続きをどうぞ。
ーーカナタ視点ーー
翌朝となり、いつものように畑への水やりをする。しかし、如何にも心が落ち着かない。いや、原因ははっきりしている。あのお嬢さんが口にしたあの娘の事しかない。
だからと言って、どうこうするというのもおかしいものだ。儂は引退をしてただのんびりと過ごすのを決めた身。今更、儂が何しようと変わるとも思えん。
(だが………早すぎる……な)
たった数刻しか会ってない赤の他人、それなのに……儂の心の内の何処かでは【救いたい】と騒ぐ。水を撒ききり、縁側に腰掛けて、のんびりと眺めていても、茶を啜っても……それは変わらずに居座り続ける。あのように若く、これからという者の命を失わせるには……あまりにも惜しい。
「全く、長生きをするもんではない………のぅ」
こうまで、儂は染まっているのだな。狩人(ハンター)の先人として、多くのバカ弟子たちを育ててきた教官として、そして………多くの者たちへ導きをしてきたギルドマスターとして。
縁側から立ち上がり、奥の引き戸を開けてさらに奥にある小屋の扉を開ける。小屋の中に置かれてるのは、この世へとやってきた時に無造作に転がってしまっていた数々の防具や武器たち。
どれも全て、嘗て引退をするその日まで我が身に幾度となく身に着け、そしてその腕で振るい続けた相棒たち。もう持つことはないと思っていたんだがな……。
そう思いながら、立て掛けてある一つの太刀を手にする。
「久しぶりに振るおうぞ………『神威』よ」
鉄刀【神威】Ⅲ。
鉱石によって鍛え抜かれ製造されたこれは、他の武器と異なって見た目が完全に大きな刀と見える。他の太刀でも良いが、余計に目立つのは御免こうむるのでシンプルなこれにするか。歯がノコギリのようにギザギザであるが………そこは許容範囲であろうさ。
背中へと担いで、懐かしき重さを感じつつ、念の為にと思い、赤い小袋に入れてある薬を懐に仕舞って、小屋を出て玄関へと向かう。
「あら?懐かしいものを背負ってるわね、カナタ」
くすくす笑う声がした方を見れば、少女が立っていて懐かしきモノを見るようにじっ………と見つめていた。
「お嬢さんか。すまんが少しばかり散歩に行ってくる。留守を頼んだぞ」
「珍しいわね?ふふふ………それなら、お土産はほしいところね?」
相も変わらず、こっちが向かう先なんぞ見抜いとる癖に……敢えて聞かんのも妙なとこだが。
「土産は期待せんでくれ。ただの散歩じゃからな」
そう言い残して、外へと出たら脚力を使い森の中を駆ける。周りの景色がブレるほど素早く。間に合うか………否、間に合わせる。
◇◇◇◇◇
魔国連邦テンペスト領域内 街道近くの広場
聖騎士団とテンペストの戦いは徐々に終わりを迎えようとしていた。リムルとヒナタの一騎討ちも、リムルがヒナタからの攻撃を耐えきったことで終わるかも思われた。
しかし、ヒナタが途中より投げ捨てた、七曜の老師より渡された竜殺聖剣(ドラゴンバスター)からの魔力光線が放たれ、リムルを庇いヒナタは深手の重傷を負う。そこに現れる七曜の老師二人。そして三人目も擬装を剥がして現れ、ヒナタや十大聖人諸共リムルたちを消滅させにかかる。
「死に絶えるがいい!!
七曜が放つ広範囲を殲滅する殺戮の光の雨である神聖魔法。
(まずい!オレや配下たちならともかく、ヒナタたちを守る手段が……ッ!)
焦るリムルにラファエルが告げようとした矢先ーー
ーーーーゴウッ!!
ドドドドッ!
