Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
作戦内容を共有し、ブルーベリー学園の四天王やスグリたちが一斉に生徒の避難誘導へ向かう中、ハルトがミライドンのボールを構えてショウへ訴えかけてきた。
「僕も誘導の手伝い……ううん、二体の抑え込みを手伝うよ! ミライドンなら空も飛べるから!」
「アギャッス!」
力強く咆哮するミライドンを前に、ハルトは並々ならぬ決意を見せたが、ショウは静かに首を横に振った。
「ダメだ。アイツらはその辺のデジモンとは文字通り一線を画す強さだ。それなら避難誘導を手伝ってくれた方がずっと助かる。ミライドンの機動力と運動能力なら、一人でも多くの生徒を安全な場所へ運べるはずだ」
「でもッ……!」
「今はあーだこーだ言っている暇はない! この手の大規模な敵の誘導は、俺たちテイマーの方が百戦錬磨で慣れているんだ。心配すんな!」
強い眼差しで言い含められ、ハルトは悔しそうに唇を噛み締めながらも、「……わかった! 気を付けてね!」と叫んでミライドンに跨がり、避難誘導へと飛び立っていった。
「そんじゃ、お嬢! 作戦開始だ!」
「了解!」
ショウはデジヴァイスからグリフォモンとドゥフトモンをリアライズ。対するアリサもデジヴァイスを掲げ、ディルビットモンと、全身に数多の拳銃や銃身を生やした凄絶な異形の究極体デジモン――ガンドラモンをリアライズさせた。
「俺たちはエンシェントトロイアモンを担当する。頼むぞ、グリフォモン、ドゥフトモン!」
「了解!」
「わかった~!」
「ならこちらはエンシェントボルケーモンをお願いします! ディルビットモン、ガンドラモン!」
「承知した!」
「応よ!」
それぞれの役割を背負い、二手へと分かれて飛び立っていった。
【アリササイド】
依然としてキャニオンエリアで暴れ回っていたAエンシェントボルケーモンへ向け、アリサの指示のもと二体の究極体が先制攻撃を仕掛けた。
「喰らえ! 【ボルジャーノン】!」
「【デルブリッツ】!!」
ディルビットモンの極大の雷撃と、ガンドラモンの全砲身から放たれた圧巻の面制圧射撃がエンシェントボルケーモンの巨体を撃ち抜く! 確かなダメージが通ったのか、エンシェントボルケーモンは不快そうに耳を突き破る唸り声を上げ、ターゲットをアリサたちへと切り替えて重い足取りで追いかけ始めた。
「……思ったよりも知能が高くありませんね。まだ素体となったポケモンの意識と、スピリットの強力なデータが完全に適合しきっていないようです。そのまま周りの建造物への被害を抑えつつ、サバンナエリアへ誘導をお願いします!」
「了解だ!」
アリサは冷静に指示を飛ばしながら、二体のデジモンと共にサバンナエリアへと急行した。
広大なサバンナエリアに一足早く到達していたショウは、デジヴァイスの空間展開機能を全開にし、デジタルワールドへと繋がる巨大なゲートを空間上に固定した。
「こちらショウ! ゲートの開拓準備、完了したぞ!」
デジヴァイスの通信機能で報告を入れ、迎撃姿勢を取っていると、地鳴りのような唸り声を上げながらこちらへと向かってくるエンシェントトロイアモンとエンシェントボルケーモンの二体を確認した。そのすぐ手前には、見事に誘導をやり遂げたアリサたちの姿があった。
「ショウさん! 誘導はこれで完了です! あとは、彼らをどう倒してスピリットを回収するかですが……」
「それについては問題ない。ユニオンのコウリーダーから緊急の許可をもらって、残りの必要なスピリットのデータをこちらへ転送してもらった!」
ショウがデジヴァイスの画面をアリサに見せると、普段使っている「炎」のスピリットに加え、「風」「氷」「土」「木」のスピリットデータが眩い光を放って表示されていた。
「そうですか……! なら、クラハシが彼らに使っているスピリットは……?」
「リーダー曰く、『クラハシがオリジナルから抽出した模造品だろう』とのことだ。……それより、来るぞ!」
引きつけられた二体の古代十闘士がゲートの真前まで到達した瞬間、ショウが操作したデジタルゲートが凄まじい吸引の光を放ち、巨体二体を一気にその渦中へと吸い込んでいった!
