音楽神の加護を持つ夫、美少女アイドル妻と共に芸能界を無双する 〜初心な妻を赤面させながらチートスキルで芸能界の頂点に立つ〜 作:のこのこ大王
「―――美樹」
彼女は驚きながら口にする。
たった2曲しかアップロードされていないにも関わらず、総再生数が数十億。
噂に聞く謎の天才作家。
それが、目の前の夫だったなんて……。
「いや~、ちょっとしたバイト感覚で暇な時にちょっとね」
まるでちょっと散歩のついでにみたいな軽い感じで言う夫に、理解が追いつかない。
自分で作詞作曲したことがあるからこそわかる。
そんなに簡単ではないのだ。
なのに夫は、たったの2曲でネットを震撼させ、堂々と神作家として君臨している。
「あ、ちなみに『美樹』ってのは、キミの美結の美に俺の和樹の樹を合わせたものなんだ」
夫の抱えていた秘密の大きさに衝撃を受けている時に、さらっと飛び出した惚気に思わず耳が真っ赤になる。
そして照れているのを誤魔化すように夫の胸めがけて連続パンチを繰り出す。
一方、そんな嫁からの攻撃を苦笑しながら受け止めていた俺は、突然浮かび上がったチートスキル【音楽神の加護】を確認する。
『水野美結 × 新曲【タイトル未定】= 相性度80%』
俺は内心で驚いた。
―――相性度80%。
それは、歌手が一生に一度出会えるかどうかの『代表曲』がそれぐらいの数値だからだ。
普通の曲というか相性だと50%~60%ぐらいである。
80%超えなど、それこそ奇跡であり、世代を超えた名曲と呼ばれる数曲のみだ。
まあ俺は、それすらも調整することが出来る完全にぶっ壊れなスキルを持っているが。
「そんなに気に入ったなら、今日の配信で歌ってみればいいじゃないか」
その後も何度も歌詞を眺めて目を輝かせている妻を見て、思わず苦笑しながらそう言う。
すると両手をブンブンと大きく振って『私には無理』と言い出す。
「今からそれの曲を作るから、ちょっと待ってて」
こういう時は強引に行く方がいい。
後ろから妻の可愛らしい抗議の声が聞こえてくるが、無視をして自室へと行く。
そして紙とペンを取り出すと机に向かって書き始める。
しばらくして、妻が夕食の時間だと言ってドアをノックしてきた。
もうそんな時間かと思いながらも完成した楽譜を手にしてリビングに移動する。
彼女と食事をしながら曲が出来たと言うと、そのあまりの速さに彼女は驚いていた。
呆然と口をポカンとあけて驚く彼女の姿があまりにも面白くて、スマホで写真を撮ると彼女は途端に顔を真っ赤にしてスマホを奪おうとしてきた。
こんなに面白い写真を消させるわけにはいかないと、2人で笑い合いながらスマホの取り合いをした。
夕食後、食器等を片付けると配信部屋にしている防音室を借りて家にある楽器を使って録音を開始する。
その後、彼女に歌い方の指導を少しすると彼女もやる気を出して練習を開始した。
それから数時間後、満を持して歌配信を開始した美結。
ネットはスグに騒然とした。
彼女の清純な雰囲気に澄んだ声。
そして聞いていたリスナー達の脳裏に現れたのは、雲一つない快晴の空。
そこに1つの紙飛行機が、ゆっくりと、しかし決して落ちることなく飛び続けている。
まるで自分達の駆け抜けた青春のように。
リスナー達は、ふっと思い出す。
気の合う仲間達とバカなことをやっていた日々。
気になる異性に声をかける勇気も無く、ひたすら目で追っていたあの日。
部活動に全てをかけてひたすら時間を惜しんだ記憶。
とある日の夕暮れに、好きな人と下校した、あの甘く切ない時間。
彼女が歌い終える頃、リスナー達は画面を呆然と見ながら泣いていた。
過ぎ去ってしまった青春を思い出して。
もう後戻りできないあの日を思って。
あの時こうしていればという後悔と共に。
―――その日、ネットは空前の騒動となり、彼女の歌の切り抜きはトレンドを独占し、そのあまりの熱狂ぶりについに地上波のTVまでもが、その情報に触れるまでになった。