初対面で加賀は俺にこう言った。
赤城さんを二度と沈ませないで。
五航戦とは一緒にしないで。
ご飯を食べさせてください。
最後の言葉は少し赤面してためらいがちに言ったが、俺は全て了承した。
史実では、主に加賀は戦艦としてつくられたが、急遽空母として改装され、日中戦争や赤城と共にハワイで奮戦しミッドウェーで轟沈。
艦として運用はいろいろと問題を抱えていたものの、日本海軍の努力で改善をし最終的に誇りある南雲機動部隊の一航戦として名を連ねた。
注意点として焼き鳥に嫌悪感を持っている(ボイラーの配置で搭乗員や航空機が蒸し焼きになったことの比喩)
性格は赤城依存の曲がったことが大嫌い。不愛想だが命令はしっかりこなす。
俺は報告書を読みながら、加賀の顔を思い浮かべる。
執務を終え、散策していると、初日に掃除で綺麗にさせた道場で加賀が弓の鍛錬を行っていた。
「提督」
「おう」
「用があるなら、呼んでくだされば」
「いや、仕事じゃなく、まぁ暇つぶしだ。楽にしてくれ」
「はぁ」
バン!バン!ほとんどの弓矢が真ん中周辺を射抜く。
褒めようかまよう。やめた。
あんまり加賀には媚びへつらうより本音で向き合った方がいい感じがした。
鍛錬を終えて汗を拭く加賀にジュースを奢る。
「これは?」
「スポーツドリンクだ。といっても昔よりもずいぶん味が変わってしまったが」
「そうですか。よく冷えています」
加賀がふたを開けて飲み物を飲む。
なんか汗をかいて飲み物を飲んでいるだけなのに色気がすごいなと思ってしまう自分に苦笑いし目をそらす。
「ごちそうさまでした。独特な味ですので以後はお気遣いなく」
「おう。ゴミは妖精さんに渡せば処理してくれるらしい」
「そうですか」
「加賀」
「はい」
「単刀直入に聞く。戦うのはいやか?」
「赤城さんもいますし、今の提督は最初の頃の提督より自己管理を徹底されており、前任より誠実です」
「そうか」
「まぁあなたの任期が一年であることには驚きましたが」
「まぁ上層部が民間人を提督にするなら試用期間としてはそれくらいが妥当だろう」
「質問の」
「うん」
「質問の答えですが、正直に言えばわかりません」
「急に戦いに呼び出されて戸惑っているのか?」
「それも少しありますが、私が言いたいのは、何を目的に戦えばいいのかという点です」
「それはまぁ深海棲艦に侵略された我が国民を救うってところだがそういう答えを求めているのではないな?」
加賀は頷く。
「私たち南雲機動部隊は米軍に惨敗し、大戦では大敗。その後日本が高度経済成長で、米軍と和解し自衛隊が私たちの名で護衛艦を作ったという歴史は大体耳に入っています」
「そうだな。多分君が言いたいのは誇りとかそういう話か?」
「そうかもしれません、提督は」
「?」
「提督はずいぶんと夕立と仲が良いのですね」
「まぁきっかけみたいなもんだ」
「そうですか。まぁ命令さえあれば頑張りますし無謀な作戦を提案すれば意見具申しますのでご心配なく」
「そうか、悪かったな引き留めて」
「いえ」
ぎゅるるるるる。
赤城がすこし赤面する。
「我慢するな。好きなもんくってこい」
その日の晩、鳳翔から苦笑いと共に提供された大量の焼き鳥を頬張りながら、加賀は提督について考える。
「まぁいいでしょう。これからです」
赤城が隣の加賀に微笑みかける。
「加賀さん。今日はなんだか嬉しそうですね」
「そんなことはありません。それにしても」
赤城は首をかしげる。
「初めて食べましたが、こんなに焼き鳥が美味しいというのは少し、複雑です」
赤城と鳳翔が視線を合わせて笑う。
※ ※ ※
摩耶はなんか戦果がすごいことに感化されて防空技術のすごい艦というのがざっくりとした評価だ。
だが練度が一番高いといっても一部の鎮守府に配属された第二改装よりは程遠い練度である。
大井は重雷装巡洋艦というより練習艦と高速輸送艦としての戦歴で北上に対する依存心も鎮守府ごとに異なるらしい。
摩耶はとにかく派手な戦がしたいとのこと。
本人はどちらかというと器用な方なので、彼女だけを活躍させるのは至難の業である。
大井は先制雷撃ができるようになってから第二改装を終えている。
うーん、二人ともへそ出しで女性らしいスタイルであり、正直ものすごいアニメみたいなスタイルよりもそっちのほうが男としてやばかったりする。
命令を率先して聞く方ではないので好きにやらせている。
大井がよくわからんがいやらしい視線を向けなければ最低限のコミュニケーションはとれる。
摩耶は本人より外堀を埋めたほうが早かったりする。
なんだかんだ摩耶は駆逐艦に人気だし。
執務室のドアがノックもなく開けられる。
摩耶だった。
「おう。どうした」
「ノックがどうのこうのいわないんだな」
「まぁ夜遅くでなければ」
「そっか」
「で、なんか用か?」
「それなんだけどよ。今度の作戦で水雷戦隊(軽巡洋艦と駆逐艦で編成された艦隊の事)を中心に運用するだろ?演習だけじゃ暇なんだよ」
「あぁ~そうだな」
「あたし、書類仕事は苦手だし、輸送できるほど燃費もよくないし、体がなまっちまって」
「他の駆逐艦もそういう意見の奴は多いのか?」
「いやまぁほとんどはあんたの狙い通りお菓子と娯楽に夢中だけどよ」
「そうか」
「なぁこれじゃあいざという時、艦隊は大丈夫なのか?」
「焦って士気を下げなくすむ。妖精さんが教えてくれた演習で得られる経験値からすればむしろ多いくらいだ」
「でも上がなんていうか」
「そうだな。じゃあ南西諸島深部で一番軽い編成で攻略出来たら上も納得するだろ。お前が旗艦で軽巡一隻、駆逐4隻の随伴艦で敵を倒してこい」
「いいのか!?」
「言っておくが」
「わかってる!大破進撃と無茶はしない!だろ」
「おう、あと入渠前に報告に来なくていいから」
「いいのか?」
「おう」
「…………提督も男なんだな」
自分の服をにぎりしめながら摩耶は俺の言うことが即座に分かったらしい。
大井はどうするか。
うーん。まぁ自由にさせるか。
十分強いし。
「飯にすっか」
独り言をつぶやいて、食堂に向かおうとしたとき、廊下で夕立が頬を膨らませていた。
「ど、どうした?」
「摩耶さんに何を言ったっぽい!」
「怒るなよ!」
「やっぱり提督さんもそういう目で見てたっぽい!?」
「いや、だから夕立」
「最近、構ってくれないし大井さんにはへそばかり見てるってばれてるっぽい!」
「待ってくれ夕立」
「い~っだ!」
そういって走り去る夕立に俺は夕立に嫌われたと四つん這いになるほどのショックを受けてこう叫んだ。
「カムバアアアアアアアアアアック!」
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