「あ、貴方は…」
「おや、おやおや、少々めんどくさいことになりましたね」
その少女は緑谷出久を見て、呆れたように呟いた。
「あ、あの、貴方は何者なんですか?」
「何者……ふむ、昔は空亡とか、機械仕掛けとか色々呼ばれ方があったきがするんですがねぇ、今は何なんでしょうか、いろいろと無くなりましたし……そもそも、なんで君はここにこれたんですか?」
「で、電話の音を聞いて」
「…!ほぉ~電話の音を聞いてときましたか、まさか、まだあの電話を音を、絶望を、聞き入れる人間がいるとは……しかし、困りましたねぇ。因果律は十分ですけど、君は男ですし、何より君が立つ舞台はまったく見当違いですからねぇ」
説明はしているのに、理解できない。緑谷出久は少女の説明を訊いているのに、何も聴けていなかった。
「あれから随分と仕組みもかわりましたし、しかし、君が認識したのは不味いですね、君という舞台の物語はかなり大きな意味がある。いや、真に始まっていないからこそ、ここに来れたんですかね」
最初は緑谷出久の質問だったというのに、いつの間にか少女の自問自答に変わっている。
「あの、質問に答えてください」
「答えてくださいと言われても、すでに答えましたからねぇ。ああ、理解できてなかったんですか?それならまぁ、噛み砕いて言えば、何なんでしょうね、名前も変わりましたから、迷子や機械仕掛けというのも違うでしょうしね。すみませんねぇ、自分でも自分を説明できるほどの理解はないようです。僕を知っている方は、もう今せんので」
結局、何も答えは無かった。
迷子も、
機械仕掛けも、
少女を表す言葉ではないらしい。
少女を表していたことはあれど、今の少女は違うらしい。
「貴方は、ヒーローなんですか?」
「ヒーロー?ああ、そう言えば、貴方の舞台はヒーローがメインでしたね。違いますよ、ただの、派遣人というのが近いんでしょうかねぇ、ふむ、まぁ、一度家に帰ってニュースを見てみれば、答えを得れるかもしれませんよ。何せ、僕の物語が、君の舞台に割り込んでしまったんですから」
「僕の、舞台?」
「ええ、詳しくは1年後とかになるんですかね。貴方の転機はそこでしょうし、ま、ネタバレはよくありませんよね」
「貴方は何を知っているんですか?」
「?僕は何も知りませんよ、貴方が示すんです、ほら、帰った帰った。明日もここにいます、何かわかれば来てみてください」
「??」
訳も分からないまま、緑谷出久は返された。
「ああ、それと。ナレーションが間違っているんで、言っておきますが。一応男ですよ、僕は」
そう一言、謎の言葉を残して。緑谷出久は廃ビルを後にした。
「何だったんだ……」
家に帰り、テレビでニュースをみる緑谷出久は衝撃を受けた。
『速報です。異形系個性の特殊ヴィランが現れました。普通の個性は効かず、人というより魔物と言い表すほうが合っているような気がします。現場にいたヒーローでは刃が立たず、空から降ってきたと表現するのが一番あっている登場で、中学生くらいの、少女がこのヴィランを討伐しました』
映像では、魔物のような、人と言い切れない存在が町中で暴れ、それをヒーローコスチュームにしては、ひらひらした服装をした、確かに中学生くらいの少女がそのヴィランを倒していた。
『ヴィランを倒した後、水晶のようになり、崩れて消えました。これはヴィランも同じような消え方をしており、調査が進められています』
「まさか、これが言っていたこと?」
昨日まではなかった異変、
緑谷出久はあの少年に聞きたいことが増えていた。