不意に発生した猛突風。それが吹き荒んだ時、光の雨は悉くリムルたちに到達する前に爆発していく。凄まじい閃光にリムルたちは思わず目を瞑ってしまう。
「ば、馬鹿なッ!?一体何が…ッ!?」
驚愕を示す七曜たち。明らかにリムルたちからの迎撃ではなく、別の何かによって弾かれたのだから。そして、その姿は光が収まっていって見えてくる。
目を摘むってたリムルたちも、目を開くと驚いてしまう。リムルの目の前に、さっきまでいなかった人物がしゃがみこんでヒナタの頬を撫でていたからだ。
シオンの持つ大剣並な、身丈以上の長い剣を背負ってる眼帯をした老人………カナタである。
「……微かに息をしておるな。ギリギリじゃったが、間に合ったか」
ほっとしたような感じに話しながら頬から手を離しつつ懐から赤い小袋を取り出す。それを地面に落ちて、中から数個丸薬を手にした時にようやくハッとするリムル。
「ま、待て待て!あんた一体なんなんーーーー」
「お待ちを!リムル様!」
止めようとしていたリムルに待ったをかけるベニマル。近寄りながら話しをする。
「この御仁です、先のファルムスの襲撃でシオンたちを助けてくださったご老人は」
「ほぅ、あの時の赤髪でないか。すまんが話は後にせい……間に合わんくなる」
ベニマルをちらりと見てから軽く声をかけつつ、瀕死なヒナタの口に丸薬をねじ込ませる。そのまま飲ませるように顎を上に上げさせてから小袋を手にし、握り締めて中に入ってる残りの丸薬を粉末にする。
それを胸の傷へと全てかけていく。すると、薬が溶けて少しずつ、少しずつ開いた傷を塞ぎながら、再生をしながら閉じ始めていく。
「……ッ!ゴホッ!ゴフッ!」
「ッ!?ヒナタッ!」
「応急的にしかできんな、すまんが残りは頼む」
大きく咽始めたヒナタに声をかけるリムルと、空となった小袋を仕舞いつつ立ち上がるカナタ。周りに声をかけて、いつの間にか拘束してた光の縄が消えていたアルノーたちは急いでヒナタへと駆け寄り、治癒魔法が使えるリティスは急いで治療を始める。
それを見てからカナタは上空に浮かんでる七曜たちを見上げる。
「ふん、なるほどのぅ…己(おの)が欲の為、至上の為に小奴らを亡きものにしようとしたか………。何とも浅はかで、小物な老いぼれだな」
ヴェールに覆われてる三人を見ながらも、見透かしてるように言葉を言いながら目を閉じて鼻で笑うカナタ。それを聞いて、七曜たちは怒号を上げる。
「き、貴様ぁッ!我らを侮辱するかぁ!」
「たかが魔物風情が、図に乗るでないわッ!」
「魔王へ向けてのものであったが、貴様が先に受けて滅ぶが良いッ!」
激昂した七曜たちは印を組みだすと、リムルたちの足元にあった陣が光り始めてカナタと足元へと収束しだす。その輝きと築かれ始める術式にリムルは覚えがあった。ヒナタと最初に戦ったあの日、暴食者《グラトニー》を使った分身体を跡形もなく消し去った最強の神聖魔法。それが三つ分となれば、リムルですらタダではすまないモノ。それをカナタに放たれようとしていた。
「マズイッ!間に合うかッ!?暴食之(ベルゼビュー)ーーーー」
「離れておれ、小僧よ」
暴食之王(ベルゼビュート)を放とうとしたリムルを言葉で止めるカナタ。その顔には、一切の焦りも強がりもない。ただ、七曜たちを見上げてる。ゆっくりと右手が背中の剣………神威を握る。
「滅びよッ!
手を掲げる七曜たちに呼応して、絶命をされる滅びの光の柱がカナタへと降り注がれようとしていた。叫ぶリムルたちを背に、カナタは神威を鞘より抜きーーーー
ーーーー絶ち斬れ
斬ッ!!!
