UAが一日百いったら嬉しいなと思ったり。
面接でこう聞かれた。
なぜあなたは提督になりたいんですか?
俺はこう答えた。
艦娘にばかりまかせて平和にあぐらをかいているのではなく、一個人として国家にしっかりと恩返しがしたい。
自分の療養中のありがたみについて触れそのことについて話した。
幸い、俺は軍需産業のライン工だったし管理職業務の補助をやって採用試験でもまぁまぁの成績だったこともあり、採用された。
大戦中ということもあり三か月で必死に座学を詰め込み、艦娘との演習を通して大体のことはわかり戦績はまぁ上位だった。
嬉しかったのは軍学校で艦娘との対面の時に俺が保護した夕立と出会えたことだ。
世界は案外狭いもんだ。
夕立は特に俺に懐いており、怪訝な顔をされた他の艦娘から疑いの目を向けられたが、俺は誤魔化した。
ぶっちゃけ本当のところを言えば、艦娘のことも、国のことも、戦争がどうなるか知ったこっちゃないし、金も別に大金のために死ぬほど努力するほどの愚かさは身に染みている。
なんというか単純に美少女に囲まれて権力を手にした自分がどういう人間なのか確かめたかっただけだ。
人間は権力を与えられたりどたんばで本性が出るという。
俺は自分の本性が知りたかった。
かなり変な動機というのはわかっているが、どうしても暇な生活と戦争中の世界とのギャップでもうちょっと自分を知りたいっていうのもあったかもしれない。
まぁともかくそれでも過去に精神疾患があったことや、厳しい労働環境であることも踏まえ、面接時に相談し、期限付きの幹部候補生としての就任が決まった。
「俺も少佐か~期限付き、というか、年内に昇進できなかったら即クビだけど」
初期艦というもので鎮守府を一から立て直すのではなく、辞めた提督のいる鎮守府に着任した。
まぁ俗にいうブラック鎮守府という奴に左遷だ。
とほほ。
大淀と呼ばれるメガネでスレンダーな艦娘に鎮守府到着後、案内される。
大淀の表情から鑑みるに、期待も絶望もせず品定めしている感じだった。
愛想笑いすらせず、機械のように立ち振る舞う。
痛々しい出撃の後の埃を落とさずに俺を迎えている時点で初対面からいろいろと自分を大事にしていない感じがひしひしと伝わってくる。
執務室に案内され、研修あがりの俺でもできる書類仕事の紙の束を机にドンッと乗せられた後、大淀は眼鏡をくいっと上げていった。
「提督、この鎮守府の運用方針を教えてください」
「そうだなぁ」
俺の上司はかなりのやり手で理屈っぽい奴だからまぁ聞かれたことには簡潔に答えてくれる。
正直にどれくらいの戦果なら最低限よくて、理想はどのくらいで、どのくらいの戦果と轟沈数と使用した資源がいいか、事細かく聞き出し、それについて俺が入院していたころの活動限界を鑑みるに、一日6時間勤務で月に100前後の戦果を挙げればいいという。
理想は1500、すごいのは3000以上らしい。
ただ正面海域の戦果はほぼ0に等しく、潜水艦や戦艦を一度に倒すと敵が強大になるといった夕立の勘から察するにまぁ所属する艦娘の練度によるだろう。
「資源はどのくらいある?」
「備蓄と自然回復量についての資料です」
「どうも」
「うーん、やっぱり燃料がネックだな」
「はい、ロシアやアメリカとのシーレーンを奪還しないとでですね」
「遠征一回当たり燃料はどのくらい手に入る?」
「燃料はこの鎮守府周辺の海域でも戦艦クラスが哨戒しており突破は困難かと」
「補給艦の襲撃は?」
「やってみましたが、深海棲艦の使う油と我々の使う油との純度は圧倒的にわが軍の油に求められる水準よりも得られる油の水準が下回っており」
「ああそうか。うーん。まぁた特攻とか訳の分からないことになるからな。弾薬やボーキサイトは?」
「それなら潤沢とまではいきませんが、まあある程度は」
「空母の練度は?」
「低くはありませんが、士気が低く」
「なぜ?」
「護衛艦の大破に心を痛める艦が多く」
「うーん、じゃあ一番練度の高い艦娘を一艦隊分呼んでくれ」
「はい」
「そいつらの意見を参考にするわ」
そして呼び出された艦娘は以下の6名。
大和、大井、夕立、摩耶、暁、加賀。
さてこれからどうするかな。
※ ※ ※
夕立は微笑んでいるが後の5人、特に摩耶、大井の敵意丸出しの視線がすごいな。
旗艦の大和を見るが、あれ俺の受けた講義内容が間違っていなければ中破してないか?
