オーバーロード 現地人に転生した弱体鈴木悟さん 作:モモンガ・アインズ
モモンが目を覚したのはすっかり陽が昇り、昼を過ぎた頃だった。大寝坊の上に、隣にはラナーが寝ているのだから大問題だ。しかも幻術で隠していた本来の黒髪黒目も見られてしまい、そちらが本当の姿かと問われて誤魔化すこともできなかった。
ひとまずラナーとこれからの関係について話し合い、秘密の関係ということで公表することはないという着地点となった。ラナーは王族としてそろそろ婚約者が決まってもおかしくない年齢だが、国内外の状況からおいそれと婚約者を決めることはできない立場だ。
何せザナックを除いて唯一残った結婚していない王族。国内結婚でも国外結婚でも与える影響が大きすぎる。そのためにザナックも彼女の婚約については先延ばしにしているところだ。
ザナックはまずは国内の安定ということで国内の貴族の娘と結婚する予定だが、まだ相手が定まっていないという。王としての執務が大変なのか前ほどふくよかではなく、少し肉がついているかなくらいに収まった体型は、現在のザナックの評判も相まって好評だ。
まずはザナックが結婚してから順番にラナーも結婚をする、という流れにしたいことはもちろん、結婚もしていない王女と夜を共にしたというだけで問題になる。だから今夜のことは秘密となってモモンはすぐに転移で部屋を去り、エリアスに報告をした。
エリアスはその内容を聞いた途端、眉間を指で抑えて苦悶の表情を浮かべた。
「……君の理性を信じていたつもりだったが。まさかラナー殿下に手を出すとは……」
「面目次第もありません……」
「というか、ザナック陛下とラナー殿下に嵌められたな。君という大戦力を国外に流出しない、及び王家へ反旗を翻さないようにする最も簡単な方法が絶対に裏切らないように本人を縛り付けることだ。私でも使える女性がいるのなら君にあてがったかもしれん」
「怖いことを言わないでくださいよ……。ザナック陛下達なら喜んで手を貸します。エリアス様も」
「私は君への恩があるが、彼らからすれば人類国家最強クラスの実力者が、貴族だからと粛清に手を貸してくれたわけだ。国内を憂う善良な貴族というだけでは彼らも安心が足りなかったのだろう。だから関係を迫った。おかしくはない理論だ。君の出自を知らないなら尚更な」
「今確実に知っているのはレエブン家の方だけ、ですよね?」
「アインズ少年は殺されたことになっているからな。黒髪を見せない限り発覚もしないだろう。君の顔立ちはどちらかというと母君寄りな上に、彼女の容姿を詳しく知っている者は既に王国では少ない。ランポッサ元陛下であっても色を変えただけで気付かないほどだ。南方出身とバレない限り、アインズと君は結び付けられないだろう」
その予測にモモンは一安心した。この秘密は誰にも打ち明けないことにして、ラナーにも隠すことになる。
本人が気付いているとは、モモンもエリアスも気付かなかった。
仕事を機械的にやっていたことと、そういうことに流されたことからモモンにはしばらく休暇を与えることにした。『
『八本指』が精力的だった頃には王国貴族の搾取もあって王都だというのにかなり暗い雰囲気だったが、粛清から時間も経ったために今では国内の景気も戻っており、戦争も起きていないために街全体の空気が柔らかい。そのことにも気付かないくらいに空虚に過ごしていたようだった。
買い食いさえも久しぶりで、屋台で切れ目を入れたパンに葉物野菜とソーセージを挟んで店主特製の液体の調味料をかけた片手で食べられる食べ物を買って、ベンチに座りながら街の光景を見ていた。
騎士団や『
「平和、だなぁ」
村が滅ぼされてからは、街の様子を確認することもなくとにかくアンデッドを増やすことと自分を鍛えること、そして勉強ばかりの日々だった。そして表では貴族と冒険者、裏では『八本指』を叩く執行者。とにもかくにも時間が足らず、民の生活なんて見ていなかった。
