青き晴天の透き通る砂漠の上で。   作:焼きダレご飯

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四話

 

 

 

 

 

 私が入学して4ヶ月程が経った。

 ホシノとはかなり仲が良くなり、今では友達と言っても差し支えないだろう。

 最も向こうはどう思っているのかは分からないが、向こうも友達と思っていたら嬉しい。

 

「ベータちゃん!お出かけしない?」

「…いいです…よ」

 

 そんな事を考えながらダラダラと過ごしている時の事だった。

 いきなりユメ先輩がガラガラと教室の扉を開けてとびっきりの笑顔で外出を誘われた。

 

「どこ…いくんですか?」

「ふふふ、それはね、D.U.って場所に行こうかなって」

「D.U.?」

「うん、学園都市の中でどの自治区でもない場所…だったはず…」

 

 つまりは誰にも運営されてない場所という事だろうか?

 いや、誰にも運営されていないのだとしたら、アビドスのように荒廃した世界になっているはずなので、厳密には運営はされているのだろう。

 

「分かりました…行きましょう…か」

「うんっ!」

 

 こうして私の初めてのアビドス外出が決まったのである。

 ユメ先輩曰く、D.U,は少しばかり遠いらしく、電車を使って行くみたいだ。

 

 4ヶ月もの間このアビドスで過ごしてきたというのに、電車があったなんて事を初めて知り、内心驚愕である。

 

「えぇ…!?荷物それだけで大丈夫なの?」

「は…い」

 

 ユメ先輩は少しだけ大きなバックを背負っていたが、私は手ぶらと言ってもいいほどだ。

 最低限のものは持ってはいるが、拳銃程度のものだけだ。

 

「全く、ベータちゃん。そんなところは無関心なんだから」

「ダメ…でしたか?」

 

「………………いいと思うよっ!」

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 電車に揺られて早数時間、私はベータちゃんを連れて一緒にお出かけが出来る機会が訪れた。

 

 前々から誘おう誘おうとは思っていたのだが、別の事が忙しかったり、ホシノちゃんと一緒にお仕事をしていたりと中々機会に恵まれなかったが、今日やっと愛しのベータちゃんと二人で都会に来れた

 

「わぁ…あ」

「始めてみる顔してるよベータちゃん!?」

 

 私達はD.U.に無事に着くことができたのだが、着いたやいなや街の光景を見たベータちゃんは硬直しながら僅かに振動するという反応を見せる。

 

「ぷっふふ、そんなにびっくりしたの?」

「は、は…い、う、うぅ…」

「ベータちゃんっ!?」

 

 すると暫くしないうちに体がよろけ始めるベータちゃん。

 私はすかさず、支えに走り倒れるのを阻止する。

 

 ベータの顔色は真っ青という表現がまさに正しく、今にでも気絶してしまいそうだった。

 

「だ、大丈夫!?」

「ひと……多い…です」

 

 普段からベータちゃんは人をよく見る子だと言うことは分かってはいたが、それが悪い方向へと転じてしまったようだ。

 

「と、とりあえず…あそこのお店まで行こっか!」

「は、い」

 

 具合の悪そうなベータを急いで人のいなそうな路地裏を覗いてみると、人気の少ないゲーム店が鎮座していたのでそこに駆け込みその隅にあるベンチに座った。

 外にいるよりかはお店の中の方が人は少ないため、次第にベータの体調は良くなっているように感じる。

 

「大丈夫?ベータちゃん」

「はい、ありがとう…ございます」

 

 ベータちゃんはダラリと緊張が抜けたかのように体から力が抜け、私の肩に体重を預けられる。

 

「ごめん…なさい」

「ううん、少しだけこうしていよっか」

 

 微かな呼吸音が耳をくすぐる。

 どうやら少しは安心できたようだった。

 

 ベータちゃんの体調が戻るまで辺りを見渡してみると、本当に人が少ないゲーム店だなと思った。

 そこそこの広さはしているがその広さに対して遥かに少ない人数、もしや倒産の危機なのではなかろうかと邪推してしまうほどだ。

 

「おや、カップルかい?」

「…え?」

 

 見渡しているとある老犬さんに話しかけられた。

 

「あ、い、いや違います」

「そうなのかい?まぁ、仲のいいことはいい事さね」

 

 ケラケラと笑う老犬さん、その姿をよく見るとネームプレートのようなものが目に入ったので店員さんなのだろうか。

 

「いきなり話しかけてしまってすまないね、私はここの店長をしているのだが、一つ頼まれてはくれないだろうか」

 

