虚無の果実~雪風と真紅の魔王~   作:ヒロジン

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前回のあらすじ

魔法と杖の世界「ハルケギニア」に存在する学院「トリステイン魔法学院」に在籍する青い髪の少女「タバサ」は、使い魔召喚の儀式を控えた前の晩に一本の大木が突如として出現する瞬間を目撃する。

その木の根元で、彼女は異世界の人間――かつて地球の沢芽市でビートライダーズのチームの1つ「チームバロン」を率いていた男「駆紋戒斗」との奇妙な出会いを果たす。

果たして、これからの彼らの運命はどうなっていくのか……




第2話 「再臨 紅きアーマードライダー! ①」

トリステイン魔法学院の医務室で、1人の青年が窓の外をじっと見つめていた。彼は駆紋戒斗、2日前にこの学院の近くの平原で倒れているところを発見された異世界の青年である。3時間ほど前に学院に戻った彼は、彼を発見したタバサという少女と別れ、無人となった医務室にいた。窓から入る2色の月明かりが彼の姿を照らしていた。

 

 

「…………」

 

 

戒斗は胸の前にまで持ってきた自分の左手に視線を移す。数秒後、彼の腕が明るい緑色の光に包まれ、幾つもの蔦のような植物が彼の腕に纏わりつく。その瞬間、彼の腹部の傷から先ほど目覚めたときと同じような鈍痛が彼を襲った。

 

 

「ッ!? ガァッ!? ……ハァ……ハァ…………」

 

 

鈍痛を感じた戒斗はすぐさま左腕の植物を『身体の内』に戻す。すると、鈍痛は少しずつ治まっていった。

 

 

「……まだ……万全の状態ではないようだな……力を使うだけでこれなら、あの『姿』になどとてもなれん……」

 

 

そうひとりごちた戒斗は、額の汗を拭いコルベールから使用許可をもらったベッドに腰掛けた。

 

 

「……俺は何故ここにいる……」

 

 

ハルケギニアで意識を取り戻す前、彼が地球で繰り広げた『最後』の闘い――今や『神』と言っても過言ではない存在なったあの男との闘いの決着を持って、駆紋戒斗という男の運命は定まったはずだった。

 

あの時、戒斗は見守ると誓ったのだ。過去の彼には信じることができず、『あの男』や『あの少女』は信じると誓った世界を……その誓いの後に、彼は眠りについたはずだったのだ。

 

過去の彼なら――世界に対する怒りこそが全てだった彼ならば、呼び出されたこの世界で頂点を極めるべく行動を開始していただろう。あらゆる障害を踏みにじり、叩き潰し、最強の存在として君臨し、文字通り『世界を変えた』だろう……

 

だが、今の彼の心からそれらの感情は薄れ、少なくとも自分が世界を支配しようなどとは思わなかった。あの男との闘いの果てに、戒斗が手にすることができなかった『本当の強さ』を目の当たりにしたときに、彼は人間の可能性を知ったのだ。

 

『弱いものは消え、本当に強いものだけが生き残るべき』という彼の考え、信念、誇り、想いは昔と微塵も変わっていない。ただ、あの男に敗れたことで、自分が強引に世界を変えずとも、人々は時間をかけて正しい道を選び、その道をゆっくりとだが歩いていくことができる……今の彼はそう確信していた。

 

だが……それと同時に彼の心には大きな『空白』が生まれていた。彼の心を埋め尽くしていた理不尽な世界への怒り、悲しみ、憎しみ……それらから解放された――いや、解放『されてしまった』彼の心には、唯一無二の存在になると誓ったあの日以来、感じたことのなかった穏やかさと安らぎ……あるいは脱力感と空虚な想いが生まれていた。

 

そして、その事実に他ならぬ駆紋戒斗自身が誰よりも困惑していたのだ。その虚しさに、今まで積み上げてきたものが――「駆紋戒斗」としてあの時終わったはずの自分自身が、別の存在へと書き換えられた上で再度消滅させられるような錯覚さえ覚えていた。それは今まで彼が経験してきたどんな『痛み』よりも耐えがたかった。

 

 

「俺は俺の道を選ぶだけ。運命など知ったことではない……だが……『葛葉』……『舞』……こんなとき、お前たちならばどうするんだ……」

 

 

誰も居ない部屋で搾り出すように呟いたその一言は、『弱さ』を嫌い切り捨ててきた『強者になろうとした男』の、これまでに感じたことのない苦悩をこれ以上ないくらい表した言葉だった。

 

 

************

 

 

トリステインの首都「トリスタニア」で一番の道幅を誇るブルドンネ街は今日も大勢の人がごった返していた。

 

午前中の勤務を終え、食事のためにレストランへと歩く衛兵。

 

仕入れた品物を手に抱え、どうやって売ろうかと考えながら歩く商人。

 

街の仕立て屋から依頼した服が完成したと連絡が入り、意気揚々と店に向かう貴族。

 

 

