Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
自己紹介を終えると、早速デジメンタルが保管されている保管庫に向かった。そこには生徒と思われる男女4名と、教師らしき初老の男性が待っていた。
「いやぁ待っていたよ! 君たちがベルちゃんから連絡があったショウさんとアリサさんだね! ようこそ! 僕のブルーベリー学園へ!」
「貴方がシアノ校長先生ですね。本日は無理を言って時間をいただき、ありがとうございます」
初老の男性……シアノ校長からの明るい歓迎を受け、代表してアリサが丁寧にお礼を述べると、すぐさま本題へと入った。
「例の物はそこに置いてあるよ」
シアノ校長が指し示したガラスケースの中には、間違いなくあの不気味な黒い角の生えた瓢箪型の鉱物──【友情のデジメンタル】が置かれていた。
「うわっ……マジで友情のデジメンタルかよ! 冗談であって欲しかったよ……」
「アンタら、これのこと知っているのか?」
実物を目にして痛恨の表情で呻くショウに対し、赤髪の少年(アカマツ)が興味津々に尋ねてきた。
「ショウ、アリサ、この人たちはブルベリーグ四天王の人たちだよ」
ハルトの軽い紹介により、四天王(アカマツ、タロ、ネリネ、カキツバタ)の面々と手短に挨拶を交わした。挨拶を終えるとショウは真剣な面持ちで口を開いた。
「さっきの質問の答えだが、口で説明するより実際にやって見せた方が早いな。……シアノ校長先生、ここにはこれから外部の人が来たりしますか?」
「大丈夫、誰も入らないようにしっかり伝えてあるよ~」
シアノ校長の確認を取ったショウは、右腕のデジヴァイスを掲げた。
「リアライズ! ブイモン!」
眩い光とともに、青い体色が特徴的な小型小竜型デジモン──ブイモンが実体化した!
「ショウ~、どしたの~?」
「実は、ちょっと手伝ってもらいたいことがあってさ」
言葉を発する未知の生命体に、デジモンを見慣れていないブルベリーグ四天王やシアノ校長、ゼイユとスグリたちが驚愕で目を丸くしている中、ショウはケースの中のデジメンタルを指し示した。
「そういうことね! 任せて!」
意図をすぐに理解したブイモンは力強く頷いた。
「よし! それじゃあ行くぞ! デジメンタルアップ!」
「ブイモン! アーマー進化──! 轟く友情! ライドラモン!」
デジメンタルが眩く光り輝くとブイモンを包み込み、稲妻を纏った四足歩行の獣型デジモン──ライドラモンへと姿を変えた!
目の前で起きたあまりに神秘的かつダイナミックな「進化」の光景に、室内の一同は言葉を失った。
「これがベルちゃんたちが言っていた、別の世界の生き物なのか……いやぁ、すごいねぇ~!」
「ゼイユやスグリから話には聞いていたが、間近で見るとたまげたよぃ……」
シアノ校長が感嘆の声を漏らし、独特な髪型をしたカキツバタが頭を掻きながら呟くと、アカマツたち他の四天王も大きく頷いた。
「ライドラモン、何かデータに異常や悪影響はあるか?」
「ううん、特に問題はないよ! いつもの友情のデジメンタルだね!」
ショウの確認にライドラモンがハッキリと答えると、光の粒子となって一旦元のブイモンの姿へと戻った。ひとまず安全性が確認でき、ショウとアリサは胸を撫で下ろした。
「シアノ校長先生、すみませんが、この部屋に他にデジメンタルやデジモンに関連するアイテムがないか確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ! ここは用途不明の奇妙なアイテムを集めて保管してある場所だから、自由に探してみてね」
シアノ校長から快く許可をもらったショウとアリサは、ブイモンと一緒に保管庫の中を細かく調べ始めるのだった。
