Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
2人はお互いのパートナーポケモンをそれぞれのボールに戻すと、まっすぐに向き合った。
「決勝戦、頑張ってね!」
「おう、任せとけ!」
そう声を掛け合いながらしっかりと握手を交わしたとき、ハルトの手は悔しさと疲労で微かに震えていた。しかしショウはあえてその震えには触れず、明るく笑い飛ばしながらバトルフィールドを後にした。
控え室に戻り、手持ちのポケモンたちを回復させながら次の決勝戦に向けた手持ちの選別を行っていると、腰のデジヴァイスからヘクセブラウモンの声が響いた。
「ショウ、ハルトのところへ様子を見に行かなくていいの?」
「行く必要ないだろ。どうせボタンがあいつのところへ慰めに行ってるだろうし……今ここで俺がわざわざ顔を出したら、負けたハルトに気を使わせちまうだろ」
「そうなの?」
「そういうもんだよ。それよりも……たぶん、次の決勝の相手はお嬢だろうな」
そう言いながら手元のスマホロトムの画面へと視線を移すと、そこではちょうどアリサとネモによる準決勝の激闘が中継されていた。
「次の決勝も、またオーダイルに頑張ってもらうしかないかな……」
そう呟きながらオーダイルのモンスターボールを見つめていると、カチリと勝手に留め具が外れ、中からオーダイルが巨体を現した。そして、ふっと優しげな仕草でショウの頭をガブリと甘噛みする。
「おまっ、くすぐったいって!」「ダイル……」
甘噛みを終えると、オーダイルは大きな頭をショウの肩にスリスリと嬉しそうに擦り付けた。
「すごい懐いてるね、ショウのこと」
「そうだな。コイツとはそこそこの付き合いになるもんな」
しばらく機嫌良しにじゃれついていたオーダイルだが、満足したのか自らトコトコとボールに戻っていった。
「そういえば、オーダイルってショウにとって一番思い入れのあるポケモンだもんね」
「あぁ。俺が初めて『ポケモン』っていうゲームの世界を知った、すべてのきっかけだからな」
懐かしそうに目を細めて語っていると、スマホロトムのモニターの向こう側から、観客席の割れんばかりの盛大などよめきと歓声が聞こえてきた。
「おっ、どうやら決着が着いたみたいだな」
「アリサが勝ったみたいだね」
「だな。次はもっと手強い相手だ、気を引き締めていかないとな」
そう気合を入れ直すと、ショウは再び決勝戦の戦術の構築へと没頭し始めた。
【ハルトサイド】
激闘を終え、手持ちポケモンを完全に回復させたハルトは、相棒のミライドン背に跨って誰もいない静かなアカデミーのテラスへと移動し、一人ぽつんと黄昏ていた。
風の音が吹き抜ける中、ふと足音が近づいてくる。
「ハルト……」
そう優しく声をかけられて振り返ると、そこにはいつの間にか追いついてきていたボタンが立っていた。言葉もなく、ボタンはハルトの隣にそっと腰を下ろす。
しばらく静寂が続いた後、ハルトは膝に顔を埋めたまま、震える声でポツリポツリと胸の内を話し始めた。
「僕さ……アカデミーが襲撃されたときも、ブルーベリー学園の事件のときも……結局、自分の無力さばかり思い知らされて、何もできなかったんだ」
「うん……」
「確かに、デジモンたちとポケモンじゃ、力の次元が違いすぎるのは実際に戦って分かっているよ。だけど……それでも、僕にも何かできることがあるんじゃないかって、信じたかったんだ」
「うん……」
「だから今回の大会で、ショウに真正面から勝って、『僕だって立派な戦力なんだ』って証明したかった。……なのに、負けちゃった。僕じゃ、ショウの力には到底なれないのかな……?」
だんだんと声が詰まり、泣きそうになるハルトを見かねて、ボタンはそっと自分のほうへその背中を引き寄せ、優しく頭を撫で始めた。
「……ねぇ、ハルト。前にショウが、ウチにこんなことを言っていたの」
静かなトーンで、ボタンはある日のショウとの会話を紡ぎ出す。
『俺やデジモンたちは、この世界にとっては本来いちゃいけない異物だ。任務が終われば、この世界から俺たちの記憶も痕跡もすべて消して、いなくなろうと思っていたんだ。……だけど、お前らはそんな異物である俺たちを拒絶しないで、当たり前のように「友達」だと言ってくれた。正体を知られれば誰も受け入れてくれないものだと思っていたから、最初は驚いたし、めちゃくちゃ嬉しかったんだよ。これがアカデミーで言うところの「宝物」ってやつなんだなって思った。だから俺は、俺にとっての宝物であるお前らを、今度は俺が守りたいと思っているんだ』
あのとき、少し恥ずかしそうに、でも真っ直ぐな瞳でそう語っていたショウの言葉をそのままハルトに伝える。
「だからさ、そんなに自分を卑下しないでよ。ウチらはちゃんと、ショウにとっての『力』になれているんだからさ」
ボタンの温かい慰めの言葉を聞いた瞬間、張り詰めていた糸がプツリと切れたように、ハルトは子供のように声をあげて大泣きし始めた。
ボタンは何も言わず、ただしっかりとハルトを抱きしめ、落ち着くまで優しく背中をさすり続けたのだった。