幼馴染を取り戻す為に過去へ転生したら、世界だけじゃなくて性別まで変わってしまった件について 作:PKO
二回目の検問所はあっさりと通り抜けることができた。あれだけで酷い「ポイ捨て」をされたとは思えない程。
ハッピーワーカーから貰った通行証を持ち、門番に見せて終わりだった。お金も取られない。昼間とは大違いだ。
すっかり暗くなった空の下、僕たちはセタガヤシティへと足を踏み入れることになる。そこは別世界だった。
ミナトともチヨダともまた違う、清潔で洗練された街並み。高いビルが建ち並ぶような都会とは違い、正しく閑静な住宅街と言ったところか。そしてどの家も「屋敷」としか呼べないほどに大きい。
ゼロはキョロキョロと周囲を見回している。「広いなあ」という感嘆が漏れていた。
「意外と車通りが多いね」
彼の言葉通り、シティに入ってからというものひっきりなしに目の前を車が通り過ぎていく。そのどれもが高級車だ。
信号待ちの車を見る。運転席には一人のスーツの男性が。助手席には誰もおらず、後部座席は黒いシートが貼られていた。二台、三台と信号待ちの車は増えていくが、なんとどれも同じ。
きっと運転手付きなのだろう。隣のオオタは貧乏すぎて土でも舐めているというのに、中々の経済格差だ。半ば感心しつつ眺めていると、車は発車してしまった。
ゼロが話しかけてくる。
「で、轟くんの家にはどう行くの? まさか歩き?」
「いいや。どうやら一箇所に応募者を集めて、そこからシャトルバスを出すらしい」
「へえ」
指定場所は渓谷公園となっていた。そこまでなら歩いて向かえるだろう。……ただ、問題がある。バスの時間だ。
出発は明日朝の十時。今はまだ深夜帯。かなり時間が空いている。その間どこで時間を潰すべきか。
ゼロも思い至ったのだろう。「朝までどうしようね」と尋ねてくる。
「そこなんだよね。所持金も無いに等しいし。……セタガヤシティのホテルなんて、逆立ちしても泊まれない。そもそも身分証がない時点で、入れてもらえるかも怪しいけど」
「だとすると漫画喫茶もダメかあ。……警察にお金借りる? 貸してくれたりするらしいじゃん」
「警察と鳳家の密な繋がりは、流石のゼロも知ってるよね」
言えば、ゼロは「そうだった」と身を引いた。
「前はどうやってたの? ほら、前回逃げた時。お金がなくちゃ服も買えないし、ご飯だって食べられない。なのに君はしっかり傷の手当までして、ミナトトライブの前に現れた」
「盗んだ」
「え?」とゼロが瞬きをする。僕はもう一度「人から盗んだよ」と答えた。
「養成所にいたみんなより、外の世界の奴らって気が抜けててさ。面白いくらい簡単に財布を拝借できたんだよね」
「わ、悪いことしてるぅ〜」
「まあね。でも、目的の為には仕方なかったと思ってるよ。アレがなきゃ僕は一人、野垂れ死んでいただろうから」
人は善意だけでは動かない。養成所の白いユニフォームは目立って仕方がなかった。周囲に溶け込めるような落ち着いた衣服が必要だったし、怪我の手当にかかる費用を集めなくてはならなかった。包帯もタダじゃない。外界に人脈を持たなかった僕に出来たのは、他人から奪うことだけだったろう。
ゼロは少しだけ考え込むような素振りをした。
「なら、今回もやったらよかったのに。スリ。そしたら今よりも楽だったと思うよ?」
「それはそう!」
異論は無い。ただ……
「でも、やらないよ」
僕がいうと、ゼロは「両腕骨折したから?」と聞いてきた。それもあるにはある。けれど、もっと単純な理由があった。
養成所は地獄だった。天心は強さにしか興味がなく、僕らの多くは最期まで番号で呼ばれた。本名を忘れるほど。
