Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
「ショ~ウ! そろそろ起きないと、遅刻しちゃうよ~!」
ショートモンが枕元で甲高い声をあげてショウを起こす。
「ふあぁ~……! おはよう、ショートモン」
寝ぼけ眼を擦りながらベッドから身体を起こしたショウに、ショートモンが顔を覗き込ませた。
「ふふ、顔色はずいぶん良くなっているね」
「なんとかな。久しぶりにぶっ倒れる限界ギリギリまでデジソウルを放出したからな……体感だと、まだ6~7割程度の回復度合いだ。リーダーたちへの報告が終わったら、また戻って休むよ」
「わかった~! シーツは整えておくからね」
ショートモンと軽く会話を交わしながら迅速に身支度を整えると、ショウはマイルームを出て、ハルトたちが身を寄せている客室へと向かった。
「おはようございます、アオキさん、ペパー」
「おはようございます、ショウさん」
「おはようちゃん!」
「ハルト、起きましたか?」
「いや、ハルトのポケモンたちが交代でずっと側で見守ってくれていたんだが、まだ起きてないみたいだな」
「私も時折目が覚めた時に様子を伺いましたが、静かに眠り続けている状態ですね」
「なるほど……まあ、あの短時間で膨大な知識とデジソウルを無理やり注ぎ込まれたんだ。反省も含めて、しばらくは起きられないだろうな」
ハルトの容態を確認していると、サクヤも部屋を訪れた。ショウはハウスキーパーデジモンのルクスモンを呼んでハルトとポケモンの看病を任せるとダークムーンCITY側の女子部屋で合流したアリサ、ネモ、ボタン、ミモザ先生たちを引き連れ、全員でサンシャインCITYとダークムーンCITYを統括する本部へと足を進めた。
ダークムーンCITYの【ユニオンルーム】へ到着すると、そこには両CITYの最高責任者である両リーダー、そしてサブリーダーたちが重厚な面持ちで集結していた。アオキたちが代表して挨拶を済ませると、威厳のある声が静まり返った室内に響いた。
「――それでは、トランスフィールドでの一連の事件、およびハルトの保護についての報告をお願いする」
「「はい!」」
ショウとアリサが背筋を伸ばし、詳細な経緯を報告し始めた。
【エイジ・サクヤ サイド(追跡回想)】
ショウとハルトの激闘が幕を閉じ、事態が収束へと向かっていたその裏で――。
隠れ家のモニターから一連の激闘を高みの物見で観察していたDr.クラハシは、愉快そうに口元を歪めていた。
「いやぁ、実に素晴らしい見世物でしたねぇ。おかげさまで、極上のデータが収集できましたよ」
ショウとハルトが戦いの中で放ったデジソウルとテラスタルの融合データ、そして無茶なデジクロスの負荷データを手元の端末へと素早く転送する。
「さて……次はどの世界で実験をしましょうかねぇ……」
クラハシが次の悪巧みに思いを馳せようとした、まさにその瞬間――!
ドガァァァァンッ――――!!!!
部屋の重厚な壁が豪快に爆破・粉砕され、煙の中からエイジとサクヤが突入してきた!
