時が流れて約1年後だ。
あの日、ベータが有り得ないほどの高熱を出してから何ら変わりのない生活を送っていた。
至って平和で、楽しく過ごしていたら次の後輩が出来る時期になっていた。
私的にはシロコちゃんやノノミちゃん以外の生徒が新たに入学してこないだろうなぁと思っていたがなんと二人も入学してきてくれたのだ。
その2人の名前は奥空アヤネと黒見セリカの二人、今のアビドスに新たな後輩が四人も入ってきてくれたのはまさに奇跡と言っていいだろう。
しかも周りにもう嫌と言わせるほどに自慢できる自慢の後輩達、ベータも誇らしそうに、嬉しそうにしていたぐらいだ。
「ちょっと!ベータ先輩!!いつまでゲームやってるのよっ!今回の集会に遅れるわよっ!」
「……えへ」
「えへ……じゃないわよっ!さっさと行くわよ!」
「はぁい……」
「うへ〜セリカちゃんは厳しいねぇ〜」
典型的ツンデレ属性のセリカちゃんは毎日のようにベータの世話を焼いてくれている。
結局ベータの面倒くさがりは根を張っており、引っこ抜くことは叶わなかったようだ。
「……セーブだけ…」
「えぇ?」
「まぁまぁセリカちゃんもう少しだけ待ってあげよ?」
セリカちゃんを宥めているのが奥空アヤネ、このアビドス屈指の常識人であり、ノノミちゃんの言うところのアイドルをやれば売れること間違いなしの逸材だと思われる。
「うん……できた…よ」
「なら行きましょうかベータ」
準備を終えたベータに声をかけるが、私のベータに対する敬語癖もベータと同じで結局治っておらず、恐らく死ぬまで敬語を続けてしまうのだろうなぁと何となく感じる。
一応念の為言っておくが仲が悪いなんてことは一切ないので悪しからずと言った所だ。
「ん、ベータ先輩やっと来た。」
「ベータ先輩、おはようございます☆」
そして私たちは目的地である、『アビドス対策委員会』に足を運ぶと、シロコちゃんとノノミちゃんが向かい合って椅子に座りながら挨拶を交わす。
アビドス対策委員会、ずっと前に使われなくなった部室を作り直し、新たなる部活にしたのがアビドス対策委員会だ。
簡単に言うとアビドスを守ろう、復興しようと言った部活である。
そしてアビドス対策委員会に、今いるアビドスの全生徒が入部していると言う、字ズラだけ見たらありえない部活だ。
「おはよう…皆」
「ベータ先輩、ここ空いてるよ」
シロコちゃんが隣の席をトントンと叩きベータを誘導する。
こういうのを見るとシロコちゃんはだいぶ丸くなり、成長を感じれて目頭が暑くなってきてしまう。
まぁだが盗み癖はいつ治るのかは定かではない。
「ベータ先輩!こっちも空いてますよ〜!」
ノノミちゃんもトントンと隣の席を叩く、それを見たベータがとても迷っている顔をしているのが面白い。
ノノミちゃんもノノミちゃんで変わった所が多数ある。
単純に知識が増え、庶民的な生活を少しだけ過ごせたからなのか感性も育ってきているように感じる。
最初から出来すぎていた子だったので、然程変わってはいないかもしれない。
「ダメだよ〜ベータはここ、ね?」
「モテモテ……だね」
そんなモテモテなベータを後輩などに取られてはならない。
ベータの隣はいつも私でなければいけないし、私の隣はベータでなければいけないのだ。
そんな事を思っていたら外から不穏な音が響く。
「ホシノ」
「はい、戦車ですかね、これは」
「え!?戦車!?」
私達アビドスは、現在カタカタヘルメット団と呼ばれる集団と半ば戦争状態にあり、度々こうしてアビドス防衛戦が始まる。
当然アビドスが残っているということはカタカタヘルメット団に勝利をし続けていたのだが、最近かなり状況が悪くなってきている。
「弾薬…足りるでしょうか?」
