「さて、ゲレタよ。」
「ええ、タリス王。」
「「悪巧みを始めるとしよう。」」
タリス王の自室に招かれたゲレタと招いたタリス王は密談を始めた。
「オレルアンから文が来た。
おおよそお主の言う所であったわ。」
「それは重畳。
であれば出来る選択肢も増えようと言うもの。」
二人は笑い合った。
「まず切り崩すはグラ王国でしょうな。
エリスから聞いた話も含めて考えるとアリティアとの戦いにおいてグラ王国軍はかなりの損害を受けたのは間違いなく」
「本来ならば、戦などできる筈もないがグラの立場がそれを許さぬな。」
友邦であったアリティア王国軍を唾棄すべき裏切りにより打ち破り、あまつさえアリティア王コーネリアスをも討ち果たした。
これはドルーアに対しては大功となろうが、それ以外の者からすれば顔を顰める行為に過ぎぬ。
例えそれが自国の民であるグラの民であったとしてもだ。
「本来、既にアカネイアが滅びアリティアも滅んだのであればドルーアやそれに与する国家が積極的に動く理由はないのですが。」
「中々に
「我等にとっては好ましく、ドルーアなどとグラの民にとっては最悪でしょうがね。」
ゲレタは敢えてタリス王に対してはカミュについて打ち明けている。
些かジェイガンにせよモロドフにせよ主君であるマルスや今は亡きコーネリアス王に似たのか黒さが足りないと見ている。
国を自ら興した。それは大陸秩序を司っていたアカネイアに対する叛意にも取られかねないもの。
それを成したタリス王なれば、清濁併せ呑む事は出来るとゲレタは見たのだ。
勿論、綺麗な方が良いだろうが組織には汚れ役も必要であり
その汚れ役を認める者も必要なのだ。
何れはその辺の話もせねばならないだろうが、今ではない。
そして、今だからこそ仕込める毒もあるのだ。
「しかし分からんな。
アカネイアの王族は処刑するのを見ておいて、ニーナ王女は助けるか。」
「女子供に慈悲をかける。
実に清廉潔白な騎士として好ましく
そして、組織に属する者としては愚かしくありましょうな。」
しかも救えない事にカミュはニーナを己の下で匿っている。
当然ながら、カミュ個人のみの問題となる事はなく連座させられてもおかしくない。
「アカネイアを滅ぼす為に死んだ者や傷付いた者も居たでしょうに。」
まぁそんな事を気にするならば、出来るはずもない。
だからこそ、此方も容赦なく遠慮する事なく徹底的にやれる訳だが。
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「グラについては元々不満があるでしょうから、それに同調するだけで良いかと。」
別に不満を煽る必要はない。
精々不満が風化しない様に火種を燻り続けさせるだけの事。
「グルニアについては潜伏させるのみか?」
「仮にも大陸最強の騎士団を有するグルニアですからね。
民とは己に影響が無いものには存外無関心なものですし。」
グルニアの民とてアカネイアの事を言われた所で知らなければ関心を持つ事はない。
だが
「マルス達がアリティアを取り戻すとなれば、確実にグルニアとも戦いましょう。
その結果流される血の量。騎士達は耐えられても、遺された者達は耐えられましょうか。」
民心とは移ろいやすいもの。
かの超大国と言われた国家とて、民意により中止せざるを得なかった。
幾ら戦争の悲惨さを訴えた所でそれだけで動かないのもまた人なのだ。
そして
「殺された者と裏切りや卑劣をはたらいた者。
どちらが神聖視されるかなど明らかでしょうよ。」
人は汚れる事を厭う生き物。
だが、戦争など汚泥の中で殴り合うようなもの。
防衛戦ならば大義もあろうが、侵攻戦ならば余程の事がなければそこに義はない。
「己の名を汚してでも守る覚悟が無いなら騎士など止めちまえよ。」
謀略とは心を攻めるもの
如何な名将だろうと、配下や兵がついてこねば戦えぬ。
まさか戦場にあって背中を気にしながら戦える訳もなし。
兵あっての将であり
民あっての国。
「⋯では、件の話と共に進めるとしよう。」
「ですね。よろしくお願いします。」
戦いとは始まる前に終わらせるべき。
直接矛を交えるのは、万人にそれを理解させる為。
成した事は変えられぬ。
それはさながら蛇のように絡みつき、時に毒を以て命さえ奪う。
強者を倒すのは力のみではない。
弱者の戦いとくとご覧あれ。