Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
炎のビースト・ヴリトラモンへと姿を変えたショウは、パルデアの蒼空を滑るようにコサジの灯台へ向かって飛んでいた。
(──それにしても)
ふと、アカデミーへの編入準備期間中に起きた出来事が脳裏をよぎる。
あの時、リーグからの急な呼び出しを受けてリラに連れられ本部へ向かうと、そこには四天王やジムリーダーたちが勢揃いしていたのだった。
驚きを隠せない彼らに向かって、オモダカが穏やかに説明を始めた。
準備期間中もリーダーたちの予想通りパルデア各地にデジモンが出現していたが、幸いにも発見されたのは危険性の低い幼年期や成長期ばかりで、戦闘に至る前にファーム島へ安全に回収することができていた。
しかし、今後スコピオモンたちのような危険度の高い成熟期~完全体クラスが出現し襲いかかってくる可能性はゼロではない。そのため、まだ実戦を経験していないポピーやハッサクを含む、アオキ以外のジムリーダーたちに「デジモンの脅威と対処法」を肌で理解してもらう必要がある──というわけだった。
その説明を聞いたショウは即座に快諾し、ついでにとファーム島から待機メンバーを全員呼び出した。結果として、四天王・ジムリーダーの合計9名、そして生徒たちの安全確保を最優先事項とし、クラベル校長も立ち会う中で“異例の模擬戦闘・デモンストレーション”が行われたのだ。
あの時、突然炎を纏ってヴリトラモンへと変身したショウの姿に、百戦錬磨のジムリーダーたちが度肝を抜かれていた──そんな光景を思い出し、ショウは小さく苦笑した。
翼を羽ばたかせながら灯台の付近へ差し掛かったショウは、上空から周囲に気づかれないよう高度を維持しつつ、海岸線を見下ろした。
(おっ……あそこの浜辺、ミライドンがデルビルたちに吠えられてるな。崖の上には……主人公らしき奴がいる。さすがにこの距離じゃ、性別までは判別つかないか。……って、おい、待て……!? やばいぞ……!)
鋭い危険察知能力が、脳内で警報を鳴らす。
ショウは即座に翼を傾け、凄まじいスピードで主人公たちのいる崖の上へと急降下していった。
◇
一方その頃──ハルトの視点。
「危ないっ……!!」
ネモの叫び声が響いたが、反応するよりも早く、足元の地面が音を立てて崩れ去った。
回避する間もなく、僕は崩落する土砂とともに崖下へ真っ逆さまに落下していく。
(……あぁ、僕、ここでどうなっちゃうんだろう……)
落ちながら、僕はつい先ほどまでの出来事を走馬灯のように思い出していた。
僕の名前はハルト。このパルデア地方のグレープアカデミーへ入学するため、家族と一緒に引っ越してきたばかりだ。
アカデミーで校長先生から初めてのパートナーとなるポケモンを譲り受け、お隣に住むお姉さん──ネモとの初めてのポケモンのバトルを経験した。その後、コサジの灯台へ向かう道中でポケモンを捕まえようとしていた時、遠くから聞いたことのない獣の咆哮のような謎の巨大な音が聞こえてきたのだ。
慌ててその声の主を探そうと崖の縁を覗き込んだ瞬間、足元の地盤が突然メキメキと音を立てて砕け、僕はそのまま下にいる謎のポケモンの所に墜落してしまった──というわけだ。
激突する衝撃から急所を守るため、僕は咄嗟に体を丸め、固く目を閉じた。
だが──体に訪れたのは、叩きつけられるような衝撃ではなく、包み込むような不思議な浮遊感だった。
「……え?」
恐る恐る、ゆっくりと瞼を開けてみる。
そこにあったのは、僕の体をしっかりと抱え込む、白い頭部と鮮やかな赤い体色、そしてオレンジ色の巨大な翼を広げた──見たこともない、美しくも猛々しいドラゴンポケモンだった。
そのドラゴンポケモンは、崩落の続く危険な崖下から僕を安全に運ぶと、地面へと優しく降り立ち、丁寧な動作で僕をそっと地に下ろしてくれた。
「き、きみは……?」
言葉を発する間もなく、ドラゴンポケモンはもう一度力強く翼を羽ばたかせた。
ズアッ! と風を巻き起こし、瞬く間に蒼空へと舞い戻っていく。
取り残された僕は、ポカンと口を開けたまま、彼が消え去った空をいつまでも仰ぎ見ていることしかできなかった。