Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
ヘクセブラウモンが【冷凍パンチ】一撃でミガルーサを沈めた直後、オモダカは重厚な佇まいのドドゲザンをフィールドへ送り出した。倒れた仲間たちの無念を背負うかのように、ドドゲザンの特性「総大将」が発動し、その攻撃力と特攻が一気に跳ね上がる。
「ねぇ! ショウ!」
「いいぞ」
「サンキュー!」
ふたりは短く言葉を交わすと、ヘクセブラウモンは掌から冷気を集め、美しく澄み切った一本の巨大な氷の剣を錬成し、ドドゲザンへと先先を向けた。
「驚いた? 僕は氷でいろんな武器を作れるんだ!」
ヘクセブラウモンがドヤ顔で胸を張ると、ショウがすかさず補足を入れた。
「ヘクセブラウモンは『魔法騎士型』に分類されるデジモンで、氷雪魔法の達人であり、あらゆる武器を自在に使いこなす格闘と剣術のスペシャリストなんです」
「なるほど……ならば、あえてその勝負に乗らせてもらいましょう! ドドゲザン、【土下座斬】!」
「ゲザーンッ!」
オモダカの鋭い指示に応じ、ドドゲザンは滑るような土下座の姿勢から、頭部の巨大な刃を容赦なく振り下ろした!
「ふんっ」
しかしヘクセブラウモンは慌てることなく、流れるような剣さばきでその重厚な刀身を受け流してみせた。
「流石に誇るだけはありますね。……ドドゲザン! 【アイアンヘッド】と【思念の頭突き】の連続攻撃!」
「ドゲザーッ!」
オモダカは二つの技を滑らかに連携させて繰り出させた! 鋼の質量とエスパーの波長が混じり合った強烈な打撃が押し寄せ、ヘクセブラウモンの氷の剣にピキリと小さな罅(ひび)が入る。
「やるねぇ~! なら、もう少しスピードを上げていくよ~!」
ヘクセブラウモンは楽しそうに叫ぶと、罅の入った剣を砕いて投げ捨て、一瞬で新たに2本の氷の双剣を錬成! 剣速を爆発的に引き上げ、凄まじい連撃を繰り出した。ヘクセブラウモンが魅せる氷の剣劇は、まるで洗練された極上の演舞のように美しくフィールドを彩った。
「これは……いつまでも美しく見続けていられそうな演舞ですね。ですが、これで決めさせてもらいます。ドドゲザン! 【ハサミギロチン】!」
「ゲザ~ッ!」
オモダカは起死回生の一撃必殺技【ハサミギロチン】を指示! 巨大な刃がヘクセブラウモンを挟み込もうと迫る!
「ヘクセブラウモン! 【ヘクトエッジブリザード】!」
「了解! 【ヘクトエッジブリザード】!!」
ショウが即座に対抗技を指示すると、ヘクセブラウモンの周囲に無数の氷の剣が瞬時に展開された。猛烈な吹雪とともに解き放たれた無数の氷剣の群れは、迫るドドゲザンの【ハサミギロチン】を正面から木っ端微塵に打ち砕き、そのままドドゲザンを飲み込んだ!
吹き荒れる冷気が晴れると、そこには氷漬けの状態で倒れ、戦闘不能となったドドゲザンの姿があった。
「なんという威力なのでしょう……これがショウさんのパートナーの真の力ですか」
「やっぱり、究極体の力の差は凄まじいなぁ……」
オモダカは息を呑みながらドドゲザンをボールへ戻し、ショウは究極体デジモンの圧倒的なスペックをしみじみと噛みしめて呟いた。
その時――。
「アハ! アハハハハ! ……やはり貴方の才は素晴らしい! もっと、もっと貴方たちの真の力を見せてください!!」
静かなトップチャンピオンが見せたことのない情熱的な高笑いとともに、オモダカは最後の1球を高く投げ上げた!
「行きなさい! キラフロル!」
「キラフーッ!」
現れたのは、美しくも毒々しい鉱物結晶を纏ったキラフロル! オモダカは間髪入れずに掲げたテラスタルオーブを燦然と輝かせた!
「トレーナーを導く光あれ! キラフロル!!」
眩いテラスタル結晶の輝きがキラフロルを包み込み、いわテラスタイプの神々しい冠がその頭上に舞い降りた!
