幼馴染を取り戻す為に過去へ転生したら、世界だけじゃなくて性別まで変わってしまった件について   作:PKO

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5.

セタガヤトライブ。僕は彼らと直接対面したことはない。

XBに対しての価値観は人それぞれ。より強い力を周囲に示すのか、所属すること自体に価値を持つのか。セタガヤトライブは後者だった。

より豊かで、より洗練された存在。トライブのメンバー達の財布だけで一国の予算を上回る程の経済規模を持つとすら言われているけれど、あながち嘘とも言い難い。轟くんを見れば余計にそう思う。

しかし、かつての僕が聞いたのはそういった「金」にまつわる噂ばかりだった。XBの強さについてはとんと聞かない。ブンキョウやトシマ、ミナトやアダチのように、天心に目をつけられることもなかった。

そんなかれらが轟くんを尋ねてきたらしい。やけに引きつった轟くんの表情が気にかかったが、僕に口出しすることはなにもなく……。

池尻さんと共に慌てて外へ飛び出して行った彼を見送る。ドンバンガンと壁に扉にぶつかり、それはもう騒々しい動きだった。僕のことなどもう忘れているのではないだろうか。

残される全裸の僕。空いた扉。そこからひょこりと見覚えのある球体が顔を覗かせる。ゼロだ。

 

「やっと開けて貰えたよ〜。轟くんたら僕が見えないからって、さっさとドア閉めちゃうんだもん。酷いよねぇ。……って、なんで裸なの?」

 

それは話すと長くなる。僕は「まあ色々」と適当に流した。

僕が裸であることよりも遥かに気になるものがあったからだ。モチモチとしたゼロの両手、その手はXBギア……僕が持ち出したスパイクを握っていた。

 

「回収しといたよ。轟くん、カズキくんが気絶したのも気が付かず、真っ先にこれを奪い取っててさ」

「……へえ」

「流石に剥ぎ取った後には、目を回してる君に気が付いたみたいだけど。……でもしっかりギアを倉庫にしまい込んでから、君のこと足で蹴ってたよ?」

 

……聞けば聞くほど好感度が下がる。そこまで他人を嫌いになるとなると神木結衣くらいしかいないのだが、大分下方へ下がってきていた。気絶した人間から物を盗み、その上足で蹴るとは。

意識のあるなしを確認していたのだろうと予測する。その予測が、好感度上昇に寄与することはないけれど。

ふうと息を吐く。眠った(というか、気絶だ)せいか、頭が冴えていた。

……さて、どうするべきか。

轟くんは来客対応中。となれば、屋敷の中は、水着の使用人のみになるのだろう。ガバガバ警備の。先程は失敗した物色を再開出来るかもしれない。

問題は服だけだ。僕はゼロに「ねえ」と話しかけたが、続きを言うよりも前に彼は首を横に振った。

 

「君の言いたいことは分かるけど、あの服はもう無いよ」

「無い?」

「轟くんが捨てちゃったから。臭いし汚いって」

「……」

 

迷惑な……。気持ちは分かるけれども、一張羅だったのに。盗んだものだけど。でも洗濯までした。

「あれにいくらかけたと思っているんだ」と僕が下唇を噛むと、ゼロは「三百マネー」と答える。

 

「君が身につけていたもので、残ってるのはこのギアだけ。ま、一番大切なものが捨てられなくてラッキーだったね」

「……それはそうだけど、待ってくれ。まさか下着も捨て……?」

 

ゼロは頷く。「服と一緒にゴミ箱ぽいだった」と軽い調子で答えた。まさかそんな簡単に全ての衣服が消失するとは……。じゃあ一体、僕は何を着たらいいんだ?

