Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い   作:ガチャガチャクツワムシ

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Dr.クラハシ

声をかけてきた男性の姿を凝視していたアカマツが、真っ先に声を上げた。

「この人だよ! さっき話に出ていた、新しく赴任してきたって先生!」

しかし、その顔を正視したアリサの表情が瞬時に凍りついた。

「貴方は……! Dr.クラハシ!!」

アリサが鋭く叫んだその名を聞き、ショウもまたハッと目を見開いて全員を庇うように一歩前に踊り出た!

「クラハシだって……!? じゃあ、先日のアカデミー襲撃事件の影にいた黒幕か!」

「おや? 私の事を知っているということは……あの時の被験者たちが目を覚ましたのかな? ならば是非とも感想を聞いてみたいですね! なんせ異世界の人間へ移植した際、どのような肉体反応を示すのか、実に興味深いですからね!」

思い出したかのように白々しく手を打ち、狂気じみた光を瞳に宿してのたまうクラハシ。その異様な態度に、ショウは冷ややかな殺気を孕んだ目で睨みつけた。

「資料通り、完全に狂ってやがるな……」

「何を言っているのかね? 我々と似た姿をしてはいますが、この世界の人間は我々よりも遥かに頑丈! 実験動物(モルモット)として、これ以上なく最適じゃないですか!」

一切の罪悪感すら抱かず断言するクラハシに、ショウの怒りが頂点へと達する。

「そんな戯れ言は、牢屋に入ってから言ってやがれ!!」

ショウはデジヴァイスを掲げ、一瞬にしてスピリットエヴォリューション! 炎の闘士・アグニモンの姿となり、爆炎を纏った拳でクラハシへと殴りかかった!

ドカンッ!!

しかし、クラハシの身体はまるで不気味な黒い液体の如くぐにゃりと輪郭を崩し、アグニモンの必殺の一撃をぬるりと回避して、先ほどショウたちが調査しようとしていた奥の保管区画へと滑り込んだ。

「激情家ですねぇ。まぁ、この学園でのデータ収集と調べ物は概ね終えましたからね。次は……本格的な臨床実験を行おうじゃないかですか」

そう言って笑うクラハシは、雑多に物が積み上げられた棚の奥から、不気味な輝きを放つ「ある物体」を素早く掴み取った。

「前回はこの世界の人間で実験を行いましたので、だから今度は……ポケモンで試してみましょう! ただ、ここじゃあ些か狭すぎますね。場所を切り替えようじゃないですか」

クラハシが言い終わるか終わらないかのうちに、その身体はゴーストポケモンのように床の陰の中へと沈み込み、完全に気配を絶って消え去ってしまった。

「逃げた!?」

「追いかけましょう!!」

スグリが叫び、タロが素早く声を上げると、一同はクラハシの野望を阻止すべく一斉に保管庫を飛び出した! アグニモンから元の姿に戻ったショウも、全力で廊下を駆け抜ける。その最中、並走するハルトが息を切らしながら尋ねてきた。

「ショウ! さっきの『Dr.クラハシ』って、一体何者なの!?」

「アイツは、俺やアリサの世界でデジモンの研究をしていた科学者だ! ただ……腕自体はそれなりに優秀だったそうだが、研究内容が『デジモンの能力を直接人間に移植し、強制的に人類を進化させる』という狂気に傾倒していったんだよ!」

ショウが走りながら説明すると、アリサがさらに険しい表情で言葉を重ねた。

「人間を対象にしたかなり違法で危険な実験を行っていたそうで、重傷者が出始めたことでテイマーユニオンから永久的な研究禁止を宣告されたんです。ですが彼はそれを逆恨みし、大規模なテロ行為を引き起こして指名手配されている犯罪者なんです!」

「そして……先日のパルデアのアカデミー襲撃事件の黒幕であることもほぼ確定していて、後日オモダカさんたちと合同で本格的な捜査に動く手はずだったんです!」

「なんか、話を聞いているとマジでとてつもなく危ない奴じゃん……!」

ペパーやボタンも青ざめる中、事態の深刻さを察したシアノ校長が即座に立ち止まり、ハッキリとした口調で指揮を執った。

「生徒たちの安全のために、全館に避難指示を出した方が良さそうだね! 僕は至急、職員室へ向かって他の先生たちに避難誘導を伝えるよ! タロちゃんたちは、テラリウムドームにいる生徒たちの誘導と安全確保をお願いできるかい!?」

「「「「「分かりました!!」」」」」

タロやカキツバタたちが力強く返答すると、シアノ校長は翻して職員室へと猛ダッシュしていった。

「取り合えず俺たちもテラリウムドームへ急ごう! ……なんか、とてつもなく嫌な予感がする!」

ショウの発言に全員が深く頷き、一行はさらに脚力を上げて、巨大な疑似生態系空間「テラリウムドーム」へと向かって突き進むのだった!

