諸事情により本日は複数話投稿予定
レフカンディにおける戦闘
それは色んな意味で問題となるものとなった。
アカネイア王国は北にオレルアンと接するが、その境目には山脈が広がり行軍路を限定する要因にもなっていた。
が、飛兵を主力とするマケドニア。
そのマケドニアを使役出来るドルーアにとってはさしたる支障にもならず、唯一陸路を動かねばならぬグルニアは要所要所に拠点を構えねばならない。
そのひとつがレフカンディの砦であり、そこにグルニア軍はそれなりの戦力を集めていた。
「敵、天馬騎士数騎と竜騎士が単騎離脱します!」
物見の報告にジェイガンやハーディンは眉を顰める。
確かにその部隊も南から此方に向けて進軍していた。
にも関わらず、いきなり踵を返したのだ。
奇妙に思うのも無理はない。
ましてゲームと違い、戦場を睥睨できる訳ではなく、さりとて戦場を俯瞰して見れる此方の飛兵はシーダのみ。
数を頼みに攻撃されては事であり、また相手が敢えてシーダを追い込み弓兵の射線に誘導するとも限らない。
故にゲレタはマルス、ジェイガン、ハーディンと話し合い
現状シーダを温存する事としている。
単騎の天馬騎士
それは明らかに目立ち過ぎる上、敵の注意を集めやすい。
自分のやり方と同じ様に見えるが危険が段違いなのだ。
勿論、必要な時には動いて貰わねばならないが、少なくとも今ではない。
「他の天馬騎士や竜騎士は此方と交戦した。
だからこそ余計に怪しむべきか。」
「しかし、遠目に見た事と周囲の話からするに。」
「…マケドニアのミネルバ王女とその騎士、だろうね。」
ハーディンとジェイガン、マルスはそれぞれ複雑そうな表情をしている。
とは言え、含まれる感情はまるで違うが。
敵将ハーマインは最期に
「おのれ、裏切りもの」
との言葉を遺している。
状況から察するに
マケドニアの内情をマチスから聞く気はない。
そもそもハーディン達から聞いた話では周囲のマケドニア兵や騎士と明らかに動きが違ったらしい。
勿論、悪い意味で
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「何か事情があるのでしょうか?」
「あるだろうな。
が、その為にミネルバ王女とその騎士達はマケドニアの騎士や友軍である筈のグルニア軍を見捨てた。
何れその代償は支払う事となるだろうよ。」
マルスの言葉にゲレタはため息と共に続ける。
「信用を得るにはそれなりの時間がかかるものだ。
…だが、失うのは一瞬で済む。そして失った信用を取り戻すのは気の長くなる様な時間をかけねばならない。
苦しく辛い道だ。本人が声高に主張しようものならほぼ確実に反発される。
……はてさて、ミネルバ王女とその騎士達にそれを堪える覚悟はあるのやら。」
因みにアリティア軍の一員となったマチス。彼についてはアリティア騎士団やオレルアン騎士団は引き受けを拒否している。
勿論仲間として鍛錬するのは構わないとしているが
なお、アリティアへの移住についてはゲレタは消極的賛成の意思を示していた。
「何を任せられると言うのやら。
国を、組織を裏切り妹を守った。そう聞けば美談に聞こえようが、ではマチスやレナの肉親はマケドニアに居ないのか?
居たとして、どう扱われるのだろうな。」
ゲレタにそう言われたレナとマチスは顔色を蒼白にしていたが、ゲレタはまるで気にしない。
人は合理的に物を考え、合理的に動き
時に感情で判断する事もある矛盾に満ちた生き物。
己を知るのが難しい様に、他者を理解するのもまた困難なのだから。
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オレルアンである程度食糧などの物資を調達はした。
だが、これからの事を考えると不足するのは目に見えている。
後方支援部隊の責任者として抜擢されたアンナ。
彼女は上役となるゲレタに対し
「アカネイアを再興するのは分かったわ。
それだとパレスを取り返したとしても物資の調達は難しくならないかしら?