デスゲームにおいて、信頼とは油断だ。XBの最強プレイヤーを作る為の施設だったが、仲間の中には就寝中に襲われて死んだ人だっている。
他人とは全て敵。信頼してはならない。信用してはいけない。外界に存在する全て、そして自分自身ですらも道具にして生き抜くこと。それがあそこで暮らす中で学んだ世界のルールだった。
そんな世界だけではないと示してくれたのはミナトトライブである。騙されていると知り、文句を言いながらも僕と向き合い続けた。裏切りにもしっかりと怒り、その上で無事を喜んでくれた。僕にバッジを預けた。
彼らのお陰で、僕は他人を信頼する価値に気が付いたとも言えるだろう。調子よく何にでも飛びつくのとは違う、本当の信頼の価値を。その経験はトラッシュトライブでも多く得てきた。どれだけ失っても前に進めているのは、ひとえに仲間のお陰だろう。
僕はゼロを見下ろす。そしてニッコリと笑った。
「知らないの? スリって犯罪だよ」
出来ることなら。もしこれが二度目の人生なのだとしたら、かれらから学んだ事を活かしたい。何の罪もない通行人から金を奪うのではない方法を選びたい。
……そんなことを正直に言うのは恥ずかしいので言わないけど。犯罪だよと僕が言えば、ゼロは納得いかない顔をした。
「犯罪だけどさぁ、カズキくんがそんなこと気にするなんてね。ズルとかイカサマとか詐欺ばっかやってきたのに」
「今だって必要ならやるよ。けど、今はやらなきゃすぐにでも死ぬって話じゃない」
「……」
彼はなにか言いたげだった。揶揄うような気配ではなく、正気かと問いかけるようなそれである。視線の意味はわかる。彼の危惧する通り、効率的な判断とは言い難いだろう。生きるために手段を選ぶことができない、その段階にいるというのに、何故そんな程度のことで拘るのか。下手をすれば、直接対決した前回と異なり、王次郎と再会する前に死ぬかもしれないのに。
心配ももっともなので、僕はにこやかに口に開く。
「大丈夫。何とかなるよ」
「なるかなぁ。……言っとくけど、カズキくんが詰んだと思ったら僕、すぐに捨てるからね」
「分かってる。君に人情は期待してないから」
さらりというと、ゼロは「ちえ」と口を尖らせる。そうやって歩いている中、僕はある看板を見つけた。
「見てよ」とゼロに声をかける。そこには「コインランドリー 300円」の文字があった。
「ここにしよう。轟くんに会うのに、汚れた服だと何を言われるか分からない」
「汚れだけ落とせば済む問題かな? ガラが悪すぎるっていうか」
それはそうだろう。地下水道にいた不良の服だし。それでも最悪から悪いになる程度の事はしてもいいはずだ。なけなしの三百円、その使い道としても惜しくはない。
僕は無人のコインランドリーへと入る。ゼロも渋々入店したが、中の様子をみて「わ」と声を上げた。
「想像より綺麗だね」
彼の言う通りだった。白い灯りは強すぎず、けれど弱くもない。整備の行き届いた最新型の洗濯機がずらりと並んでいた。なんなら待ちスペースも用意されている。
本や雑誌、ソファー。トイレもあった。ここでなら体を休められるだろう。
僕は上着とシャツを脱ぐ。そうして洗濯機に放り込み、コインを投入。スイッチを押した。
音を立てて回り始める洗濯機。どうやらきちんと動くらしい。ほっとして息を吐くと、ゼロが「あああ!」と悲鳴を上げた。思わず飛び上がる。「……なんだよ、急に」と目を丸くしていると、彼は「なんだよじゃないって!」とたしたし地面を叩いた。
「また脱いでる! カズキくんって露出狂なワケ!?」
そんなはずがない。確かにまた下着姿になってしまったけれど、今回は上だけだし……。まあいっか。本当は下着も取り替えたいが、それは流石に耐えた。
