青き晴天の透き通る砂漠の上で。   作:焼きダレご飯

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三話

 

 

 

 私が入学して3ヶ月ほどが経った。

 相も変わらずのどんちゃん騒ぎの毎日を送っており、楽しい日々を送っている。

 

 私はそんな日々の中で、今日は少しだけ騒ぎすぎている日になった。

 

「……不良達の……出没?」

「えぇ、何やら没落したアビドスの惨状を見て、いくつかの領地を我が物顔で拠点なんかにしているらしいです。」

「ふぅん……」

「ふぅんって……はぁ、そういう反応するとは思ってましたけど」

 

 正直なところ、どうでもいいと思ってしまう。

 別に我が物顔でいるだけならば、真に自治区として運営しているのは私達アビドス高等学校なのだし、奪い合いが出来るほどに私達には余裕がないように感じる。

 

「まぁいいです。それでベータ、初めてのお仕事ですよ」

「……言うと…思った」

「なら、支度してください」

 

 こういう手の荒事は基本的にホシノが全て単独で行っていたし、その詳細まで知ることはなかったのだが、今回は事の詳細を細かに教えてきたのでそうだろうなと思っていた。

 

「…なんで…今?」

「そろそろ確かめたくなってきまして」

「え?」

「最初に言ったじゃないですか、戦闘技術には覚えがあると」

「……あ〜、言ったような……言ってないような?」

 

 まぁ、どうでもいいことである。

 しろと言われたらするし、するなと言われればしない、ただそれだけだ。

 

「ベータ……準備ってそれだけですか?」

「うん……これ…だけ」

 

 私は荷物なんてものは多くは持ち歩かない主義である。

 戦闘に使う小型拳銃のみの荷物、これだけで十分だ。

 

「相手はただの有象無象ではありますが、少しは…」

「大丈夫……だよ」

「はぁ、分かりましたよ」

 

 そして私達はその不良達の元に向かう事になった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ここですね」

「廃……墟?」

「そうみたいですね。では行きましょうか」

 

 不良達の掃討、今回はベータを連れてきてみた。

 戦闘には覚えがあるから雇わないかと、初めの頃に言われた覚えがあるためその実態を知りたく思った……と言うのは建前だ。

 

 実の言うところ、少し心配になったからだ。

 いつものんびりしてる不用心な同期、それがこれまでを過ごしてきた私の見解だ。

 そんな同期のこれからが不安で、今回の仕事を持って、少しはその不用心を解消出来やしないかと言う事だ。

 

「……ふわぁ……あん?」

 

 不良達の溜まり場隣っている廃墟に侵入していると、一人の欠伸をしている柄の悪そうな少女に出会う。

 

「なんだ?てめぇら」

「多くは言いません。今すぐここから立ち退いてください」

「……アビドスか?」

「そうだと言ったら?」

「はん……ぶっっ潰すに決まってんだろっ!おいお前ら!!」

 

 目の前の少女が耳をつんざくような大声を出し、仲間たちへと呼びかける。

 その呼びかけに呼応した不良達がゾロゾロと姿を表して行く。

 

「…案外数が多いですね。ベータ、取り敢えずは私の後ろ…っ!?」

 

 後ろを振り向くと居るはずのベータがそこにはいなかった。

 戦地だと言うのに、辺りをキョロキョロと柄にもなく探し回ってしまう。

 

「ははっ、お仲間さんは恐れをなしてしまわれたようですね〜?くっははっ!」

「……っ!ベータ!?」

「あん?ぐごあっ!?」

 

 煽ってくる不良を睨みつけていたら、急にその背後からベータが音もなく現れ、回し蹴りを不良の背中に食らわせ失神させる。

 ベータはなんとも思っていないかのような表情をしながらフラフラと、まるで幽霊かのような足取りだ。

 そして、瞬きのその一瞬でまたも姿を見失ってしまう。

 

「ホシノ」

「きゃあっ!?」

「そんな声……初めて聞いた…ね」

 

 すると今度は私の背後に現れ、にこにことした表情は崩さず、平然とそこにベータは立っていた。

 

「ベータ…ど、どうやって」

「どうって?」

「……後で答え合わせです。覚悟しといてくださいね」

「ふふ、楽しみにしてる…ね」

 

 不良達は何故仲間の一人である者が失神しているのかが分からず、動揺の声すらも出ない様子だ。

 今攻め手を欠くべきではないだろう。

 

「っ!!おい!てめぇら!!気おつけろ、あの白いヤツから目を離すな!!」

 

 そんな中で一人賢い奴がいるようだ。

 それを見た私は間髪入れずに敵の群れに突撃をする。

 

「っ!?はやっ!?ぐぁあ!?」

 

 一人一人、確実に気絶させるために急所を正確に射抜いて行きながら思考をする。

 一目見だけだが、ベータの特異性が少しわかった。

 今までよくこちらの心を読むかのような言動を見せるベータだが、何故それができるのかが理解できたような気がする。

 

 恐らくだが『目の動き』を正確に読んでいる。

 

 相手の目線の先に何が写っているのか、何を思っているのかそして、その人の感情までも読み取る『観察眼』そして『洞察力』それがベータの技術の肝なのだろう。

 

 そしてこの技術は私、いや、仲間がいる時に輝くものだと言うこともよくわかった。

 賢いやつでも馬鹿なヤツでも、ベータという存在を警戒せずにはいられず、必ず思考の隅にはベータの存在がチラつく、その一瞬だけで私は敵を制圧することができるし、そんな私を警戒しすぎるとベータが視界から消える。