平和になったのはここ最近のことで、その平和な期間も結局仕事を詰め込み、あれだけ願った平和な世界を見ようともしなかった。結局モモンという人間は平和にするためではなく、両親を奪った『八本指』への復讐を目標にしてしまった、狭量な人間ということだろう。その目標が達してしまったら次の目標が持てないような、そんな人間なのだと気付いてしまった。
前世でもユグドラシルで遊び続けることが唯一の趣味になり、それ以外を色々と削った生活をしていた。ゲームのために生きていたとさえ、今では思う。
だからこそ、ラナーへ向けるような大きな気持ちが自分の中にあったことに驚き、そしてある意味生きる意味を与えられてしまったようなものだ。不義理な人間にはなりたくないと思い、これからは様々なものに目を向けていこうと思い直す。
いくら血筋では関係性があっても、これでは王族として働くのは無理だと感じる、結局モモンは前世でただの社会人だった、鈴木悟でしかない。
そしてラナーと夜を過ごしてしまったことも、前世では一人っ子ということで兄妹という関係がイマイチ実感が持てないこと。自分が王族であるという認識がなく、精神面では鈴木悟の面が大きいこと。そして腹違いな上におそらく母親の遺伝が強かったのか繋がっているはずのランポッサにお互い全く似ていないこと。最後に、絶世の美少女に好きと言われて断れる男がいるのかという話だ。
王国民に聞けば百人中百二十人が美少女と呼ぶ、その容姿から『黄金』とまで称される少女に告白されたのだ。普通の男なら即座に返事をする。モモンもその辺りは他の一般的な男性と変わらなかったということだ。
(『ブラコンな義妹に、今だとロリとも言える美少女!こんなのエロゲーそのものズバリですよ!そりゃあモモンガさんだって堕ちますよね⁉︎我らがギルド長はエロゲー主人公だったのか!』)
(多分ペロロンチーノさんはそんなこと言わないはず。多分。むしろその立場変わってとかって駄々捏ねるはず)
前世で親友とまで呼んでくれたバードマンを思い浮かべつつ、少し目線を上げてみると蜂蜜色の髪をしたモモンより少し歳下の少女と、茶髪の髪を襟足くらいに揃えた少女が並んで楽しそうに歩いていた。ただ服装を見るに王都出身ではなく、村から遊びに来たような風体だ。
貴族として生きてきたからか、それくらいの見分けはモモンにもできるようになっていた。
「ツアレ姉さん、そんなに急がなくたっていいでしょ?」
「何言ってるのよ、セリー。せっかく王都に来たんだから全部見て回るの!お金も少しなら余裕があるし!」
「だからって食べ歩きで全部なくすつもり?小物も見たいって言ってなかった?」
「どっちも気になるの!」
「自由に使えるお金は少ないんだけどなぁ。冒険者になった方が稼げるかも?」
「え?セリー冒険者になるの?魔法の才能があるって言われてたもんね!でも女の子だと危なくない?」
「女性だけで組んだ『蒼の薔薇』が最近アダマンタイト級冒険者になったんだよ。史上最年少。私もああなれたらなぁ」
そう言って屋台の方へ向かっていく姉妹。
最近ラキュースがリーダーの冒険者チームがアダマンタイト級に昇格した。五人組の全員女性で構成されたチームで、女性でも冒険者として立身出世できると知らしめた偉業だ。もちろん才能があればという話で、才能がなければそんなに活躍できない。
他にも冒険者として初期装備を揃えられる財力など、一つの要素だけでは強くなれない。ラキュースは実家という太いパトロンがいたのも大きい。いくら才能があっても、食糧難で餓死してしまえば意味がない。そんな末期状態になりかけていた王国だ。
さっきの姉妹の妹のように魔法の才能がある人間が発掘できるようになっただけで普通の国に戻り始めているだろう。魔法詠唱者の育成についてはまだまだ困難な道のりだが、それでも前には進んでいる。
これが自分の頑張った結果の景色だというのなら、少しは自分を誇れそうな結果だった。
価値観が変わったところで、アンデッドから緊急の連絡が来る。エ・ランテルにズーラーノーンというアンデッドを使って過激な行動を取ったり、それこそ構成員そのものがアンデッドである邪悪な秘密結社の幹部である十二高弟が新入してきたという。
