Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
倒れたハルトに駆け寄り、呼吸と状態を素早く確認したショウ。自身も限界すれすれで息を荒くしながらも、ぐったりとしたハルトを背負う。戦闘中にハルトが使用していた【デジメモリ】を回収しようと手元のデジヴァイスに目をやった瞬間、メモリの表面にパキパキと亀裂が走り、そのまま砂のように消滅してしまった。
「……なるほど。使い捨ての消耗品だが、その分の一時的なスペック強化の爆発力は凄まじかったな」
ショウが冷静に分析していると、ハルトの安否を心配したボタンやネモたちが駆け寄ってきた。
「ハルト……っ!」
「大丈夫だ。デジソウルを限界を超えて放出しすぎたのと、クラハシからデジモンの戦闘知識を無理やり脳に詰め込まれていた反動で、オーバーヒートを起こしているだけだ。しっかり休ませれば元に戻るさ」
ハルトを診ていたディルビットモンが、不安がるボタンたちを安心させるように落ち着いた声で告げた。
「こういうデジソウルの枯渇は、新米テイマーがよく起こす症状だからなぁ」
「そう言えば、ショウも昔は無茶しすぎでよくバッタリぶっ倒れていたよねぇえ!?」
ヘクセブラウモンが昔を懐かしむようにからかうと、ショウは無言で相棒の腹部に綺麗に拳をめり込ませた。
――ピピッ、と、その静寂を切り裂くようにショウのデジヴァイスが着信音を鳴らす。画面を確認したショウは、低く息をついた。
「今、テイマーユニオンから連絡があった。クラハシの野郎を取り逃がしたそうだ。これから現場の追跡・捕縛部隊とここで合流することになった」
そう仲間たちに伝えると、ショウはまだその場にへたり込んでいる人物に視線を向けた。
「……お嬢、立てるか?」
「……足が完全に痺れて感覚がありません……無理です……」
長時間の正座とベルスターモンによる容赦ないお仕置きのせいで完全に歩行困難になっているアリサを見て、ショウは仕方なさそうに肩をすくめた。
「しょうがねぇな」
ハルトを背負ったまま、ショウはもう片方の腕でひょいとアリサを横抱きに抱え上げた。
「ちょっ……!? ショウさん!?」
「さっさと合流地点まで行きたいからな。足を捻ったってことにでもしておけ」
顔を真っ赤にしてジタバタと恥ずかしがるアリサにそう言い放つと、ショウの拳ダメージで踞っているヘクセブラウモンをデジヴァイスへ戻し、代わりにアリサのデジヴァイスを声をかけた。
「お嬢のデジモンたち、俺たちの護衛を頼む!」
「応よ、任せな!」「姫を安全を頼むぜ!」
話を聞こえていたのか、光の中からガンドラモンと、両足が二丁拳銃になっているガンマンの姿をしたデジモン・マグナキッドモンが即座にリアライズ! すでに周囲を固めていたベルスターモンやディルビットモンと合わせ、4体の究極体が隙のない警戒態勢を敷いた。
「……あの、ショウさん。もしよろしければ、ハルトさんは私が背負いましょうか?」
見かねたアオキが社会人としての気遣いを見せたが、ショウは苦笑しながら首を横に振った。
「お気持ちは嬉しいんですが、こいつ、気絶したままゴリランダー並みの握力で俺の服を掴んで離さないんですよ。無理に剥がそうとすると服が破れます」
「なら、私が歩いていきます! もう痺れは少しマシになりましたから、降ろしてくださいっ!」
これ以上ないほど顔を真っ赤に染め上げたアリサが慌てて地面に飛び降りると、何事もなかったかのように早足でスタスタと歩き出した。
「……じゃあ、気を取り直して合流地点へ急ぎましょうか」
ショウが苦笑しながら仲間たちを促し、再び歩き始める。その頼もしい背中の後ろを、アオキたち一行や護衛のデジモンたちがしっかりとついていった。
「……いいなぁ、羨ましいなぁ……」
「どしたん、ミモザ先生?」
「ううん、何でもないよ! ほら、急がないとみんなに置いてかれちゃうよ!」
ポツリと羨ましそうに呟いたミモザ先生は、ボタンに怪しまれないよう慌てて笑顔を作り、ショウたちの背中を追いかけて駆けていったのだった。
