Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
マイルームで一泊して疲れを癒やしたショウとアリサは、翌朝すぐにパルデア地方へと戻り、そのままポケモンリーグ本部へ向かった。事前に連絡を入れておいたため、トップチャンピオンのオモダカをはじめ、チリ、ポピー、アオキ、ハッサクの四天王全員が集合しており、二人はブルーベリー学園での出来事とDr.クラハシの動きについて詳細な報告を行った。
報告を静かに聞き終えたオモダカは、神妙な面持ちで口を開いた。
「なるほど……。すみませんが、この事件の経緯についてはイッシュのポケモンリーグにも至急連絡を入れておきますね」
「よろしくお願いします!」
「……それと私たちの予想なのですが、クラハシは間違いなく、近いうちに再びパルデア地方へ戻ってくると考えています」
「その根拠は?」
オモダカの問いに、ショウが身を乗り出して答えた。
「ここには『テラスタル』があります。テラスタルは空間や次元に干渉する特殊なエネルギーを持っていますから……あの野郎の異常な知的好奇心を間違いなく激しく刺激するはずです」
「ショウさん! 言葉遣い! ……すみませんオモダカさん。ですが、これはテイマーユニオン全体の共通の認識でもあります」
アリサから即座に鋭い叱責を受け、ショウは「あ、すんません……」と苦笑いしながら頭を下げた。
「ふふ、構いませんよ。……そうなりますと、こちらとしてもどのような対策を立てるのが最善か……」
オモダカはショウの態度を優しく笑って許すと、思案するように顎に手を当てた。
「こちらでもユニオン内で話し合ったのですが……彼は独自の技術で巧妙に消息を絶つため、事前に捜索して潜伏先を特定するのは極めて困難でして」
「何か事件や異常が起きないと、こちらのレーダーでも感知が難しいということですか」
「そうなります……。手立てが後手に回りかねず、申し訳ありません」
申し訳なさそうに頭を下げるアリサに対し、オモダカは穏やかに首を振った。
「仕方がありませんよ。過去に各地で起こった悪の組織のように大規模なアジトや人数で行動しているわけではなく、彼個人が隠密に行動しているようですからね。捜索が難航するのは想像に難くありません」
深刻な報告が一区切りついたところで、オモダカは何かを思い出したように表情を和らげ、二人へある提案を投げかけた。
「話は変わりますが……アリサさん、ショウさん。お二人に、今度開催される『学校最強大会』へ、パートナーのデジモンたちと共にゲストとして参加していただきたいのです」
「学校最強大会……それって、アカデミーで定期的に行われている地域交流の大会ですよね?」
「そう言えば、ハルトやネモからも『絶対一緒に参加しようよ!』ってよく誘われているんですが……何か特別な理由でもあるんですか?」
ショウが不思議そうに尋ねると、四天王の一人であるハッサクが重厚な足取りで前に出た。
「それについてはクラベル校長から直々に説明を頼まれておりますので、この小生が説明いたしましょう」
ハッサクは咳払いをして、事の経緯を丁寧に語り始めた。説明を最後まで聞き終えたショウとアリサは、互いに顔を見合わせて納得の声を上げた。
「なるほど……先日のパルデアのアカデミー襲撃の際、押し寄せるデジモンたちを圧巻の力で対処していたソウマさんとヒョウガさん……そして二人に同行していた私たちの姿を目撃していた生徒や先生方が大勢いたのですね……」
「それに、スター団のアジト付近でもデジモンと戦っているところを見ている連中がいたから、校内で色々と尾ひれがついた噂が広まっていたのか……」
「そういう事情もあり、今回のブルーベリー学園での事件を経て、事情を把握している校長や小生、ミモザ先生から他の先生方にも説明を進めてはおります。ですが、言葉で説明するよりも、実際にバトルを通じてデジモンという存在の健やかさ、そして時に起こり得る危険性を正しく認識していただくためにも、ぜひお二人に参加していただきたいのです」
ハッサクから真摯な理由を告げられ、ショウとアリサは少し考える素振りを見せた後、答えた。