シアノ校長先生から許可を貰い、ハルトたちや四天王の面々にも手伝ってもらいながら、広大な保管庫に他にデジメンタルが無いか探してみると、案の定、残りのデジメンタルが次々と見つかった。
「最初に本物かどうかデジヴァイスでスキャンしてみたら、友情以外にも反応していたからもしやとは思ったが……案の定か」
「勇気、愛情、知識、誠実、純真、希望、光、優しさ、奇跡、運命……先程の友情をあわせて全種類が揃っているとは思いませんでしたね」
「念のために全て本物か確認するか……」
「そうですね」
「「リアライズ!」」
ショウとアリサは、それぞれデジヴァイスを掲げて新たに6体のデジモンをリアライズさせた。
「どうされました? ショウ?」
「何か用~?」
「グー……(-_-)zzz」
「起きなさい、アルマジモン」
「アリサ、ここ何処~?」
「すまんな、ワームモン、ホークモン、アルマジモン。少し手伝って欲しくてな」
「こちらもです。パタモン、テイルモン、お願いしますね」
呼び出されたデジモンたちにブイモンが手際よく状況を説明し、デジメンタルの適合テストを手伝ってもらうことになった。
「可愛い……っ! 触ってもいいですか?」
目を輝かせて尋ねてきたのは、ピンクの髪をした少女……タロであった。
「彼らが良いと言うならいいですよ」
アリサがそう答えると、タロはデジモンたちに丁寧に向き合って許可を取り、パタモンやホークモンたちを嬉しそうに思いっきり撫でまくった。
「……質問なのですが、何故この子達を召喚したのでしょうか?」
眼鏡をかけた少女……ネリネが冷静な口調で尋ねると、ショウが答えた。
「ブイモンを含めたこの6体は、『アーマー進化』に特化した『古代種』と呼ばれるデジモンなんだよ」
「古代種……?」
アカマツが首を傾げると、ショウは分かりやすく例えを出した。
「ポケモンでいうと、ジーランスや化石ポケモンみたいに、大昔の姿や性質を残したまま現代まで生息している奴らの総称だな」
「自分たちの種族は大昔からデジタルワールドに存在していたのです。ただ、当時は成熟期や完全体への進化がとても難しく、それに適応・補完するために作られたのがこのデジメンタルなんですよ」
ホークモンがハキハキとした声で分かりやすく補足してくれた。
その後も賑やかに会話を交わしながら、それぞれのデジメンタルに対応するデジモンたちが1体ずつアーマー進化(フレイドラモン、ペガスモン、ネフェルティモン、ディグモン、シュリモンなど)を行い、すべてのデジメンタルの正常な作動を確認していった。
「よし、これで通常種はすべて確認できたな。残るは『奇跡』と『運命』だ」
「そうですね。リアライズ! テリアモン!」
アリサが新たにテリアモンをリアライズさせると、ブイモンとテリアモン以外のデジモンたちを一度デジヴァイスへと戻した。
「どうしたの? アリサ?」
「実はね……」
アリサがテリアモンに状況を説明すると、語尾を伸ばした呑気な返事が返ってきた。
「りょ~か~い!」
「ブイモン、立て続けで疲れているだろうが頼むぞ」
「ぜんぜん問題ないよ! あの憧れのマグナモンになれるんだからへっちゃらさ!」
ショウがブイモンを気遣うと、ブイモンは頼もしく胸を叩いてやる気満々の様子を見せた。
「そんじゃ、行くぞ!」
「ええ!」
「「デジメンタルUP!!」」
「ブイモン! アーマー進化──! 奇跡の輝き! マグナモン!」
「テリアモン! アーマー進化──! 運命の疾風! ラピッドモン!」
まばゆい金色と翡翠色の光が保管庫全体を包み込み、伝説のゴールドデジメンタルによる威風堂々たる二大アーマー体が出現した!