最初は一般人として入ってきたのだが、エ・ランテルの墓場で地下神殿を作ろうとしていたことと並行して実験のために墓荒らしと生の死体を求める計画を立てていたために巡回のアンデッドが事態を把握。捉えてモモンに連絡が来たという状況だ。
休暇はここまでかと考え、転移の魔法で現場に飛ぶ。カジットという名の男とその弟子達を捕らえて、何をしようとしていたのかを魔法と拷問で計画を聞き出す。ズーラーノーンの構成員の情報などを抜き出し、王国や帝国に手を出して強大なアンデッドを生み出そうとしている、もしくは高弟がアンデッドに変性しようとしていると知り、こんなことが帝国との戦争のきっかけになったらたまらないということでモモンは数少ないアンデッドと本拠地を強襲。
エリアスとザナックに連絡を入れて、相手の盟主がナイトリッチというモモンもよく知るアンデッドだったこともあって先手を打つことにした。最近使えるようになった上位アンデッド作成によって創り出したまさしく秘密兵器達を一気に投入して本拠地にいた全員を討伐。世界の裏で人類国家が予想もできなかった一大決戦が起きていた。
結果として彼らが根城にしていたインベリアは多数の大きな魔法によって完全に街の様相を崩し、大きなクレーターがいくつも出来上がる本当の廃墟へと変わった。そしてそこに残された邪悪な計画などを調べ上げて、本拠地にいなかった残りの高弟達の捜索と徹底的に潰すための準備を始めるモモン。
第八位階の魔法が飛び交うというこの世界ではありえないような激闘だったせいか、戦闘終着から三時間が経った頃、いつぞやのように廃墟の上空に白金の鎧が浮かんでいた。モモンもその姿を確認して、スィーと降りてきた鎧からしわがれた男性の声が聞こえる。
「この惨状は盟約違反じゃないかな?アインズ王子」
「……その鎧、あなたの物だったんですね。白金の竜王。確かにその鎧はあなたを象徴する白金でできているように見える。──全く別の金属でしょうが」
「それで質問の答えは?」
「先制攻撃をしてきたのはズーラーノーンです。防衛行動まで咎められるのですか?被害はこの廃墟だけで留められた。あの盟主以上の敵もいなければ過剰な魔法は必要ありません。まさか見逃してそのまま殺されろとは言いませんよね?人目のないこんな場所で大魔法を使っても、観測できるのは竜王くらいでは?その竜王はあなたが説得してくれるのでしょう?」
「ふむ。確かに直接的に被害は出しておらず、法国にも露見していないか。今回の騒動はあくまで王国のための防衛行動。そう言うんだね?」
「はい。エ・ランテルには帝国の商人も貿易のために入り込んでいます。そんなところでアンデッドの実験をして帝国の人間に被害が出た場合、宣戦布告をされる弱みになりかねません。それを防ぐための防衛行動です」
「だけどこれは、君が王国でアンデッドを使用しすぎた結果だと思えるが?ズーラーノーンにそのことを看破され、調査も込みで君の国に入り込んだのでは?」
確かにカジットからその情報を得ている。街と村には上位死霊の上空巡回があり、大きな街では堂々と『
その調査に来たというのであれば、きっかけを作ってしまったのはモモンとも言える。
ただし死体調達のために元々王国で何かをしようとはしていたようだ。腐っていた頃の王国ならやりたい放題にできただろうが、モモンが暗躍し始めてからは王国で大きなことをしようとするのは困難だっただろう。そのため計画は延期・中止になり、今回はカジットの熱望で行われたらしい。
異常な数のアンデッドの調査ができれば御の字。バレずに計画が進めば、それはそれでカジットがアンデッドとなって組織の力になるので良しと認証された実験だったようだ。
その証拠を目の前の竜王に伝えるには、拷問ですり減った状態のカジットを見せなければならない。その凄惨な拷問の結果を見たらモモンが悪認定されるかもしれなかった。
