迷子の進む道   作:桜紅月音

1 / 1

約6年ぶりとなるバンドり新作を書いてみました。


よろしくお願いします。


1話 スタートラインと再会

 

 

「わたし、ゆうとバンド組みたい」

 

 

「無理に決まってるだろ…」

 

 

中二の夏、一つの年下の幼馴染の要楽奈(かなめらな)にそう言われた。

幼少期からギターをやっている彼女と、ピアノを同じくらいの暦をやっている俺。そういう観点から彼女はそう言ったと思うのだが…

 

 

「第一、キーボード出来ないぞ俺」

 

 

「大丈夫!ゆうなら出来る。ピアノやってるんだし」

 

 

「えぇ…」

 

 

彼女の強欲な態度というか、無理強いをさせられて中三に進級する頃には、ピアノと同じくらいの技量で、キーボードを弾く事が出来ていた。

だが、彼女が…猫の様な性格の為、バンドを組む以前の問題もあり、バンドが組む事は出来ずに、そのまま時が経ち、俺は高校一年に、楽奈は中学三年生になっていた。

 

 

そして、俺が進学先に選んだのは、羽丘にした。なんでも最近までは女子校だったが、少子化対策で共学になったらしい。なんで転校したかというと、休み時間になると『付き合って』だとか『結婚しろー』、『私と〇〇は運命共同体』だとか抜かしやがる幼馴染から逃げるという理由もあった。毎回毎回、変な噂を立てられるので困っていたので丁度良かった。

 

そして、入学式を終えて家に帰ってくると玄関先に知り合いが居た。

 

 

「甘木君、お久しぶりですわね」

 

 

「久しぶり……だけど……何か用か?」

 

 

彼女の名前は、豊川祥子(とがわさちこ)。

楽奈のような幼馴染の関係でも無ければ、普通は接点はない豊川家のご令嬢様である。

なんでこんな所に居るんだが。

 

 

「ピアノコンクールでも、バンドでも貴方に負けた恨み…ここで晴らさせていただきますわ!」

 

 

「バンドはまだしも、ピアノコンクールに関してはお前の実力が足りなかっただけだろ…」

 

 

「いちいち言い方にムカつきますわね」

 

 

そう彼女とは、何故か因縁の相手であった。

彼女が中学の時に組んでいたバンド『CRYCHIC』。今は亡きバンドではあるが、俺も彼女に強引に入れられ、彼女達とは楽しくやっていたつもりだった。それがとある日に、彼女から解散しようと言ってきたのだ。

まぁ…それはいい。既に終わった話だから……もう一つの話であるピアノコンクールの話だが。

 

 

「祥子だって、3年連続銀賞も凄いけどな」

 

 

「3年連続金賞の貴方が言っても嬉しくはありませんわ!」

 

 

中学時代、彼女とは全国大会で競い合った中であった。

彼女が3年連続銀賞。これでも充分凄い結果である。

だが、俺が3年連続金賞を取ったものだから、彼女から凄く妬いていたのを実感していた。

 

 

「そうかいそうかいー」

 

 

「棒読み辞めてくださいませんか!」

 

 

彼女を揶揄うのは何故か楽しい。

幼馴染にちょっかいをかけられているから、そのストレスを彼女にぶつけてるだけか。

 

 

「それで、何の用?」

 

 

「甘木君を学校でお見掛けしまして」

 

 

「見られてたか…」

 

 

「何故、甘木君が羽丘に来たのですか?家から遠い羽丘に」

 

 

「俺にも色々と事情があるの…」

 

 

「そうでしたか……」

 

 

「祥子の親父さんは相変わらずなのか?」

 

 

「ええ…くそおやじって叫びたいくらいですわ」

 

 

「そっか……」

 

 

彼女の親父さんの件というのは、彼女のお父さんが地面師から168億円の詐欺被害に遭ってしまったという。

 

 

「何回も聞いて申し訳ないけど、おじいさんの方に付いて行かなくて良かったのか?俺が言うのもなんだけど」

 

 

「父の元で過ごすと決めたので私自身ですので」

 

 