多種多様な人間が、それぞれの目的のために通りを歩いている。そんな中でも特に目を引く三人組があった。

 

 

「きゅい……人間がいっぱいなのね……」

 

「ここはこの街で一番大きな通り。人が多いのは当然」

 

「……だが、こうも多いと歩くのも一苦労だな。ドラゴン娘、俺たちから離れるなよ」

 

 

戒斗が目覚めた翌日の昼前、彼はタバサとともにトリステイン王国の首都である「トリスタニア」の街にやってきていた。街までの距離は馬で二時間とのことだったので、当初戒斗は街への道を教えてもらい、前日タバサから返却された自前の交通手段を使おうと考えていた。

 

だが、医務室にやってきたタバサから、戒斗の件で一日延期となり昨日行われた『使い魔召喚の儀式』の影響で二年生の授業は休みであり、また彼女自身も街に用事があることを伝えられ、彼女も戒斗とともに街に行くことになった。その際に彼女が提示した交通手段が「自分が昨日召喚した使い魔のドラゴンに乗って街まで飛ぶ」というものであり、戒斗が「魔法の次はドラゴンか……」と苦笑いしたのは先ほどの話である。

 

 

「きゅい! 人間のオスの分際で生意気なのね! それに、私にはイルククゥっていう両親からもらった名前があるのね! ドラゴン娘なんて変な呼び方はやめるのね!」

 

 

そして今、戒斗の言葉に猛烈に怒りを露にしているメイド服姿の女性がそのドラゴンであり、タバサの使い魔である「風韻竜 イルククゥ」である。

 

韻竜とは普通のドラゴンと違い、言語を介するなど人間と同等に高い知能を併せ持った種族であり、また自然界の精霊の力を借りる魔法「先住の魔法」にも長けており、今彼女が人間の姿をしているのはそのためである。しかし彼女はまだ幼体であり、現在の妙齢の女性といった見た目に反して言動は非常に幼いものであった。

 

 

「だいたい無茶苦茶なのね! 召喚した使い魔を放置して見ず知らずの人間のオスとイチャイチャした挙句、次の日には馬代わりに使うなんて……大いなる意志が許しても、この韻『竜イルククゥがお前たちを許さないのね……って、あれ? こ、声が出てないのね! 』」

 

 

1人ベラベラとまくし立てていたイルククゥの声が途中から聞こえなくなる。タバサが「サイレント」の魔法を唱えたからであった。

 

 

「この子のことは秘密」

 

 

口をパクパクと動かしながら、身振り手振りで猛烈に講義しているイルククゥを気にも留めず、タバサの案内のもと戒斗たちは目的地へと足を進めた。

 

 

今日、戒斗たちがこの街に来た目的は2つ。1つは戒斗の衣服などの生活必需品と今後の生活の拠点となる宿を確保することであり、もう1つはタバサが新しい本を買うことであった。現在は後者の目的を果たすため、タバサがよく利用している書店に向かっているところであった。

 

 

店に向かう途中、戒斗は通りを歩きながら街並みや通りを歩く人々を観察していた。彼は歴史にそこまで詳しいわけではなかったが、衣服や建物を見ていると漫画やゲームの題材としての所謂「中世ヨーロッパ風」な世界をそのままに現実にしたような世界だと捉えていた。

 

自分の店の商品を、通りを歩く人達に大声で勧める露店の店主

 

その声に引かれて商品を品定めする通行人

 

建物にかかった酒瓶や反物などが描かれた看板

 

その光景を戒斗は、まだ沢芽市がユグドラシルという大企業の手によって再開発される前の街並みと重ね合わせ合わせていた。

 

 

「ついた」

 

 

足を止めたタバサの目の前にはいかにも本屋というような書籍が大量に置かれた店があった。タバサは振り返ると後ろにいた戒斗に2枚の金貨を渡した。

 

 

「しばらくかかるから、あの子をつれて食事でもしてきて。終わったらこの店の外で待ってる」

 

「子守はかまわないが……これはその手間代ということか?」

 

「かまわない。好きに使って」

 

「わかった。あいつは任せておけ」

 

 

戒斗の言葉にタバサはこくりと頷くと、軽く杖を上下に振って店の中へと入っていった。その瞬間、イルククゥにかかっていたサイレントの魔法が解け彼女の大声が通りに響き渡る。

 

 

「きゅい! やっとしゃべれるのね! おい、赤いの! 言いたいことは山ほどあるけど、とにかくごはん! お腹すいたのね! ご~は~んッ!!」

 

「わめくな。今から飯を食わせてやる」

 

 

数分後、戒斗とイルククゥはその辺にあった食堂に入った。事前にタバサから貨幣価値と相場を聞いていた戒斗は店主のお勧めである羊の肉のソテーを2人分注文し、スムーズに代金を支払った。しばらくすると料理がテーブルに運ばれ、焼けた肉の香りとソースに使われているハーブと香辛料の香りが合わさった何とも言えないいい匂いが、2人の鼻腔をくすぐった。