オモダカが真剣な表情でキラフロルのテラスタルを発動させている最中、当のショウとヘクセブラウモンは、そのあまりに情熱的で凄まじい気迫の前に、思わず少し引き気味で小声のやり取りを交わしていた。
(なんか……実際に見ると、ちょっと怖いな……)
(美人なんだけど、本気すぎるオーラにちょっと引いちゃうね……)
「……ところで、ショウ! 僕もテラスタルしてみたい!」
「ん……おぉ、メタルグレイモンは途中から超進化して重ねたから体力の消耗が激しかったけど、元から究極体のお前なら問題ないだろ」
ショウが快諾すると、腰のテラスタルオーブを力強く掲げた。
「伝説の力を引き出せ! テラスタル!!」
眩い結晶の光がヘクセブラウモンを包み込み、光が弾けた後、その頭上には氷の古代十闘士の一体、エンシェントメガテリウムモンを模した神々しいテラスタルジュエルが鎮座していた。
「先ほどのハッサク先生との試合でも拝見しましたが、デジモンのテラスタルはやはり通常のポケモンとは全く異なる法則なのですね!」
「そうですね。このテラスタルジュエルは氷の十闘士『エンシェントメガテリウムモン』の因子を宿しています。タイプ的にも氷属性の補正が強化されていますね」
「そうですか……。ならば容赦なく! キラフロル、【テラスバースト】!」
「キララァァッ!」
ショウの冷静な解説を聞き終えると同時に、オモダカは弱点を突くための渾身の一撃を指示した。いわテラスタル化したキラフロルから放たれた強烈な【テラスバースト】が、ヘクセブラウモンを直撃する! しかし――爆煙が晴れても、ヘクセブラウモンは微動だにせず、その表情には余裕すら浮かんでいた。
「まさか……今の攻撃で、ほとんどダメージがないとは……!」
「テラスタルしていなかったらそれなりに痛かったかもしれないけど、今の僕には全然効かないよ!」
「今のを見る限り、並みのポケモンの効果抜群技をまともに食らわせても、ほとんど痛手を負わなさそうだな……」
ヘクセブラウモンが涼しい顔でそう宣言し、ショウもその圧倒的な耐久力を冷静に分析した。
「なら、此方からもいくよ! 【アブソリュートブラスト】!!」
ヘクセブラウモンが宣言した瞬間、頭上のエンシェントメガテリウムモンのジュエルが凄まじい輝きを放ち、周囲の空間の温度が一瞬にして絶対零度へと急降下した。解き放たれた極大の冷気とエネルギーの奔流がキラフロルを呑み込む!
キラフロルは一瞬で完全に凍結して氷の塊と化し、そのまま地面へと落下した。ガシャン、と音を立てて氷が粉々に砕け散ると同時にキラフロルのテラスタルが解除され、そのまま戦闘不能となって倒れ伏した。
「……想像を、優に超える力でしたね。キラフロル……本当によく頑張ってくれました」
オモダカは静かに目を閉じ、戦い抜いた相棒のボールへ優しい労いの言葉をかけた。
ヘクセブラウモンが自身のテラスタルを解除するのを確認すると、ショウは駆け寄って相棒の肩を軽く叩いた。
「お疲れさん。流石に疲れたか?」
「ふふ、問題ないよ。それよりショウの方こそ、デジシンクロの反動とか大丈夫だった?」
「あぁ、こっちはバッチリだ。ありがとうよ、相棒!」
ショウが満面の笑みで差し出すと、ヘクセブラウモンは嬉しそうに微笑み、お互いの拳をゴツンと合わせ合って激闘の勝利を噛みしめた。
静まり返ったフィールドの中、トップチャンピオン・オモダカはゆっくりとショウの方へと向き直り、心からの敬意を込めた笑みを浮かべた。
「……素晴らしい力、そして見事な技の連続でした。パルデア地方の頂点に、また一人、偉大なる新たなトレーナーが誕生しましたね。本当におめでとうございます、新たなチャンピオン……ショウさん」
パルデアリーグ最高峰の頂にて、ここに新たな王者の誕生を高らかに告げる喝采が響き渡ったのだった。