 なんと店員さんではなく店長さんだった。

 そんな人が私達に頼みとは一体何なのだろうか。

 

「はい、どうされましたか?」

「あぁ、それが…周りを見てみるとわかると思うのだが、ガラガラだろう?」

 

 いきなりそんなことを言われた。

 

「え?そんな事は…」

 

 改めて辺りを見渡すと先程までいた人達すらもう既に姿を消していて今や私たちだけとなってしまっている。

 

「取り繕わなくていいさね、それでね」

 

 コホンと一息をつき、言葉を告げる。

 

「何本かゲームカセットを持っていってはくれないかい?」

「え?なんでですか?」

「倒産しかけているからだよお嬢さん」

 

 邪推だと思った事はどうやら真実だったらしい。

 心なしか店長さんの目からは寂しさのようなものを感じ取れてこちらまで落ち込んでしまう。

 

「そう…ですか」

「はは、初来店のお客さんにそこまで寂しがってくれるんだったらやってきたかいがあったねぇ…私はね、ゲームが好きなんだが、そんなゲームが廃棄になるのはどうしても辛抱ならなくてねぇ……」

「…」

「それで、どうだい?貰ってはくれまいか?」

 

 本来ならば絶対にお金を払うべきだとは分かってはいるが、無理にでも払おうとするべきでは無いことが分かる。

 この人の親切を無下にするべきではないのだろう。

 

「…なんで…ですか?」

 

 ベータちゃんが疑問を投げかける。

 当然の疑問、倒産する云々以前に、見ず知らずのたまたま立ち寄ったゲーム店でいきなり無料でいいから持っていけと言われたら誰しも警戒するのだろう。

 

「気まぐれさね」

「それ…だけ?」

「あぁ、それだけ」

 

 しばらく店長さんの目をじっと見つめるベータちゃんは納得したかのようにコクリと頷いた。

 その言葉が真実だという確証を得たのだろう。

 

「それで、貰ってくれるかな?」

「…どうする?ベータちゃん」

 

 そこで私はベータちゃんに投げかける。

 

「…欲しい…です」

「ならよかったよ。5本でも10本でも持ってっちゃいなっ!」

 

 私達はその言葉に甘えることにした。

 何故こんなにもいい店長さんが運営するゲーム店が倒産の危機なのだろう。

 思い返してみると、このゲーム店はかなり立地が悪いのかもしれない。

 路地裏を覗かないと見つからない場所に立てられており、ここよりも遥かに行きやすいゲーム店の方が多く次第に客足が遠のいたのだろうか?

 

「わぁ、目がチカチカするほどあるね…!」

 

 ベンチから立ち上がり、ずらりと並んであるゲームソフト群を鑑賞する。

 正直言って私はあまりゲームというものをやらないので、こういった手の物は詳しくはないし、その楽しみ方すらも素人同然だ。

 

「何か欲しいものあったりする?」

「なんでも…あ、いやこれ」

 

 何にするか困ってしまってベータちゃんに投げかけてみてみると、目に止まったソフトがあったらしく、そのソフトに手を伸ばし手に取った。

 

「格闘ゲームってやつ?」

「はい…なんだか、妙にやってみたく…て」

 

 普段のベータちゃんからは考えられないくらいにゲームソフトに興味を示している。

 もしやベータちゃんってゲーム好きになれる素質を持っているのだろうか。

 

「おおっ!いいもん選ぶねぇお嬢さん」

 

 いきなり背後から先程の店長さんに話し掛けられる。

 

「…そう…ですか?」

「あぁ!それは今話題沸騰中のブルーファイターズ6って言ってね、前作の不況から蘇った伝説の人気ゲームさね!!いやぁ、前作は私もやったんだが、周りの評価があまり芳しくなくてねぇ、当然私は好きだったよ!!何より革新的だったのは……」

 

 ゲームの話になるやいなや先程までの落ち着いた雰囲気がなりを潜め、饒舌に語り始める。

 ゲーム店を経営する程だからゲームが本当に大好きな人なんだろうなぁ。

 

「分かり…ました、やってみます」

「おおっ!ぜひやって見てくれまいか!あっ、ゲームハードは持っているかい?」

「ない…です」

「ならこれも持っていくといい!」

 

 そしておもむろに懐から出したのは一つのゲーム機であった。

 ゲームの事をあまり知らない私でも知っている程の人気を誇る高価なゲーム機だ。

 

「て、店長さん…それは流石に…」

「いいんだよ、もう潰れてしまう店で売れ残っちまったもんだ。このままホコリ被るより使ってもらった方がいいさね」

「…ユメ先輩」

「……じゃあこういうのはどうですか?店長さん」

 

