どうも、エリスからのアタックに屈しました。
しかも付き合う云々の話がいつの間にか『婚約者』となって困惑している次第。
嫌ではない。
嫌ではないのだが、複雑な心境ではあります。
いやほら、エリスは他に頼る相手も居なかった訳で
そりゃ気持ちが傾くのもやむ無しと言いますか。
「ゲレタさん、どうかしましたか?」
エリスさん
⋯いや
「いやまぁ少し困惑している所はあるけど、大丈夫さ。エリス」
名前を変えただけで凄い嬉しそうなんだもんなぁ。
勝てんて
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「マルス王子、言い方は悪くなりますがエリス様の御心を優先するならば今すべき事があるかと。」
マルスの軍師であるモロドフはそう提案した。
モロドフ自身、ゲレタという人物の底を測りかねる所はあったものの、オレルアンやサムスーフとやら越えてタリスまでエリスを守り抜いたゲレタを評価している。
例えタリスに着けば良い待遇を受けられるとしても、中々出来る話ではない。
アリティアは事実上滅んでいる今となってはマルス王子の側にいる者達がアリティア再建の要とならねばならぬ。
だが、ジェイガン以外は実力も然ることながら、まだまだ未熟な所が多々ある。
エリス王女について、王子の御友人が好意を持っているとの噂もあるが、この状況にこそ支えて欲しいと思ってしまう。
仮に王女と恋仲であれば敢えて邪魔をするつもりはないが、そうでないのならば話は変わろう。
王女の心を優先するのであればタイミングは今しかない。
アリティアを再興させたとなれば、王族である王子と王女の伴侶もまた重要となるだろう。
タリス王の好意により、王子はシーダ王女との話が決まった。
これは我々がタリスの民に受け入れられる為にも必要なものであり、幸い王子もシーダ王女も互いに良い感情を持ち仲を深めている。
となれば、王女の伴侶について嫌でも注目が集まろう。
考えたくもないが、アリティア復興の為に国内の有力者の力を借りる際、
それが王女の伴侶の立場となったとして、それを体制の整っていない我等が拒めるか?
「まぁそういう所はあるでしょうね。」
それについて話をしたところ、ゲレタ殿はさして気にする事なく同意した。
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「あまり言いたくはありませんが、国や組織が崩壊し
それを再生しようとすれば、良からぬ事を考える者は一定数いるでしょう。
その辺を上手く処理出来るか?それもまた考えねばならぬのも事実かと。」
マルスや若い騎士達はともなく、ジェイガンや軍師役であるモロドフまでこの話を勧めた時点である程度予想はしていた。
何せエリスはマルスの姉であり、その相手となればマルスにとっての義兄。
決して粗忽に扱える
エリスの伴侶が権力に執着すれば、アリティアにおいて面倒事を引き起こす事にもなり、アリティアの中に余計な諍いを持ち込む事にもなろう。
その点で言えば、俺はアリティアどころかこの大陸の者に縁者はなく俺が気を付けていればその辺の話の大部分は回避出来よう。
何処にでも権力に固執する輩と言うものはいるからな。
立場が違えば、見える景色も変わるもの。
だが、エリスの伴侶となるからにはエリスとマルスの仲が決定的に悪化でもしない限りマルスの味方であり続けるのは最低限。
出来るならば、マルスを政治的にも補佐出来ればアリティアの復興も早まろうし、アリティアの民も受け入れやすくなるだろう。
⋯断じて、エリスやマルスの側を離れるのは許されるものではないのだ。
弁えねばならぬ所は弁え
その上ですべき事は熟す。
それこそ、今すべき事なのだろう。
ゲレタとの話でモロドフはエリスの伴侶として良い人物と判断した。
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アリティアを解放し、再建したいとマルス達は願うものの
今の状況ではどうにもならないのも事実
そこでタリス王はマルス、エリス、ジェイガンにモロドフ。
そしてゲレタを交えて今後について話し合いを行なう事とした。
ゲレタは既にオレルアン公との面識があり、オレルアンとタリスの関係を深める橋渡しの役目も出来た。
加えて中央の情勢にどうしても疎くなるタリスだ。
情報と言う面において、オレルアンとの関係構築は望ましい。
タリスはその立地から、戦火が及びにくい地だ。
そこでタリスは食糧増産に注力し、オレルアンに対して食糧支援を行なう事で関係の深化を図る。
オレルアンとしても、アカネイアを滅ぼしたドルーアやそれに従うマケドニア、グルニア、グラに好意的ではなく対立は避けられない。
となれば、友邦の存在は決して無駄にはならないだろう。
ゲレタはその旨をタリス王に進言し、タリス王はそれを良しとした。
「今はまだ傷を癒やし、力を蓄えるところかと。
幸いにもゲレタ殿は政治にも明るい。タリスで力をつけ、アリティアの解放を目指すべきだと考えます。」
モロドフはマルスをそう説得し、暫くタリスの地で力をつける事を選んだ。
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「⋯なる程、つまりエリス様の生存が知られる可能性は低い、と。」
ゲレタは此処に至るまでの経緯を話し、ジェイガンは唸る。
「褒められた方法で無いのは認めるさ。
だが、あの時取れる選択肢はそこまで多くなかった。」
「⋯⋯いえ、それは仕方ないと思っておりますが。」
眉間に皺を寄せたままジェイガンは口にする。
「自分で納得していない事を他者に納得させられるものかよ。」
ゲレタは冷静に切り捨てる。
「理屈で納得できても感情がそれを受け入れない。
なんて事は良くある話だ。
騎士ジェイガン。
守るべきは騎士としての誇りか?果たすべき使命か?」
「⋯それは」
「理想に生きられれば
殉じられればそれも良いだろう。
だが、そうではない。
忘れてくれるなよ、騎士ジェイガン。
騎士とは己の理想に殉じるものではない。
守るべき者の為にこそあるべきものだと」
ゲレタの言葉にジェイガンは強く頷いた。
「とりあえず、ものを育ててみるかな。」
守る為に強くあらねばならぬ
力が無ければ守れぬから
だが、守るべきものを守る事
それは本当に難しいのだ。