音楽神の加護を持つ夫、美少女アイドル妻と共に芸能界を無双する 〜初心な妻を赤面させながらチートスキルで芸能界の頂点に立つ〜 作:のこのこ大王
電撃歌祭りは、大成功で幕を閉じた。
そしてその裏では、もっと大変なことになっていた。
『いのち』
この歌は、美結が電撃歌祭りで歌い始めたと同時に国際救済団体CCCの公式ホームページにミュージックビデオという形で投稿された。
事前に美結が歌った音声に実写の映像を加えたものであり、CCCにとってのイメージソング&ビデオとなる。
映像は、歌に合わせて様々な日々を生きる人々の映像が映し出されていた。
誰もが社会の歯車として扱われている。
それでも、そんな中でも自分達は生きている。
幸せを求めて、掴んだ幸せを守るために、そして今日よりも良い明日を目指して。
繰り返しの日々がどうしたというのだ。
そんな日々の中からでも、自分達は這い上がり、幸せをつかみ取れるんだ。
少しだけ見方を変えるだけで、灰色の日々は美しく彩られた世界に変わるはず。
だから恐れず歩き出そう。
そんな言葉を投げかけてくるかのような映像の数々に、見ていた人々は思わず口が開きっぱなしなことすら気付かず画面を見つめ続ける。
一人平均で3~4回ぐらいループして映像を見た後に、ハッとして高評価ボタンを押し、流れるように動画を拡散する。
これが世界中で起きたことで、動画の再生数はその日の夜に投稿されたにも関わらず、深夜には1000万再生を超えて更に爆発的に伸びていく。
次の日の朝には、既にニュースで取り上げられるほどの社会現象となっており、これには思わず総責任者の南雲も苦笑していた。
「ちょ、ちょっと!凄いことになってるわよっ!?」
朝一で電話をかけてきた橋本マネージャーの驚きの声で、俺は起きた。
妻のスマホにかかってきたのだが、彼女は夢の中だ。
だから俺が代わりに出たのだが……。
ひたすら興奮する橋本 恵を落ち着かせていると、彼女の仕事用スマホだけでなく、事務所にもひっきりなしに電話がかかってくる。
どれもこれも仕事のオファーだ。
あまりにも突然だったため、事務所は大忙し。
もちろん仕事の数が多すぎて全てを引き受ける訳にも行かないので、厳選しなければならない。
しかし俺は彼女に言った。
「今日は休みでしたよね?」
その一言で今日は美結が休みだったことを思い出したのか、あれだけ激しかった勢いがピタっと止まった。
かつて事務所からリソースを削られていた頃とは違い、今や仕事は大量にある。
頑張って働き過ぎて身体を壊しては意味がない。
だからこその休みだった。
電話を切ると、いつの間にか起きていた美結がこちらを見ていた。
「恵姉から?」
「昨日の反響が凄いってさ」
「そうなんだ」
そう言って俺が彼女のスマホを手渡すと、検索をかけてバズってることに驚き、そして嬉しそうに色々と見ていた。
そんな彼女に掛け布団を大きく広げて包むようにして抱きしめる。
彼女は愉しそうに『キャー』なんて言いながら笑っていた。
―――それから2人で朝から大人なスキンシップをしていると、もう昼過ぎになっていた。
俺は起き上がって厨房に行くと、サンドイッチとスープを作り始める。
そしてベッドの上の彼女に声をかけた。
すると彼女はヨロヨロと起き上がるとシャワーを浴びにいく。
彼女が出てきた頃に昼食は完成していた。
2人で食べる。
食べ終わると俺がシャワーを浴びに行き、彼女が皿洗いを行う。
その後、2人で車に乗って街に出かけた。
なかなか普段行けないショッピングを愉しみ、休みになったら行こうと約束していた行列が出来るケーキ屋に行く。
途中で何度か、彼女の正体がバレたが運良くマナーのあるファンばかりで大きな騒ぎになることはなかった。
まあ流石にサングラスやマスクだけでウチの嫁の可愛さ、美人さを隠すのは不可能だったようだ。
夜には予約してあった5つ星レストランで食事をしてから家に帰る。
その頃には互いに何も話さなくなっていた。
着替え終わってその日は2人とも早めにベッドに入る。
「……なんだか、恋人同士の頃に戻ったみたいだね」
俺に抱き着きながら寝る彼女が、ふとそんなことを言った。
「そうだな」
俺もあの頃のことを思い出していた。
物凄く強引な出会いから始まって、互いにぎこちなく話をする所から始まった……そんな2人の関係がよみがえる。
「……たまには、こういう日も悪くないな」
そう言って彼女を真剣なまなざしで見つめる。
彼女は不思議そうにこちらを見つめてくる。
そんな彼女が愛おしくて、俺はとても長い口づけを彼女の唇におとした。
―――その頃、二階堂エンターテインメントでは、1人のマネージャーが怒り狂っていた。
上層部から『橘 心愛』に関して盛大な罵声を浴びせられたからだ。
かなりのリソースを使って大々的に売り出しているものの、あまり上手くいかない。
見た目、歌唱力ともに抜群の逸材だ。
売れない方がどうかしている。
それはマネージャーも理解していた。
しかし問題はそこではない。
明らかな路線ミス。
しかもそれは上層部からの指示によるものだ。
『彼女はアイドル路線で売り出せ』
そう指示したのは確かに上層部である。
なのにそのミスマッチで期待しているような成果が上がらなければ現場のせいだと責任を押し付けてくる。
「アイドル路線に固執して失敗してるのは、どこの誰だよ!?」
叫んだ彼は思わず近くにあったゴミ箱を思いっきり蹴り飛ばした。