Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
巌の面を被ったオーガポンをフィールドに送り出したハルトを見て、ショウは鋭い眼光を走らせた。
「(ふむ……【砂嵐】を警戒してのチョイスか。なら、安全に削らせてもらうぞ)バンギラス! 【悪の波動】だ!」
「バァァンッ!」
「オーガポン、【蔦棍棒】で盾にして防いで!」
「ぽにっ!」
ハルトの機転の利いた指示により、オーガポンは手にしていた太い蔦の棒を地面へと突き立て、強固な木製の盾として展開。バンギラスが放った漆黒の衝撃波【悪の波動】を完全に受け止めて相殺した。
「ならば、これでどうだ! 【地震】!!」
「ギラァァスッ!」
「突き刺した蔦棍棒を足場にして上空へ跳ねて避けて!」
「ぽにぃッ!」
バンギラスが両腕を地面へ叩きつけ、凄まじい衝撃波の地割れが広がる直前、オーガポンは地面に刺した棍棒をバネのように利用して、ふわりと軽やかに上空へと跳び上がって回避した。
地鳴りの衝撃が収まり、オーガポンが華麗に地面へと着地したその瞬間――ハルトはすぐさま判断を下した。
「オーガポン、よくやった。一休みしてくれ、行ってメタグロス!!」
「メタァァァーーッ!!」
オーガポンの体力を温存するため、ハルトは素早く手札を戻し、先ほど引っ込めていたメタグロスを再び戦場へと呼び戻した。
「メタグロスか……ちょうどいい。ハルト! これを受け取れ!」
ショウはそう叫ぶと、懐から取り出した二つのアイテムをハルトのほうへ放り投げた。慌てて両手でキャッチしたハルトが手元を見ると、それは紛れもなく「メガ進化」に必要なキーストーンと、メタグロス用のメガストーンだった。
「えっ……!? でも、これって……!」
「クラベル校長先生には事前に話して許可を取ってある! 今回の大会規約では、テラスタルとメガ進化はそれぞれ制限なしに1回ずつ使っていいことになっているんだよ」
「でも、それじゃあショウがメガ進化できなくなっちゃうんじゃ……!」
「心配するな。おーーい、お嬢!」
ショウが観客席のアリサのほうに向かって大声で声をかけると、彼女はすべてを察していたかのように、首にかけていたもう一つのキーストーン付きネックレスをヒュッと鮮やかに投げ渡した。
「壊したりしたら許しませんからね、ショウさん!」
「サンキュー、助かるぜ! さぁこれで条件はイーブンだ、ハルト! やり方は分かるか?」
「いや、ぶっつけ本番だから一応教えて!」
バトルを一時中断し、審判の許可を得てメタグロスにメガストーンを装着させると、ショウは手短にメガ進化の同調手順をレクチャーした。
「よし、準備はいいか! 砂嵐が一旦止んだが、また起こせばいいだけの話だ……行くぞ! バンギラス、メガ進化!!」
「バァァンッ!!」
「ぶっつけ本番だけど……行くしかない! メタグロス、メガ進化だ!!」
「メェタァァァッ!!」
二人のトレーナーが同時にキーストーンの光を共鳴させると、眩い虹色のエネルギーが二体の巨体を激しく包み込んだ。
光が晴れたとき、そこには『メガバンギラス』と、『メガメタグロス』が並び立ち、再びフィールドに荒々しい砂嵐を巻き起こした!
「教えておこう、メガメタグロスの特性は【硬いツメ】に変化している。……お待たせしたな、バンギラス! 【悪の波動】!!」
「ギラァァスッ!!」
「了解! メタグロス、【バレットパンチ】で懐に潜り込むんだ!」
「メタァァッ!」
メガバンギラスの口から凄まじい光線状となって放たれた【悪の波動】に対し、メガメタグロスは鋼の拳を高速で弾かせる【バレットパンチ】の推進力を応用し、紙一重で軌道を回避しながら一直線に肉薄した!
「チッ……! バンギラス、そのまま捕まえて地面に叩きつけろ、零距離【地震】だ!!」
「バァァンッ!」
突撃してきたメガメタグロスを、メガバンギラスは巨体の腕で力任せにガシリと抱え込み、そのまま真下の地面へと激しく叩きつけた。直後、至近距離から極大の【地震】の衝撃波がメガメタグロスを直撃する!