「うへ〜何とかするしかないねぇ」
そう私達は度重なる戦闘で、弾薬の数が底を着きかけているのだ。
今回の戦闘でもしかしたら使い切ってしまうのではと思ってしまう程に。
「……」
ベータがなにやら考え込んでいるようだ。
きっとそれは私の考えと同じなのだと思う。
明らかにおかしい、一端の不良達がこうして何度も襲撃を仕掛けられるわけがない。
しかも最近になって防具の方もかなり新しく新調されており、その機能性もそこらの物ではない。
これは裏に誰かがいる。
「ベータ、先陣を切りますから後から支援よろしくお願いします。」
「任された…よ」
「アヤネちゃんはドローンでの支援」
「はい!」
「セリカちゃんとシロコちゃんは付かず離れずの距離で戦闘」
「えぇ!」「ん…」
「ノノミチャンはステルス、隙を見て掃討して」
「わかりました!」
私はみんなに指示を出しながら大盾とショットガンを準備する。
ベータも既に準備は終わっている、まぁベータの場合は軽装過ぎるので常に戦闘態勢なのだが。
その次にシロコちゃんとノノミちゃんも準備を終え、セリカちゃんとアヤネちゃんも臨戦態勢と言った所だ。
さて、今日も勝とう。
私達は校舎を後にし、校庭へと足を運ぶ。
ふむ、以前よりも敵の数が増えているような気がするがまぁまだ何とかできる範囲だ。
そして私は敵の正面から姿を表し言葉を発する
「よく飽きずに来れるものだよね、君たちは」
「はっ!ここを奪い取るまで来続けてやるよ」
「ふぅん、どうしても?」
「問答したってどうしようもねぇぜ?」
「そっかぁ〜ならしょうがない……ねっ!!」
私は全力で地面を蹴り敵軍の目の前にまで躍り出る。
こういう時の盾とは非常に優秀だ、雑に詰めてもある程度は簡単に近づけれるしショットガンとの相性はまさに絶品と言える程だろう。
それにこれはユメ先輩が残してくれたものだから。
「っ!!お前ら!!!気おつけろ!!ピンク髪に気を惹き付けられるな!!白髪の方を誰か一人は見てろっ!!」
やはり同じ戦法を使い続けていると流石に対策をしてくるようだ。
何度も何度も私が先陣を切って注意を逸らし、ベータに強襲させるという戦法を繰り返していたので当然だろう。
だが、今のアビドスはあの頃のみたいに私とベータだけでは無いのだ。
「ホシノ先輩!援護します!!」
「ん、こっちもいる!」
「そぉれ☆」
私の左右からシロコちゃんとノノミちゃんがカバーをくれた。
シロコちゃんはドローンのミサイルを持って敵を蹴散らし、ノノミちゃんは敵の隙を上手く見出しかなりの数を倒してくれる。
「シロコ先輩!スイッチ!!」
「んっ!」
「ホシノ先輩!回復します!」
セリカちゃんはシロコちゃんの弾切れを即座に見抜きシロコちゃんとの位置を入れ替え、代わりに前線を貼り、アヤネちゃんはドローンを用いた回復行動で味方のダウンを防ぐ。
「く、くそっ!!」
「なんで…なんでこんなに硬ぇんだよっくそがっ!!」
こんなに頼もしい後輩達に奴らは絶対に私達を見ざるおえない。
そうなってしまった奴らの未来は確定してしまう。
「あっ!あの白いヤツは!?ぐぁ!?」
ベータがフリーで動けるようになる。
しかも一度でも、姿を外してしまうと、もう一度ベータを捉える事は遥かに難しく敵はただただ蹂躙されるのみなのだ。
「あぁ!!もうっ!これじゃ…また嫌味事を…ぐぎゃあ!?」
嫌味事……やはりと言ったところだろう。
奴らには確実に黒幕がいる、それも、ネフティスと同じ程度の財力と権力を持ち得た所……か
「あっ、ホシノ…弾薬……底ついた」
「え……?」
「ふふ、ステゴロ……だね」
「まぁ…なんとかなるかぁ……」
