Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
観戦していたアカデミーの生徒たちは、今大会で次々と巻き起こる歴史的な番狂わせにすっかり度肝を抜かれていた。事前の大方の予想では、優勝の常連であるハルトか、絶対王者であるネモが優勝するだろうと誰もが信じ疑っていなかったからだ。
しかし、その最強格の二人を打ち破り、まさかの今大会「初参加」であるショウとアリサの二人が決勝戦へ駒を進めたことで、観客席のあちこちで「一体どちらが優勝するんだ……!?」「予想が全くつかない!」と、かつてないほど熱の入った議論や予想が活発に飛び交っていた。
そんな大歓声が轟く中、話題の中心にいる二人は静かに、しかし確かな闘志を宿してバトルフィールドの両端に立った。
「そんじゃ……やりますか」
「そうですね。手加減はなしでいきましょう」
言葉少なに交わされた穏やかな挨拶の直後、二人は同時にモンスターボールを勢いよく投げ放った。
「行ってこい、 エーフィ!!」
「フィィーーッ!」
「お願いします、キュウコン!」
「コォンッ!!」
ショウが繰り出したのは信頼厚いエーフィ、対するアリサが最初の一手に選んだのは、美しい純白の毛並みを持つアローラ地方の姿のキュウコンだった。キュウコンがフィールドに降り立った瞬間、天候が変わり、サラサラと冷たい雪が舞い降りてくる。
「初手から特性【雪降らし】か……! ならば、エーフィ、早業の【瞑想】だ!」
「フィッ!」
「キュウコン、隙を与えないで。【オーロラベール】を張って!」
「キュウンッ!!」
エーフィが驚異的なスピードで精神を研ぎ澄まして自身の能力を一気に高めていくと同時に、アローラキュウコンは舞い散る雪の魔力を利用して、物理・特殊双方のダメージを半減させる屈強な光の壁【オーロラベール】を鮮やかに展開した。
「……それを待っていたぜ! エーフィ、【欠伸】だ!!」
「フィァ~……」
エーフィがトロンとした眠気を誘う泡を飛ばす。
「そう簡単に引っかかりませんよ……キュウコン、一度引いてください。お願いします、シャンデラ!!」
「シャアンッ!」
催眠状態に陥る前に、アリサは素早くキュウコンをボールに戻し、代わりにいざないポケモンのシャンデラを送り込んだ。
「なら、もう一度だ! エーフィ、早業の【瞑想】を積みながら、もう一度【欠伸】を飛ばせ!」
「フィァ~……」
先ほどと同じ戦術で揺さぶりをかけるが、今度はシャンデラがしっかりと見切って余裕で回避してみせた。
「同じ手には二度もかかりません! シャンデラ、一気に仕留めろ【シャドーボール】!!」
「シャァァンッ!!」
アリサの鋭い指示を受け、シャンデラが巨大な闇のエネルギー弾を放ち、エーフィを直撃させる! 先ほどの【瞑想】による特防上昇のおかげで何とか気絶こそ免れたものの、エーフィはかなりのダメージを受けてしまう。
「よく耐えた……よし、【バトンタッチ】だ!!」
「フィ……!」
エーフィは受け継いだ能力の強化状態をそのままに、光の尾を引いてショウの手元へと戻り――その代わりとして、地鳴りのような足音とともに重厚な巨体がフィールドに現れた。
「……ドサイドン! ショウさんの手持ちの中でも、最大級のパワーを持つ1体ですね」
「そうだ。いくら【オーロラベール】の壁があるとはいえ、このドサイドンの力技をまともに受け止め切るのは難しいぞ……! ドサイドン、力業の【地震】だ!!」
「ドサァァァーーッ!!!」
ドサイドンが地面へと全体重を乗せた両腕を叩きつけると、先ほどのメガバンギラスをすら凌駕する凄まじい大地震の激震が走り、観戦していた生徒たちが思わず尻もちをつくほどの凄まじい衝撃波がフィールドを抉り取った!