モモンはアンデッドに死なないように情報を抜き取れと伝えただけで本人はやっていないのだが、眷属がやったことは主人の責任にされるだろう。それにアンデッドを使い始めたのは間違いなくモモンの力不足。そして王国の人手不足が原因だ。
もしモモンが動かずに王国が潰れていたとしても、それはそれで自然の結果だっただろうと超常の存在である竜王は気にしなさそうだ。
「邪悪な違法集団を倒したのがそんなに問題ですか?ズーラーノーンによるアンデッドが支配した人類圏を見たかったと?」
「違う。私が言いたいのは力の行使についてだ。リグリットから忠告は受け取っているだろう?君の周りのアンデッドとこの力の強大さは看過できない」
「国防のための仕方がない行使だと思いますが?周りの強いアンデッドも、普段はただの連絡係にしています。ズーラーノーンのような相手でもなければ運用しませんよ」
「……君は今、理性で力の行使をすべきか判断している。実に人間らしい。そして危険だ。『ぷれいやー』がそうだった。最初は人間を守ろうとし──他種族の虐殺を始めた。君にもそんな彼らの血が流れているんだろう。いつか凶暴になる血を。事実として、エルフの国はそんな暴君が暴れて法国と戦争をしている」
「それはあなたの言う秩序の乱れでは?なぜその暴君を殺しに行かないのです?まさかエルフは種族が違うから別枠だと?それとも──エルフの国と法国が共倒れになることを願っている?私の場合は法国と敵対していないからわざわざ忠告にこんな場所へ来ているのだとしたら、世界盟約というものはだいぶあなた有利の決め事にしか聞こえないのですが」
モモンが本気を出せば、帝国・竜王国・聖王国を単独で滅ぼせるだろう。アンデッドの群体というのはそれだけの軍事力がある。法国はプレイヤーの教えがあるためにそんな簡単には行かないが、なんにせよモモンの行動だけで世界情勢が変わるのは事実だろう。
そして強い国家であり世界盟約を結んでいるという法国とプレイヤーの血を引くエルフの暴君の戦争に目の前の竜王は介入しない。モモンにはすぐに忠告をするのに、実際に暴れてたくさんの人間が死んでいる戦争には介入していない。竜王がブレスでもすれば戦争もやめるだろうに。
目の前の本体ではない鎧だって今のモモンが戦えば勝てるかわからない。分体でそんな強さなのに本体がそれより弱いとは思えなかった。もしかしたらそういう何かを操る能力が優れているスキル構成やタレントがあり、本体は弱い可能性もある。操る眷属の方が強くて操っている方は紙性能の防御力とHPしかないというのはゲームではあるあるだった。
それともまだ見ぬエルフの暴君とやらがプレイヤー並みに強くて竜王も苦戦するほど強いのか。エルフの国については詳しくなかったので預かり知らないところだが、目の前の竜王が介入しない何か理由があるのだと推察する。
それに王国にはモモンよりも単独という意味ではもっとやばい存在もいる。
「『朱の雫』のアズス・アインドラ。彼は真紅の全身鎧を装着すれば第七位階魔法を使い、その武器はドラゴンさえも簡単に蹴散らしてしまえるとか。冒険者は国で縛れない。彼が許されて私が許されないのはなぜです?貴族に仕えているからですか?冒険者は、そんなに信用のおける存在ですか?それともあの全身鎧を着ていない彼がそこまでの実力ではないからですか?」
「そのことも知っているのか。彼が活躍した場面はほとんど知られていないはずだが」
「彼が元王及び元第一王子派閥に助力すれば国が割れるのですから、調べるのは当然でしょう?彼が世界盟約を守ると宣言したからそのままにしているのですか?私もリグリット殿を通して守ると言ったはずです。私の行動は陛下からも裁可を得ています。潰したのも国ではなく邪悪な違法組織。何が問題だったのですか?そんなに守らせたい世界盟約があるのならば、きちんと王国へ、王家へ提出してください。リグリット殿の言葉でしか知らない盟約に線引きが多すぎるように感じます。それではいつ抵触するか我々もわからない。はっきりとした文章を評議国から正式に提出してください」
