約6年ぶりとなるバンドり新作を書いてみました。
よろしくお願いします。
「わたし、ゆうとバンド組みたい」
「無理に決まってるだろ…」
中二の夏、一つの年下の幼馴染の
幼少期からギターをやっている彼女と、ピアノを同じくらいの暦をやっている俺。そういう観点から彼女はそう言ったと思うのだが…
「第一、キーボード出来ないぞ俺」
「大丈夫!ゆうなら出来る。ピアノやってるんだし」
「えぇ…」
彼女の強欲な態度というか、無理強いをさせられて中三に進級する頃には、ピアノと同じくらいの技量で、キーボードを弾く事が出来ていた。
だが、彼女が…猫の様な性格の為、バンドを組む以前の問題もあり、バンドが組む事は出来ずに、そのまま時が経ち、俺は高校一年に、楽奈は中学三年生になっていた。
そして、俺が進学先に選んだのは、羽丘にした。なんでも最近までは女子校だったが、少子化対策で共学になったらしい。なんで転校したかというと、休み時間になると『付き合って』だとか『結婚しろー』、『私と〇〇は運命共同体』だとか抜かしやがる幼馴染から逃げるという理由もあった。毎回毎回、変な噂を立てられるので困っていたので丁度良かった。
そして、入学式を終えて家に帰ってくると玄関先に知り合いが居た。
「甘木君、お久しぶりですわね」
「久しぶり……だけど……何か用か?」
彼女の名前は、
楽奈のような幼馴染の関係でも無ければ、普通は接点はない豊川家のご令嬢様である。
なんでこんな所に居るんだが。
「ピアノコンクールでも、バンドでも貴方に負けた恨み…ここで晴らさせていただきますわ!」
「バンドはまだしも、ピアノコンクールに関してはお前の実力が足りなかっただけだろ…」
「いちいち言い方にムカつきますわね」
そう彼女とは、何故か因縁の相手であった。
彼女が中学の時に組んでいたバンド『CRYCHIC』。今は亡きバンドではあるが、俺も彼女に強引に入れられ、彼女達とは楽しくやっていたつもりだった。それがとある日に、彼女から解散しようと言ってきたのだ。
まぁ…それはいい。既に終わった話だから……もう一つの話であるピアノコンクールの話だが。
「祥子だって、3年連続銀賞も凄いけどな」
「3年連続金賞の貴方が言っても嬉しくはありませんわ!」
中学時代、彼女とは全国大会で競い合った中であった。
彼女が3年連続銀賞。これでも充分凄い結果である。
だが、俺が3年連続金賞を取ったものだから、彼女から凄く妬いていたのを実感していた。
「そうかいそうかいー」
「棒読み辞めてくださいませんか!」
彼女を揶揄うのは何故か楽しい。
幼馴染にちょっかいをかけられているから、そのストレスを彼女にぶつけてるだけか。
「それで、何の用?」
「甘木君を学校でお見掛けしまして」
「見られてたか…」
「何故、甘木君が羽丘に来たのですか?家から遠い羽丘に」
「俺にも色々と事情があるの…」
「そうでしたか……」
「祥子の親父さんは相変わらずなのか?」
「ええ…くそおやじって叫びたいくらいですわ」
「そっか……」
彼女の親父さんの件というのは、彼女のお父さんが地面師から168億円の詐欺被害に遭ってしまったという。
「何回も聞いて申し訳ないけど、おじいさんの方に付いて行かなくて良かったのか?俺が言うのもなんだけど」
「父の元で過ごすと決めたので私自身ですので」
「そうか…何か助けれる事があったらいつでも頼ってくれ」
俺がそう言うと、彼女は首を縦に振っていた。
そして、俺の家から立ち去っていく彼女の背中を優しく摩る。
バンドのみんなと関係を断っている中で、彼女とこうやって関係を持っているのは、俺と彼女の幼馴染くらいだろう。
「親父さんの事は大変だと思うが、あんまり気負い過ぎなよ」
「分かってますわ…」
それだけ言って、彼女は俺の前からゆっくりと進んでいく。
******************
「さきとゆうの居場所が知りたいって」
「またかよ……」
祥子と話した数日後、また知り合いから呼び出された。
今度は、洋子の幼馴染の
一緒に『CRYCHIC』をやって、彼女には懐かれていた。何故、懐かれたのかは分からない。
「そよか?気になってるのは」
「うん、今日も聞かれた。誤魔化してるけど」
「転校したもんな、祥子の奴。うちの学校に」
そよというのは、『CRYCHIC』のベースをやっていた長崎そよの事である。
因みに、目の前にいる睦も『CRYCHIC』の元バンドメンバーであった。
「うん…さきの家を教えてって」
「そっか……」
そよが、『CRYCHIC』に執着を持っているのは知っている。
あんな解散の仕方をすれば仕方ないといえば仕方ない。
「その内……俺の所にも来るかもな…」
「うん…さきとゆうの居場所は教えてないけど、時間の問題だと思う」
そよに追い詰められたら、睦は彼女に話してしまうだろう。
あの解散以降、俺はそよには会っていない。
「ゆうは」
「睦、どうした?」
「ゆうはキーボード楽しい?」
「うん。今はピアノに集中してるから弾いてないけど。キーボードは楽しかったよ」
「そっか」
睦とそう話をした数日後。
楽奈に呼び出された。理由は聞いてない。
「RiNGにギター弾きに行く」
「好きに行ったらいいんじゃないの?」
楽奈に俺はそう返した。
しかし、楽奈は納得していない表情を浮かべていた。
「ゆうにも付いてきてほしい」
「なんで?」
「最近、キーボード引いてる所を見てないから」
「弾いてるよ。前に比べたら弾いてないけど」
「面白くない」
面白い事は面白い、面白くないことは面白くないとはっきりと言う彼女。
ちょっとぐさっと来てしまった。
「面白くないって……」
「だって、今のゆう寂しそうだから」
「………」
楽奈には見抜かれていたか。
確かに、あいつらとバンドを組んでいた時は楽しかった思い出も多い。
それがスパッと抜け落ちた物だから、その分が穴となって開いてしまっていた。
「だから、行こ?」
「行って何をするの…」
「私と一緒にセッションする」
「キーボード弾けないけどいいのか?」
「そう言って上手い事は知ってるから」
そして、俺は部屋に置いてあったキーボードを持って、楽奈と一緒に向かったのだが……
「そよ………」
「優紀君……」
「えっ?そよさん、知り合いなの?」
そこに居たのは、元メンバーの長崎そよだった。
「楽奈…悪い…帰るわ」
「ゆう?」
「優紀君!待って!」
そよは、家に帰ろうとする俺の手を掴んできた。
「話がしたいの!」
「………分かった、話だけなら……いいよ」
主人公紹介
甘木優紀(あまきゆうき)君です。
楽奈と幼馴染。
担当楽器は、キーボードになります、一応ベースとギターを出来ます。
『CRYCHIC』解散後は、皆の前から姿を消した。連絡はしていた模様。
現時点では、祥子ちゃん派です。