ユニオンから指定された合流地点へ向かうと、そこには既に同年代の男女が佇んでいた。
「あの2人って……」
「確か……女の方はサクヤって奴じゃなかったか?」
「男子の方は初めて見る顔だね?」
ネモ、ペパー、ボタンが顔を見合わせながらささやき合っていると、ショウが気やすそうに手を振った。
「待たせた!」
「遅ーぞ!」
軽口を叩き合いながら、ショウと見知らぬ少年は親しげに拳を打ち合わせた。一方、サクヤはすっとアリサの元へ寄り添う。
「アリサ、大丈夫? なんだか顔がすごく赤いわよ?」
「問題ありません! ただの……体温調節の不具合です!」
サクヤからの心配の視線に対し、アリサは照れ隠しで慌てて背筋を伸ばして誤魔化してみせた。
「よし、みんなに紹介するな。こいつはエイジ。俺と同期で、友人その2だ」
「Team:ナイトクロウに所属するエイジです! よろしくお願いします!」
ショウのざっくばらんな紹介を受け、エイジはビシッと姿勢を正してハキハキと挨拶を行った。ネモたちもそれぞれ自己紹介を交わしていたが、その最中、ショウの腰に下げられていたモンスターボールがガタガタと激しく揺れ始めた。
「しゅわわーん!」
「オーダ!」
ボールから飛び出してきたラティオスとオーダイルは、一直線にエイジへ飛びついた! ラティオスは甘えるように頭をすりすりとなすりつけ、オーダイルは歓喜の声をあげながらエイジの腕を甘噛みしている。
「ハハッ、久しぶりだな! 写真や映像はショウからよく送られてきてたけど、実際に見るとめちゃくちゃでっかくなったなぁ!」
「エイちゃん、この子たちのこと知ってるの?」
「ああ、実は前にショウへ用事があって会いに行った時、ちょうど密輸組織みたいな怪しい連中と出くわしてさ。胸糞悪かったからショウと2人で乗り込んで壊滅させた時に保護したポケモンなんだ。その時に妙に懐かれちゃってね」
「まあ、エイジのテイマーライセンスにポケモンの所持許可が降りるまで、ラティオスは俺が一時的に預かってるってワケだ」
「フーン……」
「……その件、私にも一切報告がなかったのですが……?」
羨ましそうに腕を組むサクヤと、聞いていない重大な事実にジト目を向けるアリサ。2人からの圧を感じ取ったショウとエイジは、スッと視線を泳がせながら露骨に話題を切り替えた。
「と、とにかく! ハルトを早く休ませたいし、ここから【ゲートディスク】を使おうぜ!」
「……そうね。話の続きは後で詳しく聞かせてもらうわ」「私もです」
ショウの提案にサクヤとアリサが釘を刺しつつ同意すると、エイジに甘えていた2体をボールへと回収。ショウが【ゲートディスク】を掲げると、周囲が一面眩い光に包まれ、一行は瞬時に空間を跳び越えた。
光が収まると、そこは青空と夜空が半分ずつ溶け合うような幻想的な巨大ブリッジの上だった。
「ここは……?」
周囲の景色を見回しながらネモが尋ねる。
「ここは【サンシャインCITY】と【ダークムーンCITY】を繋ぐ【CITYブリッジ】だ。リーダーから連絡があって、今日はもう遅いから詳しい報告は明日でいいってさ。だから男女二手に分かれてそれぞれのCITYで休むぞ。ハルトたちの部屋も手配してあるらしいからな」
ショウの指示に従い、男子チームと女子チームに別れてそれぞれの所属街へと向かうことになった。
サンシャインCITYの居住区へ到着したショウたちは、案内された指定の部屋へと赴き、ペパーやアオキのサポートを受けながら、背負っていたハルトを引き剥がし静かにベッドへ横たえさせた。
「俺もそれなりに体力の限界なんで、失礼します。アオキさん、ハルトが目を覚ましたら全体の状況説明をお願いできますか」
「わかりました。お任せください」
「お疲れちゃん、ショウ! ゆっくり休むんだぞ!」
「ペパーもな」
アオキにハルトの後処理を委ね、ペパーと短い挨拶を交わすと、ショウは自室であるマイルームへと戻った。
部屋に入るなり、出迎えてくれたショートモンにぽつりと「……少し休むわ」と短く言葉をかけると、ショウは着替えもそこそこにベッドへ倒れ込み、深々とした規則正しい寝息を立てて深い眠りについたのだった。