「……趣旨はよく分かりました。一度、コウリーダーやサヨリーダーたちに相談させてもらってもよろしいでしょうか?」
「私たちだけの判断で勝手にデジモンの公表規模を決めるわけにはいきませんので」
「ええ、もちろんです。もしユニオンの規約上難しいようであれば、他の周知方法を考えますので」
オモダカからの快い了承を得て、ショウとアリサはそれぞれのデジヴァイスを取り出し、テイマーユニオンのリーダーたちへ緊急の通信を入れるのだった。
「……という訳なのですが」
「なるほど。それならば、最悪こちらからヒデトかサクヤを派遣して戦闘してもらうのはどうだろうか」
「確かに自分たちと似た姿になってもらえば……校長先生に相談してみます」
「もし、話し合いに必要ならば再度連絡してくれ」
コウリーダーとの通話を終えると、アリサは既に通話を終えており、ショウの様子を静かに伺っていた。
「すまん、待たせた。話の内容は聞こえていたよな?」
「はい、こちらもサヨリーダーから似たような提案をいただきました」
2人はオモダカに向き直った。
「取り敢えずはクラベル校長先生にも直接話してみます」
「分かりました。方向性が決まったら連絡をくださいね」
オモダカへそう伝えて退室した2人は、すぐにクラベル校長へ連絡を入れ、そのまま校長室へと向かった。
校長室に入ると、クラベル校長だけでなく担任のジニアの姿もあった。
「失礼します。……あれ? どうしてジニア先生が?」
「それは私が呼んだのです。やはりお二人の担任ですので、しっかり事情を伝えておかなければなりませんからね」
ショウの素朴な疑問にクラベル校長が穏やかに答えると、ジニアがメガネの奥の目を輝かせながら身を乗り出してきた。
「先日の事件のあとの職員会議でぇ、クラベル校長やハッサク先生から伺いましたがぁ……別の世界のポケモンですかぁ! いやぁ、研究者としてものすごく興味が湧きますねぇ~!」
研究者特有の興奮を見せるジニアに苦笑しつつ、ショウとアリサは先ほどユニオンのリーダーたちと話し合った「学校最強大会でのデジモンお披露目とヒデト・サクヤの派遣案」について伝えた。
「なるほど……確かに生徒たちに知られるのも時間の問題でしょうし、噂ばかりが一人歩きすると今後の学園生活に支障を来すでしょうねぇ」
「僕もそう思いますねぇ。正しく見せる場を作るのは良いことです」
「そうなると、ユニオンの方々の提案してくださった作戦で進めるのが最善でしょうね。……申し訳ありません、本校の事情にここまで巻き込んでしまいまして」
「とんでもありません! こちらの方が無理を言っているのです。ショウさんたちは精一杯対応してくれているのですから!」
申し訳なさそうに謝るクラベル校長に対し、アリサは即座に首を振って否定した。
そのまま細かな段取りについて話し合っていると、トントンと軽やかに扉がノックされ、ハルト、ペパー、ボタン、ネモの4人が入ってきた。
「すみません、急に入ってきて! ミモザ先生から大体の事情を聞いて、僕たちにも何か手伝えることはないかと思って」
ハルトが代表してそう申し出ると、クラベル校長は優しく頷いた。
「そうですか。それならば、ぜひご協力してほしいことがあるのです」
クラベル校長が先ほど決定した「学校最強大会」での演出と手分けについての計画を伝えると、ネモが興味深そうに身を乗り出した。
「そうなんですか! じゃあ、その大会の特別マッチとなった場合、誰が相手をするんですか?」
「俺とアリサがやるよ。テイマー同士、その方がお互い手の内も分かっていてやり易いからな」
「……ふたりとも、ホントに大丈夫ちゃんか?」
「問題がないとは言えませんが、万が一の事態に備えて準備はしっかり整えていますよ」
ボタンの心配そうな問いにもアリサがハッキリと答え、ハルトたちも納得の表情を見せた。
これで今度こそ話し合いがまとまり、解散しようとしたその時――
「あのですねぇ! ショウさんかアリサさんのデジモンを、今ここでちょっとだけでも見せて貰いたいのですがぁ……よろしいでしょうかぁ!?」
ジニアが限界まで目を輝かせて頼み込んできたため、ショウとアリサは顔を見合わせて苦笑しながら、「少しだけなら」と了承するのだった。