……仕方がない。轟くんが帰ってきたら服について聞いてみよう。一応視界の端に、あの忌まわしき紐のような水着が見えているが、見ないふりをする。着るという選択肢がまるで無い。だって服じゃないし、なんなら布とも言えないし。本当に紐。

……しかし、そうなるとやることが無い。暇だ。僕はシーツに包まりつつ、窓の外へ目を向けた。

眼下に広がるのはお屋敷の中庭である。ミナトトライブのみんなで、XB大会に出場した時に使った会場でもあった。あれをXB大会とカウントするのかは怪しいけど。それでも懐かしい。

 

「……みんなは元気かな」

 

ぽつと呟く。今後会えるかもしれない。その予感は純粋に僕の胸を高鳴らせるものだ。

そんな半ば微笑ましい気持ちで眺めていると、人影を見つけた。その数九人。身なりのいい壮年の男、そして美しい若い男女達。どうやらかれらが客らしい。全員何かしらのXBギアを持っていた。

もしかしてXBでも挑みに来たのだろうか。

うず、と好奇心が湧く。僕はベッドから身を乗り出し、窓のへりに腰掛けた。ゼロも近づいてくる。

ガラスの向こう、声はよく聞こえない。どことなく緊張感のある雰囲気だった。かれらはまっすぐ背筋を伸ばして立ち、家主を待っている。

しかし家主は一向に現れる気配がなかった。

五分。十分。更に時が過ぎる。それでも轟くんはやってこない。

そうしてそろそろ版刻が過ぎるかと言う頃に、やっと屋敷の中から池尻さんが現れた。彼女は小走りで来客へ駆け寄ると、ぺこりと頭を下げている。なにやらを説明しているようだった。

説明を受けた紳士はゆっくりと、首を横に振っている。池尻さんは慌てたように前のめりになり、もう一度頭を下げたが、結果は同じだ。

 

「もしかして、なーんか揉めてる?」

 

ゼロが呟く。僕もおなじように見えた。池尻さんはその後も、何度も訴えているようだが暖簾に腕押し。最後には手のひらで言葉を制されてしまっていた。

池尻さんは俯き、数歩後ろへ下がる。その様子を確認した後、中年は「やれやれ」とでもいうように、大袈裟に肩を竦めた。そして隣に控える青年に手を差し出す。青年が男に手渡したものは、拡声器だった。

 

「轟英二。聞こえていますか」

 

男の声がする。ガラス越しにも聞こえてくる、通りのいい声だった。涼やかで穏やか、耳障りが良い。しかし同時になんともいえない感覚にもなる。

僕とゼロは一度顔を見合せた後、再び男へ視線を戻した。

 

「我々は貴方に、挑戦しに参りました。セタガヤトライブ末席、その座を賭けて」

 

挑戦。XB。

その言葉に惹かれて、自然と体が前のめりになる。肩から落ちかけたシーツを引っ張りながら、中年の頭を見下ろす。

ゼロは「宣戦布告!」と嬉しそうにしていた。

 

「セタガヤトライブへ入るには資金力が必要。しかし、それだけでは足りない。必要なのは、XBへの情熱と技術。資金、情熱、技術の三つが兼ね備えられて、初めて名誉あるセタガヤトライブの一員となるのです。身も心も」

 

しかし、と男は続ける。

 

「しかしです、轟英二。貴方は加入してから一度もXBに参加していない。我々は、そんな貴方がセタガヤトライブに所属していることに我慢ならないのです」

 

ふうん。やっぱりそうなんだ。轟くん、セタガヤトライブとしての噂は聞いていたけど、大体性格に関する悪口か悪評か悪口で、XB云々のことは何も無かった覚えがある。XBをしていないのなら無理もない。していないなら、する噂もないのだから。

僕は改めて、轟くんへ宣戦布告する男を観察する。過去に見たセタガヤトライブのメンバーに、彼のような人はいなかった気がするのだが。顔には何故か覚えはあるものの、プレイスタイルなどは全く思い出せない。

どこで彼を見たんだろう。頭を悩ませていると、男はこほんと咳払いをした。

 

「轟英二。我々と勝負を。我々が勝てば、貴方の代わりにその座に。負ければ潔く諦めましょう。……出てきなさい。誇りあるXBプレイヤーならば、貴方は戦わねばなりません」

 