 

 

「きゅい! おいしそうなのね!」

 

 

イルククゥは目を輝かせて、料理にかぶりつく。戒斗も丁寧に食器を使い、切り分けた肉を口に運ぶ。独特の風味を持った羊肉とソースに使われたハーブの風味が合わさり、2人の脳内に『美味い』という信号を送る。

 

 

「おいしいのね!」

 

「美味いな。大したものだ……」

 

 

ここで、ふと戒斗は奇妙なことに気がついた。それは『普通の料理を美味しいと感じる』ことだった。このことを他の人間に言えば、「当たり前だろ」と突っ込まれるのがオチであるが、少なくとも『駆紋戒斗』という男にとってこのことは異常なことだった。

 

 

「ふ~、おいしかったのね! でも、ぜんぜん足りないのね! もっと持ってくるのね!」

 

「……大声でわめくな。今店員を呼んでやる……」

 

 

が、その思考を遮るように目の前の人間に化けたドラゴンは子供のように喚く。彼女を再び制しつつ、店員に追加の注文をしたときには彼の感じた疑問は頭から消えてしまっていた。

 

30分ほどで食事を終えた戒斗とイルククゥは、先ほどの本屋へと戻るため通りを歩いていた。結局イルククゥは金貨一枚分のご飯を平らげ、戒斗を呆れさせていた。

 

 

「おいしかったのね! なんでわたしも一緒に行かないといけないのとか思ったけど、ついて来て正解だったのね!」

 

「あいつはお前に本屋の場所を覚えさせて、お使いをさせるために連れてきたと言っていたがな…」

 

「きゅい!? 聞いていないのね! あのちびすけ、偉大なる韻竜を使いっぱにしようだなんて、なんて無礼なやつなのね!」

 

 

戒斗がとなりできゅいきゅい、と喚くイルククゥの声を聞き流していると、傍の露店の店主から興味を惹かれる内容の声が聞こえてきた。

 

 

「……ほう、それはいい。おい、イルククゥ。そこで少し待っていろ。俺はそこの店に用ができた」

 

 

そう言いながら、戒斗は露店の店主へと声をかける。

 

 

「あら、お兄さん。いかがなさいました?」

 

「店主、それは幾らになる?」

 

 

戒斗が指を刺したのは、手のひら2つ分くらいの大きさになる巻貝の貝殻だった。一見普通の貝殻だが、穴が両側に2つ空いていた。店主の宣伝文句だと、片方の穴に入った音を反対の穴から数倍に反響させて放出させることのでき、おまけに音や音楽を記録する機能もついた「マジックアイテム」とのことであった。

 

 

「あぁ、この『音覚えの巻貝』ですか? 私としましては中々面白い商品なのですが、穴の中に正確に音を入れないといけないので、使い勝手がイマイチで全然売れませんでしてね~……最初は2エキューで売っていたのですが、今は7スゥとさせていただいています」

 

「わかった。では7スゥでそいつをもらおう」

 

「本当ですか? いや~、ありがとうございます!」

 

 

戒斗に頭を下げ、礼を言う店主の笑顔を見た戒斗の顔にも、自然と笑みが浮かんだ。先ほどの食事も合わせて久々に体感する日常は、彼にとって温かかった。子供の頃父親の職場に遊びに行った帰りに、近くの商店街の駄菓子屋でお菓子を買ってもらったときの光景が彼の脳裏に蘇る。

 

 

「……らしくもない」

 

 

人知れず、戒斗は苦笑した。今の自分にとってそれは過去のものでしかなく、もうあの頃の何も知らなかった……強くなることなど考えなくてよかった子供の頃には戻れないことは彼自身が一番よくわかっていたからであった。

 

 

************

 

 

「……どこまでも他人に面倒をかける竜だ……」

 

 

数分後、商談を終えて戒斗がイルククゥを待たせていた場所に戻るとそこに彼女の姿はなかった。近くの店の人間に話を聞くと、戒斗が店主と会計及び世間話をしている間にフラフラと別の方に歩いていってしまったようだ。

 

現在戒斗はその辺の通行人に聞き込みをしながら辺りを捜索していた。10分ほどかけて手に入った情報は以下の3つ。

 

 

1つ、イルククゥと思われる女性が近くにあった別の食堂に入店し、食事を要求したこと。

 

2つ、その際お金を持っていないと店主から追い払われたこと。

 

3つ、店から追い出されたイルククゥが「お腹空いたのね」と呟きながら、本屋と反対に歩いていったこと。

 

 

これらの情報からおそらくご飯が食べられないショックで道を忘れ、そのまま迷子になったのだろうと戒斗は察した。タバサから子守を任され、かつ手間代を使ってしまった戒斗は面倒だと思いながらも彼女が歩いていったという通りを捜索していた。

 

 

