音楽神の加護を持つ夫、美少女アイドル妻と共に芸能界を無双する 〜初心な妻を赤面させながらチートスキルで芸能界の頂点に立つ〜 作:のこのこ大王
最強歌バトルの2回戦目の時間となった。
ステージに登場した柳 花蓮が場を盛り上げる。
再び盛り上がり始めたステージで、彼女が開始を宣言すると照明が落ちる。
すると今度は、照明よりも先に演出用のカラフルなライトが曲に合わせて動く。
そして照明がステージを照らすと同時に飛び出してきた人物が歌い始めた。
それは橘 心愛だった。
相変わらず甘酸っぱい乙女の恋心を歌う彼女。
好きな相手に振り向いて欲しいという少女の気持ちを歌う。
アナタのためなら何でもしてあげるという少女の可愛らしい言葉と彼女の仕草。
そうして少しづつではあるが、曲を聴いてる者達にも風景が見えてくる。
学校で、家で、ふと出会った街中で。
彼のために奮闘する少女。
少しでも自分を見て欲しい。
他の誰も見ないで欲しい。
そんな我儘で、それでいていじらしい少女の姿。
そう、彼女は決して歌が下手だという訳ではない。
むしろ上手い方なのだ。
ただ、単純に彼女の持つ資質というか方向性が違うというだけで……。
二階堂エンターテインメントは、そのあたりを理解せず、またこうして強引に対戦相手として彼女を番組に捻じ込んだ。
本来なら彼女は、どちらかと言えば挑戦者側だというのに……。
それでも彼女はアイドルとしての、可愛い系としての自分を最大限出そうと努力していた。
だからこそ、彼女にはファンが付いてそれなりに売れているのだ。
今回だってたったの31%しか相性度の無い歌を、本人の努力で52%まで引き上げている。
低数字ほど引き上がりやすいとはいえ、本当によくやってるなと拍手を送りたいほどだ。
俺は途中からモニターを見ずに準備を終えた嫁に声をかける。
今度は落ち着いているのか、冷静な返事が返ってきたので安堵した。
橘 心愛が歌い終わってステージを下りると美結は立ち上がる。
司会の柳 花蓮が場の熱を下げないようにしつつ、流れるようにMIYUの紹介をしてステージから降りた。
曲と共にステージの照明が付く。
そこには、フリルたっぷりのアイドル服を来た嫁の姿。
誰もがその姿に一瞬、フリーズする。
それは決して似合っていないという訳ではない。
むしろ似合い過ぎていて、そして彼女はドレス系が多くてこういう恰好はあまりしないため、誰もが驚いたのだ。
そして後ろの特大スクリーンに曲名が出る。
『戦え!愛のために!』
作詞:美樹
作曲:美樹
とても甘い音楽と共に、彼女がステージを動き回る。
そして歌い出すとスグに会場の人々が歌の世界に引き込まれた。
それは1人の少女の本音。
クラス一番のイケメンに恋をした少女の物語。
可愛いあの娘も、綺麗で美人なあの娘も、スタイルが良いあの娘も、みんなライバル。
私はどれをとっても1番になれない普通の娘。
だけどそれが彼を諦める理由になんてならない。
後悔するぐらいなら、当たって砕けた方がマシ。
相手が強いのならば、正面から戦わなければいい。
多少の嘘や、駆け引きぐらい当たり前。
どうしても欲しいあの人のためなら、私はいくらでも悪い娘になるわ。
でも悪いことをすればバチが当たる。
せっかくデートの約束を取り付けたのに、その日に限って風邪をひくなんて。
こうなったら泣きながら不貞寝するしかない。
そう思ってたら彼から電話があったの。
泣き晴らした目をしていることなんて忘れてビデオ通話に出た。
私のボロボロの姿に、彼は驚いて家まで様子を見に来てくれたの。
パジャマ姿でオシャレ1つ出来てないけど、彼が心配そうに甘やかしてくれる家デートも悪くない。
ふと彼が私のはだけたパジャマから見える胸の谷間を見て顔を赤くしている。
恥ずかしいけど、これはチャンスだ。
ここで決めてしまえば、周囲のあの娘達を出し抜ける。
例えバチが当たろうとも、私は彼のためなら悪い娘になるの。
ワザと身体を密着させ、ドキドキさせてあげる。
私を十分意識させてから、キスをすれば完璧ね。
これ以上ない雰囲気に、私の気分は高まる。
彼も私を見つめてくる。
そして―――いきなり帰って来たママのせいで、全てが台無しになっちゃったわ。
やはりバチは当たるのだと思ったけど、それでも後悔なんてしない。
いつでもどこでも、彼のためなら私は悪い娘にだってなってみせる。
他のライバル達に邪魔されてたまるか。
愛は奪い取るものだ。
そのためなら、どんなことでもしてみせる。
最後に彼を手に入れた人が勝者なのだから。
どんな強力なライバル達が居ても、それが理由で怯まない。
そんな理由で諦めない。
僅かでも希望があるのなら、私は私の全てで彼を振り向かせて見せる。
だからこそ―――さあ、今日も彼の元へと出かけよう。
―――彼の愛を奪い取るために
歌が終わると大歓声が巻き起こる。
『水野美結 × 戦え!愛のために!= 相性度77%』
80%に届かなかったものの、決して相性が悪いという訳ではない。
そしてこれで十分勝てると思ったからこそ、ラブソングにラブソングをぶつけたのだ。
こうすることで『真っ向勝負』をしていると印象付けることが出来る。
それはMIYUの知名度上げると共に実力を示すことも出来る。
立ち上げたばかりの事務所の宣伝にも大いに役立つ。
ネットでも自らの恋愛話を中心に盛り上がっていた。
その盛り上がりは、心愛の時とは比べ物にならなかった。
―――結果は、MIYUの勝利
控室に帰ってきた美結を出迎える。
一方その頃。
同じく控室に戻った心愛は、ため息を吐いた。
そして誰にも聞こえない声でつぶやく。
「もう我慢の限界。契約更新拒否して、移籍しよっと」
こうして二階堂エンターテインメントは、強引な手法の末に優秀な人間を手放す結果となったことを……まだ知らない。