とある学者の日記帳! in テイワット 作:セニョール・大介
筆者は気が向いた時にしか筆が進まないので変な時間に投稿したりとかありますが許してください!
モンドのシードル湖の湖畔でベギダーは食中毒を引き起こし身動きが取れなくなっている金髪の少女を見つけた。
「……いったい何をしてるんだ?」
「雋エ譁ケ縺ッ隱ー?溘?縺。繧?▲縺ィ蜉ゥ縺代※縺上l縺ェ縺?°縺ェ?溘?縺ゥ縺?↓繧り?縺ォ蠖薙◆縺」縺。繧?▲縺溘∩縺溘>縺ァ」
「何言ってんだこいつ?」
だが、話しかけてみても帰ってくるのは未知の言語。抑揚、イントネーション、アクセントetc……、言語の発音の際に現れる特徴のどれもがテイワットでつかわれている共通言語と異なるもの。服装をとってもモンドのものとは大きく異なり、これまでベギダーが訪ねたことのある各国のどれとも異なっていた。
今回ベギダーがモンドに訪れたのは悪龍ドゥリンの遺骸調査のためである。そのため、スライムやらなんやらの変な食材を食べて勝手に腹を下すような奴は無視……はやりすぎなので西風騎士団にでも預けてそれで終了、とすべきである。言葉も通じそうにないし。
というか、実際ベギダーはなにも見なかった振りを選んだ。なんで自分の貴重な時間をこんなところで浪費しないといけないのか、と。しかし──
「痛ッ!? 痛いんだけどぉッ!?」
「邨カ蟇セ髮「縺輔↑縺?°繧峨???シ?」
腹痛で先ほどまで動けなかったはずの少女が音もなく匍匐前進し、ベギダーの足首を掴む。所謂アンクルホールドという技だ。学者の中ではだいぶ丈夫なベギダーではあるが、一切の防御なしで足首のアキレス腱にのみ攻撃を集中された場合は話は別。そもそも──
「力が強すぎるって! ほどけねぇ!!」
見た目は華奢、体調のコンディションも絶不調な少女であるはずなのに、その筋力、握力はベギダーを凌駕していた。激痛に耐えながらホールドを外そうとするが、両腕を使っても片手に負けてしまう。結局──
「お手上げだ! まいった!」
ベギダー降参。手振り身振りで諦めたということを少女に伝える。少女はそれを見て力を──
「クソッ! バレた!」
緩めようとしたが、ベギダーの逃亡にいち早く気づき、さらに力を入れる。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっぁああ!!!!?!!」
その後、何度もベギダーは地面をタップし、抵抗を辞め降参しようとしたが、少女は認めない。結局──
「…………」
「…………」
二人とも野外で気絶である。
──
いったいどれほどの時間が経ったのだろうか。
「ってて……」
先に起きたのはベギダー。周囲を見渡すと──
紅の空、肌寒い外気、燃え尽きた薪の跡。気絶から目を覚ますのに大体4時間ほどといったところだろう。
「……」
隣の少女は身じろい一つしない。確認してみると呼気も僅か、心なしか顔色も悪いように見えなくもない。吐き出す空気に含まれる水分が冷やされ、息が白く見えるような気温の中で薄着。それなのに相も変わらず手がベギダーを話すことはない。不謹慎ではあるが、死後硬直で手の筋肉が固定されてしまったのではないかと疑ってしまう。
「くそ……」
ベギダーは天秤にかける。自らの、ベギダー・コーエンという教令院を抜け出すことになった哀れな(自認識だけは)立派な学者の時間とおそらくは言語も特別、常識も特別、神の心を持ってもいないのにモンスターを狩るような怪物から得られる情報を集めることのどちらが自分に利益をもたらすのか。
──
「店主! 部屋をもう一つ頼む!」
「あいよ」
熟考の末、ベギダーは助けることに決めた。だが、騎士団に丸投げではない。自分の手で救うことにしたのだ。