「シャンデラ、足場を取られる前に上空へ跳んで回避して、【エナジーボール】!!」
「シャンッ!」
シャンデラは辛うじて宙へと飛び上がり、地割れの奔流を躱しながらすぐさま緑のエネルギー弾を撃ち返す。
「耐えろドサイドン! 反撃の【ロックブラスト】だ!!」
「サァァイッ!!」
【エナジーボール】の直撃を受けながらも、ドサイドンはビクともせず、両肩の砲身から無数の硬質な岩の弾丸を凄まじい連射速度で空中のシャンデラへと撃ち上げる。
逃げ場を塞がれたシャンデラにすべての岩弾が容赦なく命中し、耐えきれなくなったシャンデラはそのまま力を失って地面へと墜落した。
『シャンデラ、戦闘不能!』
「先ずはこちらが1体失いましたね。でも、勝負はここからです! お願いします、ルカリオ!」
「クォンッ!」
アリサが力強く送り出したのは、ルカリオだった。
「ルカリオか……。まぁ、天候も戻って【オーロラベール】の壁も切れたな。ドサイドン、一気にいくぞ! 早業【アームハンマー】!!」
「ドサァァッ!」
ドサイドンが凄まじい足取りで一気にルカリオの懐へと肉薄し、重量のある両腕を叩きつける。
「ルカリオ、身体に纏う波導の感覚を研ぎ澄ませて避けてください!」
「クォン!」
しかし、ルカリオはまるで紙のように軽やかに、すり抜けるようにドサイドンの連撃を完全に見切って回避した。
「避けられたか……ならドサイドン、尻尾も使え!」
巨体を回転させながら、両腕と分厚い尻尾を総動員して【アームハンマー】の嵐を浴びせるが、ルカリオはそのすべてを高度な身のこなしでひらりひらりと翻弄し続ける。
「今です! ルカリオ、【波動弾】と【ラスターカノン】を同時に!!」
「クォォンッ!!」
ルカリオは両腕から凄まじい威力の【波動弾】と【ラスターカノン】を間髪入れずに同時放出し、直撃を受けたドサイドンを豪快に吹き飛ばした。ドサイドンはそのまま地面に崩れ落ち、動かなくなる。
『ドサイドン、戦闘不能!』
「突撃チョッキを持たせていても、今の連撃と抜群の相性では耐え切れなかったか……お疲れ、よくやった。行ってこい、ブーバーン!」
「ブバッ!!」
ドサイドンを回収したショウが次に繰り出したのは、圧倒的な火力を誇るブーバーンだった。
「このまま一歩も引きません! ルカリオ、【波動弾】の連射です!」
「クォンッ!」
「ブーバーン、力業【噴煙】で熱の壁を作ってガードしろ!」
「ブバーッ!」
ルカリオが無数に打ち出す青い【波動弾】の弾幕を、ブーバーンは全身から吹き出す灼熱の【噴煙】の熱波で完全に相殺・防御してみせる。
「お返しだ、ブーバーン! 力業【火炎放射】を弾丸のように撃ち出せ!!」
「バーンッ!!」
「ルカリオ、【ラスターカノン】でなぎ払ってください!」
「クォォンッ!!」
ブーバーンが機関銃の如く【火炎放射】を連続発射し、対するルカリオは両腕から放つ【ラスターカノン】の閃光でそれらをすべて撃ち落とし、激しい閃光と爆風がフィールドを焦がす。あまりの激しい攻防に、両者ともに早くも肩で荒く息を付き始めていた。
「このままでは埒が明かないな……! 【日本晴れ】!!」
「なら、こちらは……【悪巧み】で一気に限界を超えます!」
ブーバーンがフィールドの天候を晴れ状態に書き換えて炎技の威力を極限まで高めるのと同時に、ルカリオは禍々しいまでの精神力を高めて自身の特攻を急上昇させ、次の一撃にすべてを賭ける準備を整えた。
「決めるぞブーバーン! 力業【熱砂の大地】と【火炎放射】のコンビネーション!!」
「ブバーァァッ!!」
「ルカリオ、負けません! 【波動弾】と【水の波動】の同時放出しなさい!!」
「クォォォンッーー!!!」
ブーバーンが放った灼熱の【熱砂の大地】が【火炎放射】と融合して溶岩流の如き奔流となり、対するルカリオが放った【波動弾】と【水の波動】は晴れ状態による水弱点を逆手に取った独自の魔力で混ざり合い、激しい水蒸気と衝撃波を伴って激突した!
ドゴォォォォンッ!!!
