Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
部屋へ足を踏み入れると、ハルトは既に目を覚ましてベッドの上に腰掛けていた。
「ハルト!」「よかったぁ~!」「なかなか起きないからマジで心配したんだぜ!」
「ボタン、ネモ、ペパー……みんな、心配かけてごめんなさい」
申し訳なさそうに身を縮めるハルトの表情を窺うと、アリサが安堵の息をついた。
「顔色も良いですし、しっかりと回復されていますね。それに【デーモンシャウト】による洗脳の残渣もきれいに消えているようです」
「アリサさんもごめんなさい……怪我はなかった?」
「特に問題ありません。お気になさらず」
アリサが優しく微笑むと、ハルトは視線を室内へ走らせてきょろきょろと周りを見渡した。
「……ショウは?」
「ハルトが気にするちゃんと思って、部屋のすぐ外で待ってるぞ。呼ぼうか?」「……うん!」
「なら、呼んできますね」
アリサがドアを開けてショウを呼びに行くと、ショウが気安く手を振りながら部屋へ入ってきた。
「オイッス。【デーモンシャウト】の毒気は綺麗に抜けたみたいだな」
「ショウ! 本当に……ごめんっ!!」
大声で頭を下げて謝罪してくるハルトに対し、ショウは一瞬ポカンとしたものの、すぐに納得したように片手を振った。
「俺は最初から気にしてねぇよ。……お嬢にはちゃんと謝ったんだろ?」
「ですからそのあだ名はやめてください!ハルトさんからの謝罪はしっかりと受け取りましたので、どうか気に病まないでくださいね」
「でも……僕、酷いこといっぱいして……」
「俺たちだって昔は洗脳されたり似たような修羅場を散々経験してきてるからな。そんなに思い悩むなよ」
「そうですよ。テイマーなら誰もが一度は通る道……とは言いませんが、ハルトさんの本心でないことは全員分かっていますから」
ショウとアリサが揃って前向きな言葉をかけると、それまで固くなっていたハルトの表情がようやく和らいだ。すると、その空気を一変させるようにネモが身を乗り出した!
「ねぇねぇ! さっきショウたちが言ってた『似たような体験』の話、詳しく聞かせてよ!」
「ネモは相変わらずブレないな……。なら、飯でも食いながら話すか! アオキさんやミモりんも誘ってさ」
「いいですね。ハルトさんの全快祝いも兼ねましょう」
「良いよ!」「大賛成ちゃんだ!」
「ハルトも行こ!」「……うん!」
ペパーとネモが乗り気になり、ボタンに促されたハルトも今度こそ晴れやかな笑顔で頷いた。
「あっ、そうだ! 事故で入院してたヒデトも確か今日退院だったはずだから、退院祝いも引っくるめてパァーッと盛大にやるか!」
「それも良いですね。エイジ君やサクヤさんにも声をかけましょうか」
「そうだな。店はどうする?」
「みんな集まってから決めましょう」
手際よく方針を固めたショウは、手元のデジヴァイスを操作しながらハルトに視線を向けた。
「とりあえずヒデトとエイジたちにはメッセージ送っといたから、アオキさんとミモりんと合流しようぜ。ハルトも着替えたり身支度が必要だろ?」
「そうだね! すぐ終わるから少し待ってて!」
ハルトが準備を整える間、一同は一旦部屋の外に出て待機。程なくして身支度を済ませたハルトが元気よくドアを開けて出てきた。
「お待たせ!」
「おう、それじゃあ行こうぜ!」
ハルトの完全復活を喜び合いながら、ショウたちはアオキやミモザ先生、そしてエイジたちと合流すべく、賑やかにユニオンルームへと向かって歩き出したのだった。
おいしい食事会とハルトの復帰を皆で盛大に祝った後、ショウはアリサへと一件のメッセージを送信し、その夜はマイルームでしっかりと体を休めた。
そして翌日――。
「ショウ~! そそろそろ約束の時間になるよ~!」
ショートモンの甲高い声に起こされ、テキパキと身支度を整えたショウは、プライベート空間である自身の【ファーム島】へと足を踏み入れた。
緑豊かな島の中央で少し待っていると、指定された通路からアリサが姿を現した。
「お待たせしました、ショウさん」
「いや、急に呼び出したりして悪かったな……」
「お気になさらず。それで、私に用事というのは一体――?」
アリサが小首をかしげながら要件を促すと、それまでの気軽なトーンから打って変わって、ショウはぐっと真剣な眼差しを彼女に向けた。
「……いやな。お嬢、いや……アリサ」
「……はい」
「ストレートに聞くが、お前が俺に好意を寄せているのは薄々分かっている。……だけど、そこまで俺に強い好意を寄せてくれる理由が、俺にはどうしても分からないんだ」
直球すぎる質問に、アリサは一瞬息を呑んだが、すぐに真摯な瞳でショウを見据えた。
「……その理由を、私から直接聞きたいということですか」
「あぁ。他の奴らがいる前じゃ話しにくいし、このファーム島なら所有者である俺の許可がないと誰も立ち入れない。こういう込み入った話をするなら、ここが一番うってつけだと思ったからな」
ショウの意図を理解したアリサは、少しだけ視線を落として思考を巡らせると、やがてすっきりと整理された表情で頷いた。
「……分かりました。すべてお話します」
「サンキュー。立ったままだとあれだし、そこに座って話そうぜ」
「そうですね。少し……昔話をすることになりますから」
用意されていたベンチに並んで腰を下ろすと、ショウは持参していた冷えた缶コーヒーを一本アリサに手渡し、彼女が語り出すのを静かに待った。