ベギダーはスメールではアーカーシャ端末から世界樹の知識にアクセスしまくった。モンドでは騎士団の建物内にある図書館に多額のモラを払い閲覧許可を購入して1週間ほど読みふけった。つまり、それなりの知識は持っているのだ。確かに派閥が違うため言語学、歴史学の専門的な知識があるわけではない。だが、ベギダーは各国の、過去の文献、辺境の地での聞き取り調査から植生の情報を得たり、古代遺跡内の植生調査の際に暇つぶしで壁画や残された資料を解読してきていた。ナタのウォーベン以外なら、それこそ龍族の言語でさえ解読できる自負がある。それなのにまるで理解できない。共通点さえ見出すのが困難なのだ。
もしかすると未知の文明の者かもしれない。これを発表したら教令院の者たちは驚愕するだろう。もしその証人を連れていると知れば泣いて媚びるだろう、話をさせてくれと。
ベギダーの口元が緩む。実に素晴らしい。研究停止命令を無視したとか。 許可証を改竄したとか。教令院から逃げたとか。そんなことなど、全部どうでもよくなる。
歴史的大発見。それだけで、これまでの問題行動が霞む。
「……いや」
ベギダーは首を振る。
「問題行動ではない!」
彼の中ではすでに結論が出ていた。
「偉大な発見のために必要だった、正当な行動だったのだ!」
ベギダーはドゥリンのことなぞ忘れて金髪の少女の解析にのめり込むことになる。
──
まず確認したのは身体的特徴である。
何故か服を着ているため、この少女の文明にも恥じらいとかいうものがあるのだろう。
ベギダーは以外だがモラルがある。被験者にはしっかりと説明して必ず同意を得てから実験を行うし、実験に協力した者には相場より高い報酬を支払う。
そのため面倒ではあるが、道具を用いることなく観察により少女の体積、身長を概算し、ベッドへの沈み込み具合からおおよその身体的な情報を割り出す。
何度か少女を縛り上げ、滑車、錘を用いて体重を割り出そうとしたが、意識がないとは到底思えないほど俊敏な寝返り、身じろぎで防がれてしまった。
次に行ったのは栄養補給である。栄養失調で倒れ、意識のない少女に自力で栄養補給する術はないため、ベギダーが手伝うしかない。
離月で採ってきた岩塩をモンドの硬水に溶かすことで、塩化ナトリウムの他にカルシウムやカリウム含む点滴を作る。この点滴はスメールのビマリスタンで考案されているものであるが、スメールやその周辺国が軟水であったため金属と化合していない、純粋なカリウムを得ることが難しく実用どころか十分な実証も行えていない。
また、ベギダーが配合用の器具を持ってきていないため濃度に確信が持てない。
だが、だからこそベギダーは行った。自分がその分野の先駆者となれるチャンスがあるのだから。
点滴は一気に流し込んではならない。血管や臓器には伸縮性があるが、それでも許容限界というものがある。大量に流し込んでしまえば血管の破裂、臓器不全を誘発しかねない。そうなれば貴重なサンプルが台無しである。
まともな医療器具、点滴用の道具など持っていない。あるのは採血用の注射器のみ。
故に、ベギダーは何時間もつきっきりで治療に当たる。ちょっとずつ、ほんのちょっとずつ点滴を血管内に流し込み、反応を調べる。その繰り返し。夕暮れ時から治療を始めていたのに気づけば太陽が真上を通り過ぎていた。
それでもベギダーは気を抜かない。自分に非があるわけではないのに失敗を経験し、研究を差し止められるに至った過去がある。自分が正しいという確信があるのに周りが認めようとせず無視されたという屈辱、そこから生まれる執念がある。
自らの血色が悪くなった気がする──無視した。
視界がぼやけ焦点が合わない──ピントが合うところまで近づいた。
手先が震える──木の枝、紐を用いて固定した。
瞼が落ちそうになった──舌を全力で噛み、意識を保つ。
