Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い   作:ガチャガチャクツワムシ

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電子生命体との出会い

悩みながらもショウは

「……済まんけど、返事は明日に待ってくれないか? 少し頭を冷やして、考えを整理したいんだ」

「分かりました。いいですよ。明日はハルトさんたちの退院前検査もありますしね」

ショウの誠実な申し出に、アリサはふっと柔らかく微笑んで頷いた。

「じゃあ、また明日のこの時間にファーム島へ来てくれ……必ず、俺の言葉で返事をするから」

「はい、お待ちしています」

そう言って、2人はその日の夜を一度解散したのだった。

翌日。ショウは自身のマイルームにエイジとヒデトを呼び出し、昨夜アリサから告げられた衝撃の過去と告白の経緯をそのまま打ち明けた。

「……マジかよ……!」

「小学1年の冬休み、俺たち3人で秘密基地にしていたあの古い廃工場から助け出した外国の女の子……あれがアリサだったのかよ!?」

「あぁ。俺も本人からあの時の防寒着の名前を聞かされた時は、さすがにひっくり返るかと思ったぞ」

ショウが頭を抱えながら苦笑すると、エイジとヒデトは顔を見合わせて驚愕の声をあげた。

「だからか……! 最近やたらと俺たちに探りを入れてきたり、妙に気まずそうな顔をしてたのはそういう理由があったからなのか!」

「まあ、お前は相変わらず鈍感だからな、エイジ」

納得して膝を叩くエイジを横目に、ヒデトは組んでいた腕を解いてショウに問いかけた。

「で、どうすんの? 答えはもう決まってんのか?」

「……返事はするさ。逃げるわけにはいかないからな」

「そうかぁ。まあ、当時の恩返しと、テイマーになってからの命懸けの助け舟――知らなかったとはいえ、実質何回も救われてるわけだろ?」

「だな。ポケモンならとっくに好感度MAXで、触れ合うだけで懐き進化してるレベルだぜ」

「お前らな……」

ヒデトとエイジの茶化すような、しかし温かい視線を浴びながら頭を悩ませていると、ショウの腰のモンスターボールから勝手にエーフィとリーフィアがピョンと飛び出してきた。

「フィ?」

「フィア?」

「お前ら、いつの間に勝手に出てきてんだよ……呼んでないぞ」

そう言いながらも、ショウが無意識にエーフィの顎のあたりやリーフィアの柔らかなお腹を優しく撫でてやると、2匹はうっとりと目を細めて心地よさそうに喉を鳴らし始めた。

「いいよなぁ、俺も早く自分の相棒となるポケモンが欲しいぜ」

「俺は、ユニオンからの正式な所持許可がもうすぐ降りそうだから、そう遠くないうちにゲットできるさ」

「なら、今度うちのファームで採れた美味い木の実とか譲るぞ?」

「おっ、マジか? 助かるわ」「なら、俺にもくれよ」

しばし他愛のない雑談で盛り上がり、友人たちとの会話で少しだけショウの胸の緊張もほぐれていったのだった。

その頃、アリサのマイルームで、ミモザ先生とアリサが2人きりで向き合っていた。

「ミモザ先生」

「んー、なあに、アリサ?」

「単刀直入にお聞きしますが……先生、ショウさんのこと、好きですよね?」

不意を突いたアリサの直球の問いかけに、紅茶を飲んでいたミモザ先生は盛大にむせた。

「えっ、ちょっ……!? な、なに急に……!」

「顔を赤くして慌てなくても大丈夫です。……気づいているのは、今のところ私だけですから」

「いや、全然大丈夫じゃないんだけど!? 生徒にそんなところ見抜かれてたなんて、教師として恥ずかしすぎるでしょ……!」

「ふふっ、大丈夫ですよ。私には、先生と一緒にお話ししたい『考え』がありますから♪」

どこか余裕のある笑みを浮かべるアリサを見つめながら、ミモザ先生は赤くなった顔を両手で覆い、タジタジになるのだった。

そして夜。約束の時間が訪れ、再びショウのプライベートファーム島。

「ショウさん、昨日はお時間をいただきありがとうございました。……それで、昨日の告白の『お返事』は?」

凛とした佇まいでまっすぐに問うアリサの背後から、なぜかミモザ先生がひょっこりと姿を現した。

「……って、ちょっと待て。何でミモりんまでここにいんだよ!?」

「『ミモりん』呼びすんな!」

「大切な話があるからと、私が先生を誘って一緒に連れて来ました」

「まぁ、そういうことだから驚かないの!」

想定外すぎるゲストの登場に、ショウは完全にフリーズしてしまった。

「……まぁ、いいか。頭が追いつかないけど、昨日の返事の続きをさせてもらうぞ。俺の答えは――」

「あ、その前にショウさん、一つ訂正というか……重大な追加があります」

「は? んだよ、改まって」

「私一人ではなく……私とミモザ先生の2人と、一緒に付き合ってください」

「は――!?」

アリサの口から飛び出した常軌を逸した提案に、ショウは目を見開いたまま完全に固まった。

「いや、ちょっと待て待て待て! さすがにそれはダメだろ! 二股とかそういうレベルじゃねぇよ!」

「えっ、でもパルデアの法律だと、重婚や複数交際は特別珍しいことではないみたいですし……!」

「次元を超えたローカルルールを持ち出すな!」

「それに、私とショウさんも、ミモザ先生とは、別の世界の人間同士ですから、細かいしがらみや世間体なんて特に問題ないと思います!」

「理屈は通ってるように聞こえてめちゃくちゃだわ!先生はそれではいいのかよ!?」

混乱して頭を抱えるショウに向かって、ミモザ先生が少し照れくさそうに、しかし真剣な笑みを向けた。

「ほら、ショウが『ミモりん呼びしない』くらい本気で慌ててるじゃない。……最初は私も、アリサからこの話を打ち明けられた時はびっくりしたし、教師の立場でこんなのいいのかって悩んだけどね。でも、ショウを見ているうちに……この子と一緒に、あなたの隣にいたいなって思っちゃったんだよねぇ」

