音楽神の加護を持つ夫、美少女アイドル妻と共に芸能界を無双する 〜初心な妻を赤面させながらチートスキルで芸能界の頂点に立つ〜 作:のこのこ大王
『あの日の空』
そう名付けられた曲は、恐ろしいほどの再生数を叩き出す。
美樹の新曲というだけでなく、美結の歌声も評価された。
おかげで既に動画は300万回再生を突破し、彼女のアカウントも登録者数が200万人近くも増えた。
このあまりの数字に彼女は3分ほど完全にフリーズしたほどだ。
更にこの快挙に朝から妻のマネージャーもやってきて彼女を抱きしめて祝福した。
彼女の名前は『橋本(はしもと) 恵(めぐみ)』
美結の専属マネージャーであり、25歳という年齢もあって彼女とは姉妹のように仲が良い。
肩にかかるぐらいのセミショートで仕事が出来るキャリアウーマンという見た目をしている。
そして話の流れで彼女にも盛大に俺が美樹だということがバレた。
だが、そこから彼女達は俺の目の前でコソコソと相談をし、1つの結論を出す。
「独立しようと思うの」
まるでウサギのように俺の胸に飛び込んで収まった彼女が、俺を見上げながらウルウルとした瞳で『手伝ってくれるよね?』と無言のアピールをしてくる。
マネージャーの恵も『まさか断るなんて言わないよね?』と無言の圧をかけてきた。
俺は少し考えてから、盛大なため息を吐く。
この可愛い妻のおねだりを断れる男が居るだろうか。
「仕方がないなぁ」
そういうと2人は声をあげて喜んだ。
それから数日後。
彼女が所属する芸能事務所では、ようやく彼女に関しての会議が行われていた。
本来なら彼女がバズったその日にやるべきなのに、彼女の担当の上司が仕事をサボっていたのだ。
おかげで事務所は彼女が自分の所の所属であり、あの美樹に楽曲提供されて盛大にバズったことを正確に把握するのに時間を要してしまったのだ。
「このバカ者が!」
アイドルや歌手部門をまとめる総責任者が机を思いっきり叩きながら怒鳴った。
それに担当者がビクッとしながら震えて謝罪を繰り返す。
こういった流行や話題性というのは、一瞬である。
その一瞬を上手く利用し、乗ることで大きな効果を生み出すことが出来る。
そうした機会を損失したのだ。
「数千万は下らない損失だぞ!」
せっかくの無料の宣伝効果を数日間も逃したのだ。
まったくもって話しにならない。
「今すぐ、彼女へのリソースを増やすぞ!少なくともトップアイドル並みだ!」
そう宣言した直後、明らかに顔を青ざめた担当の顔を見て、思わず確認する。
「どうした?何か問題があるのか?」
その言葉に何度も頭を悩ませた担当だが、今誤魔化してもスグにバレるだろう。
だからこそ言うしかなかった。
「彼女は……その、あの……た、退職しました」
その言葉に総責任者は『は?』と間抜けな声を出した。
しかも退職した理由が『リソースを削られ続けて自由が無いから』だと知ると、手元にあったまだ湯気が立つお茶の入った湯飲みを、思わず担当者に投げつけてた。
そう……全ては遅すぎたのだ。
逃がした魚は、あまりにも大きかった。
そんなことがあったと知らず、彼女達は事務所を立ち上げ、バズった歌に関しては宣伝費代わりとして無料公開を行った。
それが更に話題を呼び、事務所は―――『水野エンターテインメント』は、最高のスタートを切ることが出来た。