音楽神の加護を持つ夫、美少女アイドル妻と共に芸能界を無双する 〜初心な妻を赤面させながらチートスキルで芸能界の頂点に立つ〜 作:のこのこ大王
「それじゃあ、今日はここまで」
まだ終わらないで欲しいという大量のコメントに苦笑しつつ、美結は配信を終了した。
夫の曲を歌ってからというもの、物凄い数の登録者数となり、こうした雑談ライブ配信ですら今までの数倍の視聴者数となっている。
それ自体は嬉しいが、ネットでバズったというだけでスグに独立したての事務所に仕事がやってくるわけではない。
まあ、色々と問い合わせは増えたらしいけど。
ため息を吐きながら配信機材を片付けていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
返事をすると彼が入ってくる。
「お疲れ様」
そう言いながら白湯を持ってきてくれた。
「何だか今日は疲れちゃったわ」
白湯を飲みながらそう言うと夫は、少し申し訳なさそうに言った。
「……ごめんね。こうなるとは思わなかったんだよ」
「アナタのせいではないわ」
あの歌の後、配信では視聴者が増えた一方、歌配信を望む声が日々多くなっていた。
『あの日の空が聞きたい』
確かにあの歌のおかげで注目度が上がり、登録者も爆発的に増えたのは事実。
けど、だからと言ってそればかりというのも困る。
夫も恵姉も気にせず自由にやれと言ってくれるが、あまりにも多くなってきた声を無視し続けることも難しい。
別に歌うことそのものは構わない。
しかし夫が『一度でも要求に応じたという姿勢を見せたら際限が無くなる』と言って、もう少し様子見することになっていた。
「もう少しすれば、状況が変わるから」
考え事をしていたら、いつの間にか夫が私の後ろに回り込んで抱きしめてくる。
少し硬くて大きな腕に包まれ、思わず頬を赤く染める。
「今、色々と動いていてね。上手く行けば良いんだけど」
そういう夫の言葉に思い出す。
そう言えば最近、走り回っている恵姉だけでなく夫も頻繁に電話をしていた。
また何を企んでいるのか。
そんなことを考えていると、夫の指が私の顔を掴む。
クイっと顔を上げられたと思えば、目の前には真剣なまなざしの夫の顔が目の前にあって、それがゆっくりと近づいて―――
ピリリリッ!
急な電子音に2人ともビクッとして弾かれたようにお互いが離れる。
どうやら夫のスマホに着信があったようだ。
「誰から?」
「仕事関係」
何気なく聞いたら素っ気なくそう言って電話を取りつつ部屋を出ていく夫。
「―――もうっ!」
そのあまりの素っ気なさに思わず怒りが込み上げる。
何より良い雰囲気を台無しにされたというのに、夫にそれが残念だという感じが一切見えなかったのが、何よりも腹立たしい。
そんな薄情な夫をどうしてくれようかと考えていたら、私のスマホも着信があり機械音が鳴り響く。
相手を見れば恵姉だった。
「恵姉、どうし―――」
「やったわ美結! 朗報よッ!」
電話越しのあまりのテンションの高さに私は思わず驚いてスマホを落としそうになった。
慌ててスマホを持ち直すと、こちらのことなどお構いなしに恵姉は言葉を続けている。
「良い所からオファーがあったの! 電撃歌祭りよ! 電撃歌祭りっ!」
興奮気味な彼女の言葉を聞きながら、私もそれを聞いて驚いた。
『電撃歌祭り』
地上波ではなくネット配信で放送される歌番組であり、数ある歌番組の中でも最高峰のネット番組だ。
普通歌番組は、どうしても新曲発表会というか新曲宣伝みたいなものになりがちで、人気のある歌い手が中心になりやすい。
しかも各事務所のゴリ押しも多く、例え話題になっていない新曲だろうが、強引に売り出すために出演が決まったりする。
だが電撃歌祭りは違う。
総責任者である和田(わだ)プロデューサーは、そういった事務所の力関係やゴリ押しを嫌う。
何なら番組に不正を持ち込むことを極端に嫌うのだ。
そうしたスタイルのため、敵も多いが味方も多い。
何よりそういう『やらせ』を極端に嫌うネットユーザー達からの信頼が厚い。
だからこそネット配信番組でありながら当日のライブ配信の視聴者の時点で数百万という数字を叩き出し、かなりの影響力を持っていた。
「今からそっちに行くわ! 詳細を詰めましょうっ!」
「え、今から? ちょ―――」
こちらが何かを言うより先に電話が切られてしまう。
まるで嵐のように突然やってきて、一瞬で暴れて去っていく感じに思わずどうしたものかと考えていると、夫が帰ってきた。
「ん?どうした?」
「……えっと、恵姉からだったんだけど―――」
先ほどの話を夫にすると、夫はチラッと時計を見て言った。
「もう23時過ぎてるんだけど……」
「だよね」
私も思わず苦笑した。
思い立ったらという感じでたまにこうして暴走するのが恵姉だ。
夫もそれを理解してか、苦笑する。
「とりあえず、お茶の用意でもするよ」
そう言いながら何故かこちらに近づいてくる夫。
―――そして
急に私の後頭部に手を回したかと思ったら、一気に顔を近づけて私の頬にキスをした。
一瞬の出来事に思わず思考がフリーズする。
そんな私のことなんて気にせず、耳元でささやくように
「さっきの続きだよ」
そう言って私の顔を見てニヤっと笑みを浮かべてから、台所へと去っていった。
それから私は数秒後にハッとして頬を抑える。
気づけば耳まで真っ赤になって頬に熱が帯びたのか、熱く感じた。
「―――もうっ!」
思わず怒りの声を上げるも私の表情は、それに反して嬉しさを隠し切れなかった。