音楽神の加護を持つ夫、美少女アイドル妻と共に芸能界を無双する 〜初心な妻を赤面させながらチートスキルで芸能界の頂点に立つ〜   作:のこのこ大王

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第23話

 

 

 

 

 ステージに立つ橘 心愛は、美しいドレス姿だった。

 いつものアイドル衣装ではない彼女のそんな姿に、観客達は呆然としている。

 そんな観客達を気にしてないとばかりに合図を出す。

 曲は始まると一気に歌の世界が広がっていく。

 

 

 さあ、目を覚まして

 今こそ光の先を目指そう

 キミと歩いたいくつもの幸福の記憶と共に

 

 例えこれが運命でも

 例えこれが宿命でも

 前に進むことを決して諦めないで

 

 私が必ず守って見せる

 キミの笑顔を

 キミの夢を

 キミのためなら強くなれる

 

 もし泣くことがあったなら

 必ずキミの傍に私は居るから

 キミの想いを私だけに聴かせて欲しい

 

 だから共に歩こう

 キミの時間は私の時間でもある

 あの日の空に誓ったはずでしょ?

 私達は比翼連理

 

 止まない雨の日も

 痛みを伴う日も

 

 キミが願うなら 

 キミが求めるのなら

 私が道を作ってみせる

 

 例え運命が立ち塞がろうとも

 例え宿命が二人を引き裂こうとしても

 私は命が燃え尽きるその瞬間まで

 決してキミの手を離さない

 

 だからキミは目を閉じて

 その輝かしい夢だけを見て欲しい

 私はキミの笑顔を、その幸せを願っているのだから

 

 でもそう思いながら、ふと思ってしまうことがある

 出来ることなら、私にキミのそんな夢すら預けて欲しいと

 だってそうすれば

 

 ―――私はキミと永遠に共に歩けるのだから

 

 

 歌が終わる。

 会場が一瞬静寂に包まれた。

 そして数秒してから、一気に大歓声が響き渡った。

 

 

『キミと共に』

 

 作詞:美樹

 作曲:美樹

 

 

 相性度85%だったこの曲を、本番で彼女は91%にまで上げてきた。

 彼女はかつてアイドル路線だった。

 それが完全に間違っているということではない。

 間違っていたのは、彼女に歌わせる曲というか方向性だ。

 

 彼女を『恋人に甘え、寄り添うだけの女性』としてのイメージで売り出したのが悪い。

 彼女は決してそんな女性ではない。

 

『相手に寄り添い、共に歩み、時には励まし、守り、導く』

 

 そういう女性像が、ぴったりなのだ。

 だからこそ激甘ソングを歌わせるべきではない。

 ちゃんと強さを持った女性としての一面をしっかり入れた歌であるべきだった。

 

 特にネットの反応は凄かった。

 ファン達が『神曲だ!』とか『ようやく彼女の代表曲が出来た!』など、とても興奮していた。

 

 この光景を控室で見ていた栄光エンターテインメントの次期エースだった女性は、お腹を抱えて大爆笑していた。

 一通り笑った後、自分のマネージャーに言った。

 

「事務所に言っておいて。今日、私に恥をかかせたこと―――覚えておくからって」

 

 いつの間にか真剣な顔つきになっていた彼女は、そう言うと立ち上がって帰ってしまった。

 呆然としていたマネージャーは、慌てて彼女の後を追う。

 その手にあるスマホには、事務所の番号が表示されていた。

 

 

 その頃、ステージでは柳 花蓮がノリに乗っていた。

 

 馬鹿みたいな余計な指示は飛んでこない。

 空気を読まない馬鹿な出演者は居ない。

 トラブルも一切ない。

 そして視聴率は、下がるどころかどんどん上昇中。

 1試合ごとにトレンド入りするワードが増えていく。

 今やもうこの番組の話題で溢れかえっている。

 

 そんな番組を仕切っているのは自分だ。

 これほど気分良く仕事が出来たことなど、本当に久しぶりである。

 