進軍路からは少し外れるけど、ワーレンに寄るべきではないかと思うのだけど。」
港町ワーレン。
アカネイアが滅んだ現在において、ドルーアに対する物資提供をする事で自治を守っている自治都市だ。
アカネイアという国家が崩壊し、アカネイアを核とした大陸秩序が崩壊して既に二年以上経つ。
しかしアカネイアが無くとも生きてゆかねばならぬ者達も降り、已む無くドルーアと交渉し自前の戦力で自衛する事を条件にワーレンの独立性は保たれた。
ワーレンはアカネイア最大の貿易港を有する都市であり、潤沢な物資を有する場所。
その上、闘技場という娯楽施設もワーレンにはあり、閉塞感の強い現在にあって、高い人気を誇る。
人が集まれば物が必要となり、物が集まれば金も集まる。
金や物があれば人は集まり、好循環を生み出す。
そのワーレンならば物資を調達する事が出来る。
それがアンナの意見だった。
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軍集団は様々な物を消費する。
食糧、武器に道具。
そして人の命でさえも。
人の命を失わぬ為に
言い方を変えれば軍集団として保つ為に物資の不足は叶う限り避けねばならぬ事であった。
因みにマルス達はゲレタの言により、オレルアン城内の宝は確保こそしたものの
その全てをオレルアン側に返却している。
「此等は全てオレルアンの者の努力などにより揃えられたもの。
例え許可があろうと、戦場での慣習であろうと先ずは持ち主たるオレルアンに戻すべきかと。
その上で公が我等に提供するを良しとするのであれば、その時は素直に受け取るべきと考えます。」
マルスは後年、その挙げた比類なき功績により『英雄王』と呼ばれる事となる。
だが一方で『盗賊王』との侮蔑を受ける事もあった。
まぁこれはゲームのプレイヤーからの蔑称の様なものだと思うが、歴代シリーズの原点こそこの世界と言える。
しかし、後発の作品においてファイアーエムブレムがそこまで物語の中心となる事の方が稀であり、アカネイア大陸の様に『宝箱を開けられる』などという効果があるものは少なくともゲレタの知る限り存在しない。
ファイアーエムブレム、アカネイア王族からの信の証とされるもの
まぁ実際には『封印の盾』と言い、オーブを五つ付けた状態でとある場所に保管されていたものなのだが
紆余曲折あってアカネイアの至宝のひとつとされている訳だ。
アカネイア王族の信頼の証が盗賊行為を良しとする
と言うのは中々に奇妙なものだが
勿論アリティア解放、そしてその後を見据えれば『余計な失点』と成り得る行為を見過ごすつもりはない。
オレルアンならば許されようが、パレス解放において宝を持っていった
などと知られれば面倒事を引き寄せかねない。
まぁパレス解放に当事者たるアカネイアの者が貢献していればとやかく言えるだろうが
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い
とも言う。
亡国の王子
実にはた迷惑な話ではあるのだが。
余計な面倒事を引き寄せない為にも、細心の注意を払わねばならない。
戦場での慣習などという話を聞く手合いではないのだから。
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「この町の北にグルニア軍が駐留する砦群がある。」
ワーレンの民家でその様な話を聞いたカインは直ぐにそれを報告する。
決戦は、近い。
「予想通り此処に来たか。」
グルニア騎士カナリスはワーレンに反乱軍が到着したとの報告を受ける。
オレルアンにて反乱軍が軍組織を拡大した、との話はカナリスも掴んでいた。
となれば、必然的に必要となる物資の量は増え、オレルアンから直接パレスに向かう可能性は低い。
兵站の切れた軍集団など脅威ではないのだから。
そして、それを相手は理解しているからこそオレルアンで軍集団の編成をした筈だ、と。
そうなると、物資の調達が可能なワーレンに立ち寄るのは予測出来る。
故に彼は周辺から集め得る限りの戦力をこの地に集め、此処で反乱軍を倒す。
そう判断したのだ。
「…マケドニアが信用出来るのであれば、竜騎士や天馬騎士も投入出来たのだが。」
レフカンディにおけるマケドニア王女ミネルバ。彼女と彼女の率いる部隊の独断による戦線離脱。
それはハーマインが報せを出した事で彼もしる所となっている。
勿論、カナリスはその報告を自分の所で止める愚を犯す事なく、ディール要塞のジューコフの所へも報せを送っている。
それと共にパレスに駐留するドルーア軍に対しても
報告が重複するとしても構わない。異なる報告であれば混乱を招きかねないが同じ報告ならばその信憑性も上がると言うもの。
何せ相手は飛行兵を主力とするマケドニア。
最悪報告する為に送った兵を殺される可能性とて否定出来ないのだから、使者の数はいるに越したことは無いだろう。
とは言え、今は目の前の事に注力せねばならぬ。
「各砦に伝令を
全部隊ワーレンへ進軍せよ。」
敵を討ち果たさねば兵達はいつまでも祖国に帰れないのだから。
「みな着いて来ていますね?」
「はい、大丈夫です。」
「先行して偵察している者達もそろそろ戻ると思います。」
集団を纏める人物は
「これより私達は私達を二年間助けて下さった方に恩を返します。
ですが、死ぬ事は許しません。まだ私達は直接お礼を言っていないのですから。」
そう告げる。
「さて、そろそろか。」
「間もなくかと。
みな遅れておりませぬ。準備も整っておりましょう。」
「皆の士気も高うございます。
これで少しでも恩を返せると。」
男は満足そうに頷くと
「戦場に立つ前から戦いは始まっている、か。
実に学びの多い者よ。」
そう海の向こうを見つめる。
決戦は近い