「あとは俺が向こうでケリをつける! 後処理はお願いいしたぞ!」
「分かりました! 無茶はしないで、気をつけてくださいね!」
「あぁ!」と短く返したショウは、迷うことなく吸い込み口となっているデジタルゲートへと自ら飛び込んで行った
ハルトサイド
避難誘導を無事に終えたハルトたちが、ショウたちの助けになればとサバンナエリアへ急行した瞬間、先ほどまでドーム内で圧倒的な存在感を放っていた二体の巨大デジモンの姿がふっと掻き消えた。現場に駆けつけると、そこにいたのはアリサと彼女のデジモンたちだけだった。
「アリサ! ショウは!? ショウはどこにいったの!?」
「ハルトさん、皆さんも……避難誘導は無事に終わったのですか?」
「ええ、問題ないわ! 生徒たちは全員避難を完了したし、テラリウムドームに生息していた野生のポケモンたちも安全な区画へ逃がしたわ!」
ゼイユが息を切らしながら報告すると、アリサはほっとしたように胸を撫で下ろした。
「良かったです。……ショウさんは、あの二体の脅威を完全に排除するため、彼らをデジタルワールドへ引き連れて向こうへ向かいました。まもなくケリをつけて戻って来られるはずです」
ハルトたちを安心させるようにアリサが微笑んだその時、目の前の空間が波打ち、眩い光の輪を描くデジタルゲートが再び開き始めた。
【ショウサイド/デジタルワールド・山岳エリア】
ゲートを潜り抜けたショウが降り立ったのは、荒涼とした岩肌がどこまでも広がるデジタルワールドの山岳エリアであった。
「よし! ここまで来れば、誰にも遠慮せず思いっきり暴れられるな! ……行くぞ! ハイパースピリットエボリューション!!」
転送された五つのスピリット――炎、風、氷、土、木が一光に集い、ショウの全身を極大の炎の粒子が包み込んだ。光が弾けた後、そこに降り立ったのはアグニモンでもヴリトラモンでもない。八つの龍の頭部を象った重厚な朱色の鎧を纏い、炎の神剣を抱く超越種――カイゼルグレイモンの姿であった!
急激な景色の変化に戸惑っていた エンシェントボルケーモンと エンシェント)トロイアモンであったが、眼前に立ち塞がるカイゼルグレイモンのあまりに強大なオーラに直感的な危機感を覚え、咆哮とともに一斉に襲いかかってきた。
「まとめて掛かってきな!!」
不敵に叫ぶカイゼルグレイモンへ向け、エンシェント ボルケーモンが超高熱の砲弾を放つ必殺技【アトミックボンバー】を繰り出す。カイゼルグレイモンは愛剣『龍魂剣』の刀身でそれを真っ向から受け止めたが、そこへ間髪入れずに エンシェント トロイアモンが無数の矢を降らせる【エペイオスギミック】で追撃!
体勢を崩された隙を逃さず、エンシェントボルケーモンの突進を食らったカイゼルグレイモンは岩山へと激しく吹き飛ばされた。
「痛ってぇなぁ……ッ! お返しだ、この野郎!!」
ガラガラと崩れた岩石を押し退けて立ち上がったカイゼルグレイモンは、龍魂剣を一閃! 鋭い袈裟斬りで Aエンシェントボルケーモンの巨体を切り裂いて蹴り飛ばすと、間髪入れずに剣を水平に構え、まるでボウガンのように照準を固定した。
「【炎龍撃】!!」
極限まで圧縮され、白光に輝く炎の矢が解き放たれ、エンシェントトロイアモンの要塞の如き巨体を一直線に貫く! 絶大なダメージに二体の古代デジモンが苦悶の声を上げた。
「これで終わりだ! 【九頭龍陣】!!」
カイゼルグレイモンが龍魂剣を極大の炎とともに大地へ突き立てると、周囲の大地に流れる八つの龍脈が地表を破り、巨大な龍の頭部となって二体へと襲いかかった! カイゼルグレイモン自身もまた九本目の龍脈そのものとなって、光の速さで突撃する!