「つまり外付けの理性を国家に持たせると。良いだろう。後日正式に送るよ」
そう言って本人の中で納得がいったのか、飛んで帰ってしまう。
竜と人間ではまさしく尺度と脳の構造が違うのだろう。同じ言語を話しているつもりで、実は話していない。そうでもなければここまで話がこじれる意味がわからなかった。モモンなりに短く告げられた世界盟約を守っているのに何度も忠告に来られたらたまらない。
こんなことでは落ち落ちと国防にも赴けない。何をしたらダメなのかはっきりさせろと言いたかった。
そしてやはり腑に落ちないのはエルフの国の暴君。警戒するプレイヤーとしての力を戦争に使っているのに、竜王が介入しないのなら、世界盟約なんてものは形骸化していて、白金の竜王の匙加減で裁定が決められているように思える。
ラナーのおかげで開けた世界が、白金の竜王のせいで灰色になってしまった。そもそもかの竜はモモンという人間を見ておらず、ただその力と血筋だけを気にしている。そんな突飛な思想とズレた視線から眺める世界が理解できずに、一人で空回りしているようにしか見えない。
ただ盟約を守るだけの機械になれば良いのに、その基準点を彼の思考でズラしている。そのズレの理由が明白でもない。社会人として生きてきたモモンだからこそ、この理不尽な対応に反感を覚えて先程はクレームを投げつけたわけだ。
後日、王国に送られてきた世界盟約の内容にザナックは呆れ顔をする。その理由を同じく文章を見たエリアスは理解して、彼も眉間に皺を寄せた。
「崇高なる竜の視点で書かれた落書きだよ、これでは。自分達が上から抑えるために、強すぎる人間はどのような争い事でも出撃を禁止するだと。モモンの防衛のための行動もこれに引っかかるらしい。つまり人類国家に生まれた強い人間は祖国のために動けないようだ。ラナー、どう思う?」
「都市を壊せるほどの実力、という但し書きが書いてありますが、これに該当するのは強大なアンデッドを多数使役できるモモンだけでしょう。『朱の雫』のアズス様でもできず、彼は適応外。もちろん帝国のフールーダもそうなのでしょう。臆病風に吹かれたただのポエムのように見えます」
「ポエムを国同士の決め事として正式な書類として送ってきたと?人間と竜では尺度が違うとは本当だったな。署名しないまま額縁にでも入れておく。王国はこの世界盟約なるモノを批准しない。侵略戦争をするつもりのない国にすれば良いだけだろう。で、批准していないんだからこんなものはただの紙でしかない。これまで通りモモンには国防のための違法組織の摘発には働いてもらう。レエブン侯、モモンにそう伝えてくれ」
「畏まりました。ザナック陛下」
穴だらけすぎる決め事にサインができるほどザナックは愚かではない。既に竜王国とは同盟を組んでおり、ビーストマン掃討のためにモモンの力を使っている。『
『
たとえそうなったとしても評議国はなんら王国の治安維持のために働いてくれない。それどころか竜王の関わる竜王国を見捨てている薄情な国だ。そんな国がいざという時に潰しやすいように力を腐らせておけという脅しを国家としての正式回答として出してくる時点で政治のセンスがない。
白金の竜王としては法国にそのまま飲ませられたので同じ内容を送っただけだが、その時とは状況が異なる。法国はその時、八欲王の被害で唯一残っていたプレイヤーもいなくなり、竜王に頼らなければ人類が存続できないとして飲まざるを得なかった。
だが王国は竜王の手助けがなくても国家を運用できる程度に国が正常化された。そしてその正常化にモモン由来の力が関わっているので、使えなくなるような決まりにサインを書く理由がない。評議国とは隣国として接していて貿易もある程度行っているが、同盟国というわけでもない。
人間国家に送るにしては宣戦布告のような内容だ。相手が相手なために書類を破ったりしないが、律儀に守る理由もない。
白金の竜王側もプレイヤー由来の力を押さえつけられればいいくらいにしか考えていないので、とことんお互いの考えが一致しないやり取りだった。