神さまの下請け ーー 神を辞めた元・神さまは人間になりたいらしいけど俺を振り回さないでほしい。 ーー   作:城異 羽大

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幕間・続 不確かな未来に焦がれた話

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絶望に打ちひしがれて、全てがどうでも良くなった。

それくらいに荒んでた。

実際にどうでも良くはなれない。

壊れてはいけないから責任を取らないといけないから。

びしょ濡れになっていて薄汚い

ボロボロになった醜い

内側まで腐りきった害悪のような私

と

対照的な私

が

見えた。

- あれは、ほんとうに、私か?

感じる。

- 間違いない。あの“神威”は私だ、、、

- そうか

- ここは狐道だ

未来が交わることも珍しくない

でも

未来は分岐する

だから

不確かだ

あれは不確かな未来だ

- でも、もしかしたら、きっと

- もっと

- もっとよく見なきゃ

- でも

近づいたら、、、

近づいて、道を間違えたら、道を踏み外したら

帰って来られない。

- それだけはダメ

だからその場で、見る。

神威を広げて感覚を強めろ。

それでまた神に近づいてしまってもいい。

最大限に力を使って、見通せ。

なにかしら罰則が来るかもしれないが、、、

もしかしたら気づかれるかもしれないが、、、

- どうでもいい

まず

私

だけじゃない

一緒に人間がいる

- 独り

- じゃない

人間の男がいる

二人は笑い合っている

- こいつは誰だ?

聞こえる。

楽しげな笑い声

- 私のだ

本気で怒ってない罵声

- 男のか

なにげない、他愛ないやり取り

- なんか、

- 楽しそうだな

- それに

- あの私は

- 人間に少し近い気がする

男が私をナギと呼び

私があいつを、、、

- そうか、、、

- あいつは千葉っていうのか

- 会いたい

- 会ってみたい

- 会えば、ああなれる?

- ああなりたい

- あいつが“鍵”だ

- きっとそう

- 違いない

- 欲しい

手を伸ばした

そして

足が

動きかけて、、、

止めた

- まだだ!

- 今はその時じゃない!!

- 一旦

- 一旦確認しよう!

- イナリだ!

- あいつなら、、、そうだ!

- イナリのとこに行けばいい!

- 早く!速く!!行かなきゃ!

*

*

*

イナリたちが地獄や天国を真似して作った空間。獣由来の神たちの住処。私が世界を変えた後に出来た、神界から少しだけ独立した或る空間。その中央を目指し、走る。

*

*

深い緑を駆け抜けた。

草、木、木々、林、森、、、

- 相変わらず広い

- しかもわかりづらい

- 煩わしい

普段なら落ち着くけど、今は一刻も早く確かめたい。だから、、、走る。

*

赤い鳥居が増えてきた。まばらに、そこら中にある。少し装飾が凝った鳥居。

- もうすぐだ

*

緑よりも赤が増えてきた。

そして、

見えた。

正面に巨大で絢爛な鳥居。

そして先にある華美な社みたいな屋敷。

今まであった赤い鳥居は、この屋敷を取り囲んでいる。だからその周囲も鳥居が無造作に、でも侘び寂びを保ちながら、建っている。

- 女王気取りか?

- それを言うならトカだわ

- だったらイナリは姫様ってところか

- 、、、

- だめだ

- 焦ってきてる

- イナリはそんなやつじゃない

- それにいつまで神のつもりだ?

- 私はもう神じゃない!

- 焦りすぎるな!

「ふぅーーーー」

息を整える。

ちょっと落ち着こう。だいぶ走ったから疲れた。ってあれ?そういえば!ああ!

- この鳥居のどれか使えばすぐだったや!

- ああもうなにやってんだろ、、、

- まぁ、でも、悪い気はしない!

- 思いっきり走ってスッキリした!

- うーん、

- でも、、、

- 誰かに頼めばよかった、、、、、、

- 頼めば、、、

そんな考えは頭になかったな、、、

そもそもなりふり構っていられなかったし、、、

あれ?でも、、、

結局イナリに頼ろうとしてない?

- あ

- ずっと惰性で動いてたや

- だからだ

- だから頭になかったんだ

ほんと

- ダメだなぁ、、、

- やっぱり今のままじゃだめだ!

- でも、あの未来の自分になれたら、、、

- あの男と出会えれば、、、

変われる

- って、こと、か、な?

- だといいな、、、

- そしたら私にも、、、

- 価値は産まれる、のかな?