黄金の眩い輝きと高潔なオーラを放つマグナモンとラピッドモンの圧巻の姿に、シアノ校長やブルベリーグ四天王、ゼイユやスグリたちがすっかり言葉を失い圧倒されている中、ショウはそんな彼らの反応には意に介さず、マグナモンを見上げて声をかけた。
「どうだ? ずっと憧れていたロイヤルナイツの一角になってみて」
「すごく嬉しいけど……でも、この姿になってみて改めて、本物のあの方々に追いつくのがどれだけ難しいことなのか身にしみて分かったよ」
「そうか……。なら、まずはそのマグナモンの姿を、もっと長時間維持できるように特訓しないとな!」
「うん! ……って、やっぱり気づいていた?」
「当たり前だろ。連続でアーマー進化を重ねてたんだ、疲労も限界近くだったはずだ」
ショウが見抜いていたことを話していると、マグナモンの全身が淡く発光し始め、光の粒子とともに元のブイモンの姿へと戻った。
「お疲れさん。デジヴァイスの中でゆっくり休んでくれ」
「うん……ありがと、ショウ……」
疲れ切った表情で頷くと、ブイモンはショウのデジヴァイスへと帰還していった。
「お嬢、そっちは大丈夫か?」
「そのあだ名で呼ぶのはやめてください。マグナモンほどではないですが、こちらも相応にエネルギーを消耗していますね。ラピッドモン、一旦戻りましょう」
「わかった~」
アリサの指示を受け、ラピッドモンも愛らしいテリアモンの姿へと退化し、アリサのデジヴァイス内へと戻っていった。
だが直後、手元のデジヴァイスの液晶画面を見つめていたアリサが、ふっと怪訝な表情を浮かべた。
「どうしました? アリサさん」
タロが心配そうに覗き込みながら尋ねると、アリサは液晶画面を周囲に見せた。
「いえ……どうやら、この保管庫内にまだ別のデジタルデータの反応が残っているみたいでして」
アリサが提示したデジヴァイスのレーダー画面には、怪しい赤色の光点が一つ、怪しく点滅を繰り返していた。
「……ってなると、あと探してねぇのは向こうの区画だな」
カキツバタがひょいと指を差したのは、埃をかぶった棚や古い研究備品が所狭しと雑多に積み上げられている奥の保管エリアであった。
「……流石に置きすぎじゃね?」
「こんな無造作に荷物放置するなんて、どうせカキツバタでしょ!」
「カキツバタ……そういうだらしないのは良くないと思います!」
「オイラじゃないよぃ! 濡れ衣だぃ!」
「アンタ以外にこんな大雑把なことする奴いるわけ無いでしょ!」
ショウが呆れたように呟くと、すかさずタロとゼイユがカキツバタを責め立て、カキツバタが必死に弁明するもゼイユがあっさりと一蹴した。
「いや……ゼイユ先輩、ホントにカキツバタ先輩じゃないぞ……」
「俺たちが、新しく赴任してきた先生から『ここへ持っていくように』って頼まれたんだべ」
「ネリネも搬入を手伝いましたので、本当です」
スグリ、アカマツ、そしてネリネが次々とカキツバタの潔白を証言した。
「えっ……ホントなの?」
「だからそう言っただよい!」
カキツバタが不満げに口を尖らせる中、カキツバタの頭の中にふと小さな疑問が浮かび上がった。
「そういや……その新しく赴任してきたって先生、一体いつ頃から学園に来たんだ?」
「あれ? そういえば……いつだったっけ……?」
「ネリネ、覚えている?」
「……ネリネの記憶データには 正確な着任時期の記録がありません」
「シアノ先生は? 校長なら知ってるでしょ?」
「えぇ? 僕もはっきりとは覚えていないねぇ……。ただ、本校に届いた採用書類には何の問題もなかったから、普通に採用したんだけどねぇ……」
ブルーベリー学園の面々が首をかしげ、一ように困惑の表情を浮かべ始めたその時──。
「あらら……遂に気づかれてしまったか。まぁ、潮時かな」
冷ややかな笑みを含んだ不気味な声が保管庫の奥から響き渡った。
全員がハッと息を呑み、声のした方向へ一斉に視線を向ける。そこには、積み上がった備品の影、薄暗い壁に背中を預けて悠然と佇む一人の男性の姿があった。