この付近は街の外れであり、街の外に広がる森が視界に入る。そして、通行人からイルククゥと思われる女性が1人の老紳士と街の外へ出て行ったという証言を手に入れた戒斗は、彼女が向かったという森に足を踏み入れた。

 

 

森の外れまで進むとそこには一台の馬車が停まっており、イルククゥと中年の男性が馬車に向かって歩いていた。戒斗が茂みから様子を伺うと、イルククゥが目隠しをされ……いや、自分からつけたあとロープで縛られ馬車の荷台に放り込まれる、というなんとも間抜けな光景が彼の目に飛び込んできた。どうやら、人攫いに騙されて攫われたようだ。

 

 

「……どこまでも世話がやける……」

 

 

そう呟きながら、戒斗は周囲の状況を確認する。馬車の御者台にはさきほどの中年男性と杖を持ちフードを被った男が1人座っており、幌のついた荷台にはマスケット銃と酒瓶を握り締めた男が乗り込んでいった。他に剣や槍で武装した男が三人おり、辺りを警戒していた

 

 

「6人か……」

 

 

戒斗はそう言うとあたりを見回し、大き目の石を1つ手にとると戒斗が居る場所から離れた茂みに向かって思い切り放り投げた。茂みに石が入り、ガサガサと音が鳴る。

 

 

「うん? 誰かいるのか!?」

 

 

馬車の周辺の男たちの視線がそこに集中したところで、戒斗は茂みから飛び出した。そして一足飛びに馬車の周りにいた3人のうち、槍を持った男の目の前に迫りながら顔面に蹴りを叩き込む。鈍い音と何かが折れたような音が辺りに響き、男は槍と意識を同時に手放した。

 

 

間髪いれず戒斗は男の放した槍を掴み、刃のついていない部分で周りの2人を殴り倒す。頭部に強烈な一撃を受けた二人は先ほどの男と同じように気絶した。

 

 

「貴様ッ!」

 

 

御者台にいた二人がここでようやく戒斗に気づき、杖を向け魔法の矢を放つ。どうやら2人はメイジだったようだ。その矢を素早い身のこなしで回避した戒斗は、御者台を視界に捉えて両足で思い切り地を蹴った。

 

 

「なにッ!?」

 

 

3メートル以上跳躍し、一気に御者台に迫った戒斗は槍を一閃させて2人の杖を叩き落とし、流れるように二人の胴体に石突の部分をめり込ませた。骨が砕けるような鈍い音と口から吐瀉物が流れ出る音が二回響き、メイジたちは地面を転がった。

 

 

「な、なんだ……がッ!?」

 

 

荷台付近の男も蹴り倒した戒斗は馬車の荷台を覗き込む。そこには縛られたイルククゥと彼女と同じように縛られた幼い少女たちが何人も詰め込まれていた。

 

 

「大丈夫か、イルククゥ?」

 

「その声は赤いの!? も、もしかして助けに来てくれたのね?」

 

「あぁ……どうやら怪我はないようだな」

 

 

そう言いながら、戒斗はイルククゥを縛っていたロープを解いた。

 

 

「やっと動けるのね!……そ、その………助けてくれてありがとうなのね……」

 

「俺は少し待っていろといったはずだが……」

 

「……ごめんなさいなのね……」

 

 

涙ながらのイルククゥの言葉に戒斗はため息をついた。

 

 

「……まぁいい。それよりもこいつらのロープを解くのを手伝え。今はそれが先だ」

 

「わ、わかったのね!」

 

 

2人は縛られていた少女たちを全員解放すると、荷台から降ろした。少女たちは未だに攫われたという事実への恐怖からか身体を寄せ合って震えていた。その中で高そうなドレスを着た少女が震えながらも口を開く。

 

 

「……あ、あの……なんとお礼を言ったらいいか……あ、あなたは……?」

 

「駆紋戒斗だ。怪我はないか?」

 

「は、はい……カイト様……あ、ありがとうございます。あ、あのままだと……わ、私たち……えっく……わたしたち……」

 

 

先ほどの恐怖を思い返したのか、少女の目に再び涙が浮かぶ。それを見た戒斗は持っていたハンカチを少女の目の前に差し出す。

 

 

「俺はこの迷子を捜してたまたま居合わせただけだ、礼など必要ない。だが……お前たちに必要なものはもっと他にある……」

 

 

涙が溢れる目の前の『弱い』少女の目を見つめながら、彼女に戒斗は語りかける。

 

 

「今は泣いてもいい……だが、二度とこんな目に遭わないように強くなれ。自分よりも弱いものを利用し、踏みにじることしか能のない『弱者』などに屈するな!」

 

戒斗の激しい口調に少女は一瞬怯えた表情を見せた。だが数秒後、彼女を見つめる戒斗の視線に込められた感情を理解した少女は戒斗の手からハンカチを借りると涙を拭いた。

 

「それでいい……その気持ちを忘れるな。その心がある限り、お前はどこまでも『強く』なれる」

 

「はい!」

 