凛とした声だった。びり、と僅かに窓ガラスが揺れる。真正面からの、捻りのない挑戦状だった。

案外、こういう流れは嫌いではない。轟くんのプレイが見られると思うとワクワクもする。

けれど、僕の想いに反し、轟くんは一向に中庭へ現れなかった。池尻さんが挑戦者の男と屋敷を、不安そうに交互に見つめている。ゼロはぎゅむと窓ガラスに顔を押し付けた。

 

「ねえもしかして、轟くん逃げたんじゃない?」

「え?」

 

逃げた? そんなことがあるだろうか。……けど、ありえそうなんだよな。

轟くんはとてつもない大金を積んでセタガヤトライブにはいった。が、誰ともプレイしないし、バトルに出場もしない。ただただ席があるというだけ。

彼の実力は未知数。二年後はなかなか戦えていたが、彼に抱くイメージといえば「身軽な巨体」。今の彼は、少し走るだけで息切れ。基本が違う。

何となく察した。弱いんだな、彼。その上弱いのにお金でイキっちゃって、友達出来なかったんだ。

状況を把握すると、次に出るのは笑いだった。轟くんらしいといえばらしい。いずれは彼も仲間と共に強くなる訳だが、今はまだヘナチョコなのだろう。

静かに動向を見守る中、男は「挑戦をうけなさい」と語りかけている。

 

「もし挑戦を受けないのならば、今時点でセタガヤトライブから抜けて頂きたい! そこは、情熱のある真のプレイヤーこそ相応しい戦場なのですから」

 

いい事を言う。言うのだが、少し引っかかった。僕はゼロを見る。

 

「ねえ、ゼロ。もしこのまま轟くんが出てこなかったら、彼はセタガヤトライブをクビになるって事なのかな」

 

クビ。脱退。そんなことになれば、彼はセタガヤトライブの轟英二ではなく、ただの轟くんになってしまう。僕が必要としたのは、セタガヤトライブの轟くんだ。トラッシュトライブとして共に歩んだ、あの轟くん。

抜けられたら困る。若干焦りながら尋ねると、ゼロは「ええ?」と首を捻った。

 

「ないんじゃない? だってセタガヤトライブは実力主義じゃなくて、拝金主義なんでしょ? お金がある限り安泰なんじゃないの?」

「……だよね。そもそも彼の言うメンバー交代が、正式に認められているものかも分からないし」

 

言った直後だ。男が喋り出す。

 

「直ぐに交代できるよう、セタガヤトライブの管理者の方もお連れしております。轟英二、これは正式な試合ですよ」

 

ダメだ、本物っぽい。……ということは、轟くんが立ち向かわないのなら、ここで「セタガヤトライブの轟英二ルート」は閉ざされるということ!?

そう焦る僕を、更に焦らせる言葉が飛び込んできた。

 

「あと十分、お待ちしましょう。それでも貴方が挑戦に応じないというのなら、この場で正式にメンバー交代を受理していただく」

 

ぶっと吹き出す。思わず「何だって?」と声が漏れていた。あと十分。短すぎる。

現時点で三十分も待たされているので気持ちは分かるが、今のままでは轟くんがセタガヤトライブでは無くなってしまうのでは。

僕は慌てて窓を離れる。シーツがぺろりと剥がれ落ち、同時にゼロが「うわ」と嫌そうな声を出した。

 

「カズキくんさあ……ここまで来ると、むしろ見せたいのかと思えてくるよ。本当にやめてね? 見たくないし」

「違う。そんな冗談を言ってる場合じゃないだろ。このままだと、轟くんがセタガヤトライブじゃなくなる! ……何とかしないと」

 

絶対屋敷の中にいるはずだ。轟くんを見つけ出し、引き摺ってでもホームベースに立ってもらわなくては困る。

僕はぱっと周囲へ目線を走らせた。服を探す為だ。しかしまともなものがない。

あるのはゼロが運んできたスパイク型のXBギア。そして……あの忌まわしき、紐のような水着。

……嫌だ。嫌だけれども。

別の部屋を探し回っている暇は無かった。あの男性が決めたリミットは十分。時間が無い。

僕は「ゼロ!」と鋭い声を上げた。彼は嫌そうに、部屋の隅に縮こまっている。

 