クラハシサイド

「ふむ……まぁ此処でいいでしょう」

クラハシはテラリウムドームにあるキャニオンエリアの山の上に静かに降り立った。腰からモンスターボールを取り出すと、アローラゴローニャとメブキジカを出した。そして、保管庫から掴み出してきた二つの不気味に明滅する物体――木と土のスピリットを、二体のポケモンの身体へと押し当てた。

スピリットは吸い込まれるようにポケモンたちの肉体と同化し、眩い異形の光を放ち始める。骨組みが組み替わり、強大なデジタルデータが膨れ上がっていく。

光が晴れると、そこにはもはやポケモンの面影はなかった。

アローラゴローニャは、荒々しい火山そのものに凄まじい顔面と岩石の手足が生えたかのような姿――エンシェントボルケーモンへ。

メブキジカは、巨木を削り出して作られた巨大な要塞……神話に謳われるトロイの木馬そのものの姿――エンシェントトロイアモンへと変貌を遂げていた。

「ふむ……やはりポケモンを媒体にしても、スピリットエボリューションは成立可能ですか。フフ、この世界に来て本当に良かった。ユニオンの愚か者どもに邪魔されることなく、思う存分実験を行えるのですから。……さて、この実験データを回収したら、再びパルデアに戻るとしますかね」

独り言を呟くクラハシの前で、完全に変貌を終えた二体の超巨大な古代デジモンが大地を揺るがして咆哮した。

「それでは……その解き放たれた力を存分に試して来なさい」

クラハシが冷酷に命じると、二体の巨体は別々の方向へと進路を向け、破壊の行進を開始した。

「さて……あの子供たちは、この古代の災厄にどう対処するでしょうねぇ。フフフ……フハハハハハ!」

高笑いを響かせながら、クラハシは再び黒い影の中へとその身を滑り込ませ、姿を消した。

ショウサイド

ショウたちが息を切らしてテラリウムドームへと駆け込んだ瞬間、その目に飛び込んできたのは恐ろしい惨状であった。

キャニオンエリアの岩山や人工建造物を、踏みつぶし、薙ぎ払いながら歩き回る二体の超巨体――!

「うげぇぇっ! A ボルケーモンとA トロイアモンだとぉ!?」

「まさか……! クラハシが保管庫で掴んでいたのは、木と土のスピリットだったんですか!?」

「なんだあれ……バカでかすぎるだろぃ!?」

「あんなの、ガラル地方のダイマックスポケモンでも連れてこないと対抗できないでしょ!?」

「それに……この距離でも肌に伝わってくる……凄まじいプレッシャー!」

「凄すぎないか!? どうなってんだよ!」

「ショウ! アリサ! あのデジモンたちって一体何なんだ!?」

激震に揺れるテラリウムドームの中で、四天王やハルトたちが驚愕と恐怖で叫び声を上げる中、ハルトが必死にショウとアリサへ確認を求めた。

「アイツらはA トロイアモンとA ボルケーモン! さっき俺が変身したアグニモンの元となった、伝説のデジモンの仲間だ!」

「彼らは『古代十闘士』と呼ばれる、デジモンの属性そのものの根源となった存在なんです。その秘めた強さは、並みの究極体デジモンではとても歯が立ちません!」

「なら、どうすればいいんだべ!?」

「このままだとドーム全体……ううん、学園全体に被害が広がっちゃいますよ!?」

焦りを隠せないスグリやタロの問いかけに、ショウは険しい表情で素早く状況を整理した。

「打開策はある! まず被害を最小限に抑えるために、あの二体を広大な一箇所に集める。集めたら俺がデジヴァイスでデジタルゲートを開いて、二体をデジタルワールドへ送り返す! それしか方法はない!」

「そうですね……! テラリウムドームの崩壊を防ぐには、それが最善策です!」

アリサも即座にショウの案に同意した。

「俺がサバンナエリアへ先行してゲートを開く準備をする! アリサはあの二体をサバンナエリアまで上手く誘導してくれ! 他のみんなは、ドーム内にいる生徒たちの避難誘導を至急頼む!」

ショウが矢継ぎ早に作戦を伝えると、全員が一斉に頷き、それぞれの役割を果たすべく疾走を開始した!

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