夕立の戦歴を軽く確認する。
多数の魚雷を外すも奮戦し戦艦と敵が見間違うほどの戦果を挙げた駆逐艦。
米艦隊を恐怖に陥れ、ハンモックを外してでも突進する勇猛果敢さは有名らしい。
だが最後は味方からの自沈魚雷すら外され敵の砲撃によってアイアムボトムサウンドに沈んだ駆逐艦。
天真爛漫で無邪気な性格だが戦闘になると豹変。
ここまで一通り読んで俺は書類をばさりと目の前に投げる。
※※※
ベッドから勢いよく起き上がる。
寝汗がひどく、なぜか艦としての記憶がフラッシュバックする。
目の前で由良が――――。
たくさん敵を沈めて一人で傷つきながら突進しても結局味方の人員を救ったのは五月雨だ。
至近距離で放った魚雷がことごとく外れる。
周囲は暗く、私は孤立し、味方との連携も断絶された。
頑張れば報われる。
敵を倒せば救われる。
そう思っていた。
だけど――――――。
今の提督は変だ。
私たちが活躍することを望まない。
頑張ることを望まない。
お菓子をくれる。
頭を撫でてくれる。
だけど気を遣っているわけじゃない。
哀れにも思っていない。
女の子としての姿に下心があるわけでもない。
失敗を責めない。
だからといって弱音も吐く、仕事も熱心ではないがきっちりやるところはやる。
何を考えているか実際のところよくわからない。
変な人っぽい。
喉の渇きに私は食堂に向かう。
コップに水を入れて飲む。
一息つく。
ぎゅるるる。
なんだか柄にもなく考えてしまい、小腹がすいた。
いつもなら我慢して寝る。
だけどつまみ食いをしてあの提督は怒るだろうか。
わからない。
なんとなく提督の顔が見たくなり、執務室を訪れる。
寝ている提督の顔を見る。
うなされずごく普通にパジャマに着替えて寝ている。
思わず彼の体を揺らしてしまう。
彼が起きるが、私は何を言えばいいかわからない。
「どうした?」
「お腹すいたっぽい」
「あぁ~今何時だ?」
彼はそういって時計を見る。
「4時半か。まぁ二度寝すればいいか」
よっと彼は起きて、私と一緒に食堂に向かう。
「間宮の食事はうまいけど薄味なんだよな」
私は同意する。
「まぁ醤油が貴重品だから仕方ないとはいえ……さて何食べるか」
「食べていいの?」
「うん?それで起こしたんじゃないのか?」
「けど……」
「まぁ俺も実をいうと腹減って熟睡できなくてな……まだご飯あるな」
炊飯器を開けて確認する彼の横顔はどことなく大人びていて私はドキリとする。
提督はウィンナーをゆでてその後、インスタントの味噌汁を作ってくれた。
「いいの?」
「いいよ、別に俺も腹減ってたし」
「仕事頑張るっぽい?」
「いんや?」
「提督さんは……」
「ん?」
彼は味噌汁をすする。
「頑張らないで食べるご飯が美味しいの?」
「うーん、嫌味か……違うな、純粋にそう思っているのか?」
「ぽい」
「別にがんばったから飯が上手いのは確かだが、それにだって限界はある。毎日休日だった時も飯はうまかっただろうし」
「?」
「まぁ冷めるから、早く食え」
「ぽい」
みそ汁のあたたかな味がじんわりとほっとさせる。
食べ終えた後、私はパジャマ姿なことに気づく。
「どうした?」
「なんか恥ずかしいっぽい」
「そうか」
彼はそういって食器を片付ける。
「お仕事するっぽい?」
「いや、二度寝」
「食べた後すぐ寝るなって時雨が」
「俺は大人だからいいんだ」
「ずるいっぽい!」
「夕立は仕事頑張れよ~」
「むかつくっぽい!」
彼は笑う。
私たちの前でおかしそうに笑う。
安心させる微笑みではなく、自然な笑み。
それがなんだか嬉しくて。
私は鼻歌を歌いながら自室へと戻るのだった。
このくらいのクオリティなら毎日あげられるかも。