「大淀」
「はい」
「大和が中破のままだが、入渠をなんでさせない?」
「申し訳ありません。前任が大和は大破するまで入渠はするなと」
「いやあ、まぁ言いたいことはわかるけど、ちょっと目の毒だな」
大和本人は初対面の男に胸の谷間を見せるのが恥ずかしいらしく、ちょっと赤面して俺から視線をそらしている。
大井と摩耶が不機嫌なのはこのためか。
加賀は……何考えているか一切わからん。
「大和」
「はい」
そういって敬礼しようとして艤装がはだけそうになるのを慌ててなおそうとする彼女を見て俺は言った。
「高速修復材を使ってくれ」
「え、ですが」
「いいから。資源を大量消費するとはいえ、練度が一番高い君が中破していると艦隊全体の士気にかかわる」
「はい」
大淀に大和が連れられ、簡単に自己紹介を俺がして後の5人から艦隊運用についての意見をざっくり聞いたが、まぁそれはそれとして(夕立以外ほとんど愚痴だが)。
入渠を終えた大和を改めて執務室に呼び出す。
「大和」
「はい」
「正直に言えば君を使って勝てるのならばそれに越したことはないし前任もそうだった。上層部から君の火力のすごさは聞いている」
「はぁ」
「だが、当分、君にはすべての業務を一旦休んでもらう」
「なぜですか?」
「目の下に隈ができているし、正直君だけを活躍させても資源がもったいないというか、他の駆逐艦の練度をあげないことには哨戒もできない」
「大和は提督のお役に立てないということでしょうか」
「いや、休みをとりあえず一週間与える。その後は演習を中心に回避運動を中心とした訓練を積ませる」
「回避……ですか」
「まぁ君が艦だったころに比べれば今の方がはるかに回避運動がしやすいと思うし、火力よりも沈まない方がいまの我々の艦隊には必要なんだ」
「でも私が出撃しなければ敵戦艦と渡り合えるような艦は……」
「勘違いしているようだが、別に摩耶でも夕立でも条件さえ整えれば敵戦艦と互角に戦える。仕方のないことだが、慢心が生まれてきている」
「大和を使わないで駆逐艦を育てる方針も最初の提督は推奨していましたが、それではあまりに提督への負担が」
「勝てないからか?」
「というより、出撃の回数を増やさなければ戦果を頂けませんし、私もたくさん資源を使いますが、駆逐艦を酷使すれば結果的に私の一回の出撃や被害の数字よりも多くなってしまいます」
「一理あるが、何も資源の効率だけで君の代わりに駆逐艦を出撃させるわけじゃない」
「というと?」
「現在我々の艦隊はどうもキス島攻略に難航している」
「はい」
「それはなぜだと思う?」
「火力のせいでは?」
「俺の見立ては違う。単純に戦艦や空母では敵の深部までに被弾が多すぎてしかも到達が遅すぎる」
「それは」
「駆逐艦で一気に潮の低くなる時間に敵の深部まで到達し、旗艦を沈めなければならないと思う」
「そういう考え方も一部では上がってきています。ですが駆逐艦では」
「普通ならそうだ」
「?」
「索敵値も足らず、魚雷ばかり詰め込んでいるからっていうのもあるが、普通の駆逐艦の速度では、潮の低い時間に会敵するのは無謀だ」
「ではどうするのですか?」
「電探とタービンを全ての駆逐艦に詰め込み、旗艦の駆逐艦の夜戦雷撃だけで敵旗艦を倒す」
「無謀ではないですか?」
「無謀かどうかはやってみなければわからない」
「駆逐艦に電探を乗せたところで」
「一隻ならな、だが、一艦隊ならば違う」
「わかりました。そういうことでしたら私はしばらく睡眠をとらせてもらいます」
「そうしてくれると助かる。あと暇になったら映画でも見てくれ」
「映画……?」
「パソコンで見れるから」
「そうなのですか?」
「あぁそれでしばらく英気を養ってくれ、魚は無理だが、米と乾燥肉の献立なら腹いっぱい食べて構わん」
「いいのでしょうか」
「いいんだ。どうせ俺もいつまで君の面倒を見てやれるかわからないから今のうちにねぎらっておく」
「ありがとうございます」
そういって部屋を後にする大和には戸惑いの表情とひそかな期待が心なしか表れているような気がした。
うーん、とりあえず一番好きな艦娘をえらんだぞい!