オレルアンにてニーナ王女を旗印とする反ドルーア勢の決起
マルス達の存在が
「ほう、生きておったのか。」
それは敵手であるドルーアにも知る所となった。
アカネイア再興の為に残された一手
それを知ってもドルーアの皇帝メディウスはまるで動揺する事はなかった。
確かに根絶やしと出来なかったのは宜しくない。
だが、逆に相手の動きが想定しやすくなったのもまた事実。
「狩りそびれたのか、或いは。」
確かにアカネイア攻略において不徹底であった事は間違いない。
ドルーアとして戦力を動かしはしたが、それは所詮『替えの利く駒』程度のもの。
ドルーアには大きく二つの指揮系統が存在する。
メディウスが動かせる
そしてもう一つが、ガーネフが纏めた『反アカネイア』の思想を持つ者達だった。
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そもそもメディウスや他の竜人族からすれば、アカネイアは罪人の国であり、奪われたものを取り戻す事こそ至上命題。
アカネイアを滅ぼしたのもあくまでついでの部分が大きい。
ヒトは知らぬであろうが、ヒトとは竜族から竜人族。そして竜人族からヒトへと移り変わった結果であり、認め難い事ではあるがこの大陸の導き手として嘗ては己も認めたものだ。
それが過分な期待であったと今となっては後悔しか無いが。
メディウスとしてもヒトを根絶やしにしようとまでは考えていない。
考えているのならば、そもそもマケドニアやグルニアと結ぼう筈がないのだから。
ただ気になるのは
「知らぬものを知る、か。」
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時は少し遡り、オレルアン城における時間。
「…よもやオレルアンにまだ抵抗出来る余力があろうとは。」
オレルアン城内の守りを任されているマリオネスは忌々しげに呟く。
報告によると、城外のムラク率いる軍勢は敗れ敵はこの城を取り戻さんと程なく挑んでこよう。
一応撤退の用意をさせてはいるが、所詮気休めでしかない事を他ならぬマリオネス自身が理解していた。
何せ城外の友軍が敗れ去った以上、
祖国より遠く離れたこの地で孤立し、それで生き残れると思う程にマリオネスは夢を見ていない。
「…ミネルバ様に御助力を願うべきであったか。」
今更の話だが、そう思ってしまう。
何せ城内に居るのはマケドニアらしかぬ機動力や展開力に欠く重騎士や弓兵。
そして兵達だ。
「時間は我等にとって有利となるまい。
…であれば」
古来より籠城戦は攻め手よりも守りの方が優位とされる。
かの後に幕府を開いた徳川家康とて、東海一の弓取りこと今川義元公の息子
今川氏真の籠る掛川城を半年近く攻めながら落としきれなかった。
今川家にとって残り少ない拠点であった遠江掛川城。
頼みとしていた三国同盟が武田により破棄され、今川は甲斐と三河つまり武田と徳川より攻められていた。
相模北条の支援はあれど、本拠駿府を落とされた今川。
徳川の優勢は明らかであり、今川家臣の中にも武田や徳川に服した者も多くいた。
掛川城主朝比奈泰朝は数少ない落ち目の今川家に忠を誓う者であっても趨勢は明らか。
それでもなお、掛川城を徳川家康は落としきれず和睦。
氏真とその妻や泰朝らは北条を頼る事となる。
だが、それはあくまでも万全な備えあってのこと
オレルアン攻めはニーナ王女がオレルアンに逃れたからこそ起きたものであり、マケドニアにとっても予定外のこと
ましてや、オレルアン城を制圧し残敵掃討に移ろうと言う時に巻き返されるとはマリオネスならずとも思う筈もなし。
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「…まぁそうするしかないわな。」
オレルアン城に居るマケドニア将兵にとって、これは防衛戦と言えるものではない。
確かに傍目此方が攻め手である様に思えるが、マケドニア側に地の利はない。
つまり、相手は何としても此方を撃破する必要がある訳で
「敵は死地にある。
相手が守りに徹すると思えば足元を掬われるぞ!」
マケドニアは攻めを選択するのは不思議な事ではないのだ。
そして戦場で目立つ事は
「そうするのが自然。
寧ろ道理。…だからこそ、それが弱点ともなり得る。」
相手方は指揮を執っていると見えるゲレタを優先的に狙う訳だ。
相手は一見すれば相性最悪な重騎士。
だが、構うまい。
重騎士と言っても顔まで保護している訳では無いのだから。
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「何だあの攻撃は?」
「攻撃、なのかアレは。」
ゲレタを狙うマケドニアの者達はその異様な戦闘に翻弄され、
されど大した抵抗が出来ていない指揮官を見逃す事は出来ず、ゲレタに誘引されてゆく。
元々重装備で固めている重騎士。
動きは俊敏とは言えず、重騎士相手の戦闘もドーガ相手に研鑽を重ねた。
ゲレタにとって未知の相手は竜騎士くらい
それとて、天馬騎士との戦い方を応用出来る。
戦場に居ながら、相手の行動を強要する。
それこそゲレタの戦術であった。
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「思考を巡らせ、考える事を止めるな。」
ゲレタはタリスにおいてジェイガンやモロドフと共に軍事教練をした時、何度も口にした。
強者とて盤石ではない。
戦い方を変えれば、強者を弱者が打倒する事も叶うのだ。
故に弛まぬ研鑽や思考が必要となる。
少し前までアカネイアが大陸の中心であったのも、そうなる様にあらゆる事を整備した結果に過ぎない。
大陸最強の騎士団を有するグルニア。他国と一線を画する飛行兵を多数擁するマケドニア。
だが、彼等は大陸の中心となり得なかった。
それはアカネイアが単純な軍事力だけで測れぬ。
測る事の出来ない体制を創り上げたから。
立場や視点が変われば見えるもの
価値観も変わる。
だからこそ、大陸の脅威となりつつあるドルーアとそれに与する国家。
それに対抗する為に尋常ならざる手を必要とするのだ。
ゲレタはそう考えるのだ。