 私はある提案を店長さんに投げかける。

 

「一日このお店の手伝いをさせてください」

「…そんなことしなくとも…」

「私達の気が収まらないんです!ねっ、ベータちゃん!」

「…え?…………まぁ、はい」

 

 依然としてニコニコしながら受け答えしていたベータちゃんが少し動揺したのが見て取れるが、ただ貰っているばかりでダメだ。

 

「…わかった、じゃあ日が沈むまでよろしく頼む」

「まっかされました!!」

 

 という事で私達は今日一日手伝うことになった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 夕日が沈み夜が訪れた頃、私達はアビドス高等学校への帰路に着いていた。

 店長さんからのお手伝いの内容は全フロアの清掃作業だったのだが、これが中々に苦戦を強いられた為かなり疲弊している。

 

「疲れ…ました」

「あはは、なかなかの広さだったからね…ほら、お水」

 

 お店の手伝いを初め、8時間ほどの労働で完全に息が切れているベータちゃんにお水を差し出すと、両手で受け取りちびちびとお水を飲み始める。

 

 今回D.U.で何か買い物をするかもしれないと少しだけ大きなバックを持ってきてはいたが、まさかゲームソフトとゲーム機でいっぱいになるとは夢にも思わなかった。

 

 お手伝いが終わった後に、主にベータちゃんと店長さんが会話していたのだが、まるでゲーム好きな孫とゲーム好きなおじいちゃんのようなやり取りをしていたら、あれやこれやと言ったように数多なる名作と呼ばれるゲームを山ほど貰ってしまった。

 

「…面倒…くさかった…です」

「こーら、ダメだよベータちゃん、ただ貰ってばっかりじゃ良くないよ?」

「むぅ…なんで、ですか?」

 

 この4ヶ月間でベータちゃんの事が少しだかわかったような気がする。

 ベータちゃんは、どうでもいいと物事を軽く考える癖があるのと、あまりそういう素振りは見せないが、少しだけ面倒臭がり屋の側面もあるようだ。

 

 ベータちゃんは言われた事はやるし、しっかりできる。

 一度でもお願い事をしたら絶対にやってくれるし着いてきてもくれるが、自発的に動くことなんて滅多に見ないし周りのことなんてあまり気にしていないように思える。

 

 だけれども最近は少しつづだが改善している。

 私達のことを好きになってくれたのか、はたまたアビドス高等学校を居場所だと思ってくれたのかは分からないが、多少なりとも関心を示してくれるし、話しかけてくれる回数も以前よりかは増えているように思えるのでとても嬉しい変化である。

 

 そんなベータちゃんを先輩としてより良い方向へと歩ませてあげなければならない。

 

「いい?ベータちゃん、この世は助け合いで成り立ってるんだよ?」

「…え?」

「一人が一人を助けて、その一人が感化されてまた一人を助ける。それの繰り返しで世界は色付くの。」

「…よく分かりません…」

 

 本当によく分からないかのように俯くベータちゃんの頬をスッと両手で優しく上げ、両目をしっかりと見る。

 

「今は分からなくていい、きっとすぐにでも分かるはずだから」

「どう…して?」

「ふふ、秘密」

「むぅ…」

 

 そうだ、今はわからなくていい

 きっと、ホシノちゃんやこれからの後輩達がベータちゃんを助けてくれるし愛してくれるだろうから、その時にもっとベータちゃんの世界は広がるはずなのだから。

 

「ベータちゃん」

「は…い?」

「ホシノちゃんを助けてあげてね」

「え?」

「ホシノちゃんは思い詰めやすい子だし、ベータちゃんにならきっと心をさらけ出してくれるはずだから」

「……もし、ダメなら?」

「その時は寄り添い続けてあげてね」

 

 酷な事を言っている自覚はある。

 だけれど、言わなければいけないと思った。

 

 私は貴方達の先輩、私はベータちゃん達よりも早く卒業してしまう。

 私が卒業した後はは二人で助け合わなければいけない。

 

「分かり…ました」

「ありがとう、ベータちゃん」

 

 最後に頭を撫でてまた私たちはアビドス高等学校に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 ガチャガチャとコントローラーを握り、いつにもなく真剣に、そして苛烈にこの悪しき者をボッコボコに…

 

「ふ、ふふ、べ、ベータ…負けるのなら今のうちですよ…」

「そんな…体力して、よく言える」

 

 上の体力バーなんてものは見たくもない。

 今はベータとの真剣勝負故に他に集中するのは良くない事だと私的には思うのであって、決して私一割、ベータが九割以上の体力という現状を直視したくないわけではない

 