 

「ぐぁ!?」

「……くそっや、やめっ、っあぁ!?」

 

 理不尽、きっとこの不良達は思っているのだろう。

 正直いって、ベータが味方な事に酷く安堵している、それぐらいベータの特異性は恐ろしいものであった。

 

「はっ、はぁっ……な、なんなんだよてめぇらァ……ごっ!?」

 

 半ば涙目になっている不良を最後に私達の掃討作戦は終わりを告げるのであった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「うん…そうだ…よ」

「……恐ろしいですね…」

 

 仕事が終わったあと改めてその技術を聞いた、概ね私の考えは合ってはいたらしい。

 ベータ曰く、基本は相手の目の動きを正確に読み取りながら、相手の手や足、指先に至るまでの動作を事細かに、そして詳細に見て感じ取っているみたいだ

 

「何処でそんな……」

「ふふ、前世…かな?」

「はぁ……」

 

 これ以上聞いてもベータの前世ネタにはぐらかされてしまうだろう。

 まぁ、結局その技術を聞いたとして、到底私には真似出来そうもない。

 戦闘分野には私にも自信はあるし、戦闘になったからには相手をしっかりと見て動きを変えたりはできるが、ベータの様に細部を見ながらの戦闘だと逆に私の神経が削れ継戦能力に支障をきたしてしまうし、集団戦になると尚更だ。

 

 そう考えているとベータに肩を叩かれる。

 

「ねぇ…あれ」

「なんですか?……あぁ」

 

 ベータが指を指した先に合ったのは辛うじて生き残っているアイス屋であった。

 食べたいと言うことだろうか。

 

「しょうがないですねぇ。」

「…っ!」

 

 露骨に嬉しそうにするベータを見て困惑してしまう。

 普段のベータからでは想像もできないほどに目をキラキラとさせている。

 

 なんだかこっちにまで笑顔が移ってしまうほどだ。

 

「いらっしゃいませ」

 

 そんなこんなで店前にまで行くと店員が話しかけてきた。

 私が注文をしようとするとベータが私の前に少し出て、メニューに指を指す。

 

「いちご……ください」

 

 こんなにがっつくベータを初めて見たので内心動揺をしてしまうが、なんだかベータの内面を知れたようでとても嬉しい気持ちになる。

 

「コーンはお付けしますか?」

「お願い…します」

「私も同じものでお願いします」

「かしこまりました」

 

 店員は注文を聞いたやいなや、店の奥にへと消えていった。

 

「イチゴ好きなんですね」

「ふふ、大好き……だよ」

「好物なんてないって思ってました」

「心外……」

「ぷっ…ふふ」

「むぅ……」

 

 妙に不貞腐れるベータに更に私のツボを刺激して、さらに笑ってしまう。

 笑みを押し殺すのが大変なぐらいだった。

 

「お待たせしました」

 

 2つのアイスクリームを受け取る。

 

「ありがとうございます。ベータ出来ましたよ」

「っ!」

 

 まるで子犬のように駆け寄ってきて、嬉しそうに手を差し出してくるベータに私の中の悪戯心が刺激してくる。

 

「はいどうぞ」

「ありが……っ!?」

 

 アイスクリームを差し出し、受け取るか受け取らないかと言う距離でスっと上に腕を上げる。

 

「受け取らないんですか?」

「……ふぅん」

 

 そこから本気になったベータとの攻防戦が始まる。

 ベータが手を伸ばしてきたら私はそれを躱す、それの繰り返し、どうやら身体能力で言えば私の方が上らしく、ベータの攻めの悉くを余裕で捌けてしまう。

 

「ふふふ、そんなもんですかベータぁ?」

「ぐ、ぎぎ……あっ、ユメ……先輩」

「え?あっ!?」

 

 ほんの少し、ほんの少しだけ後ろに目を動かし気づくこれは罠だと。

 僅かでも視線を動かしてしまった時点で私の敗北が決まっていたのだろう。

 いつの間にか私の眼前にまで迫っていたベータに意図も容易くアイスクリームは取られてしまった。

 やはりこの分野ではベータに敵うことはないようだ。

 

「ふふふ、まだまだ……だね」

「ぐっ……」

 

 逆に煽られてしまった。

 私の方が身体能力的には高いので、あまり調子に乗らないで欲しいものだ。

 

「……ふふ」

「……っあはは」

 

 なんだか、お互いおかしくなってしまって、小さくまるで抑えきれないかのように笑い合った。

 なんてことも無いただのじゃれ合いだと言うのに、すごく幸せに感じる。

 

「食べましょうか……ってもう食べてる!?」

「美味しい……」

「うわすっごい笑顔……!?」

 

 いつもニコニコしてるベータの口角がさらに釣り上がり、ベータの周りからキラキラとエフェクトが出ているようだった。

 

「美味しい」

「それしか言えないんですか……?あっ、ほら鼻に着いちゃってますよ」

 

 私は手を伸ばし鼻についたクリームを拭き取る。

 

「また食べに来ましょうか」

「っ!うんっ!」

「……くふっ」

「むぅ……」

「ご、ごめ、ふふ、あはは」

 

 アイスを食べる、ただそれだけだと言うのに、私はきっと今日のことを忘れないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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