音楽神の加護を持つ夫、美少女アイドル妻と共に芸能界を無双する 〜初心な妻を赤面させながらチートスキルで芸能界の頂点に立つ〜 作:のこのこ大王
「どうぞ」
そう言って俺はお茶を出す。
それを橋本 恵マネージャーが礼を言いつつ飲んでいるのを見て、妻の前にもお茶を置く。
結局夜中に興奮しながら自宅に突撃してきた橋本マネージャーを丁重(強引)にお返しすると、次の日の朝にはまた懲りずにやってきた。
そんな彼女に夫婦揃って苦笑するしかなかった。
こんな彼女は、妻がまだ独身だった頃の……全盛期の頃以来と言える。
「―――でね、一番重要なのが『新曲』なのよ」
俺が考え事をしている間に、どんどん妻へと説明が行われていた。
『電撃歌祭り』
ネット配信の歌番組とは言え、かなり盛大な番組だ。
芸能事務所の影響など受けず、本当に話題の人物や実力のあるアーティストしか呼ぶことはない。
更に出演するための条件は『番組内で新曲を披露する』ということだ。
人気アーティストなどの新曲がいち早く聞ける―――それがこの番組が高視聴率を叩き出している理由の1つといえる。
そしてこれこそが、一定の歌い手を冷徹に弾く壁ともなっていた。
必ず誰もが人気のある歌を出せる訳ではないからだ。
例え人気があり、売上があった歌だったとしてもネット民達から『いまいち』と評価されれば、その時点でまず番組に呼ばれることはないのだから。
「直前の話になっちゃって。一応私の方でも知り合いに声はかけてるんだけど―――」
「私の方でも頑張ってみるわ」
彼女達の話を何気なく聞いていると、どうやら出演に対しての新曲が無いらしい。
それを用意するためにマネージャーは作家を探しており、妻自身も自分で作詞作曲に挑戦するということだ。
しかし収録は1週間後らしく、練習も考えればタイムリミットは5日といった所か。
何だか久々に見る2人のやる気に満ちた姿に思わず笑みがこぼれる。
まるで彼女達と出会った頃のような、輝かしい未来を信じて疑わず、ひたすらに走り抜けようとしている―――そんな姿。
だからこそ俺は邪魔をしようとは思わない。
俺がやれることは、この妻をひたすらに支えることだけだ。
そして妻が作詞を始めて1日目。
朝から自室で頭を悩ませ時折、詩のような言葉を口にする。
「ご飯が出来たよ」
俺がそう言えば、彼女はスグにやってきた。
そして笑顔で食事をする。
相変わらず餌を詰め込むリスのようで微笑ましい。
夜になると流石に疲れたのか、大人しくシャワーを浴びてからパジャマに着替えてベッドで眠る。
そんな彼女をいつも通り抱きしめて眠ると彼女の方も俺の胸に顔を埋め、抱き着いて眠った。
2日目。
今日はラジオ番組のゲストとしての仕事がある。
なので朝から橋本マネージャーと共に出かけていった。
俺は朝食のあと片付けをすると、そのまま部屋全体の掃除を始める。
もう3年ほど住んでいるマンションで、そこまで広くもない。
掃除を終えるとスマホに着信があった。
「どちら様でしょうか?」
「私、国際救援団体CCCの総責任者である南雲(なぐも)と申します」
「ああ、どうも」
名前を聞いて、少し驚いた。
―――国際救援団体CCC
世界中で活動する国際ボランティア団体であり、貧困層の支援や発展途上国のインフラ整備など、とにかく何でも支援している超巨大団体だ。
世界中の有名人達が『とりあえず寄付しておくか』と思ったら、必ずと言っていいほどここに寄付すると言えば、その知名度や影響力もわかって貰えるだろう。
前に一度日本支社の代表からとある依頼があったのだが、断ったばかりだったのだ。
「以前にウチの日本支社代表が依頼した仕事の件ですが、もう一度考えては頂けませんか?」
「……またどうして?」
「少し前、偶然アナタの歌を聞く機会がありましてね。思わず年甲斐も無く泣いてしまいました」
どこか照れたような、苦笑するような声で相手は続ける。
「今度の新ⅭⅯは『心に響くもの』にしたいのですよ。これを見た、聞いた人々が、思わず自分自身に自信が持てるような」
「……それを私が出来ると?」
「ええ、そう信じているからこそのお話です」
俺は少しだけ悩んでから答えた。
「―――1つ条件があります」