「そうか…何か助けれる事があったらいつでも頼ってくれ」

 

 

俺がそう言うと、彼女は首を縦に振っていた。

そして、俺の家から立ち去っていく彼女の背中を優しく摩る。

バンドのみんなと関係を断っている中で、彼女とこうやって関係を持っているのは、俺と彼女の幼馴染くらいだろう。

 

 

「親父さんの事は大変だと思うが、あんまり気負い過ぎなよ」

 

 

「分かってますわ…」

 

 

それだけ言って、彼女は俺の前からゆっくりと進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******************

 

 

「さきとゆうの居場所が知りたいって」

 

 

「またかよ……」

 

 

祥子と話した数日後、また知り合いから呼び出された。

今度は、洋子の幼馴染の若葉睦(わかばむつき)。

一緒に『CRYCHIC』をやって、彼女には懐かれていた。何故、懐かれたのかは分からない。

 

 

「そよか?気になってるのは」

 

 

「うん、今日も聞かれた。誤魔化してるけど」

 

 

「転校したもんな、祥子の奴。うちの学校に」

 

 

そよというのは、『CRYCHIC』のベースをやっていた長崎そよの事である。

因みに、目の前にいる睦も『CRYCHIC』の元バンドメンバーであった。

 

 

「うん…さきの家を教えてって」

 

 

「そっか……」

 

 

そよが、『CRYCHIC』に執着を持っているのは知っている。

あんな解散の仕方をすれば仕方ないといえば仕方ない。

 

 

「その内……俺の所にも来るかもな…」

 

 

「うん…さきとゆうの居場所は教えてないけど、時間の問題だと思う」

 

 

そよに追い詰められたら、睦は彼女に話してしまうだろう。

あの解散以降、俺はそよには会っていない。

 

 

「ゆうは」

 

 

「睦、どうした?」

 

 

「ゆうはキーボード楽しい?」

 

 

「うん。今はピアノに集中してるから弾いてないけど。キーボードは楽しかったよ」

 

 

「そっか」

 

 

睦とそう話をした数日後。

楽奈に呼び出された。理由は聞いてない。

 

 

「RiNGにギター弾きに行く」

 

 

「好きに行ったらいいんじゃないの?」

 

 

楽奈に俺はそう返した。

しかし、楽奈は納得していない表情を浮かべていた。

 

 

「ゆうにも付いてきてほしい」

 

 

「なんで?」

 

 

「最近、キーボード引いてる所を見てないから」

 

 

「弾いてるよ。前に比べたら弾いてないけど」

 

 

「面白くない」

 

 

面白い事は面白い、面白くないことは面白くないとはっきりと言う彼女。

ちょっとぐさっと来てしまった。

 

 

「面白くないって……」

 

 

「だって、今のゆう寂しそうだから」

 

 

「………」

 

 

楽奈には見抜かれていたか。

確かに、あいつらとバンドを組んでいた時は楽しかった思い出も多い。

それがスパッと抜け落ちた物だから、その分が穴となって開いてしまっていた。

 

 

「だから、行こ?」

 

 

「行って何をするの…」

 

 

「私と一緒にセッションする」

 

 

「キーボード弾けないけどいいのか?」

 

 

「そう言って上手い事は知ってるから」

 

 

そして、俺は部屋に置いてあったキーボードを持って、楽奈と一緒に向かったのだが……

 

 

「そよ………」

 

 

「優紀君……」

 

 

「えっ?そよさん、知り合いなの?」

 

 

そこに居たのは、元メンバーの長崎そよだった。

 

 

「楽奈…悪い…帰るわ」

 

 

「ゆう?」

 

 

「優紀君!待って!」

 

 

そよは、家に帰ろうとする俺の手を掴んできた。

 

 

「話がしたいの!」

 

 

「………分かった、話だけなら……いいよ」

 

 





主人公紹介

甘木優紀(あまきゆうき)君です。

楽奈と幼馴染。
担当楽器は、キーボードになります、一応ベースとギターを出来ます。
『CRYCHIC』解散後は、皆の前から姿を消した。連絡はしていた模様。


現時点では、祥子ちゃん派です。




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。