「何……?」

「これ着るから手伝って」

 

言いながら水着を見せる。ゼロは酷い顔になった。本当に嫌なのだろう。でも僕だって嫌だ。仕方がないというだけで。

後が無く、僕はゼロに迫る。「腕折れてるから、背中だけでも!」と水着(上)を押し付けると、渋々ホックをはめてはくれた。

 

「セクハラだ…………」

 

深刻そうなつぶやきが聴こえる。僕は知らんぷりをした。色々言いたいことはあるが、今じゃない。

心許ない上半分の水着だけでなく、下も着用する。深く考えるのはやめ、とにかく履いた。流れるような動作でスパイクを身につける。そして、シーツを羽織り、廊下の外へと飛び出した。

走る。轟くんの屋敷は広大だ。まともに探せば日が暮れるだろう。けれど僕にはXBギアがある。ぐっと踏み込むと、靴からカチリと音がした。モードが切り替わったのだ。

安定的な走りから、とにかくスピードを重視した物へ。一瞬にして変化したスピードに、僕の動体視力はしっかりと追いついていた。

びゅんと通り過ぎた僕に、轟家の水着女性達は「きゃあ!?」と驚いて固まっている。そんな彼女たちと数人すれ違ったところで、僕は轟くんを見つけた。

思ったよりも呆気ない再会だ。彼は飾られた石膏像と壁の隙間に隠れ、腕で頭を覆っている。ガタガタと震えて怯えていた。なにか恐ろしいものから逃げようとするみたいに。

ただ問題は、頭は隠れているが尻が丸出しであること。先程は偉そうに池尻さんの体に言及していたが、彼の方がよっぽど立派な尻を持っている気がする。大きさだけなら。

石膏像は勿論轟くんのもの。ぼっきりと折れた腕は地面に落ちたまま放置されていた。金のバットも床に転がっている。

 

「轟くん」

 

声をかける。彼は「僕は行かないからな!」と声を裏返した。

 

「フン、セタガヤトライブの座などすぐに取り戻せる……!

ぼ、ぼ、僕はっ! 一秒で億を稼ぐ男だぞ!?」

「なら尚更戦えばいいでしょ。せっかく大金はたいてセタガヤトライブに入ったのに、取られて終わり? 戦って勝てば、一秒だって損しないのに」

 

そう言うも、轟くんは振り向きすらしなかった。大きな尻が震えている。目が合う所の騒ぎではない。

「ねえ」と再度呼びかけようとした時だ。外から「あと三分ですよ」と声がする。歯噛みしていると、ゼロが追いついてきた。

 

「どうする? もう時間が無いよ?」

 

彼は言う。淡々とした声音は呆れすら孕んでいなかった。その真意は、無理なら無理で別の手段を探そう、である。それが間違いとは言わない。

これまでの道中、一回目の記憶と同じようにいったことなどない。それでも何とかここまで来れている。轟くんを無理矢理XBに縛り付ける意味が、どこまであるのかも分からなかった。

……けれど、そういう話ではない。彼にとって、きっとXBは必要なはずだ。

共に旅した日々の中、分かりづらくとも彼がXBを楽しんでいたことは知っている。今だって、彼はプレイこそ恐れるもののギアには興味を持っていた。彼の可能性を知っているからこそ、まあいいかで捨てきることができない。

ふうと息を吐く。僕は轟くんに背を向けた。そのまま玄関口へ向かい、走り出す。

ゼロがひょいと肩に飛び乗ってきた。

 

「まさか代わりに戦う気?」

 

そのまさかだ。まだ形はないけれど、彼はトラッシュトライブのメンバーで、僕はリーダー。メンバーが動けないのなら、リーダーが動けばいい。

ゼロは「ふーん」としか言わなかった。その短い言葉にありったけの嘲りが含まれているのは十二分に承知している。その上で、僕は中庭へと足を踏み入れた。

拡声器を持った男が「あと一分」と告げる。そんな彼の正面に立つと、男は目を丸くした。

 

「……おや、貴方は」

 

僅かな驚愕。そして、……喜び? 男はなんだか嬉しそうにしている。思いがけない場所で友人に出会ったかのような顔だった。実際に彼は「我が友よ」と微笑んでいる。

ちなみに僕からして、見覚えは全くない。誰?

