私は出撃で大破した。
同じ第七駆逐隊の駆逐艦、潮が励ますが、彼女は私よりも気が弱いから、私が守ってあげなきゃ。
「報告書です」私が報告書を渡すと彼は微笑んでありがとうといって受け取る。
「あれだな」
「?」
「他の鎮守府の曙はクソ提督っていうんだが、なんかお前は言わないんだな」
「いえ、そういうわけには」
「前任か?」
彼は勘がどうでもいいところで鋭い。
「はい」
「まぁ、俺も上司をクソ呼ばわりする気持ちはわからなくもないが」
「叱らないんですか?」
「なんで?」
「大和を守れませんでしたし私は殺されかけましたし」
「それで怒るっていう考えについては怒りたいところだな」
「はぁ」
「命がけで死にかけた奴に説教できるほど俺は図々しくないしな」
「そうですか」
「それよりも曙みたいにかわいい子を殺す何て世界の損失だし」
アハハと彼は笑う。
「クソ提督!」
私は赤面して部屋を後にする。
かわいいって、初めて言われた。
最初の提督はクソっていうことに悲しそうな笑みを浮かべるだけ。
次の提督は、怒鳴り散らすだけ。
彼はそのどちらでもない。
私はドアの前でうずくまる。
「うぅ~」
ガチャリ。
執務室のドアが開く。
「あぁそれと」
提督がうずくまる私に声をかける。
「へ?」
「俺のことは好きに読んで構わんぞ。俺の機嫌が悪くない限り」
にっと笑ってさぁてメシメシという彼の言葉に呆然とする。
「クソ提督!」
「ん~?」
「わ、私は、今度は負けないから!」
「お~期待してるぞ~」
手をひらひらとふる彼に私は自分でもなんでかわからずぷりぷり怒りながら自室に戻る。
潮が私に声をかける。
「曙ちゃん」
「何?」
「なんかいいことあったの?」
「は、はぁ、何よ急に?」
「だって曙ちゃん、部屋に戻ってから耳真っ赤だし」
「~~~~~っこれは、暑いからよ!」
ニコニコと潮は微笑む。
「うぅ~ほっときなさいよ」
「提督の事?」
「!?」
「私も今の提督は嫌いじゃないよ。視線はときどきおっ―――胸に行ってるけど、基本的に目を見て話してくれるしかわいいっていってくれるし」
「はぁ、なによそれ!?」
「ど、どうしたの?」
「あたしにだけじゃなくて潮にも言ったの!?か、可愛いって」
「曙ちゃん」
「何よ!」
「そんなわかりやすく嫉妬しなくても」
「なによ、潮の癖に生意気!」
枕で潮に抗議するが、潮は嬉しそうだ。
「あんの、クソ提督~!」
※ ※ ※
「イク、ご飯食べてもいいの?」
「おう」
「もう資源のために出撃するの嫌なの」
「妖精さんに任せておけ」
「イクは魚雷打ちたいの!」
「おう、演習で好きなだけ撃ってこい!」
「提督~頭撫でるの!」
「ほらよ」
「えへへ~ありがとうなの!」
「提督~」
「なんだ?」
「肩こってるの?私が揉んであげるのね!ほら、こうやって!」
「痛い、痛い!それただ、叩いているだけだから!」
「提督は怒らないの?」
「女の子には怒らん。ババアと性悪女は別だが」
「イクは性悪なの?」
「性悪な奴は自分がそうなのか気にも留めないから心配するな」
出撃に失敗した時。
「イク!」
「なの~大破しちゃった。ごめんなの」
「うーん、やっぱり序盤海域だと潜水艦の練度をあげるのは不向きか」
提督、提督、提督――――。
執務室で夕立を抱きしめて彼女に耳を甘噛みされて頭を撫でている提督にイクはむかついたの!。
「てい!」
「ぽいっ!何するっぽい~!」
「提督はイクだけ見るの!」
提督はぎゅっとしてくれる。
あったかい。
「提督、だぁいすき!なの!」
※ ※ ※
今度の提督との初対面は今までの鬱憤を吐き出して彼の私のお、おへそへの視線に怒って終わったけど、北上さんのおへそを見ている。
視線はいやらしいが、ほとんど触ってこない。
最近では曙と霞が夕立と第六駆逐隊と一緒に提督と動き回っている。
北上さんも、私がいない間に彼と一緒にご飯を食べたことを嬉しそうに語っていた。
彼女の笑顔が増えるのは嬉しい。
だが、それが私ではなく、男の人だということに苛立ちを覚える。
作戦は可もなく不可もなく、時に大胆不敵、時に臆病。
底が見えない。
なにを考えている?
私は。
北上さんといることが幸せなのだろうか。
艦としての記憶は高速輸送艦だったころで終わっている。
実戦に重雷装巡洋艦として駆り出され、慣れない雷撃に苦労していることを彼は瞬時に見抜き、私に座学の教えを請うた。
「大井っちってさ~」
「チッその呼び名は北上さんだけです」
「お、おうそうか。なぁ大井~」
「なんですか」
「頼りにしてるぜ」
「当然です」
「顔赤いけど、なんだ?俺に惚れたか?」
「なっ―――――」
「魚雷を向けるな、おい、大井!」
「うふふ、提督、海の藻屑と、魚の餌、どちらがお望みですか!」
「どっちも沈むじゃん!」
「冗談ですよ」
「目が本気なんだが」
間宮さんと談笑する彼を見て、経験したことない感情が芽生える。
不快感のようでよくよく考えると胸が詰まるような――――。
「大井っちはさー」
北上がぽんと私に肩を置く。
「提督のご飯食べたことないもんね?」
フッと鼻でドヤ顔する北上さんにイラっとした。
私は両手で北上さんの両肩をつかむ。
「お、大井っち?顔が怖いよ!」
「さ、さぁ北上さん、座学の時間ですよ!」
「いや、大井っち、大井さん?」
「うふふふふふ」
北上さんの手を握る。
北上さんに駆逐艦が群がる。
「駆逐艦うざぁあい!」
こんな日々がずっと続けばいいのに。
書いていて飽きないですね。