 テンション高く次の試合へと進行する。

 

「次は、海浜エンターテインメントの攻撃です!」

 

 そして海浜が選んだ先で、会場は歓声が上がったが、同時に困惑する声も混ざり始めた。

 何故ならまた攻撃先が水野エンターテインメントだったからだ。

 控室でこれを見ていた俺からすれば、まあそうだろうなって程度でしかないが。

 

 ステージに現れたのは、烏丸(からすま) 悠馬(ゆうま)だ。

 海浜エンターテインメント所属の俳優であり、『次期若大将』と呼ばれている人物でもある。

 歌が上手いだけでなく、芸術にもセンスがあり、色々な分野で活躍するマルチタレントだ。

 まだ30代前半と若く、今後間違いなく国を代表する1人になると言われていた。

 

 そんな彼が出てきたのだ。

 海浜エンターテインメントの気合がわかる。

 観客やネット民達も大騒ぎだ。

 まさか彼が出てくるとは思ってなかったのだろう。

 

 彼は優雅に立つと合図を送る。

 すると曲が流れ始めた。

 歌い始めると歌の世界が見えてきた。

 

 

 樹海をひたすら漂う

 私は、揺れる小舟

 彷徨える魂となったように

 

 時には枝葉から落ちる水滴を見つめながら

 蜘蛛の糸を避けるように飛ぶ、あの蝶のように

 

 残酷な風が吹こうとも

 激しい雷雨が私を襲おうとも

 私は、揺れる小舟でしかない

 

 そんな私が沈まないのは

 譲れない想いがあるからだ

 例え灼熱の砂丘を乗り越えようとも

 極寒の大地を歩くことになろうとも

 

 希望を胸に私は今日を生きる

 

 もし全てを失ったとしても

 私は決して諦めることはない

 

 ―――また、最初から始めればいいのだから

 

 

 歌が終わると大歓声が巻き起こった。

 相性値も77%と、かなり高い。

 流石は海浜エンターテインメントを代表して出てきた人間だ。

 しかしこうでなければ面白くない。

 こうした才能に正面から勝利することに意味がある。

 

 そう思っていた時だった。

 気づけば松島 大門が部屋を出ていこうとしていた。

 思わず声をかけると―――

 

「悪いね、もう待ち切れないんだよ」

 

 笑顔でそう言うと、さっさとステージへと向かっていった。

 

 そしてステージに向かう大門は、丁度ステージから降りてきた烏丸 悠馬に出会った。

 すると悠馬は、物凄く驚いた表情をしながら声をかけてきた。

 

「え? ちょ!? せ、先輩!?」

 

 酷く驚いて焦る相手に大門は、何気なく答える。

 

「やあ、悠馬くん。相変わらず良い声で歌うねぇ」

 

「は、はい。ありがとうございます……ってそうじゃなくてですね!?」

 

 彼は必死に落ち着こうとしながら、一番大事なことを聞かなければと言葉を続ける。

 

「先輩、独立したんじゃなかったんですか?」

 

「いやいや、そんな面倒なことしないよ」

 

 そう言われて、悠馬はここで重要なことに今更気づいた。

 

「……水野エンターテインメントに入ったんですか?」

 

「ああ、そうだよ。色々思うところがあってねぇ」

 

 まるで今日の夕食のことでも話すかのように軽い口調でそんな話をする憧れの人に、悠馬は呆然としてしまう。

 そんな彼を見て、大門は軽く手を振りながらすれ違いざまに言葉をかける。

 

「今日はお祭りみたいなものさ。愉しもうじゃないか」

 

 見たことが無いほど上機嫌な憧れの人を見送った悠馬だったが、ふと思ったことが口から零れた。

 

「―――先輩が対戦相手なら俺、勝てる訳ないじゃん」

 

 その言葉は、これ以上ないほど今の彼の心情を表現していた。

 

 

 

 

 

 

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