凄まじい大爆発がフィールドのすべてを白煙で包み込む。
そして、ゆっくりと煙が晴れていくとそこには――限界を超えた負荷に耐えきれず、同時に地面へと倒れ伏して動かなくなったルカリオとブーバーンの姿があった。
『ルカリオ、ブーバーン、両者戦闘不能!』
「これで、お互いの手持ちはイーブン……だが、場に残された戦力と消耗を考えると、こちらがやや不利か…巻き返すぞ、ハッサム!!」
「サムッ!!」
「そうはさせません! お願いします、ガルーラ!!」
「「ガルッ!!」」
ショウはハッサムをアリサはガルーラを繰り出した。
【ハルトサイド】
ハルトはすっかり泣きジャクって気持ちが落ち着いた後、ボタンと一緒にショウとアリサの決勝戦を観戦するために観客席へと向かった。会場へ足を踏み入れると、試合はすでに激しさを増していた。
「ハルト! ボタン! こっちこっちー!」
観戦スペースを探していると、ネモが大きく手を振って二人を手招きしてくれた。そこへ向かうと、ペパーとミモザ先生も一緒に並んで試合を見つめていた。
「ハルト、落ち込んでたから心配したんだぜ! でも、もう大丈夫そうだな!」
「うん。心配かけてごめんねペパー! ……ところで、今どんな状況なの?」
「ショウとアリサの手持ちが3体ずつ判明して、そのうち2体ずつが戦闘不能になっているの! 判明している残り1体は、無傷のアローラキュウコンとダメージを負っているエーフィだね! 今ちょうど、二人がハッサムとガルーラを出したところだよ!」
ネモが目を輝かせながら興奮気味に説明していると、会場全体のボルテージがさらにぐわっと跳ね上がり始めた。
「見て! 二人が……!」
ボタンの声に反応し、全員の視線がフィールドの中央へと注がれた。
「ハッサム、行くぞ!」
「ガルーラ、行きますよ!」
「「――メガ進化ッ!!」」
ショウとアリサは示し合わせたかのように同時に声を張り上げ、それぞれのキーストーンへ指先を滑らせた。眩い光の奔流がフィールドを包み込み、そこには鋼の凶器と化したメガハッサムと、我が子とともに圧倒的な絆のオーラを纏うメガガルーラが威風堂々と姿を現した。
「ハッサム、【バレットパンチ】!」
「サムッ!」
「させません! ガルーラ、【猫騙し】!」
「「ガルッ!!」」
メガハッサムが超高速の【バレットパンチ】を繰り出そうとしたその瞬間、メガガルーラの機敏な【猫騙し】の掌底が先に叩き込まれ、メガハッサムは思わず怯んで攻撃を中断させられた。
「ならば! 【飛び掛かる】!」
「サムッ!」
「ガルーラ、【グロウパンチ】!」
「「ルーラッ!!」」
メガハッサムが巨体で飛びかかり、親ガルーラの攻撃力を削ごうとするが、メガガルーラは親子揃って鋭い連続パンチを叩き込み、自身の攻撃力を上昇させていく。
「もう一度だ! 【飛び掛かる】!」
「こちらもです! 【グロウパンチ】!」
同じ激しい技の応酬が何度も繰り返された。
「……ねぇ、何かガルーラの攻撃の威力がどんどん上がっていってない?」
「おかしいね……【グロウパンチ】で攻撃が上がっても、ハッサムの【飛び掛かる】で相殺されて元に戻るはずなのに……」
「ハルト、何か知ってる?」
観客席でペパーやネモが首を傾げていると、ミモザ先生がハルトへ問いかけた。
「確か……前にショウが言っていたんですが、メガガルーラの特性は【親子愛】に変化して、すべての攻撃技を親子で『2回攻撃』できるようになるって言っていました……えっ? もしかして……!」
「何か気づいたの、ハルト!?」
「多分だけど……【グロウパンチ】の追加効果も親子でそれぞれ発動するから、1ターンで攻撃力を2段階引き上げているんだ! だから【飛びかかる】で1段階下げられても、差し引きで毎ターン確実に攻撃力が上がり続けているんだよ!」
ハルトの明晰な推測を聞き、周りのペパーたちや観客は「なんて恐ろしい積み性能だ……!」と戦慄した。
そしてフィールド上では、ショウが牙を剥くタイミングを完璧に見定めていた。
「攻撃力は限界まで上がりました……これで止めです! 【炎のパンチ】!!」
「「ルーラッ!!」」
「ハッサム! 【ダブルウィング】で2体を同時に撃ち払え!」
「ハッサムッ!」
メガハッサムが鋼の翼を振るい、迫り来るメガガルーラ親子へ叩きつけようとする。しかし、極限まで威力が跳ね上がったメガガルーラ親子の両拳が、挟み込むような超絶的な火力の【炎のパンチ】となってメガハッサムを激しく粉砕した!
凄まじい爆風とともに吹き飛ばされたメガハッサムは、空中ですでにメガ進化が解除され、地面へ叩きつけられてそのまま戦闘不能となった。
『ハッサム、戦闘不能! 勝者、メガガルーラ!!』