「体力?そんな所に目がいっていて大丈夫なんですか?見ていてください、今から巻き返しを……」

 

《Time is up!!!》

 

「…へ?」

 

 いきなりこの画面の先の実況がタイムアップを宣言してきやがる。

 リアル世界ならばタイムアップと言わずに相手が倒れるまで続くのが当たり前であって、ここから巻き返せる保証はどこにもないのはそうですが、巻き返せない確証もない訳であって、漫画で言うところの主人公の覚醒シーンとかは正に今起こっていても不思議では無いというのにこの機械やろうは…

 

「私の…勝ち…だね」

「ぐ…ぎぎぎ…」

「ふふ、甘い…ね」

「んぁぁあ!!クソゲーです、こんなの!!」

 

 ベータに煽られた為現実を直視するしかなくなってしまった。

 なんなんですか?30対0?

 は?馬鹿なんですか?さっき一緒に始めたばかりですよね?なんでこんなに実力差が離れてるんですか?

 

「大体キャラが強いんですよ!キャラが!アビンバルト君なんてふざけた名前しやがって!!」

「可愛い…よね」

「最初だけでしたけどね!?ボコられ始めた時からは殺意しか湧きませんでしたよっ!ばーか!!」

「おぉ、いつにもなく口が悪い…ね」

「ふんっ!知らないですよーだ!」

 

 少しくらい手加減してくれたっていいんじゃないんですか!?

 いっつもアビンバルト君なる輩に画面が占領される屈辱たるやこれ如何に…!!

 

「ホシノ…」

「こうなったら…こうです!!」

 

 私は恐らく血迷っているのだろうが勝つ為ならば手段を選んでは居られない、私は勢いよくベータの膝と膝の間に収まり物理的にベータ視界を狭め開始ボタンを押す。

 

「あっ!ちょ!?ホシノ…!?」

 

 ふふ、ベータが悪いのです。

 これで私の勝ちは決まったようなものですよ!!

 

 そう、私は気づいたのだ、何故ベータがこんなにも上達が早くて体力を削らせてくれないのかをっ!

 それはベータの特異性から来るものだろうと!!観察力の高さがゲームとの相性が抜群によく重なってしまったのだろう事を!!

 

 ただ視界を塞いでるだけなんて言う正論は聞きたくないっ!!

 

「ベータ…今のうちに負けを宣言した方がいいのではないですか?」

「そっちが…その気なら私は…」

「わきゃぁ!?」

 

 ベータが私の腰を両の腕で優しく擦ってきやがったので変な声が出てしまう。

 小癪なベータ…矮小で小癪な卑怯者ぉ!!

 

「ちょっ、あはっ…やめっ」

「負けを…宣言する?」

「ま、負けまっ!?くっ、負けませんっ!」

 

 そう負けてなるものかっ!!

 私はベータにさらなる攻撃を仕掛ける。

 

「わっ!?んふ…ちょ、」

 

 ベータの頬に後頭部ですりすりしてやり、焦点を定めさせずらくする。

 

「くっ…!!」

 

 その効果は絶大らしく、今までにないほどの私が優勢側に立っている。

 この好機を無駄にはしないっ!!

 

「ふぅ〜」

「んあぁ!?」

 

 私がコンボを繋げて勝負を仕掛けに行こうと思った矢先に耳に息を吹きけられ意識に反して体が跳ね上がってしまう。

 こいつ!?やりやがったな!?

 

「ふふ…甘い…ね」

「ふ、ふふふふ、いいですよベータ…とことんやってやりますよ!!」

 

 そこからはもはやリアルファイトと言っても差し支えなかった。

 お互いにコントローラーからは手を離せないのでちょっとした妨害合戦、私が肘で脇腹を優しく当てくすぐるようにしたり、それの反撃で首元に息を吹きかけられたりの小競り合い。

 

「ここで…決めるっ!!」

「させません!!」

 

 そしてこの勝負は最終局面を迎える。

 余裕がなくなり勝負を焦ってしまったベータに私はすかさずカウンター技を繰り出し反撃をしようとする。

 

「な…に!?」

「私の勝ちですべーたぁ!!」

 

《Draw!!》

 

「「へ?」」

 

 なんと結果はDraw、この勝負は持ち越しとなってしまったようだ。

 

「…」

「…」

 

 お互いに目を見合わせる。

 

「「ぷっ、あははっ」」

 

 先程までギスギスしていたというのに、心の底から笑いあった。

 リベンジマッチはまた今度としてあげましょうベータ、次は絶対に勝ちますからね?

 

 

 

 

 

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