納得は全てにおいて優先されるぜッ!! 作:Th
SBRのネタバレします、
赴任することになってしまったジャイロは勝手が違う世界に適応しようと本を読んでいた。唸るような描写が続き、のめり込むようにページを捲る。それが何時間と長引き、やっと本……漫画を置いた頃には昼食の時間となっていた。
おいおい、もうこんな時間じゃあねぇか、と呟きながらエレベーターを使うためにボタンを押す。
エレベーターは1階からここに上がってくる。今日は何を食べてやろうか。鼻歌を歌いながらシッテムの箱のAIであるアロナに決済の用意をしておけ、と頼む。すると、半透明になったアロナは俺の前に現れる。
「……先生、赴任してから何日、経過しました……?」
「ァァ!昼頃だから、きっと混んでいるぞ!」
「先生!……先生!!!」「……聞いてますよね。いいでしょう、先生がその気ならこちらにだって色々と手段がありますからね!謝るのなら今のうちですからね!」
と会話している内に、エレベーターはこの階層に辿り着く。ふぅ、と目を瞑りながら溜息をつき、入ろうとする。1歩踏み出そうとした時、胸に誰かが当たった感覚がする。
「おっとすまねぇ」
そういって通り抜けようとした。いや、実際通り抜けた。しかし、腕がガッツリと捕えられ、閉めるボタンを押すことができなかった。
軽食を取って、軽く水で喉を潤す。
「しっかしよぉ〜、俺にこんなことをさせんのも酷なもんだぜ。なぁアロナ……?」
タブレット越しに聞いているはずのAIは知らんぷりを決め込んだ。
「なぁ……おい、俺が悪かったからよォォ、これの使い方を教えてくれないか。」
一瞬二瞬の間にもこのAIはうんともすんとも言わずに沈黙を貫く。しかし、怒るに怒れなかった。自分が悪いのは明らかであるから。
「くそォォ……」と悶え、最新の注意を払って扱っていると、1件連絡が来ていることに気がつく。
「あぁっ?……なぁアロナ、……この依頼なんてどうよ」
そういってジャイロはそれをタップし、手紙の内容を大きく表示させる。
鉄球の回転は全てを解決する。それはジャイロの経験論であった。左のホルダーにある鉄球に指をかける。鉄球の冷たさと砂が間に入り込んでいるせいでザラザラとした感触だ。
回転のエネルギーを生み出す、その為にはあるものが必要だ。しかし、砂の世界にはそれがない。
「なぁ……そこのお前……お前!」
俺は遠く微かに見えた、気がする誰かに叫ぶ。この声は届いているのか、それはわからない。だが、叫んだ。しかし、その誰かはこちらから遠ざかっていく一方。
仕方ない、こいつを投げる。そう頭で考え、鉄球を取り出す。あの誰か、それを定義とし、この鉄球をそちらの方へ踏ん張り声をあげながら投擲する。砂へと沈むように着弾した鉄球は、少女の前に落ちる。そして回転をしながらこちらへと戻ってくる。
「?」
突然の飛来物に目を奪われた少女はUターンをした鉄の塊を目で追った。鉄球の軌道は砂と混ざっていたが、それには色があり、見失うことはなかった。そしてその軌道も終着点に向かう。
少女は気になった、とても、いやすごく。ロードバイクに鍵をかけ、少し見にくい場所に停める。
カバンを提げ、銃を抱えながらその人物の元に向かうと、カウボーイの帽子をかぶり、ゴーグルをかけ、こちらへと金色に光っている歯をみせる不審者がいた。
「た、助かったぜ、お嬢さん。いきなりで悪いんだが、水をくれないか。丁度切らしちまってよ」
「……ん……?」
彼女はカバンをガサゴソと探す。しかし、幾ら探しても見つかるのはお菓子の残骸と戦利品。あれ、そう呟き、思い返す。あぁそうだ、自転車に付けているままだった。
「ごめん、なかった。少し……ちょっと失礼するね」
シロコはそういって、上半身を手で持ち上げているジャイロの胸へ潜り込み、背負い込もうとする。
「……はぁ?
別にいらねぇよ……あぁでも肩は貸してくれないか……?」
「ん、いいよ」
火照った体と砂埃を着込んだ彼女らは自己紹介をしながら、歩いた。ここでジャイロは彼女こそが依頼を頼んできたアビドス生だと認識する。
次回、多分アビドス本校へと行く。
前回は自分でもびっくりな程に口語体で上手くやれたんですけどね……