- そのために、確認しないと

- だから、まずは、

「イナリーーーーーーー!!!!」

大声で力を込めて叫んだ。

下位の神やなりきれてない妖怪、なり損ない、そんな獣たちが慌ただしく出てきた。

イナリの側仕えら。

私のことは知ってるはずだ。

でもなんで?なんでそんなに警戒している?

前にも来たよね?撫でさせてくれたよね?

シャランッシャランッ。

鈴の音。敢えて鳴らしているな。おかげで側仕えたちが静まった。

「イナリ!!」

屋敷の玄関の前にある鳥居。その中からするっと現れた和装の女性。金色の耳と髪色に九本のしっぽ。いつ見てもふわふわだ。

側仕えのモフモフも姿勢を正す。かわいい。

- 癒される

「ナギ、、、其方に選択肢を提示してやろう。追い出されるか、洗われるか。どちらが良いか選びなんし」

タイガーアイのような瞳がキツく私を睨む。

「いや話したいことあるから、、、」

「では洗われる、でよろしいな。そう受け取った。わかったな?其方らもはよう動きんし」

パンッ!パンッ!

イナリが手を叩く。モフモフがどこからかハンカチを取り出して鼻と口を隠した。そしてジリジリと寄ってきて、飛び掛かった、私に。

「うわぁ!!!」

あとはされるがまま。風呂に連行されて洗われた。綺麗にされた。なんか、、、いろんな意味で癒された。

服もいつのまにか綺麗になってて、

- ボロ切れみたいになってたのに、、、

- これ新品?じゃないよなぁ

- わざわざ‘権能’を使ってくれたのか

- ありがたやありがたや

- じゃない!!!

「イナリ!もういい!?!?」

「よいぞ?だがまだ匂うな。あとでもう一回洗われなんし」

「え!?まじか、、、じゃない!あのね!アタシ!見たの!あの!!狐道で!人間と仲良さげに歩いてた!その私が!人間っぽかった!!完全に人間じゃなかったけど!今よりもっと!人間っぽかったの!!!だか、が!あぐ!イ“ッッたい!!あ”ぁ!あ”、あぁ、、、」

“罰則”

未来の情報を他者に開示してはならない。

私たちが、違う、私が定めたものだ。

- もう何度破ったか覚えてないや

- でも慣れない、、、

「大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫、、、あはは」

上手く笑えない

っていうか誰かに心配されたのもいつぶりだっけ。

さっきも気遣ってくれたのかな。あれ視界がボヤける、、、

パンッ!パンッ!

銀色や銅色のモフモフたちがゆっくり近づいてきた。

「お茶でありんす。飲みなんし」

「あ”りがど、、、」

上手く言葉も出ない。

頬を温かい水が流れてる。

胸も暖かい。久々だな。この感じ。

- 優しさ、だ

- イナリ、、、

- 私、ここに来たとき、

- あんなこと思っちゃったのに、、、

- いいの?