カナタが神威を振るった瞬間、無数の斬撃が魔法陣を切り裂いて、陣そのものを破壊する。本来なら難しいとされる、術式の破壊。可能にするには洗練されて技術(アーツ)の者や、ヒナタなどの理に干渉するほどの強力な戦士のみ。
そんな技術を持ってるかのように、最強の神聖魔法を細切れにしたのだ。その売れ入れ難い現実に七曜たちは震える。
「ば、馬鹿な………………ありえんッ!あってはならぬのじゃ!!」
「騒いどる場合かの?」
騒いでいた七曜たちに届く、カナタの小さい言葉。ヒナタとリムルが戦ったことで転がっていた小岩を数個、上空へと蹴り上げてからその場から消える。
驚いてる七曜の一人に影が落ちる。見上げれば、太陽を背にしたカナタが神威を振りかぶってる姿。消えたのではない、恐るべき脚力で跳び上がっていたのである。
ゴォッ!ドゴォッ!
右腕一本とは思えない重たき振り下ろしを叩き込み、そのまま大地へと彗星の如く叩き落とす。
まず一人。
カナタは次の標的に顔を向けながら、蹴り上げた岩の一つに細き足を乗せ………足場にして砕きながら蹴り抜き、一気に接近していく。
標的とされた七曜は迎撃しようと手を振り上げるが、次の瞬間には肘から先が消える。理由はシンプル。斬り上げたカナタの神威によって、斬り飛ばされたからである。振り上げた神威をそのまま振り下ろし、太刀の棟を肩に叩き込み、先程の七曜同様に地面へと叩き落とすカナタ。
残りは、一人。
「あ、あり得ぬ!我らは人類の守護者だぞ!?こんな老害如きにッ!」
「それはお互いじゃな。未来は若き者に託し、引退しておれば良いものを………。その歪んだ信念ごと……反省せい」
残った一人は、騒ぎまくりながら魔力弾をがむしゃらにカナタへと撃ちまくるが、カナタは残っている岩から岩へ、跳ねまくるように避けて移動しつつ接近していき、その胴体に鋭い蹴りの一撃を食らわして、吹っ飛ばす。地面に叩きつけられ砂埃が上がる中、カナタはスタっと重さを感じないかのように軽く着地をし、砂埃に背を向けながら神威を鞘に納める。
一方的なまでの制圧。汗一つかかず、七曜の老師たちを倒したその姿に、リムルたちは驚いて動けず、ただただ見ていることしかできなかった。
(えっと………ラファエル先生?これって何かのドッキリとか……ない?)
【解。残念ながら仕掛けとかはありません。強靭なまでのかの者の高い技術と戦闘能力によるものです。】
更に、とリムルの中のラファエルは続ける。
【対象を解析しましたが、魔素の反応どころか魔力による身体的強化などの痕跡は見つかりませんでした。】
(え……!?ちょっとまって!?それって、純粋な身体能力であんな動きしてたっていうの!?)
