転移した古の狩人の件   作:K.O.

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一人でも見てくれる方がいるならと思い長編に挑戦。
拙いですが、どうぞよろしくです。


プロローグ 狩人と白いドレスの少女

 広大な領域を誇っている、ジュラの大森林。

 暴風竜ヴェルドラの消失で騒いでいた周辺諸国は徐々に静まりだし、その間でも勢力を伸ばしだしていたリムルたちはオークとの戦いを終えて一時の平穏が訪れていた時。

 大森林の奥深くの少し開けた場所、小高い丘陵に場違いのように佇む、小ぢんまりな畑もある木造の東屋が建っており、その縁側に座る右眼を大きな眼帯で覆い左腕の無い、一人の老人の姿があった。

 

 

 ◇

 

 

 月明かりが東屋と深き木々たちを照らし、ほどより夜風が吹いてきて、それを目を閉じて心地よく浴びる。前の世では味わえないような風当たりについつい手に持ってる湯呑みの茶を啜るのを忘れてしまうな。

 

 儂はほぼ死にかけな老いぼれであった。永く、永く……狩場へと走り抜けて竜たちを倒し、時には自然現象とも言える古龍とも戦い、そしてお伽噺であるはずの『禁忌』とも、いったい幾度、死闘を繰り広げたことか……。

 その後からは、狩人としての務めよりも、人生の半分以上はギルドマスターとしてハンターたちの動向や管理、モンスターたちの動向等を警戒しながら運営をしていった。更には多くの弟子たちを育て上げていって、一人前になっていき、そしてその背中を見送り続けていったな。

 そんな多忙のようで、楽しめた役目を全て終えて、後はただ寿命での死を待つ日々であったはずだったのだが……。一体なんの因果なのか、いつの間にかこの深い森の中で佇んでいたあの日を思い出す。

 しかも妙な事に、老いて太刀を振るえるほどの腕力すら無くなってしまっていてはずの身体は、全盛期のような状態でないが幾分か若返ったのでいきなり森の中で死ぬような事はなくて安心したのぅ……。

 

 (流石に右眼と左腕までは戻らなったが、そこまでは高望みすぎだな……この命あっても物種じゃしな)

 

 持ってた湯呑みを置き、着流ししてる服で、風で靡く左の袖部分を右手で撫でながらそう考える。

 

 やってきた時は見晴らしの良さげな丘陵部であったが、未知なる森の中でただ一人立っていて、自身の周りには嘗て使用していた防具やら武器たちまで転がっている始末。どれもこれも、その身に纏い、そして振るってきた相棒とも言える装備。身に着ける事が減っていってから、ずっとクローゼットに置きっぱなし、武器庫に立て掛けっぱなしになってしまっていたので懐かしく思う。

 流石に野宿は面倒と思って、近場の木々を斬り倒して簡易的ながらにこの東屋を造ったな。まぁ建築なんぞしたことなかったから失敗もしまくったりしたが。そういえば、東屋を建てている時だったか?何やら空を泳ぐかのように飛んでた鮫たちが何処かへ向かっているのを見かけていて、その内の数匹が何故かこっちに向かって襲いかかってきたこともあったな。まぁ、結局は大きいだけの鮫だったので全匹三枚に卸してやったが。クセがあったが意外と美味だったな。

 ただ、鮫のせいで建てかけてた小屋がものの見事なまでにぶっ壊されてしまったが。おかげで一から作り直すことになった苦労もあった。

 

そんなことがあって、この東屋を建ててからどのくらい経ったのだろうと思いながら、すっかり冷めてしまった茶を啜る。

 

 ーーーースッ

 

 突如、隣に何かが現れた気配をしたのでそちらに目線だけ向ければ微笑みながら縁側に座り、細い両足をぷらぷらと揺らしながらいる一人の少女がいる。

 