戒斗はそう呟き、彼女の頭を撫でる。両者の顔には笑みが浮かんでいた。その光景を見ていたイルククゥは、「不器用だけど、優しいオスなのね」と呟いた。

 

 

「おいおい、なんだいこのざまは?」

 

 

その時、森の外へと繋がる道の方から声が聞こえてきた。若い女の声だ。戒斗たちがその方向に視線を移すと同時に、彼らの方向に魔法の矢が発射された。

 

 

「ッ!? 伏せろッ!!」

 

 

突然の攻撃だが、戒斗にとってそれは避けようと思えば避けられる攻撃だった。だが、運悪く――いや、敵の狙い通りというべきか、彼の後ろにはイルククゥと少女たちがいた。戒斗の決断は素早かった。彼女らの前に立ちはだかると腕を広げ、彼女らの盾となった。直後、戒斗の右肩に魔法の矢が勢いよく突き刺さった。

 

 

「ガッ……!? カハッ……」

 

 

衝撃と痛みが戒斗の身体を襲い、右肩を抑えながら彼は膝を着いた。肩からは赤い液体がダクダクと流れ落ちている。

 

 

「赤いのッ!?」

 

「カイト様!?」

 

 

イルククゥが悲鳴を上げた。戒斗は痛みに耐えながら、正面を――矢の飛んできた方角を睨み付けた。そこには若い銀髪の女が立っていた。右手に杖を握り、その切っ先を戒斗たちの方に向けながらニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべていた。

 

 

「まったく……ただの平民一人にここまでやられるとはねぇ。おい、いつまで寝てるんだい! 早くおきな!」

 

 

杖を戒斗たちの方向に向けたまま、女は足元に倒れている男を蹴り飛ばした。蹴られた男は意識を取り戻し、女を見て口を開く。

 

 

「あ、あねご……」

 

「油断するなといつも言ってるだろう。まぁ、今回は相手も中々のものだったみたいだけど…」

 

「ハァ……ハァ……貴様が……頭目か……?」

 

 

ふらふらと立ち上がりながら、戒斗が声を絞り出す。

 

 

「そうだよ。私がこの傭兵団の頭だ。兄さん、あんたには随分好きにやられたが、それもここまでだ。さすがに娘たちをかばいながらじゃあ、こいつらのときのように戦えないだろう? まぁ、娘たちを見捨てるなら話は別だけだけどねぇ?」

 

 

口元を歪め、冷笑を浮かべる女頭目の後ろから一台の大きな馬車が近づいてきた。馬車からは武装した男たちが何人も降り、頭目の後ろに並ぶ。ざっと見てもさっきの倍以上の敵が目の前に現れた。

 

 

「……俺たちを……どうするつもりだ……?」

 

「どうするも何も変わらないよ。娘たちは商品だ。できることなら傷つけたくないが……あんたが暴れるなら話は別だ。一人くらい死んでも、また新しいのを攫えばいい。ま、どの道あんたはここで死ぬんだけどね」

 

 

そう言いながら頭目は魔法の詠唱を始めた。イルククゥは戒斗の身体に矢が刺さる光景を想像し、思わず目を瞑った。少女たちは身を寄せ合うことしかできなかった。戒斗は痛みを堪えながら、懐にしまってあった『錠前』を手に取り取り付けられた開閉スイッチに指をかけた。

 

 

だが、戒斗のもとに頭目の矢は飛んでこなかった。代わりに、戒斗たちの真上から傭兵たちの方向に巨大な竜巻が吹き荒れた。

 

 

「なッ!? くッ!?」

 

「う、うわぁぁぁッ!?」

 

 

その竜巻に巻き込まれた傭兵たちのうち、風の魔法を使い抵抗した頭目以外は竜巻に巻き込まれ数メートルほど吹き飛ばされた。彼女たちが乗ってきたであろう馬車も竜巻に巻き込まれ横転する。激しい砂埃に、戒斗たちも目を覆った。

 

 

「……だいじょうぶ?」

 

 

その声と同時に戒斗の目の前に一人の人影が舞い降りた。それは杖を右手に携えたタバサであった。

 

 

「ちびすけ!」

 

「お前か……よく……ここがわかったな?」

 

「使い魔の見たものはわたしも見ることができる。使い魔と主人は、一心同体」

 

 

そう、メイジは召喚した使い魔の視覚を共有することができるのである。書店で本を物色している最中、イルククゥの身に起こった異変を感じ取ったタバサは書店を飛び出し、「フライ」の魔法を使って全速力でここに飛んできたのである。まぁ、本の物色に夢中で異変に気づくのが少し遅れたことを彼女はこの場では語らなかったのであるが…

 

 

「なるほど……しかし、大したものだ。これがお前の実力か……」

 

 

戒斗はタバサから目の前に視線を移す。そこには先ほどの傭兵の集団はなく、部下を一撃のもとに倒された女頭目が怒りの表情を浮かべながら立っているだけだった。

 

 