敵を少し残し、私達はステゴロを仕掛けることになって、少々手間取るのであった。
◆
襲撃をもらってその次の日である。
私達は底を着いてしまった弾薬の事でかなり頭を悩ませていたのだが、結局購入するにもお金が足りず、次の襲撃にはまたも拳で対抗するしかないのかもしれないと考えている時だった。
「ただいま」
「シロコ先輩、おかえりな……は?」
自転車が趣味になったシロコちゃんが対策委員会に戻ってきたと思ったら、まさかの大人の男性を担いできた。
「え?し、死体!?」
「ら、拉致してきちゃったんですか!?」
「あ、いや。ちが……」
「あ、アヤネシャベル持ってきて!う、埋めれる場所なら沢山あるし……!」
「……落ち着いて」
焦り散らかしている後輩達にシロコちゃんは待ったをかけ、ドサリと大人の男性を背から下ろす。
するとムクリと大人の男性が起き上がった。
《こんばんは、初めましてだね》
「わっ、は、はい。初めまして……お客様…ですか?そんなのいつぶりでしょうか」
《私は『シャーレ』の顧問先生です。よろしくね》
「「ええ!?」」
そのシャーレと言うワードを聴いて、後輩達らが驚く。
シャーレ、最近設立された連邦生徒会直属の部活、その権力はキヴォトスを変えられるほどと聞いているが、その実情は知らない。
連邦生徒会自体このキヴォトスのトップの様な物なので、連邦生徒会と似たような権力はあるのだろう。
そんなシャーレを目の前にして後輩達が驚いている中、私とベータだけはこの大人を訝しんでいた。
「初め…まして、先生」
《君は……》
「私は…ベータよろしく…ね」
《うん!よろしくねベータ》
ベータが早速品定めに入る。
じっと相手の目を仕草を見逃す事がないように、且つ相手に見られていることを悟られないようにしながら詳細を見やる。
毎回思うのだが、本当にどうやってんだろう…同じもの食べてるのにな…。
そんな冗談めいた物を考えているとベータの顔が少し歪んだよに見えた。
「……?」
《ど、どうしたの?ベータ》
「いや……どこかで会った?」
《え?初めまして…だよ?》
「…そっ…か」
「ベータ?どうしました?」
「いや…気の所為だった…みたい」
普段のベータならば見せない困惑顔を浮かべている。
『どこかで会った』とそうベータは言っていたが、もしや記憶喪失前のベータがあったことがあるのか?それとも単純に他人の空似だったのだろうか。
「そ、それよりも!支援通ったってことよね!」
かなり前に私達は連邦生徒会に、アビドスが大変な事になっているから助けて欲しいと願い届けを出した事はあったがまさか受理されるとは。
「はいっ!これで弾薬などの援助を受けられます…!」
《ふふ、お気に召すといいんだけど…》
すると先生なる大人の背に背負っていた大荷物を下ろすと、その中身から夥しいほどの弾薬が入っていた。
アビドスで購入するのに数ヶ月ほどの借金をしなければいけないのほどの量、それに無償での支援、なるほどこれがシャーレか。
「こ、これであのチンピラ共をっ!」
「……はぁ」
「ど、どうしました?ベータ先輩」
「戦車の…音」
よく耳を澄ませて聞くと確かに戦車特有の地を這う音が聞こえてきてしまったので、だいぶ憂鬱だ。
「また来たの!?」
「うへ〜懲りないねぇ…」
《え?な、なに?》
「先生……指示…出して、できる…よね?」
ベータが突拍子もないことを言い出す。
「べ、ベータ本気です?」
「うん……そんな気が…するから」
「…………はぁ、分かりましたよ」
ベータの「そんな気がする」はほとんど外した事がない、その事実をこの3年間でよく知ってしまっているので今回も信じるのみだ。
こうして、先生指揮下の戦闘が始まるのであった。