- 私が受け取っても

- 世界を変えてしまった私が、、、

- みんなに迷惑かけてきた私が、、、

「わっちは、わちらは、ほとんど影響がないのでな。其方を疎んでおらぬ。だから安心せい。そもそも自分をそこまで責めるのはよしなんし」

- やめてよ、、、

- そんな優しい目で見ないでよ、、、

- 頭なんか撫でないで、、、ねぇ、、、もう、、、

「う”、う”ぅ、、、う”あ”ぁあああああん」

泣いた。はち切れるように泣いた。今まで抱えたドス黒いものを吐き出すように大声をだして泣いた。もう、どうでもよくなった、、、

「そちはもう少し自分を大事にしなんし。大方、ひとりで抱え込もうとしたのではないか?それで自分を痛めつけておらぬか?責任を取るとはそういう意味ではないぞ」

「ぐっ、、、ずぅっずずっ、、、う”ん、、、」

右手で抱き寄せられ、そのままイナリのひざに寝かせられた。そして金色の尻尾が私を包み込んだ。イナリの温もりが身体に染み渡る。

苦しくない。

むしろ心地いい。

だから、

寝てしまった。

*

*

*

「起きるでありんす」

「ぁ、、、あ”りがど、、、」

声がしゃがれてる、、、

「そちはまっこと難儀な存在よの。わっちのような獣風情には、自業自得なおんしの状況などわかりはせん」

「う”ぅ、、、やっぱりわからないよね、、、ごめんね迷惑かけて、、、」

無言。

何も言わない。これ以上は迷惑かけられないな。

でも、知りたい、、、知りたい、、、

「ねぇ!知ってたらでいいから!教えて!あの未来にたどり着く方法!」

「知らん」

スッパリ言われた。

「、、、、、、そっか」

どうしよう、、、

- 無理なのかなぁ、、、

- そうだよ、、、

- 変われるわけない、、、あぁ、、、

- イナリの言う通り自業自得だもん、、、

- このまま消えられたらいいのになぁ、、、

「だが可能性はある」

「どういうこと!?」

「未来なんぞわかりはせん。そちはそのまま足掻き続けるがよい。運命を信じろ。さすれば繋がることもありんす。だが、其方もわかっておろう。未来は不確実だと。だからはっきり言って無謀でありんす」

- え?どういうこと?

「えっと、、、あの、、、今ね、、、頭まわんなくて、、、」

「其方が世界を変えた今、人間は神の存在をわからんようなったな?それでも人間は祈る。そちも同じように、どうなるかわからん未来を祈れ。そして流されるまま生きればよい」

- は?

「それってなんもするなってこと?」

「それでよい。そうでなくてもよい。信じ続けるしかないということよ」

「わかんない」

- わかんないよ、、、

未来が曖昧なのはわかるけど、だからって答えまで曖昧じゃわかんないよ、、、

イナリは悪くない、、、悪くないけど、、、

- このままじゃ私、、、人間になれない、、、

「ふぅ、、、」

イナリが軽く息を吐く。そしてギュッと拳を握って、尻尾を丸めた。

「其方、もしあの人間に会うことがあれば、神だと、神だったとバレぬようにな。それが絶対じょ、う“っ、、、!!」

イナリは一声以外、声を出さず、耐えていた。

あの激痛を。

ただただ、

じっと。

じっと。

イナリをよく見たら金色の毛や髪に、銀色が紛れている。それに神格が、、、

そっか、、、イナリも、何度も罰則を受けて、、、

他の神たちにこうやって助言してたんだ、、、私が世界を変えたあとも、、、

前から占い師みたいなことやってたし、、、

だから、、、

- どこが“影響ない”だよ、、、

- なんで私に優しくするんだよ、、、

「わっちは其方が悪いと思っておらぬ。それだけでありんす」

小さい、優しい声が聞こえた。

「ばか、、、」

- でも、、、

- 私は、、、私を、、、

「それでよい」

*

*

*

あの後、また、モフモフに洗われて、しばらく泊めてもらった。

- あんなに警戒されてたのになぁ

モフモフに囲まれて日向ぼっこ、モフモフと走り回ったり、モフモフと温泉に浸かって洗いっこ、モフモフと一緒にスヤスヤ、うん、

- モフモフしかしてないな

イナリともお茶を飲みながらいろんな話をした。ただただ私の話を聞いてくれた。あと酒を酌み交わして、くだらない話で笑い合った。

- 助けられてばかりだな

- いつかイナリが困ったことがあれば

- かならず、、、

すっかり洗われて、癒された私は、やらなければならないことに、戻ろうと思った。背負ったものは軽くはならないけど、抱えたまま走れる力をもらった。だから

- 今度は惰性じゃなくて本気で、、、

だから居心地がいいこことは、しばらくの間おさらばかな。

支度を整えてこっそり帰ろうとしたら、みんながやってきて、それすらも嬉しくて、思いっきり笑って

「イナリ!行くね!」

「いつでも帰ってこい。またあのような悪臭を放たれては敵わんのでな」

- ほんとズバズバ言うなぁ、、、

- でも優しい

「わかった!」

「それで、また一人で動くのか?」

目が少し険しくなった。

「もう大丈夫、、、だと思う、、、」

- たぶん、、、

「そちの他にも人間を助け回ってるお人好し、いや彼奴は自分のためよの。そんなやつが一柱、集団?彼奴らは本当にややこしい存在でありんす。まぁ、ここまで言えばわかるな?」

「あはは!ありがとう!」

- ヒントに文句混じってんじゃん!

それにあいつもイナリには言われたくないと思うな。ふふっ。

「思ったことを言っただけでありんす」

「わかったよ。そういうことにしとく!頼ってみるね!ほんとにありがと!またね、、、じゃない!

行ってきます!」

返事はなかった。

それでもよかった。

手を大きく振って、

でも振り返らず、

人間界に向かって走りだした。

- こうやって無我夢中で走ってれば

- きっと、、、

走って、

走って、

走って、

振り返った。

歩いて、

帰ってきた。

「ごめん、あの鳥居使っていい?」

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