それなのに何が問題なのか。はあ……とため息をつく。
「わかってるでしょ、ゼロ。露出する趣味なんてない。まさか脱がずに洗濯しろとでも? それか、僕ごと中に入れって?」
「……あれだけ痛い目見てまだ屁理屈言うんだ」
「僕から屁理屈を取り上げられると思わないでね。 ……というか、これでもダメなの? えのきさんだって良くこういう格好してたよね」
所謂へそ出し。あれと変わらないような気がする。
今まできちんと確認していなかったが、僕の「上の下着」は至ってシンプルなものだった。養成所にいたからだろう。ビジュアルだけなら競泳水着に近い。なんの飾り気もなく、つまらないベージュの下着だ。
これと比べると、えのきさんの方がだいぶ大胆な服を着ていたと思う。「でしょ?」と同意を求めると、ゼロは顔をくしゃくしゃにした。
「ツッコミ疲れたよ、もう。痛い目見ても知らないし、助けないからね」
言葉はそれだけだ。「あーやれやれ」と言いながら彼は休憩スペースへと歩いていく。どうやらそこにある漫画が目当てらしい。もう僕に興味なしとばかりに、本棚を物色し始めている。
彼が「これにしよーっと」と選んだ本がホラー&スプラッタ漫画であったことを確認してから、僕はソファーに座り込んだ。
……当たり前だけど、疲れが酷い。気力だけで動いてきたようなものなので当たり前だけれど。
緊張しっぱなしなのが原因か、ほとんど腹が減らないのは助かった。それでもこれ以上は流石にしんどい。ふらふらとゼロのいる休憩スペースへ近づき、物色する。自由にお持ちくださいとかかれた飴をひとつ取り、すぐさま口に放りこんだ。
「武士は食わねど高楊枝ってやつ?」
ゼロが笑う。目線は漫画に向いたまま。本気で会話するつもりなんてないのだろう。ただこちらをからかいたいだけで。
「そういうプライド、必要なのかな。意味あると思う?」
「……」
「ちなみに僕はね、意味ないと思うよ。昔XBで人を傷つけたから、ビームバットは持てない……なんて、ヘンテコプライドと同じくらい」
僕はゼロを見る。「ねえ」と声を低くするも、彼は全くこちらを見なかった。
「君、僕が怒るのわかって言ってるよね」
「勿論」
いいながら、彼はぺらりとページを捲る。
「理解できないんだよね。そういう拘り。拘った所で、何かいい方向に変わると思う? 王次郎くんが罪と向き合って木製のバットに持ち替えたからって、誰かが救われたり、許してくれたりしたの?」
「そういう話じゃない」
僕は反論した。ゼロは相変わらずこちらを見ない。どうでもいい世間話のような扱いである。
が、僕にとっては違った。あれは王次郎の誇りであり、選択。
「確かに意味はあったはずだ。王次郎はずっと罪の意識に苦しんでいた。全て天心が始めたことなのにね。けど、彼は自分の罪だと受け止めて、償おうとしていたんだ」
けして漫画の片手間に語られるものでも、笑われるものでも無い。しかしゼロは「えー」と面倒くさそうな声を上げた。
「そもそも全部鳳天心が悪いって、本気で思ってる?」
「そうだ。あのクソジジイさえいなければ……」
「ほんとに? 鳳天心がいなければ、鳳王次郎は君の腕を折らなかったの? XBが大好きな君の利き腕をさ」
不意打ちだった。思わず黙ってしまう。「それは」と目を泳がせた僕に、ゼロはとつとつと話を続けた。
「鳳天心がいなければ、鳳王次郎は人を殺さなかった? 赤門トオルや神谷瞬に引導を渡さなかった? XB法を改悪して、大勢の市民を苦しめなかった?」
「……」
「答えは簡単だ。だって、逆の事を考えたらいいだけだもん。君が王次郎くんに勝って当主候補になったとしてさ、君は王次郎くんの腕の骨を折るの?」