思い出そうと黙ったまま記憶を辿っていると、紳士は「お忘れですか」と柔らかく目を細めた。

 

「夜、お会いしたでしょう。あのコインランドリーで」

「……」

 

最悪だ。まさかあの、コートの人。お金を捩じ込んできた人。

……言われてみれば、こんな顔をしていたような気もする。見せられた「小さな息子」がインパクトありすぎて、他の記憶が若干飛んでいた。

顔を引き攣らせてしまう。が、紳士に気にした様子はない。なんなら「こんなに早く再会できるとは」としみじみとしていた。

言葉は柔らかい。変態だし。……だが、その目は穏やかとはいいがたい。

男は拡声器を仲間のひとりに渡すと、改めて僕へ向き直った。

 

「轟英二は試合を放棄するのでしょうか?」

「みたいだね」

「では、貴女は何をしに? まさかお茶の誘いではないでしょう。ティータイムへの招待にしては、あまりにも苛烈な闘志を感じます」

 

男は口元だけで笑っている。暫しそのまま微笑んでいたが、やがて僕に「正気ですか?」と尋ねてきた。その言葉に頷く。

 

「正気だよ。君達の挑戦を受ける。……XBをやろう」

 

言うと、男はフッと吹き出した。彼の仲間も反応はそれぞれだが、動揺したり、どうしていいのか分からずに笑ったり……。

無理もないだろう。XBはチームスポーツ。仲間たちとの絆が云々もそうだが、攻撃と守備、どちらにも人員を必要とするゲームだ。ひとりではできない。

ただし、普通のXBプレイヤーなら、だけれど。

僕は違う。王次郎と同じく、ただ一人の最強となる為に調整されてきた素材だ。頭数が少ないことなど、ハンデにすらならない。

僕が一切笑わないでいると、男も理解したのだろう。彼は一度咳払いをし、場を沈めてから口を開く。

 

「……貴女のお気持ちは分かりました。多勢に無勢、心苦しくはありますが、信頼足りえる仲間を集める事もXBの一部。全力で叩き潰させて頂きます」

「そう来なくっちゃ」

 

轟くんが戦えないのなら、僕が立てばいい。……それに、僕は信じている。轟くんはあれでいてXBを愛している。だから必ず、何かしら動くはず。

……動くはずだ。

ともかくやるしかない。それに、ある意味ではラッキーだろう。本命のチームと戦う前に、脚を使ったXBを試すことができる。

「本当にやるんだね」と笑うのはゼロだ。

 

「怪我してない君ならまだしも、今のコンディションで勝てるの? 勇気があるのと無謀って違うんだけど」

「分かってるさ。けれど、引く訳にはいかない。こんな程度の事で音を上げてたら今後キリがないよ」

 

もし前の通りなら、この後列車と正面衝突したり、物理的に落ちてくる天空の城に押しつぶされそうになったりすらするわけで。

僕が答えると、ゼロは「あ、そう」と言いながらぴょんと肩から地面に降りた。「観戦させてもらうね」と他人事である。僕は「はいはい」と適当に返した。

……久々のXB。

王次郎が居なくなり、Qが戻った。シンジュクへ向かったジオウくんは、人が変わって帰ってきた。タイトウでも一悶着あったらしい。

その間、僕はXBに触れてこなかったように思う。納得させようにもダメだった。何をしても過ぎるからだ。手から取りこぼしたものが。目を逸らした先に今がある。

深呼吸をする。そうして一歩、僕は足を踏み出した。

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