「そのまま【龍の舞い】で舞い踊りながら、尻尾で吹っ飛ばせ!」
「メガメタグロス、【ハードプレス】で押し潰せ!」
「メタァッ!」
「逃がすか! 全身から【悪の波動】と【地震】の重ねがけを叩き込め!!」
「ギィラァァァスッ——!!」
上空から重量級の押し潰しを狙うメガメタグロスに対し、メガバンギラスは全身全霊の暗黒エネルギーと地鳴りの奔流を同時に全方へ解き放った! 圧倒的な重圧と破壊力の前に、メガメタグロスは一気に瀕死の手前まで追い詰められてしまう。
「(くっ……! メガ進化の戦闘経験の差がそのまま出てやがる。このままじゃ押し切られる……どうすれば……!)」
冷や汗を流しながら打開策を必死に模索するハルトの脳内に、突如として奇妙な感覚が流れ込んできた。
ふと目の前のメガメタグロスを見ると、言葉はなくとも、その赤い眼光は静かに、そして力強く無言で頷いていた。
「……いいの、かい?」
ハルトが心の中で問いかけると、メガメタグロスは左側の合金の腕をクッと曲げて、力強いサムズアップの仕草を返してみせた。
その信頼の絆に、ハルトの迷いは完全に吹き飛んだ。
「ありがとう……! やろう、メタグロス! 【バレットパンチ】でバンギラスに密着し続けろ!!」
「メタァァッ!!」
「なんだと……? バンギラス、全身の【悪の波動】で無理やり引き剥がせ!!」
「バァァンッ!」
「そのまま――【大爆発】ーーっ!!」
「メェタァァァッ——————!!!!」
メガバンギラスが暗黒の波動を放つよりコンマ数秒早く、メガメタグロスの全身が眩すぎるほどの白銀の閃光を限界を超えて一気に爆発させた。
次の瞬間、フィールドのすべてを白く塗りつぶすほどの、凄まじい大爆発の光と衝撃波が轟音とともに世界を揺るがせたのだった――!!
凄まじい爆風と土煙がゆっくりと晴れていくと、そこにはメガ進化が解除されて倒れ伏しているメタグロスと、凄まじいダメージに膝をつきながらも眼光を衰えさせず立っているメガバンギラスの姿があった。
「ありがとう……本当に助かったよ。ゆっくり休んでね」
ハルトは力尽きたメタグロスを温心で包み込むようにボールへ戻すと、残された手札から再び相棒をフィールドへ呼び戻した。
「お願い! オーガポン!!」
「ぽにぃッ!」
巌の面を被ったオーガポンが凛とした佇まいで再び舞い戻る。
「くっ……(満身創痍だが、まだ倒れるわけにはいかねぇ!)バンギラス、【龍の舞】だ!」
「バァンッ!」
「そうはさせないよ! 【挑発】!!」
「ぽにぽにっ!」
ハルトの機転の利いた指示により、オーガポンはおどけた仕草で煽り立てる。メガバンギラスは頭に血が上り、ステータスを上昇させる【龍の舞】の発動を強引に中断させられてしまった。
「チッ……攻撃技しか出せねぇか! ならば【地震】だ!!」
「ギィラァスッ!」
「跳んで、【ウッドホーン】!!」
「がおぽにっ!」
激しい地割れの衝撃波が広がる直前、オーガポンは軽やかに上空へと跳躍して【じしん】を回避! そのまま急降下してメガバンギラスの巨体に角を突き立て、体力を吸い取って自身の傷を癒やした。
「振り払え! 【悪の波動】!!」
「バァンッ!」
至近距離からの暗黒の衝撃波を受け、オーガポンは後方へ吹き飛ばされる。
「オーガポン、【身代わり】!!」
「ぽにぃッ!」
吹き飛ばされる勢いを利用してオーガポンは一瞬で自分の分身を作り出し、姿を隠した。攻撃目標を見失ったメガバンギラスが周囲を鋭く警戒する。
「後ろだ! 【地震】!!」
「バンッ!?」
「遅いよ! 【蔦棍棒】!!」
「がおぽにッ!」
背後からの気配に気づいたメガバンギラスが地鳴りを起こそうと振り向いた瞬間、オーガポンの渾身の【蔦棍棒】が激しく命中し、巨体を豪快に吹き飛ばした。
「分身に惑わされるな! 【身代わり】ごと壊せ、【地震】!!」
「ギラァッ!」
体勢を立て直したメガバンギラスが怒りに任せてフィールド全体に強力な地鳴りを走らせ、分身を粉砕する。
「上からだ! 跳んで【蔦棍棒】!!」
「ぽにぃッ!」
しかし、【身代わり】に意識を割かれた一瞬の隙を見逃さず、頭上から滑空してきたオーガポンが極大の一撃をメガバンギラスの脳天へと叩き込んだ!