【そう考えるのが自然かと。個体名ヒナタ以上の脅威と見て間違いないかと】
ラファエルの言葉に思わず震え上がってしまうリムル。そうしてる内に、カナタはリムルたちの方へ近寄ってくる。
「儂の仕事は終わりじゃ。後はお主らでなんとかせい」
「え?な、なんとかって………え?」
いきなりの言葉に困惑しながら七曜たちが倒れてる方に顔を向けると、そこに広がる光景に目を見開いてしまう。
「あ…………ぁ…ぁ…」
「がはッ………ば……かな……」
そこにはボロボロになってる司祭服を着て、うめき声を上げながら倒れている七曜たちの姿。アレだけの攻撃を食らって、死んでいなかったのである。一人は片腕を切り落とされているが。
「儂はただの割り込みと……あの娘を見に来ただけじゃ。どうやら、峠は越えその心配もなさそうじゃがな」
カナタの言葉に、向いている方向へと向くと治癒が間に合ったようで支えられながら横になってるヒナタの姿。それを見てから背を向けてその場を去りだすカナタ。
「お、おい!せめてお礼をッ!」
「悪いのぅ。待たせると機嫌を悪くする同居人がおるのでな。」
そう言って、リムルの制止の言葉を無視しながらその場より立ち去っていく。カナタが去った後、困った表情をしてしまうリムルたちの前に、転移門が出現して門が開いていく。
「どうやら迷惑かけたようじゃな、魔王リムルよ」
そこから現れたのは、法皇であるルイ・ヴァレンタインと八星魔王の一人、【夜魔の女王《クイーン・オブ・ナイトメア》】のルミナス・バレンタインである。
こうして、テンペストと西方聖教会との戦いは幕を下ろしたのである。
◇◇◇◇◇
ーーカナタ視点ーー
真っ白な服を着ていた件の老人たちを制圧を終え、東屋へと帰路に着く。玄関を開ければ、囲炉裏の前でゴロゴロと転がっている白い少女が目に入る。
こっちに気づいて、転がりを止めるも寝転がったまま見てくる。
「おかえり、楽しめたかしら?」
微笑むように聞いてくるので、神威を背中から下ろし履物を脱いで小屋に向かう。
「老骨には応えたわい」
「嘘。汗もかかないほど拍子抜けだったのでしょ?」
神威を小屋に立て掛けて仕舞いつつ適当に答えると間髪入れずに否定してされてしまう。どっかで見てたな、こやつ。
「感想なんぞ言わんよ。儂は散歩してきただけじゃしな」
そう言ってやりながら縁側に腰掛ければ隣に座ってくる少女。
「ふぅん……?でも……(ゴソゴソ)…コレの中身無くなってるわね?最後の一つだったのでしょ?」
「………勝手に弄(まさぐ)るでない」
小さい手をこっちの懐に潜り込ませてくると、赤い小袋を取り出してヒラヒラ揺らし見せてくる相手にため息をつくしかない。
「もう再現不可能な『古の秘薬』、また一つ減っちゃったわね。ふふふっ」
空になってる袋を見てからポイッと後ろに投げる少女の言葉を聞き、向こうとの繋がりを示すアイテムが一つ消えたのは事実。しかし後悔はしてない。使えるなら使っただけじゃしな。
古の秘薬。
使ってきた回復薬の中では、最上位の回復効果を発揮する古き時代に存在していた伝説の秘薬。ほぼ文献のみにしか存在してないが、本物の秘薬は死者の復活は無理でも、四肢を復活させたりするほどのモノだったよう。そんなのを、儂が現役時代の時は誰も再現なんてできる訳なかった。できても優れた回復薬くらいまでであったな。故に、名前だけの存在で使われ続けていたな。
儂はそんな古の秘薬を長き年月の末に完全に再現させたが、全てのバランスが崩壊すると思い封印するようにずっと仕舞っていたのだ。最後の一つというよりも、最初で最後のが正式である。
だが、それが幸運にも今回役に立ったのだ。故に後悔はしていない。あの娘がまた未来に向かって歩けるのだから。
「さて、茶でも煎れるとするか。お嬢さんも飲むか?」
「薄めなのをお願いね」
しれっと飲む濃さを注文する少女に微笑んでから台所へと向かう。
この時の儂は流石に計算に入れてなかった………ちょっと、暴れ過ぎた事を。
転スラのはアニメだけでなく、漫画のも読み込んでなるべく時系列とかは壊さないように………紅蓮の絆編どうしようか悩み中ではある。
古の秘薬はそんな効果あってもいいと思った感じにしました。詳しく書かれてませんからね。
今後ので一人称と三人称、どうすりゃいいからなぁの意見聞きを(コソコソ)。他にもご意見あれば感想とかでも
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一人称
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三人称
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どっちも混ぜ込んでヨシ!