追い詰められた二体の古代デジモンも、全エネルギーを振り絞って己の最大級の必殺技で迎え撃つ!
エンシェントボルケーモンは体内で反物質を生成し、小型のビッグバンに匹敵する超爆発を起こす【スーパーノヴァ】を展開! エンシェントトロイアモンは口部と胸部の巨大砲から超質量の砲弾を一斉に解き放つ【サプライズキャノン】を放った!
二大古代十闘士の必殺技の奔流は、迫り来る【九頭龍陣】の八つの龍頭を次々と相殺・消滅させていった。しかし――カイゼルグレイモン自身が化身した本隊の炎の龍脈だけは破れず、二大必殺技の相殺点を一直線に力任せに突き破った!
シュバァァァンッ!!
閃光が走り去った後、二体の巨体は横一文字に豪快に斬り倒され、大爆発とともに光の粒子となって崩壊した。
爆炎が晴れると、そこには本来の姿であるアローラゴローニャとメブキジカが意識を失って倒れており、その傍らにはクラハシが仕込んだ二つの模造スピリットが転がっていた。
カイゼルグレイモンは龍魂剣を無造作に一振りして炎を散らすと、背中の鞘へと滑らかに納め、静かに息を吐いた。
ハルトたちとアリサが緊迫した様子で話している最中、サバンナエリアの空間が大きく波打ち、光り輝く巨大なデジタルゲートが再び出現した。
そこから、気絶したメブキジカとアローラゴローニャを両脇にしっかりと抱え、威風堂々とした朱色の鎧を纏うカイゼルグレイモンが静かに姿を現した。ハルトやブルベリーグ四天王たちは一瞬思わず身構えたが、アリサが慌てることなく一歩前へ出た。
「お疲れさまでした、ショウさん! 怪我は無さそうですね」
その言葉を聞いて、一同はハッと息を呑み、目の前に立つ巨躯のデジモンがショウであることにようやく気づいた。
「えっ……!? ショウ……!? でも、前に見せてくれた姿と全然違うんだけど……!」
ハルトが目を丸くして疑問を口にすると、カイゼルグレイモンはハルトの方へ静かに向き直った。
「この姿は、普段使っている火のスピリットだけじゃなく、風、氷、土、木の4つのスピリットの力を一つに融合させて進化しているんだ」
そう説明しながら、カイゼルグレイモンの全身が炎の粒子となって解けていき、見慣れたショウの姿へと戻っていった。
ショウが説明をしている間に、アリサは抱えられていたメブキジカとアローラゴローニャのもとへ駆け寄り、手早く体調を確認した。
「瀕死状態ですが、命に別状はありません。すぐにケアすれば助かります」
そう告げると、それぞれのモンスターボールへと収納し、持ち運んでいた携帯用の回復システムへとセットした。
その後、シアノ校長や先生方が事態の収拾と学園内の詳しい調査を行ったところ、恐ろしい事実が判明した。
学園全体がDr.クラハシによる強力な認識阻害のコードを掛けられており、彼を「新しく赴任してきた先生」と全員が疑いもなく錯覚させられていたのだった。また、スピリットの実験台にされてしまったポケモンたちも、クラハシが生徒たちから言葉巧みに預かった個体であることが判明し、詳細なデータ検査を経て無事に元の生徒たちの元へと返還された。
なお、保管庫にあった全11種類のデジメンタルは、クラハシが自作した実験用の模造スピリットを隠蔽するためのカモフラージュとして集められ、置かれていたものであったようだ。
事件の事後処理と調査が一通り完了したショウとアリサは、テイマーユニオンへ直接事態を報告するため、ハルトやブルーベリー学園四天王、シアノ校長たちへ丁寧な挨拶を告げ、一時的にデジタルワールドへと帰還した。