ドゴォォォンッという音とともにメガバンギラスはメガ進化を強制解除され、そのまま大きな体躯を横たえて動かなくなった。
『バンギラス、戦闘不能!』
「よくやった、バンギラス……お前のおかげでここまで来られたぞ」
ショウはバンギラスを労いながらボールへ収めると、不敵かつどこか懐かしそうな笑みを浮かべた。
「よくやってくれたな、ハルト。……さてと、公式戦で『本当の相棒』を出すのはパルデアに来てからだとこれが初めてだな」
ショウのその言葉に、ハルトは思わず首をかしげた。
「え……? ショウのパルデアでの初めての相棒って、エーフィじゃなかったの?」
「あいつはこの地方にやってきて最初に手に入れたポケモンだよ。これから出すこいつこそが……俺の原点にして、本気の相棒だ! 出てこい、オーダイル!!」
「オーダッ!!!」
光の中から現れたのは、圧倒的な圧迫感を放つおおあごポケモン・オーダイルだった!
しかし、その体色は通常の色ではなく、異なる色彩を纏っていた。さらに、一般的なオーダイルのサイズを遥かに超える巨大な体躯をしている。
「もしかして……色違い!? それに、めちゃくちゃ大きい!!」
「こいつは俺の他のパートナーたちと同じで、通常の個体よりも遥かにでかい規格外のサイズなんだ。おまけにワニノコの頃から世界中で修羅場をくぐり抜けてきたからな、戦闘経験の桁が違うぜ」
オーダイルが放つ重厚で研ぎ澄まされた威圧感――ハルトはショウの言葉がハラタリでもブラフでもないことを肌で察した。
「気をつけて行くよ……! オーガポン、【ウッドホーン】!!」
「がおぽにッ!」
「オーダイル、【冷凍パンチ】だ」
「ダイルッ!!」
オーガポンが技を発動して飛び出そうとしたそのコンマ数秒前、オーダイルは圧倒的な踏み込みで空間を置き去りにし、凍てつく冷気を拳に纏わせてオーガポンの懐へと一瞬で潜り込んだ。
放たれた一撃は音をも置き去りにし、凄まじい衝撃とともにオーガポンを直撃! 強烈な弱点攻撃を受け、オーガポンは反撃の隙すら与えられず、一撃でその場に倒れ伏して戦闘不能となった。
『オーガポン、戦闘不能!』
ショウが切り札として繰り出した色違いの巨大なオーダイルは、鋭い冷気を纏った拳の一撃で、オーガポンを一瞬にして戦闘不能へと追い込んだ。
「嘘……!? さっきまでの戦いで多少ダメージを受けていたとはいえ、まだ半分以上の体力が残っていたのに……!」
驚愕しながらオーダイルの巨体を凝視したハルトは、その首元に下げられた小さな装飾品に気づいた。
「あれは……【命の珠】? いや、でも攻撃した後に反動ダメージを受けている様子がない……まさか、特性が【力ずく】!?」
ハルトがたどり着いた答えに、ショウは不敵に笑って頷いた。
「大正解だ。俺のオーダイルの特性は【力ずく】。これのおかげで、追加効果が消える代わりに【命の珠】の反動ダメージを完全に無視して、技の威力を底上げできるんだよ」
ショウの説明に「やっぱり、手札の格が違いすぎる……!」と歯噛みしながらも、ハルトは戦闘不能になったオーガポンを静かにボールへと戻した。
「でも、どれだけ規格外でも……ここまで来たなら、最後まで僕の相棒と一緒に突っ走る! 行ってくれ、ラウドボーン!!」
「ボワァァンッ!!」
ハルトが最後に選んだのは、共に旅を歩んできた最高のパートナー、シンガーポケモンのラウドボーンだった。
「いいぜ、その意気だ! 面白くなってきたじゃねーか! やるぞ、オーダイル、早業の【龍の舞】!!」