 雪のように真っ白な長髪、同じぐらいに真っ白なドレスに身を包んでいる少女。しかし、その漂わせている雰囲気は人のそれを明らかに超えている神秘的な姿。その証拠に、微笑んでる少女の瞳は縦長に割れた瞳孔をしており、その瞳の色も金色に輝いてる。

 

「お主は本当に気配なく現れるのぅ、お嬢さんよ」

 

 突然の出現であり、通常であればこんな登場したら驚きまくるのだろうが、儂にとってはこんなことは最早日常茶飯事なので特に驚く事でもなくなってしまったので、空になった湯呑みを置きつつため息を吐く。

 そんなこっちの様子までも楽しむかのように、クスクスと微笑みながら顔を向けてくる少女。

 

「ふふふ……アナタのその困ってる顔を見るためにやってるのだもの。何度見ても飽きないわね、ハンターさん?」

 

 その口調は、見た目通りの幼さで無邪気さのある言葉であるが、何処か不気味さと神秘的なのを内包している言葉使い。微笑むその顔も傍から見たら見惚れそうな感じであるが、恐ろしさも内に秘めているのを儂は知っている。

 少女は音もなく立ち上がりながらふわりとその場で回りつつ紡いでいく。

 

「ねぇ、私の『お気に入り』さん。また踊らないかしら?あの時のような、綺羅星が舞い散り、赤い光が照らしてくれる舞踏を……」

 

 何処か舞踏会の誘いのように聞こえる言葉であるが、もう何度目か知らない誘いの言葉なので、思わずため息を吐いてしまう。

 

「はぁ……勘弁してくれんかの、お主との舞踏は骨が折れるし、何より…………この辺り一帯が灰燼に帰っしてしまう(・・・・・・・・・・)わい。」

 

「もう………つれないわね。でも、そういうところも可愛らしいけどね、ふふふっ」

 

 断られたのに、最初から分かっていたかのようにクスクス微笑んでから再び隣に座り込んでくる。

 

 儂と少女の付き合いはかなり長い。儂が……というよりも、この少女が一方的に関わってくんだがな。

 

 ギルド長時代の時も、事あるごとに突然現れて職員たちを驚かせてはこのような誘いをしてきたり、時には食事を一緒にしたりと、こっちのペースなんて関係ないかのようにしてきていた。追い返せたらどこまで良かったものか……そうやすやすと追い返せない程の『存在』なので余計に質が悪い。

 

 儂がこうして別の世へとやってきてから数日後には、ひょっこりと側にいたときは流石に心の臓が止まりかけたな。あの時の微笑む顔には無性に腹立ったが。鮫の時もほぼ傍観しておったし………いや、寧ろ傍観してくれてて助かったのか。でなければ如何なっていたか………。

 

 今は大人しくしてくれていて、気配も配慮してくれてるのか、そこらにいる人の少女と変わりないが……一度(ひとたび)その気になればあらゆるモノを壊滅させる程の力を有してるので気が気でない。この世がどのくらいの物か分からないが、恐らく敵うものは現状儂ぐらいか……そう思ってしまう。流石に今の老体では長く保たないが、気張らねばいけなくなるな。

 

「ねぇ、『カナタ』。此処は愉しめそうかしら?」

 

 こっちが色々考えていたら儂……カナタと、名前で呼んでくる少女は深い笑みを浮かべながらこちらを見上げてきながら聞いてくる。その笑みに何を含んでいるのかは如何にも読み取れないが、思う通りのを言うだけだ。

 

「そうだな………隠居生活するには良いかもしれんな。まだこの森と近場の国しか知らんがな」

 

 そういえば、街に行った時に耳に聴こえてきたな。この森に新しい国ができるとかなんとか……何処かの頃合いに見に行くのも悪くないかもしれんな。

 そう思いながら笑みをしながら夜空を見上げている少女を見て、自身も釣られてしまうように夜空を見上げる。

 

 

 

 これは、幾年もの生き隠居をしようと思ってる一人の狩人と、それに寄り添うようにいる少女の……波乱万丈になっていってしまう物語の幕開けである。




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