Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
「……って、やっちまったぁぁぁーーっ!?」
助けた主人公をおろした後、パニックに陥ったショウはいたたまれなくなり、勢い任せにその場から離脱して上空へ逃げ延びていた。
「しまった、完全に忘れてた……! スマホロトムの非常時救助機能(自動落下防止)があるから、別に俺が助けなくても平気だったじゃん! ……ま、まあいいか。どうやらこの世界の主人公は男の子だったみたいだしな。もし女の子だったら、抱きかかえたのがバレた瞬間にセクハラ扱いされるところだったぜ……」
ヴリトラモンの姿のまま空中でブツクサと愚痴をこぼしていると、バックに忍ばせていた支給品のスマホロトムが浮遊し、画面が点灯して通話状態となった。
『もしもし、ショウさん。おや? スピーカー越しに聞こえる風の音と……その姿になっているということは、もしや何か緊急事態でも?』
画面に映し出されたのは、グレープアカデミーのクラベル校長だった。
「あ、もしもしクラベル先生。いえ、事件とかではなくて……この姿がこの世界でどれくらい維持できるか、テストをしていただけですよ」
『そうですか、それなら安心いたしました。……実はですね、あなたとちょうど同時期にアカデミーへ編入される生徒がいらっしゃいましてね。よろしければ、一度アカデミーまで戻っていただけますか?』
「わかりました。すぐ戻ります」
通話を切ったショウは、周囲に人の目がないことを念入りに確認すると、地面スレスレで変身を解除。元の姿へと戻り、アカデミーを目指して軽快な足取りで歩き始めた。
一方――ハルト視点。
僕は、僕を助けてくれたあの真っ赤で美しいドラゴンポケモンが、まるで何かから逃げるように慌ただしく飛び去っていった空をいつまでも見つめていた。
『グゥゥゥゥ……』
「え……?」
足元から弱々しい唸り声が聞こえ、ハルトはハッと我に返った。
崩落した崖の下、傷つき荒い息を吐いて横たわっていたのは、見たこともない紫色の謎のポケモンだった。
「大丈夫……!?」
心配になって駆け寄ると、ポケモンの腹から豪快な虫の知らせ――大空腹の音が鳴り響いた。
「ふふ、お腹が空いてるんだね。ちょっと待ってて」
ハルトはリュックから母さんが作ってくれた特製サンドイッチを取り出し、口元へ差し出した。匂いを嗅ぐなり、そのポケモンは目を輝かせてサンドイッチにかぶりつき、一心不乱に平らげてしまった。
食べ終えると、そのポケモンは力強く立ち上がり、眩い光とともに凛々しい姿へと姿を変えた。目の前の巨大な岩を一撃で粉砕してみせると、「ついて来い」と言わんばかりに振り返り、洞窟の中へと入っていく。
……その後は、まさに怒涛の連続だった。
洞窟内で襲ってきたデルビルたちを謎のポケモンの力で退け、無事に駆けつけてくれたネモと合流。灯台へ辿り着くと、このポケモンの正体を知る先輩――ペパーと出会い、彼とのバトルを経て、謎のポケモン『ミライドン』のモンスターボールを託された。
「ねえネモ。ミライドンの他に、僕を助けてくれたもう一匹の赤いドラゴンポケモンって知ってる?」
「えっ? ミライドンの他にもいたの? 私が行った時はハルトとミライドンしかいなかったよ?」
道中、気になってネモに尋ねてみたけれど、彼女は首をかしげるばかり。
(やっぱり、僕の見間違い……夢だったのかな……?)
少しモヤモヤとした気持ちを抱えながらも、僕たちはアカデミーのあるテーブルシティへと進んで行った。
「色々あったけど……つ、ついたぁぁ〜〜っ!」
スター団に絡まれていたボタンという女の子を助けたり、ネモから手渡されたテラスタルオーブを使ってスター団の下っ端相手に初めてのテラスタルを試してみたりと、トラブル続きだったけれど、ついに目標のアカデミーへと到着した。
エントランスで待ち受けていたクラベル校長へ道中の出来事を簡潔に報告すると、「スター団を相手にする時は、危険ですのでまず我々教師を呼びなさい」と優しく注意を受けてしまった。
「さて、ハルトさん。実はあなたともう一人、本日付けでアカデミーへ編入される方がいらっしゃるのですよ。……おや、ちょうどいらっしゃいましたね」
クラベル校長が振り向いた視線の先を、僕とネモも一緒になって仰ぎ見た。
エントランスの大階段を、どこか面倒くさそうに、けれど堂々とした足取りで登ってくる一人の男子生徒がいた。
その胸元には、僕と同じグレープアカデミーの制服。そして手首には、見慣れない重厚な金属製の端末を着けていた。
――これが、僕とショウさんとの、すべての始まりとなる最初の出会いでした。