音楽神の加護を持つ夫、美少女アイドル妻と共に芸能界を無双する 〜初心な妻を赤面させながらチートスキルで芸能界の頂点に立つ〜 作:のこのこ大王
最強歌バトルの次の日。
放送の内容などがトレンド入りをしている最中。
さっそく3連勝の権利を行使して、早朝のニュース番組から深夜のバラエティまで全ての生放送にゲスト出演するという超強行軍を行った。
こういうものは、話題性がある時に一気にやるものだからな。
おかげで翌日のまだ太陽が昇る前に帰宅した瞬間、美結は真っ白に燃え尽きて人生に悟りを開いたプレーリードッグと化していた。
まあおかげで仕事も選べるほど増えた。
事務所もジワジワと人を増やしている。
そろそろ新たにアーティストなり演者なりの新人を募集しても良いかも?と思った頃だった。
ふと俺宛てというか『美樹』宛てに電話が何度か鳴った。
相手と電話越しに何度か相談して、結局事務所に来て貰う。
そして次の日の事務所。
一番広い場所ということで会議室を用意した。
美結と橋本マネージャーは、ただひたすらに驚きの表情をしている。
高藤 瑠璃なんてまともに椅子に座ることすら拒絶して、椅子に隠れようとしていた。
そんな様子が面白いのか、椅子に座っているメンバーは、面白そうに笑ったり苦笑したりと様々な反応をしている。
「そんなに緊張しなくても良いのに~」
気軽に声をかけたのは、二階堂エンターテインメントの橘 心愛。
「そうそう、気楽に行こうよ」
呑気そうに声をかけたのは、海浜エンターテインメントの松島 大門。
「松島さんにそう言われてた方が緊張しちゃいますよ」
少し非難めいた声で話しかけたのは、同じく海浜エンターテインメントの柊 名雪。
心愛はともかく、いきなり海浜エンターテインメントの有名人2人が揃って現れれば驚きもするか。
しかも3人とも自分の専属だったマネージャーまで引き連れている。
美結もまるで相手との距離感を調べるために首を上下左右に激しく動かすコキンメフクロウのように、その場に居るメンバーの顔をぐるぐると確認していた。
俺はというと、全員にお茶を出していた。
そのあまりにも呑気な行動に、橋本マネージャーが肘で一撃入れてきて『説明してよ!』と小声で怒り出している。
あまりからかうと後が怖いので、俺は用意していた書類を心愛・大門・名雪の3人と橋本マネージャーに渡す。
マネージャーに渡したのは『こういう書類を3人に渡しましたよ』と確認させるためだ。
その書類を見た橋本マネージャーは思わず声を上げて立ち上がった。
それを見て隣の美結もその書類を見て思わず手で口を覆う。
『専属マネジメント契約書』
これを渡す意味を理解したのだろう。
彼らも中身を確認してから、後ろに立つ自分のマネージャーに手渡し確認させていた。
「それにしても、えらく緩い契約だね」
大門の言葉に名雪が続く。
「そうね、他の事務所ではまずこんな契約あり得ないわ」
その言葉に不満そうな声で心愛が口を開く。
「ウチの連中に叩きつけてやりたいレベルですよ」
その言葉を聞いて俺も苦笑した。
確かに少し自由過ぎるし事務所側にとっては損しかねないものだ。
だが、契約している連中が離れたいと思うような事務所の方がどうかと思う。
それこそ十分なメリットを用意すれば、早々に離れたいなんて思わないはずだからだ。
「それにしても心愛さんは前から色々聞いていたのでわかりますが……お2人はどうして?」
橋本マネージャーがそう口にした。
まあそりゃそうだ。
いきなり海浜エンターテインメントの2人が契約にやってくるなど、本来あり得ない。
むしろ2人のレベルなら海浜エンターテインメント側が、契約終了など認める訳がないからだ。
必死になって引き留めようとするだろう。
継続できるなら、何なら独立して個人事務所の立ち上げだって認めるはずだからだ。
「そりゃもちろん、これのためさ」
そう言って大門が1枚の書類を差し出してくる。
それを見た心愛と名雪も後ろのマネージャー合図をして書類を取り出し、同じく差し出してきた。