「……あんたたち……ふざけるんじゃないよッ!! 私の部下をここまでズダボロにしやがって! 無事に帰れると思わないことね!!」

 

「それはこちらのセリフ。あなたはこのまま監獄行き」

 

「だそうだ。言っておくが、さっきの手はもう通じんぞ」

 

 

怒り狂う頭目の目の前にタバサと戒斗が立ちふさがる。戒斗は肩の矢を引き抜き投げ捨てると、地面に落ちた槍を構えなおした。肩の出血はすでにとまっており、傷口はすでにカサブタでふさがっていた。

 

戒斗の尋常ではない回復力にタバサは―彼はやはり只の人間ではない―と思いながら、いつでも呪文を唱えられるように呼吸を整える。

 

この場に到着し、ノックアウトされた傭兵を見た彼女は戒斗の戦闘力の高さを推し量り、自分は少女とイルククゥの壁になることが最善の選択と判断した。仮に彼女たちに頭目から魔法が飛んでも、タバサ自身の魔法で叩き落す算段だ。そんな彼女の考えを戒斗も瞬時に察し、頭目が魔法を唱えた瞬間に彼女の至近距離に飛び込む準備をしていた。

 

だが、女頭目が次にとった行動は魔法の詠唱ではなかった。彼女はにやりと笑うと、懐から何かを取り出した。それはオレンジ色の果実が象られた『錠前』だった。

 

 

「!? 貴様、何故それを……『ロックシード』を持っているッ!?」

 

 

彼女の手に持つものの正体にいち早く気づいた戒斗が叫んだ。その表情は驚きと疑問が入り乱れていた。当然である。何故なら、あの『錠前』は本来この世界にあるはずがなく、あってはならないものなのだから。

 

 

「へぇ、あんたこいつがなんなのか知っているのかい……じゃあ、これから何が起こるかも知っているんだよねぇ!!」

 

 

頭目はそう叫びながら、錠前の開閉スイッチを右手の親指で開けた。タバサやイルククゥ、少女たちの耳に聞きなれない電子音が響き、同時に彼女の前方の空間に裂け目が出現する。次の瞬間、その裂け目から『ナニカ』が現れた。

 

 

それは異形だった。一言で表すなら『青く触覚の長い虫』だ。ただし、体長は2メイル以上あり、二本の足で大地をしっかりと踏みしめていた。口からは低い唸り声と涎が溢れ出ており、両腕の爪は鋭く尖っていた。まさしく、それは『怪物』と呼ぶにふさわしい生き物だった。

 

 

「な、なんなのね……この……化け物……」

 

「こんな生物みたことない……ただの生き物じゃない」

 

「馬鹿な……おまけに実体化しているだと……」

 

 

高ランクのメイジであるタバサと先住の魔法の使い手であるイルククゥには目の前の怪物の異常さがよくわかった。ハルケギニアにはオーク鬼や吸血鬼などの人に近い身体的特徴を持つが人ではない種族は数多く存在する。だが、目の前の怪物はそれらと根本的に違う。身体からメイジたちの魔力とはまた異なるどす黒く禍々しいナニカを発していることを2人は感じてしまった。まるで、血液の代わりに強力な毒物が通っているようなそんな感覚である。2人はもちろん、先ほど立ち直りかけた少女たちも絶望の表情を浮かべていた。

 

 

「驚いただろう? 私も商人からこれを買ったときはそうだった。こいつらは『インベス』という怪物なんだそうだが、中々タフでね。ちょっとやそっとの魔法じゃビクともしないんだ。今からこいつと私であんたらを血祭りにあげてやる……いくよ、私のインベス!」

 

「ガァァァッ!!」

 

 

頭目の声に合わせて、インベスと呼ばれた化け物が反応し唸り声をあげ走り出す。だが、未知の恐怖に慄くイルククゥに対し、タバサはまだ冷静さを保っていた。頭目が錠前を手放さないことから、それが怪物の制御に関係していると瞬時に認識し、最善と判断した一手を打つ。彼女の得意な魔法の1つ「ジャベリン」の詠唱を瞬時に完成させると、狙いを頭目の腕の錠前に定め魔法を放った。怪物の身体が死角になったことと、怒りで冷静さを欠いていた頭目はその槍が眼前に迫るまで気づけなかった。

 

 

「ッ!? し、しまった!?」

 

 

小さいがスピードを重視して作られた氷の槍が頭目の腕をかすめ、その際に彼女は錠前を落とした。本当は錠前を破壊するつもりだったのだが、これで制御はできなくなるはずとタバサは確信した。その確信はあたっていた……だが、それがどういう事態を引き起こすのかを彼女はわかっていなかった。

 

 

「ッ!? おいッ! 早く錠前を拾えッ!!」

 

 

その戒斗の言葉を受けて、タバサの頭に疑問符が浮かぶ。だが、彼の叫んだ理由を彼女は次の瞬間、知ることになった。彼女が錠前を落とした瞬間、怪物の目が怪しく光った。そして怪物は身体を反転させると錠前を拾おうとしていた頭目を攻撃したのだ。

