音楽神の加護を持つ夫、美少女アイドル妻と共に芸能界を無双する 〜初心な妻を赤面させながらチートスキルで芸能界の頂点に立つ〜 作:のこのこ大王
俺は思わず『あっ』と声をあげてしまう。
屋上のアレをそのままにしてしまっていたが、まさか彼女に見つかってしまうとは。
滅多にあそこには行かない癖に何で今日は行ったんだ?
なんて考えながらもどうしたものかと考える。
目の前で頬を思いっきり膨らまして、まるで餌を大量に詰め込んだリスのようになっている可愛い女性をどう宥めたものかと。
私の最愛の妻―――『水野(みずの) 美結(みゆ)』は、それはもう全身で怒ってますよという雰囲気を出している。
それがまるで本当に小動物が、健気に威嚇しているように見えてしまい、思わずプッと笑いをこらえられずに出てしまう。
しまったと思った時には遅かった。
彼女はそれが自分を馬鹿にされたと感じたのか、更に顔を真っ赤にしながら声をあげる。
「これは何っ!?」
これが単なる一般女性なら『キミのための詩を考えていたのさ』とか『キミのために歌を作っていたんだ』とでも言えば誤魔化せただろう。
だが彼女は残念ながらプロの歌い手である。
書いてあるものが『超一流の作品』であると気付いているはずだ。
そう、俺には『音楽神の加護』というチート能力がある。
何故か生まれた時から持っていて、ありとあらゆる楽器が演奏出来て作詞作曲も可能。
何なら歌い手と歌の相性度なども見えるし、これから先の未来で登場する曲や、それがどれぐらい人気になるのかも、このチート能力は教えてくれる。
つまり音楽の世界で俺より優れているのもなど居ない。
あらゆるジャンルで世界一の作詞作曲が出来て未来の音楽も知っていて、歌い手との相性でどれぐらい人気になるのかもわかるのだ。
だからこそ、最初はこの能力で人生イージーモードで生きようと思っていた。
しかしこの力のあまりの強力さ、そして努力無しで発動してしまうという状態に次第に能力そのものがどうでも良くなっていく。
そんな時に出会ったのが今の妻だ。
彼女の可愛さと音楽好きだという情熱に、彼女を支える人生も悪くないと思った。
決して音楽が嫌いなわけではない。
なので、小遣い稼ぎにとネットで気が向いた時に曲をあげる。
そうして自力でそこそこ稼いで妻へプレゼントを買う。
彼女には『10万円程度』と言ってプレゼントした、彼女が今もつけているネックレスも実は『100万円超え』だったりする。
まあそもそもの話、独身時代に世界中で仕事をして馬鹿みたいに稼いだので、基本的にお金に困っていない。
おかげで一時期、音楽への情熱を失いかけた訳だが。
「何でこんなことが出来るって隠してたの!?」
考え事にふけっていると、彼女が更に『冬支度のために餌を頬袋いっぱいに詰め込んだリス』になり、顔を真っ赤にしていた。
あまりの可愛さに思わず駆け寄って抱きしめたくなるが、それを今すると流石に結構痛いパンチが胸に飛んでくる可能性が高い。
俺は諦めて軽く説明した。
元々それなりに音楽に触れてきた人生だった。
そして専業主夫だけだと時間が空くので、スキマバイトのつもりでネットに曲をあげていた。
その歌詞もその1つだ―――と。
俺の話を聞いて少しは落ち着いた妻だったが、それでも何か納得いかないという顔でこちらを睨み続ける。
まるでレッサーパンダが二本足で立ち上がって両手を広げて威嚇してくるぐらいの可愛さしかない姿ではあるが、それを口にすると彼女が2~3日は口をきいてくれなくなるだろう。
「じゃあアカウントは?」
急にそんなことを言い出した妻に、これ以上の隠し事は無理だと判断し、諦めて投稿アカウントを差し出した。
それを見た妻は、面白いほどビックリした顔をした。
妻にスマホを取られているため、その顔を写真に撮れなかったのが残念だった。
『―――美樹(みき)』
彼女は驚きながら口にする。
たった2曲しかアップロードされていないにも関わらず、総再生数が数十億。
いいねの数やコメントの数など、数えるのも恐ろしいほど。
そう言えば聞いたことがあった。
『美樹の曲にハズレなし』
『美樹の曲は100%バズる』
『美樹の曲は国内だけでなく海外事務所からも声がかかるほど』
そんな数々の噂。
まさにその名は今、ネット界で神と称えられている謎の天才作家の名前だった。