頭に血が上る。「折るはずがない!」と悲鳴のような声が出た。そこでハッとする。ゼロはこちらを見ていた。
「だよね。分かってるんだよ君も。全部が全部、鳳天心のせいなんかじゃなくて、王次郎くん個人の素質だって。君の腕を折ったのも、XB法を変えちゃったのも、誰にも言わずに一人でボス戦に挑んだのも全部おんなじ。成し遂げたい目的の為に選ぶ手段が、全部誰かを傷つける結果になる」
酷い言いぶりだ。反論しようとして、けれど出来なかった。王次郎は良い奴だ。優しくて、じっと物事をよく観察して考えるやつで。仲間思いでもある。西郷くんやジオウくんを尊敬していたし、小石くんには色々指導もしていた。曜くんとキャッチボールをしていたのも知っている。
良い奴なのだ、彼は。昔からずっといい奴だった。天心さえ現れなければ、彼は王次郎ではなく「Q」になっていたはずだ。力以外にも大切なものを彼は良く知っている。
……なのに、ゼロの言葉を否定できなかった。
僕はゼロに近づく。影が落ちる。じっと彼を見下ろすも、漫画を読み続けていた。
「君、僕に何をして欲しいの?」
「んー?」
「地下牢でも地下水道でもだけど、まるで僕にやり直すことを諦めさせようとしている気がしてね」
いうと、ゼロはパタンと漫画を閉じる。「なんで?」と見上げられた。
「白々しいな、全く。何か目的があるなら言えばいいのに。君が幼なじみ……なんだっけ? 世界をやり直す……? とか、何とか言うから、なるべく犠牲者を減らそうと思って動いてるわけだけど……」
「いい事だね」
「そんないい事へのモチベーションを削ろうとしてくるのは、君だ」
きっぱりと言う。するとゼロは無い首を竦めた。
「自覚がないなんて言わせないよ。君、王次郎が嫌いなの?」
「全然? どっちかと言えば好きだよ。真面目だし面白いし強いし」
「へえ。じゃあ僕が嫌いなんだ」
ぐっと顔を近づけ、尋ねる。ゼロの表情は変わらない。
ただただ鬱陶しそうに後ろに仰け反ったが、僅かな動きだった。
「あのね、カズキくん。僕は君ほど他人を好き嫌いで判断しないんだ。好きだから、嫌いだからって待遇を変えたりしないの。君みたいに」
「僕が?」
「うん。君の王次郎くん贔屓のことを考えると、ほんと、頭痛が痛くなるね」
「理性で考えなよ」と彼は言う。
「もし、王次郎くんじゃなかったら、君はどう思うのかな。大勢の人を苦しめたから、XBで世界を救う旅の道中、弱いアイテムで縛りプレイしますって。それを聞いて、君はなんて素敵なプライド! って褒める?」
「……」
「それより、そんなプライドはいいから強いアイテムちゃんと装備して、世界をチャチャッと救って、頭下げに行きなよって思わない?」
僕は眉を寄せる。それしか出来なかった。何も言えないでいると、ゼロは「それだけ」と笑う。
言い返せなかった。王次郎の覚悟を謗る気にはなれない。愚かな行いだとしても味方でいたい。家族なのだから。
だが、ゼロの言い分も否定できない。王次郎の覚悟を論理的かととえば、けしてそうでは無いだろう。そして、論理的ではないからこそ、彼は未来で破綻した。
「……別の道、か」
王次郎と戦う。そして勝つ。王次郎の掲げた強さを否定して、かつての優しさを取り戻す。かつて歩んだ道だ。
もし、それ以外に選択があるのならどうだろう。入口が変われば出口も変わる。王次郎の死を避けられるのかもしれない。
僕は俯き、思考する。するとゼロが「あのねえ」と呆れたような声を上げた。
「そんなシリアスな話じゃなくてさ。僕が言いたいのは、下着姿にならないでってことなんだけど。人の話を聞かないから、聞かないと痛い目見るよって話」
脱力する。「……そんなこと」と眉を下げると、彼はやれやれと首を振った。