「見つけたぞ! Dr.クラハシ!!」
「大人しく抵抗せずに投降しなさい!」
2人の背後には、誇り高き植物の騎士・ブルムロードモンと、愛と正義の変身ヒロインの姿をした・ラブリーエンジェモンが鋭い眼光を光らせ、クラハシの一挙一動を逃さぬよう構えていた。
「おや、もうお出ましですか。……まあ、必要なデータは全て転送し終えましたので、私はそろそろ別のポケモンの世界へ移るとしましょうかね」
クラハシが不気味に微笑むと、背後の空間が歪み、単眼の異形デジモン――パラレルモンがヌッと姿を現した。
「それでは皆様、ごきげんよう」
「逃がすかッ!」「不穏分子はここで叩く!」
ブルムロードモンとラブリーエンジェモンが瞬時に間合いを詰めて攻撃を叩き込もうとするも、一瞬早くパラレルモンが空間を切り裂いて時空ゲートを生成。クラハシとパラレルモンはそのまま闇の渦へと吸い込まれ、姿を消してしまった。
「しまった……!」「逃げられたわ……!」
即座に両リーダーへ緊急連絡を入れた2人は、指示を受けてショウたちと合流すべく、あの集合地点へと急行したのだった。
ユニオンルームでの報告を終え、ショウはハルトの処遇や今後のクラハシ追跡方針について、リーダーたちからの判断を待つのだった。
「……以上となります」
「……なるほどな……」
「うーん、クラハシの発言を読み解くと、ショウとアリサが赴任しているパルデアのある次元には、もう手を出す気はないということかな?」
【ライトファング】のサブリーダー・パルサが眉をひそめて考察を口にすると、
「まあ、そう捉えていいだろうな」
「今の話を聞く限りではそうなりますね」
【ナイトクロウ】のサブリーダーであるニュートンとドロシーが相槌を打つ。すると、【ライトファング】のもう一人のサブリーダー・コマチが深いため息とともに問いかけた。
「問題は、彼が次にどの『ポケモンの世界』へ逃亡したか、ね……」
「それはこれから総力を挙げて調べないといけないわね……」
「幸いと呼べるかは分からないが、目的地が『ポケモンの存在する次元』だと分かっている。ショウたちが赴任している次元の観測網を中心に、周囲の並行世界から優先的に探っていくしかないな」
【ナイトクロウ】のリーダー・サヨが頭を抱えると、【ライトファング】のリーダー・コウが先を見据えて具体策を提案する。
「それしかないかぁ」
「ソウマさんとヒョウガさんにも協力を仰いだ方が良さそうですね」
「クラハシが次の世界で大事を起こす前に捕捉できればいいのだけれど……」
「こればかりは何とも言えないね」
深刻な空気の中、今後の方針について議論が深まりかけたその時――ショウの腰のデジヴァイスが静かに電子音を鳴らした。
「すいません、失礼します」
ショウが一言断りを入れて通信に応答し、二言三言交わして終話すると、一同へ向き直った。
「どうやらハルトが目を覚ましたそうです!」
その言葉に、息を詰めて聞いていたボタン、ネモ、ペパーがパッと表情を明るくさせる。
「それならショウたちはすぐにハルト君の元へ会いに行ってあげるといい。アオキさん、ポケモンリーグへの事後報告ですが、こちらの話し合いが全てまとまった段階で正式に行う形でもよろしいでしょうか?」
コウの問いかけに、アオキは冷静にスーツの襟元を正した。
「……構いません。オモダカにはその旨を伝えておきます。ただし、ハルト君の無事が確認できたという事前連絡のみ、先に取らせていただきます」
「それなら私も、クラベル校長に一言連絡を入れておきますね」
ミモザ先生も頷き、方針が決定した。アオキとミモザ先生は連絡作業のためにユニオンルームに残ることとなり、ショウとアリサは両リーダーへ深く一礼。ボタン、ネモ、ペパーを促して部屋を辞し、ハルトの待つ客室へと急ぎ足で向かった。
ハルトたちが休んでいる部屋の前に到着すると、ショウはドアの前で足を止めた。
「すまないが、俺はここで待っている。まずはアリサとボタンたちで中に入って話してきてくれないか?」
「えっ? ショウさんも一緒に入らないの?」
不思議そうに首をかしげるネモに対し、ショウはどこか申し訳なさそうな、苦い表情を浮かべた。
「……俺までいきなり入っていくと、ハルトが負け目を感じて気まずく思ったり、気に病んだりするかもしれないと思ってな」
「……分かりました。ハルトさんの状態を見て、大丈夫そうならお呼びします。……あと、いつまでもその『お嬢』というあだ名で呼ぶのはやめてください」
「悪いな……頼んだぞ」
申し訳なさそうに頭を下げるショウを残し、アリサ、ボタン、ネモ、ペパーの4人は静かに開閉ボタンを押して室内へと足を踏み入れた。