「ダイルッ!」
「ラウドボーン、隙を与えないよ! 【鬼火】だ!!」
「ボワンッ!」
オーダイルが凄まじい身のこなしで素早く自身の能力を高めようと舞うのと同時に、ラウドボーンは青白く燃え盛る鬼火を飛ばして火傷を負わせようとする。しかし、オーダイルは研ぎ澄まされた反射神経でそれを鮮やかに見切って回避した。
「畳みかけるぞ、オーダイル! 力業の【アクアブレイク】!!」
「オーダァァッ!!」
「負けないよ、ラウドボーン! 全力で【フレアソング】!!」
「ボワァァンッ!!」
怒濤の水流を纏って突進するオーダイルに対し、ラウドボーンは熱い歌声を響かせた火炎弾を正面から叩きつける! 圧倒的な水圧が炎を押し切るが、熱量の反動で威力をわずかに削がれた【アクアブレイク】がラウドボーンを強烈に捉え、吹き飛ばした。
「今だ、隙をついて【怠ける】で回復して!」
「ボワァ……」
吹き飛ばされながらも、ラウドボーンは地面に着地した瞬間にお腹をさすって即座に体力をリカバリーする。
激しい攻防の末、互いに手持ちは最後の1匹ずつ。観客席の生徒たちも息を呑んで固唾を飲んで見守る中、ショウとハルトは示し合わせたように、同時に腕のテラスタルオーブを強く掲げた。
「「――自分の道(未来)を、切り拓け! テラスタル!!」」
眩い光が二人のパートナーを包み込む。
ラウドボーンは炎タイプ、対するオーダイルは地面タイプへとそれぞれ姿を変化させた!
「水タイプじゃないなら……! ラウドボーン、【フレアソング】で焼き尽くせ!!」
「ボワァァンッ!」
「受けて立つぜ! オーダイル、タイプ一致の力業【地震】だ!!」
「オーダァッ!!」
ほのおタイプの等倍となったラウドボーンの【フレアソング】と、オーダイルの地面テラスタルが乗った極大の【地震】が真っ向から激突し、互いに致命傷に近い絶大なダメージを負い合う!
「くっ……! もう一度【怠ける】で耐えて!」
「オーダイル、一気に決めるぞ、早業の【龍の舞】で限界を超えろ!」
ハルトが粘り強く回復を指示する一方、ショウはさらなる加速と手数を重ねて勝負の終局へと舵を切る。
周囲の観客全員が、「次の一撃が、この大会のすべてを決める――!」と肌で理解していた。
「オーダイル、これ以上の手加減はなしだ! 全力全開、力業の【アクアブレイク】!!」
「ダイルッ――!!!アァァッ!!」
「ラウドボーン、僕たちのすべてを乗せてくれ……フルパワーの【フレアソング】!!」
「ボワァァンッ――――!!!」
二人のトレーナーの絶叫が響き渡ると同時に、かつてないほど巨大な水流の牙と、すべてを焼き尽くす灼熱の歌声がフィールドの中央で完全に激突した。
ドゴォォォォンッ!!!
凄まじい衝撃波と爆風が周囲のバリケードまで吹き飛ばし、フィールド全体が真っ白な煙と水煙に包まれた。
数秒後、煙がスーッと晴れていくと――そこには、お互いに一定の距離を取り、互いに肩で大きく息をしながら凄まじい殺気で睨み合うオーダイルとラウドボーンの姿があった。
静寂が支配したフィールドで、ハルトはわずかに口元を緩め、力なく笑った。
「今回は……僕の、負けだね」
「あぁ……長かったが、俺の勝ちだ」
二人がそう言葉を交わした瞬間、ラウドボーンの頭上に輝いていた炎のテラスタルジュエルがパリンッと音を立てて砕け散り、そのままガクリと大きな体を地面に預けて倒れ込んだ。
『ラウドボーン、戦闘不能! したがって、勝者――ショウ!!』