右手には注射器、左手にはペンまたは体温計を持ち、そのどちらも片時も止まることがない。
そんな治療する人間も、方法も狂気の治療は約1日にも渡った。
ベギダーの全てを賭し、肉体の、生命活動の限界を3回くらい超えたころ、その治験者は目を覚ます。
──
最初に、私は自らの左腕に刺さった注射器を見た。次に、口内から血を溢れさせながら、腕を紐で硬く縛って固定しながら、瞼をぴくぴく痙攣させながら、青白くなりながら──
それでも真剣に、強固な意志を持った瞳で自らを見つめている男を見た。
記憶があやふやではあるが、湖畔にて無理やり捕まえたひ弱な男なのだろう。騙してまで何度も逃げ出そうとしていた卑劣な男なのだろう。こんな奴に縋るしかないんなんて、と悲しくなったものだ。
だが違った。詳細は知らないため断言はできないが、幾分も調子のよくなった私の体と私の知識からしてこれは点滴なのだろう。それも専門の道具もない状態で、治療する者に多大な労力が必要とされるような。
私は恥じる。私が捕まえた男は自己をも顧みずに見ず知らずの少女を救おうとする勇敢な人間であったのだ。
その男は私が目を覚ましたことを確認すると、ただでさえ忙しそうにしていた左腕をさらに動かし何かをノートに書き記す。それが終わったと同時に気を失った。
極度な前傾姿勢をしていたために制御を失った体は私の方へと倒れてくる。彼の頭が私の胸元に来る。
私は避けることなく、彼を優しく抱き占めた。
そして、少しだけ申し訳なくなる。
ごめんなさい。
そんな言葉を口にしても、意識のない、言語も違う彼には伝わらない。
ありがとう、まずはそう伝えたい。
どうして必死になってまで助けてくれたのか、次はそう尋ねたい。
彼を椅子からベッドに移し、拘束された彼の右手を開放する。そして、彼の書き記していたノートを見る。見たことない記号、単語ばかりで何もわからない。だが、図解だけはわかる。そこから単語の意味を推測する。推測した単語たちからその文の意味を推察する。
彼のノートだけでは分からないものが多すぎた。だから申し訳ないが彼の荷物の中の書籍や部屋に散らばる資料を見てさらに推測する。
そうして、大体の書籍の翻訳が完了したころ、ベッドの彼は目を覚ました。
──
「……」
どうやら、俺は寝てしまっていたらしい。というのも、記憶の中ではベッドに寝かしていた少女の観察を行っていたはずなのに──
「……」
「……」
今度は俺がベッドに寝かされ、少女がじっと俺の顔を覗き込んでいる。少女は俺が起きたことを確認すると俺の荷物の中から筆記用具を持ってくる。
「なるほど。筆談ね」
「……」
おそらく、あちらの言語での筆談となる。口語では何もわからなかったが文字を見ることさえできれば翻訳の手掛かりが得られるはず。散々解読やらなんやらしてきた俺からすれば──
「『おはようございます。容体はどうですか?』ね。『おかげさまで大丈夫』っと」
こんな感じに解読することだって……。は?
「!!??」
ちょっとまてぇ! どういうことや? なぜテイワットの共通言語を知っとるんや!? だって、初対面のときは聞いたこともない未知の言語使ってたやん。発音が違うだけで文字は一緒……なわけない!
周りを見渡すと、開かれたノートや荷物から取り出された資料が確認できた。え? たったこれだけの文章から文字の、単語の意味推察したの? というか、俺が持ってきたの学術関係ばっかだから学習教材としては下の下だよ? うそでしょ?
「オハヨウゴザイマス!」
「わ…わ、わ……わァ……ア……」
もうだめだぁ……。俺よりよっぽど賢いやんけ……。泣きそう……。
「……♪」ヾ(・ω・*)ナデナデ
「……」
慰めんなや! ありがとうな!
誤字脱字、解釈違いありましたら是非教えて頂ければと思います!