「ツマラナイ」
レ級はそう呟き、部下の駆逐からの報告を聴いて、岩に座り足をプラプラとさせながら空を見上げる。
深海棲艦のエリートとして着任し、拠点を防衛、敵精鋭部隊を追い返すように
圧倒的な我が軍に世界は陥落するかと思ったが、さすがは人間、艦娘という兵器を使って、ギリギリで耐えている。
「ナァニ、レ級、ヒマソウナ顔ね」
「ボス」
レ級は声に振り替える。
ツインテールの人型深海棲艦の南方凄鬼が私にラムネを手渡す。
人間のつくる食べ物はうまい。
生の魚より、好きだ。
だから、上層部は人間を生かさず、かといって絶滅もさせず大規模な攻勢にでようとしない。
ラムネを一気に飲み干した後、太陽にラムネの瓶をかざす。
綺麗だなと思ったが、すぐに飽きたレ級はその瓶をつまらなそうに海中に放り投げる。
軽巡からタコが差し出される。
腹がすいていたレ級はそれを食べる。
食べている時に姫が、つぶやく。
「ヒマ、ネェ」
「ヘンダ」
ごくりとタコを飲み込んでゲップしたレ級はつぶやく、
姫はレ級の顔を見る。
「ココスウネンで、カンムス、カズ、ヘッタ」
タコを手に取ってぬめりがとれないから部下の駆逐に手をなめさせながらレ級は報告とも意見とも取れないことを口にする。
「ココカライチバン、チカイ、チンジュフ、ヨワカッタ」
岩から飛び降りて尻尾を撫でながらニヤリとレ級は笑う。
「ダガ、サイキン、ツヨクナッタ。ソレニ、ツカレヲミセナクナッタ。センカンモタオシテル。ナンドモ」
南方凄姫は微笑みながら無邪気なレ級の意見に耳を傾ける。
「ナァ、ボス」
「ナァニ」
「タタカウ。イマノヤツラ、ドレクライツヨイカ、タシカメル」
「イイワ」
「ホントカ!」
指笛で水雷戦隊の随伴艦をよびつけて、レ級は近くの鎮守府へと出撃した。
そう、我が変人提督の鎮守府へと―――――。
※ ※ ※
レ級は鼻歌を歌いながら鎮守府へと目指す。
敵索敵機が飛んできたので、尻尾で薙ぎ払い、まっすぐ、鎮守府へと向かう。
「オマエタチハ、ワタシノタテダ、イイナ」
部下に指示する。
「イーッ!」
部下たちは鳴いて返事する。
「ヨウシ、コノヘンデイイダロウ」
超弩級戦艦と空母が一隻ずつ。
後続に重巡含む水雷戦隊を補足し、レ級は艦載機を出した。
「妙ですね」
加賀は索敵機から脱出した妖精からの電報を聴く。
「どうかしましたか?」
大和は一旦艦隊を停止させ、加賀からの報告を待つ。
「索敵機が全て破壊されました」
「まだ、南西海域を抜けたばかりですよ?敵の主力はもう当分出てこないはずですし」
大和が顎に手を当てて思案する。
「えぇ、敵空母はほとんど倒したはずですし、何かの間違いかと思ったのですが」
「何とかします!」 阿武隈はうろたえるもそう宣言する。
「夕立がやっつけるっぽい!」
「摩耶さまに任せとけば大丈夫だ。安心しろ。加賀」
「え、えぇ」
大和を旗艦に(大和自身のわがままで)して随伴艦に加賀、摩耶、阿武隈、曙、夕立。
この艦隊はアリューシャン方面攻略の艦隊で十分すぎる顔ぶれではあるのだが。
「どうせ、倒し忘れた敵空母の悪あがきでしょ」
曙がそういうが、加賀は首を振る。
「索敵機の練度は最大でしたし、数もほとんど残っていたのが全滅です。大和」
「はい」
「悪い予感がします。ここは警戒を厳に――――」
「敵艦載機!」摩耶が対空砲で迎撃する。
阿武隈率いる水雷戦隊も対空射撃をする。
だが――――。
「ぐあっ!」
「頭に来ました」
摩耶が中破、加賀が小破する。
霧がかかり始め、先がよく見えない。
よく目を凝らし、先方を見る。
霧が晴れる。
そこには見たことのない敵艦がいた。
黒いフードを被り、黒い水着のような装甲、ショートヘアの白い髪にギザギザで好戦的な口元。
尻尾がそれ単体で深海棲艦と思わせるほど不気味で―――。
「アハッ、ザンネン、クウボハ、ヤレナカッタカ」
阿武隈が甲標的で先制雷撃をしようとするも、魚雷が接近する。
予備動作をせずに魚雷がくるということは――――。
「先制雷撃です!回避!」
大和がそう叫ぶが阿武隈と夕立に直撃。