 

 

「ガァァァッ!!」

 

「あッ……ガハァッ!?」

 

 

怪物の腕の爪が頭目の腹部に突き刺さり、頭目の腹部と口から赤い液体が滴り落ちた。そして次の瞬間、さらに予想だにしない出来事が起こった。

 

 

「……あぁ………あ…………」

 

女頭目がぐるんと白目を剥いて絶命したと同時に彼女の傷口が緑色に光り、そこから蔦のような植物が無数に這い出てきた。這い出た蔦は瞬く間に彼女の全身を覆い、身体中が蔦と光に蝕まれる。そして、光が収まったとき……彼女は『人間』ではなくなっていた。

 

 

「……グ……グル……ガァァァッ!!」

 

 

そこにいたのは青い虫の怪物と似たような雰囲気を持った虎を模したかのような頭部を持つ緑色の怪物だった。赤い目をらんらんと輝かせ、うめき声をあげる姿は先ほどまでの彼女とはかけ離れていた。そしてその怪物は、足元にいた彼女の部下だった男に視線を移し、次の瞬間男の胸に右腕の爪を勢いよく突き立てた。

 

 

「や、やめ……ぎゃぁああッ!?」

 

 

男の胴体を鋭利な爪が貫通し、数秒後息絶えた男の傷口から蔦が伸びる。そして男は十秒後には、灰色の甲殻を持った虫のような化け物――タバサが夢の中で見た異形と同じ姿になった。その異形も低い唸り声とともに近くに倒れていた男に爪を突き刺した。どうやら深く考えることなく、近くにいる人間をただ狙っているようだった。

 

「た、たすえてくれぇぇぇッ!!」

 

「あねご! お願いだ、正気にもど……ぎゃぁぁぁッ!?」

 

「なっ!? き、傷が光って……ガァアアアッ!?」

 

 

森の外れに傭兵たちの悲鳴と絶叫が響き渡る。怪物の攻撃により絶命したものは灰色の虫の化け物と化した。幸いかすり傷で済んだ者には別の痛みと恐怖が訪れた。怪物からの攻撃の傷がだんだんと明るい緑に輝き出し、そこからうっすらと小さな植物の芽が生え出したのだ。傷口を覆う光と芽は傭兵たちにさらなる絶望と悶絶しながら地面を転げ回るほどの激しい痛みを与えた。

 

 

「……なにが……起こっているの……?」

 

 

そのあまりの衝撃的な光景に少女たちのうち、半分は意識を手放した。目の前で『人間』が『怪物』に変わっていく……年端も行かない少女たちにはいささか衝撃的過ぎる光景であったのだろう。意識を保った少女やイルククゥも歯を震わせて怯えるだけで、幼くしていくつもの修羅場をくぐってきたタバサですら疑問の言葉を口から搾り出すのがやっとだった。

 

 

そして、近場の人間を狩りつくした元頭目が、タバサたちの方向に視線を向けた。赤くギラギラと輝く眼とタバサは目が合ってしまった。やられる前に殺す――冷静さを取り戻したタバサはルーンを口ずさむ。

 

 

「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ウィンデ!」

 

 

彼女の周囲に何十もの氷の槍が展開され、呪文の完成とともに怒涛の勢いで怪物の身体に突き刺さる。彼女の全力を込めた「ウィンディ・アイシクル」を受けた怪物は悲鳴をあげ、地面を転がった。

 

 

「はぁ……はぁ……ッ!?」

 

「グラァアアアッ!?」

 

 

どうやら効果がないようではないらしい、そう安堵したつかの間、怪物は唸り声とともに勢いよく立ち上がった。身体からは体液のようなものが流れ落ちているが、致命傷には至らなかったらしい。ならばもう一度、とタバサが再度ルーンを唱えようとしたとき、怪物の身体に刻まれた模様が緑色に光り始めた。タバサとイルククゥはそこにものすごい量のエネルギーが集約されていることを感じ取ってしまった。恐らくあのエネルギーはあと一秒もたたないうちに、自分たちに向かって飛んでくるだろう。

 

 

『だめ、間に合わない!』

 

 

詠唱を急ぐタバサであったが、どう急いでもあと数秒は必要だった。しかも、今唱えているのは攻撃用の魔法で、仮に詠唱に成功しても自分や後ろの少女たちの身を守る手段はなかった。

 

 

『こんな……こんなところで終わるわけには行かないッ!!』

 

 

 

 

『バナナッ!!』

 

 

その時、死を覚悟したタバサの耳に奇妙な音が聞こえてきた。次の瞬間、想像通り怪物の身体から帯状の光が幾重にも発射された。だが、その光は空から降ってきた『何か』によって全て防がれた。

 

 

「ッ!? ……バナ……ナ?」

 

 

