音楽神の加護を持つ夫、美少女アイドル妻と共に芸能界を無双する 〜初心な妻を赤面させながらチートスキルで芸能界の頂点に立つ〜 作:のこのこ大王
次の日。
ネットでは、とある話題で盛り上がっていた。
ネットのニュース速報もその話題で持ち切りだ。
『衝撃! 海浜エンターテインメントの柊 名雪が突然の契約解除!』
『速報! あの「若大将」が突然の事務所を退所! 独立か?』
『二階堂エンターテインメントの橘 心愛が契約更新せず退所へ!』
そりゃそうだろう。
心愛でもニュースになりかねないのに、あの2人は完全に人気がある存在だ。
その2人が唐突に事務所を辞めたとなれば、誰もが驚くだろう。
何か揉め事があったのか?
独立するのか?
と、様々な憶測が飛び交っていた。
まあ真実は移籍なんだけども。
どうせ放置していてもスグにわかることなので、特に何の反応もしていない。
何故なら、そろそろ年末のアレが来るからだ。
招待状というか、番組へのオファーが来た時は正直驚いた。
まだ立ち上げ1年も経過していない事務所に対して、この番組がオファーをしてくることなどないからだ。
本来ならもっと大きな事務所ばかりに声をかけるはず。
だが色々と調べて、聞いて、ようやく納得出来た。
―――年末事務所対抗歌合戦
年末に行われる一番大きな歌番組だ。
年末の夜にライブ形式で行われるテレビ番組であり、ネットの同時放送もしている。
事務所同士が対決と称して所属タレントを歌わせ、勝敗を競う。
かつては脅威の視聴率75%を誇った番組だったが、勝敗を左右する審査員のあからさまな不正じみた投票や、事務所の圧力でもあるかのような試合結果。
何よりわざとらしく接戦を演じたりと、あまりのやらせに近年では叩かれ過ぎて視聴率を大幅に落として完全に打ち切り寸前まで追い込まれていた。
ここで局は、大きな決断を下した。
番組の大幅改善である。
元々居たプロデューサーは、大手事務所などとの繋がりが強すぎたので思い切って更迭。
最近で一番勢いに乗って視聴率を稼ぎだしていた電撃歌祭りの和田プロデューサーに白羽の矢を立てた。
最初は渋っていた彼も『視聴率回復のためなら好きにしていい』という言葉で承諾。
不正の温床になっていた審査員制度を廃止し、純粋に会場票とネット投票のみで勝敗を決めるとした。
更にトーナメント制度を採用していた試合を、指名制度にしてあえて偏った戦いが起きても構わないとする。
こうすることで、視聴者に芸能界というものがどういうものかを見せる。
そうすれば例え大手事務所でも容赦なく叩かれることになるため、小細工など出来なくなるからだ。
そして何年も司会をしていたアイドルグループを降板させ、安定している柳 花蓮を起用した。
自分の個人事務所でそれを聞いた柳 花蓮は、飛び跳ねて喜んだのは言うまでもない。
彼女にとっても大きな仕事が入るほど、他の仕事に繋がるからだ。
一方、俺としてはあまり面白くはなかった。
橋本マネージャーを中心に営業のチームからは散々聞かされていたからだ。
「三大と関連の深い所は、全て難色を示してくる」
つまり
二階堂エンターテインメント
海浜エンターテインメント
栄光エンターテインメント
の大手3社と繋がりが深いスポンサーなり番組なりは、軒並み反応が悪いらしい。
それは明確な嫌がらせとも言えた。
逆を言えば、それだけウチを警戒しているとも言えるが。
そう考えれば思わずクスっと笑いが出てしまう。
たった1年も経過していない出来立ての事務所を、業界大手の3社がそろって嫌がらせするほど警戒してるのだから。
そしてそんな3社の独壇場というか、もっとも関係深かった『年末事務所対抗歌合戦』からのオファー。
いくら和田プロデューサーになって大幅改革されたとはいえ、そう簡単に全ての影響力が消えるとも思わない。
と考えれば、答えは1つしかない。
「ここで確実に叩きたいってところか」
もう少し地味な嫌がらせをすると思っていたが、まさか真っ向勝負を選んでくるとはな。
それともサクラでも大量に雇って票の水増しでもする気なのか。
まあ別に構わないさ。
こっちは予想外に戦力が揃った。
正面からの殴り合いだって大歓迎だ。
ウチに喧嘩を売ればどうなるのかを、そろそろ示すのは良い事である。
気合を入れて橋本マネージャーとの相談をしようと思って探していると―――
コタツに完全に入り込み、頭だけ出しているコタツカメ……いや俺の嫁が居た。
彼女にマネージャーの居場所を聞くと、外に出ているらしい。
答えると同時にミカンを要求する彼女に苦笑しながら、彼女の元でしゃがみ込んでコタツの上のミカンを手に取る。
そして皮をむいて彼女に差し出すと、口を開けて待ち構えていた。
気分は完全に雛に餌を与える親鳥である。
1口づつ彼女のミカンを食べさせると嬉しそうに食べていた。
彼女を見ていると先ほどまでの大手事務所への敵意もやってやろうという気合も見事に消え去ってしまった。
本当に、困ったお姫様だ―――なんて思いながらミカンを全て食べさせると手を拭いてから頭を撫でた。