「もうバカぁ、これじゃあ戦えな、くは、ないけど」
「阿武隈大破、夕立中破、加賀!」
大和が命令を出し、加賀が艦載機を出す。
艦載機(九七艦攻と彗星)が敵を襲う。
「ムダムダ、チカラブソク」
味方軽巡を持ち上げて、レ級は盾にする。
「そんな―――」
全弾的軽巡とレ級に命中したが、敵はびくともしなかった。
「クソが!」
「いっけぇ!」
摩耶と曙が主砲斉射。
だが敵の装甲は見た目よりもかなり分厚くいやそれどころか
「今の私か、それ以上の―――」
大和は絶句する。
撤退を叫ぼうとする大和の懐にレ級は移動する。
「なっ――――」
「スキアリ」
至近距離で砲撃が大和に直撃。
大和、大破。
「この私が一撃でなんて」
そこからは乱戦だった。
撤退する隙を作ろうと、夕立が格闘しつつ、至近距離から魚雷を放つ。
トラウマを乗り越え、放たれた魚雷は命中するもそれは敵駆逐の轟沈だけ。
というより、完全にレ級は味方をを肉の盾として使っていた。
深海棲艦はこちらと違い、資源も潤沢で、駆逐は死ねといえば喜んで死ぬ。
そこに士気や倫理など関係ない。
法もない。
ただ純粋な暴力。
レ級は曙に近づき、曙はレ級に主砲を構える。
しかし。
「オソイ」
「ぐあ!」
主砲をくらい曙は大破する。
「ハズシタカ」
レ級は直撃しなかったことに舌打ちする。
レ級の尻尾が曙の首から上を締め付ける。
締め付けに曙は抵抗もむなしく、気絶。
絶望する大和達。
しかし。
夜になる。
どこからか照明弾が放たれる。
「探照灯照射、夜戦で一気に片を付けます」
第二改装を終えた精鋭二水戦の神通率いる水雷戦隊、変人提督の上司にあたる中将の艦隊がレ級の前に立ちはだかる。
レ級は笑って、神通に向き直るが、レ級は電報を受信し、撤退していった。
気絶した曙が解放され、神通が受け止める。
「帰りましょう。報告は私がしておきます」
損傷が軽微な加賀が大和を、神通率いる艦隊が他の傷ついた艦を支え、艦隊は帰投した。
※ ※ ※
俺は入渠を終えた大和達から報告を聴き、さらに上司からも連絡を受ける。
大本営はあの敵個体をレ級と呼んでいる。
「あれで、姫級より個体数が多いのかよ。ってか姫級はあれより強いって。萎えるわ~」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ、このクズ!」
「へいへい。仕事しまぁす」
「たくっだらしないったら!」
霞と共に執務をこなしがら、俺は考える。
「普通の演習じゃらちが明かないし、資源もまぁ前の作戦の報酬でたまっているが――」
「失礼します」
「入れ」
「神通です。本日は敵の急襲にも関わらず、全艦轟沈せず、無事でした。これはレ級の資料です」
「あ、ありがとう。中将のところの、えっと―――」
「神通です。以後お見知りおきを」
「あぁ。お茶でも飲んでいくか?大したもてなしはできないが」
「いえ、お気遣いなく、私はすぐにでも出撃しないといけません」
「そうか。なぁ」
「なんでしょうか?」
「あれは、勝てる敵なのか?」
「あれと戦って勝てるのは将校の艦娘です。だからイエスであるが、あなたの艦隊で勝てるかと言ったらノーでしょう」
「そっか」
「では失礼します」
執務室を神通が後にし、残された俺は、執務をしながら大和達をどう励ますか考えていた。
「うーん、わからん」
「はぁ?もう仕事には慣れたでしょ!どこよ?」
「書類じゃなくて、なんで急にあいつが来たかってこと」
「それは―――」
霞が口ごもる。
「ショックなのは完全にうちの艦隊の行動が読まれていたことだな」
「えぇ、そうね」
「しばらく、出撃はやめようかな~」
「大和が責任感じるからやめなさい」
「だって、負けるとわかっているのに出撃させるのってなんか違うじゃん」
「どうする気なの?」
「ん~一応あれって戦艦らしいよな」
「まぁね」
「艦載機と主砲と魚雷を持っているけど爆雷はもってないよな?」
「何が言いたいの?」
「よし」
「なにか作戦思いついたの?」
「寝る」
「バカぁ!」
ほのぼのだと飽きたと思ったので書きました。