タバサにとってそれはなんと形容していいかわからない代物だった。強いて言うなら、果物の「バナナ」に近い形をした金属の塊だった。この塊が怪物の放った光を受け止め、タバサたちの身を守ったのである。

 

タバサは辺りを見回した。その金属のバナナがある真上の空間には、さきほどと同じように空間に裂け目が出来ており、彼女の隣には駆紋戒斗が怒り狂ったような表情で『錠前』を握り締めていた。

 

 

「……ふざけるのも大概にしろ……」

 

 

戒斗は静かに、だが怒りのこもった言葉でそう呟いた。いつの間にか彼の腰にはあの『バックル』が黄色いベルトによって取り付けられていた。

 

 

「……どこの誰かは知らん。方法などどうでもいい……だが、何故だッ!! 何故、この『錠前』をこの世界に持ち込んだッ!! またあの『破壊』を、『痛み』を繰り返えすのかッ!! 『優しさ』を忘れ、他人を虐げ奪いあい、『弱者』を踏みにじるというのかッ!?」

 

 

戒斗は手にしていた槍を怪物に投擲するが、槍は簡単に怪物に弾かれた。だが、それは攻撃などではなく、彼が行き場のない怒りを発散させたに過ぎなかった。

 

 

「あの時の俺ならば、それで当然と思っていた。一度壊れなければ、新たな秩序は作れない……価値のないものなど、自ら定めた『ルール』で滅びればいいと、そう思っていた……だが、『あいつ』はそれを否定し、『本当の強者』となった! 世界を滅ぼすことなく、世界のルールを破壊した! 『弱さ』を抱えたままでも……人間は『強くなれる』ことを証明して見せた!!」

 

 

右手の指に引っ掛けた『ロックシード』を一回転させ、流れるような動きで『戦極ドライバー』にはめ込み、ロックする。

 

 

『ロックオン!』

 

 

その声とともに戒斗の腰のバックルから、まるで出陣前の騎士を鼓舞するファンファーレのような音楽が鳴り響く。

 

 

「あいつは今ここにはいない……だが、俺がいる!! 貴様の強いた『ルール』を破壊し、『本当の強さ』を見せてやる!! 」

 

 

それはまだ見ぬ『敵』への宣戦布告であり、過去の自分への戒めであり、自分自身や妙な縁で結ばれた少女と韻竜、かつての戦友たち、そして戒斗が望んだ理想を継ぐと誓ってくれた『始まりの2人』に対する宣言であった。昨晩の虚無感など最早消えうせ、彼の心には怒り……そして、『決意』の炎が再び燃え盛っていた。

 

 

『どうかしていた……俺のやることは、あの時から何も変わらない……そうだろ……「駆紋戒斗」!!』

 

 

心の中で独り呟いた戒斗の脳裏に、両親の死の光景がフラッシュバックする。そして彼は自分後ろにいる少女たちへと視線を向けたあと、心の中で再び固く誓った。もう二度と……自分の目の前で『弱者』を踏みにじらせはしない、と……

 

 

「変身!!」

 

『COME ON!』

 

 

 

「……バナナ……」

 

「……バナナなのね……」

 

「……ば、バナナです……」

 

 

危機的状況だというのに、タバサ、イルククゥ、少女たちの間になんとも言えない空気が流れた。いきなり知人の頭に巨大なバナナがかぶされば、まぁわからなくもない。そんな空気に懐かしさを感じながら、アームズの中で戒斗はふっ、と笑った。

 

 

「違うな……俺は……」

 

 

彼の顔をライドウェアの兜「バーンカスク」が覆い、上からメットパーツが取り付けられる。それと同時に、バナナアームズが展開し、胸部・背面・両肩を覆う鎧となる。彼の右手には剥き身のバナナのような奇抜なデザインの槍「バナスピアー」が出現する。

 

 

『バナナ・アームズ!! KNIGHT・OF・SPEAR!!』

 

 

アームズの展開完了と同時に兜のバイザー「バーンサイト」が輝き、鎧から黄色い果汁のような液体が吹き出た。タバサの夢に出てきた騎士の姿となった戒斗は腰を落とし、バナスピアーの刀身を左手の甲の上に添えて構え、切っ先を目の前のインベスたちに向ける。

 

 

「俺は『バロン』……『アーマードライダー バロン』だッ!!」

 

 

新たな決意を胸に『変身』し、異世界の地に再臨した『アーマードライダー バロン』は、高らかにそう叫ぶとインベスの群れへと駆け出した。

 

 

第3話に続く




2月7日 細部修正・加筆
    マジックアイテムの効果を少し変更 今後の展開のため

2月9日 細部を修正・加筆
    前回のあらすじ追加

2月19日

ご指摘により森の植物の侵食及びインベス化の描写を加筆・修正
詳細は活動報告にて

2月25日 細部修正・加筆

3月20日 タイトル編集

3月26日 戒斗のセリフを少し修正

1101 細部修正

1116 細部修正・加筆
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