「あのねカズキくん。君は客観視ができていない。確かに三百マネーしかないからしょうがないかもしれないけど、それでも洗濯より食事を取るべきだった」
「それだと、轟くんと会うのにハードルが……」
「いいじゃん、どうせ水着になるんだから。あれでしょ? カズキくん、なんやかんや向こうに着いてから、水着を着ない方向に話を持っていこうとしてたんでしょ」
「……」
目を逸らす。そんなつもりはないが、……そうかもしれない。水着を着ないという前提がもう僕の中にあった。だから、外側を整えようとしたのだ。
顔を背けた僕を、ゼロが追いかけてくる。
「ね? 君は案外目先の事とか、好き嫌いに囚われすぎなんだ。だから痛い目を見る」
「……痛い目、は。そうだけど。でも今回はまだ……」
確かに洗濯はしてしまった。三百マネーを使い、一文無し。けれど痛い目には遇っていない。今回は。
そこまで主張して、気が付いた。何やら視線を感じるのだ。
僕は振り向く。そこには一人の男がいた。中年の、身なりの整えられた紳士だ。
コインランドリーの外である。寒い季節でもないのにコートを着ているのが不可解だった。けれど、特に何をするでもない。
彼はじっと僕を見ていた。なんだろうと思っていると、こちらへ足を進めてくる。
「……えっ」
動揺した。バッチリ目が合ったのだ。思わず後ずさるが、後ろは壁。逃げ場もない。トイレに走ろうかとも思ったが、突然の事で動けなかった。
男が入店してくる。ゼロが「なんか変な人だね?」と、ボヤいた瞬間だった。
バッ!
風を切る音がする勢いで、男がコートを左右に開く。それはもう勢いよく。そして広がるベージュ。その中央には何やらが揺れている。ぴこんと揺れたソレは、男ならば誰でも持っているソレだった。
ただし、とてつもなくミニマムな。
「ちっさ……ッ!?」
思わず僕は叫ぶ。キャーでもうわ! でも無く、純粋な感想がまろび出た。何せ本当に小さいのだ。擬音も「ぶらり」や「ぶらん」ではない。完全に「ぴこん」の域だ。
僕の悲鳴に男が震える。ぶるぶると背を丸める様子に怒らせたかと冷や汗をかいたが、それは杞憂だった。彼は目頭を手で抑えながら前屈みになる。そしてポツリと呟いた。
「ありがとう……」
「ありがとう!?」
僕はパニックになる。何がどうして、なぜ粗末なそんなものを見せられて、悪口を言って、感謝をされるのか。意味の分からないまま立ち尽くしていると、彼はポケットへ手を突っ込んだ。
今度こそナイフが飛び出すか。……そう警戒したが、出てきたのは財布。彼はゴソゴソと中身を漁り、紙幣を何枚か取り出した。
「ありがとう。……君のような同朋に会えて嬉しいよ」
「……」
「かわいいスポブラだね。シンプルなのが一番」
言いながら紙幣を折りたたむ。そして僕の胸元へ差し込んできた。
何。
混乱する中、紳士はコートを着なおした。小さなお粗末も、服の中へと収納されえいく。そうして綺麗に一礼をし、去っていった。その間僅か三分。
「……なに、あれ。本物の露出狂?」
「……だね。君のこと仲間だって」
「……」
へえ、セタガヤにいるんだ。露出狂。お金持ちそうだったけど、お金持ちでもするんだ。
僕は洗濯機を見る。残り時間あと十五分。あと十五分もこの格好で居なくてはならない。
「クソ! 最悪だ、ゼロ……ッ! 途中キャンセルがない……ッ! 早く服を着ないと!」
「だから言ったのに〜。……ま、こんなのは予想してなかったけど」
ゼロは笑っている。どうやら露出狂に仲間認定された僕が愉快でたまらないらしい。
「犯罪者デビューおめでとう! やーい真の露出狂」と短い手を叩くので、久しぶりに僕は大声で「うるさいな!」と怒鳴った。