭の中はぐるぐるだ。
[明日、空いてる?]
[えっ...明日っ...は、空いて...ます....]
予定の確認もせず、脊髄反射で答えてしまう。
尤も、大事な予定なんてないが。
[そう。じゃ、明日から来てね。]
[はい......分かりました......]
明日はダラダラ過ごすはずだったのに.......
憂鬱。
めちゃくちゃ緊張しながらも自分なりに頑張った。
自分なりにということで、今思い返すと不採用でもおかしくなかった。
探せばいくらでも悪かった所が見つかるほど、ぼろぼろだったように思う。
知らない人と話すのだってめちゃくちゃ怖いのに、その知らない人が面接官ってなるとさらに緊張する。
俺にしてはうまくやった方だと言い聞かせたが、後の俺が思い出したら確実に恥ずかしさで悶え苦しむんだろうな。
その時は、いつぞやのように毛布を頭まで被って暴れ、散らかった部屋を更に散らかす事になるかもしれない。
前の世界なら確実に不採用だっただろう。
今回採用になったのは恐らく、この世界が男女比1:2の貞操逆転世界だから。悪い言い方になってしまうが、客寄せという事だ。
採用され、明日から来いと言われる。自分で空いてるって言っちゃったから仕方ないがまじで行きたくない。
そんなかんやで1日経った。
[佐藤です......よ、よろしくお願いします..........]
用意してもらったカフェの制服に着替え、今日いろいろ教えてくれるらしい女性見る。
[星野です...よ、よろしくね......さ、佐藤くん.....]
俺よりも頭一つほど身長が低く、腰あたりまで髪を伸ばしている。少し童顔な印象を受ける顔で眼鏡をかけている。
見た目が若く、年齢の予想がつかないが、そこまで離れてはいないだろう。
童顔な顔や眼鏡、表情、場所がカフェという事もあって、気弱な文学少女のように見える星野先輩がそう言った。
それから接客についてなどの事を教えてもらい。先輩に接客のお手本を見せてもらったりして時間が経つ。
俺も接客をやってみる事になったり、それで連絡先を聞かれると言うハプニングがあったり。
連絡先を聞かれ、驚きでどうすればいいのかがわからなくなり固まっているところを先輩が助けてくれたり。
その時の先輩はまじでカッコよかった。こんなに良い先輩が酷いモラハラをされているかもしれない?証拠を掴めたら、速攻でぶっ殺そうと思った。
あと、先輩と連絡先交換したりもした。自分から連絡するのはハードルが高いので先輩からのメッセージを待つだけになるだろう。
そうして時間が経っていき、
もう少しで閉店という時間にふと声を掛けられる。
[君が佐藤くん?]
足音と共に聞き覚えのない声が近づく。振り返るとそこに、ターゲットである鈴木がいた。
俺と同じくらいの身長で少し太っていて、いつ吸ったのかは知らないが少しタバコの匂いがした。
[..は、はい、そうです.....]
舐めるような視線を感じ、思わず後退りしそうになりながら答えるとふと、先輩のことが気になり、先輩を見る。俯いていて、表情がよく見えないが恐らく暗い表情をしているのだろう。
その表情から察するに、先輩も被害者だ。
暗い表情の先輩、こちらを見てくる鈴木にどうすれば良いのかわからなくなる。
[私が変わるから。星野ちゃんは上がりな。]
どうすれば良いかと戸惑っていると、先程俺が掛けられた声よりも冷たく少し威圧的な声でそう言うクズ。
もうこれが証拠って事でいいかな?
[.....はい。お疲れ様でした。]
威圧的な声に俯きながらそう言った先輩がどこかへ行ってしまった。
もうすぐ閉店という事で客もいなく、さっきまで居た先輩もいなくなってしまった。
他にも何人か居た店員も帰ったようで、先輩はまだいると思うが、じきに帰ってしまうだろう。
つまり、俺と、鈴木2人しかいないということ。
[鈴木くん、この後時間ある?]
気持ちの悪い視線を向けてくる鈴木がそう言う。
証拠もこれで充分なはず。
もういいか。
[あれ?ぐちゃぐちゃになってしまった.....]
制服を脱ぎ、畳む。うまく畳めなかったがまあいいや。
着替えを終え、持ってきたトートバックの中を見る。
財布や折りたたみ傘、飲み物など、ばらばらにはいっている。
バックの中を掻き分けるように奥の方へ手を入れた。
金属のような音、冷たく硬い感触がし、それを取り出す。
サプレッサーつきのピストル、セーフティを外せば打てる状態。亜音速弾を入れていて前回の依頼と同じく銃声を極限まで消せる。
[よし、ok]
弾の確認のあとセーフティを外し、いつもと変わらない口調で一人呟く。
黒い金属が少し冷たくなっている銃を右手に持ち、バックを左肩に掛け部屋を後にしターゲットへと向かう。
俺とターゲット以外、人のいないカフェ。時々車の音や電車の音、救急車の音なんかも聞こえる。季節と時間が相まって、辺りが暗い。
カフェは閉店しているので人が入ってくる事もない。
[おっ、佐藤くん......佐藤くん?]
[..........]
俺の足音が静まり返ったカフェに響いた。足音を聞きこちらに気づいたようで、振り返り何かを言っている。
そんなターゲットを尻目に、手に持った銃の照準を頭に合わせる。
[はっ?なにそれ....おもちゃ?......おーい佐藤くーん?どうしーー]
銃を見て何か言っていたが、それを無視して銃のトリガーを引いた。
右腕で銃の反動を抑えると、銃声とは思えない小さな音が響く。
床に倒れ、人間ではなくなった肉塊。薬莢の転がる音が、死体の倒れる音にかき消され、硝煙の匂いがする。
穴の空いた頭部から床に広まる血を避け、ポケットからスマホを取り出し電話をかける。
[...............もしもし.......はい、終わりました。]
電話を切り、スマホをポケットにしまいながら、踵を返しカフェの扉をあけ、外に出た。扉を開けた事でついているドアベルが鳴り、扉が閉まった事でドアベルが聞こえなくなる。
[ん〜 よしっ 帰ろっと。]
依頼が終わり、開放感から伸びをする。
肌寒く、辺りが暗い中、この世界では少しだけ珍しい男性の気の抜けた声が響いた。
佐藤がターゲットを始末し、カフェを後にした少し後。
カフェ内の奥、電気がついておらず薄暗い、なんだか鉄のような匂い。 その中、死体を見る影が一つ。
[頭一発。ふふっ、素敵だわぁ]
身長の高い女性が床に広がる赤黒い血をまったく気にせず、死体を見下ろし狂気的で恍惚な笑みをしながら呟いた。
平日の昼過ぎ、インターホンで目が覚める。
ゴミや服が散乱した部屋で、毛布を被りインターホンを無視して再び眠りにつこうとする佐藤。
そんな気持ちを知ってか知らずか、玄関の向こうの誰かがインターホンを連打している。
[うるさっ]
インターホンに顔を顰める。
そんな誰かとの攻防が数分間続き、ついに限界を迎え布団から飛び起きドアを開けた。
ドアを開けるとそこに、佐藤よりも頭2つ小さな少女。
[君、殺し屋でしょ!]
[.........え?]
寝癖の付いている寝ぼけた顔を見るなり、中学生から高校生ほどの少女がキラキラした目でとんでもないことを口にした。
短すぎるから改善したい。
セリフ増やしました。