思わず俺は苦笑する。
書類を見た美結と橋本マネージャーは一度大きく驚いたが、それでも心のどこかで納得したのか、そこまで大きく騒がなかった。
「ボク達を快く受け入れてくれたキミ達を信用していない訳じゃない……だけど、こういうことはちゃんとしておかないと後々揉めることになるからさぁ」
少しおどけながらそう言う大門に、心愛と名雪も軽く頷く。
3人が出してきた書類は『美樹が楽曲をちゃんと提供すること』を明記した書類だ。
そう―――3人がウチに移籍する理由は、たった1つ。
『美樹による自分用の楽曲提供』である。
それを聞いて美結と橋本マネージャーは、書類をのんびりを確認している和樹を見て、その実力や影響力といった力を感じて改めて敬意を抱いた。
俺は苦笑しながらも差し出された書類にサインをする。
するとそれを見た3人が、こちらの契約書にサインをした。
これで3人は、水野エンターテインメントの人間になったということだ。
「では、第一弾ということで、これをお渡ししますね」
そう言って俺は、3人だけでなく瑠璃の前にも紙を置く。
誰もがその紙が何なのかと不思議そうに見たが、スグにそれが何であるかに気づくと、それぞれが紙を手に取って中身を確認する。
それからしばらくの沈黙が続く。
最初に口を開いたのは、意外にも瑠璃だった。
「……え?これ、私の曲?」
呆然としながらそう口にする彼女に苦笑しながら答える。
「キミもそろそろデビューを考えなきゃダメだからね」
俺の言葉が聞こえているのか、それとも返事をする暇さえないのか、黙ったまま渡した楽譜を見ている。
すると今度は、心愛が急に声をあげた。
「これ!ホントに私が歌って良いんですか!?」
その台詞に返事をしようと思った瞬間―――
「ハハハッ!そうだよ!これだよ!こういうのが欲しかったんだ!」
突如として大門までもが大声を上げながらその場に立ち上がり、興奮しながら楽譜を見ていた。
そして名雪はと言えば―――
―――その場で静かに泣いていた
あまりのカオスな状況に俺だけでなく美結と橋本マネージャーまでもが、どうしたものかとその場でこれらが落ち着くのを待つしかなかった。
それからしばらくして。
ようやく冷静になった4人が、それぞれ恥ずかしそうに謝罪してきた。
それを笑って返す。
「まさかこんなにも早く、曲を貰えるとは思わなかったよ」
大門の言葉に残りの3人が頷いて同意の意思を示す。
それに対して俺も返事をする。
「そりゃ特に海浜のお2人は、わざわざ違約金まで払ってきて貰ってますからね……こちらもそれなりの誠意を見せないと」
そう、ちょうど契約満了だった心愛とは違い、大門と名雪は契約途中にも関わらず巨額な違約金を支払ってまで契約解除をしたのだ。
そうまでして楽曲提供を受けたいという2人の想いに応えない訳にはいかない。
瑠璃に関してもまだまだトレーニングは必要ではあるものの、それでもデビューに問題ない程度にはなった。
何事も完璧とは行かないし、何よりデビューと共に様々な経験を積みながら成長していくというのも悪くはない。
こうして事務所も一気に戦力を得て、今後の目途も立った。
まさにここからだ!という状態に満足していた俺だったが……。
一通りの話し合いが終わると、さっそく貰った曲を試したいと4人がスタジオに殺到して場所の取り合いとなった。
何とか時間による交代制となったが、今後を考えれば倉庫代わりに使っている場所もスタジオにすべきか?
いや……近場でどこかスタジオ専門みたいな建物を用意した方が良いのか?
という感じで、急にビルを再び改修する必要があるのでは?という問題に直面してしまった。
「おかしいな……普通この程度の規模ならこれぐらいで十分のはずなんだが……」
何事も予想通りにはいかないものだなと、ため息を吐いた。
そしてその日の夜は、ストレス発散と称してひたすら美結に抱き着いて甘え続ける。
彼女はそんな俺が珍しいのか、何故か自らを『お姉ちゃん』と言い出し、俺を弟と称して甘やかす遊びを嬉しそうに始めていた。