「ミモザ先生まで本気なのかよ……マジかよ……!」

頭をかきむしりながら天を仰ぐショウの姿を見て、アリサとミモザ先生は顔を見合わせた。

「それでは、改めてお返事をお願いしますね、ショウさん♪」

「早くしてくれないと、夜風が冷えちゃうよ~?」

「この修羅場みたいな状況で即答を迫るのかよ……!」

散々ツッコミを入れ尽くした末、ショウは観念したように大きく息を吐き出し、どっしりと腹をくくった。

「……分かったよ!! もうこうなったらヤケクソだ! アリサ! ミモザ先生! 俺と……俺たちと一緒に付き合ってくれ!!」

恥ずかしさも戸惑いもすべて投げ捨てて叫んだショウの言葉に、アリサはパッと花が咲いたような最高の笑顔を浮かべ、ミモザ先生は嬉しそうに目元を細めた。

「「はい、よろしくお願いします!」」

こうして、ひと波乱もふた波乱もどころか次元を超えた前代未聞の三角関係――もとい恋人関係が、少し歪みながらも、確かにここからスタートすることになったのだった。

すったもんだの末にその場は何とか解散したものの、頭の中がキャパシティオーバーで全く落ち着かないショウは、意を決してソウマとヒョウガの元を訪れ、昨夜からの泥沼(?)の経緯を包み隠さず相談していた。

「……というわけなんですけど、どうしましょう、これ」

「いや……『どうしましょう』と言われてもなぁ」

「完全にアリサの手の平の上で鮮やかに踊らされてただけじゃねぇか。まあ、自分で引き受けちまったんだ、あきらめろ」

「そんな殺生な!」

「いや、最後は自分で『お前らと付き合う』って了承したお前が一番悪いだろ」

「つーか、ミモザ先生とは一体どういう経緯でそんなフラグが立ったんだよ?」

「いや……学校の保健室で、ゲームのイベントをクリアするための回復アイテムや元気の塊を分けてもらえるからってワンチャンに賭けて色々相談に乗ってたら……」

「で、ギュウキモンに襲われているところを身を挺して庇って守った、と。まるで王道の恋愛ゲームの主人公みたいなことやってやがるな」

2人から呆れ半分、面白がり半分で突っ込まれ、ショウはテーブルに突っ伏して深く項垂れた。

「まぁ、時間が解決するだろ。男なら腹をくくれ」

ソウマにからかうように慰められていると、ヒョウガとソウマの表情がすっと真面目な仕事モードへと切り替わった。

「それで本題だが……これは正式に決定した通達だ。お前とアリサには、これからも引き続き『向こうの世界』に赴任してもらうことが決まった」

「Dr.クラハシの捜索にももちろん参加してもらうが、足取りを追うメインの捜索は主にヒデトたちチームに任せる予定だそうだ。俺たちも、手が空いた時には時折そっちの作戦に参加させてもらう」

「……分かりました。了解です」

「よし、なら今日はもうしっかり休んでおけ! 明日はハルト君たちが合流する前に、今後の具体的な捜査会議を行うからな」

「はい……お疲れ様でした」

どっと疲労感を背負いながら、ショウはすごすごと自分のマイルームへと戻っていった。

その後ろ姿を見送りながら、ソウマがふっと笑った。

「なんか……こうなると、子供を持つ親の心境ってこんな感じなのかねぇ」

「大変だけど、なんだかんだで嬉しくなっちまうもんだろ?」「……まあな」

苦笑しながら語り合う2人も、それぞれの部屋へと戻っていったのだった。

そして迎えた翌日。朝一番で、ダークムーンCITYのユニオンルームにて今後の作戦についての事前打ち合わせが開かれた。

「……で、昨晩得たクラハシの発言やデータを総合的に考慮した結果、可能性として一番高いのは、現在人間界で放送されているあの『アニメの世界』が有力かな?」

「そうかもしれないね。まずはその次元を最優先に、周辺の並行世界から徹底的に捜索しましょう」

リーダーたちの的確なまとめにより、今後の捜査方針とスケジュールがスムーズに決定し、打ち合わせは滞りなく終了した。

その後、ハルトたちをユニオンルームへ呼び戻して先ほど決定した方針を伝え、最後にコウが穏やかな笑みを浮かべて告げた。

「――それと、ショウとアリサの2人には、今後も引き続きパルデアの世界へ赴任してもらうことが正式に決定しました」

その報告を聞いたハルト、ネモ、ペパー、ボタンの4人は、「やったぁ!」「また一緒だね!」と嬉しそうに顔をパッと輝かせた。

「……承知いたしました。この決定は、オモダカにもしっかりと報告させていただきます」

アオキも静かに頷いて話を締めくくり、こうして全ての話し合いが無事に幕を閉じた。

やがて帰還の準備を整えたショウとアリサは、ハルトたち一行と合流するためゼロゲート付近へと集まった。ショートモンとポキュパモンをそれぞれの定位置に戻し、見送りに駆けつけてくれたエイジやサクヤたちに声をかけられる。

「おいショウ! あと1ヶ月ほどで次の『交流戦』が控えてるんだからな、向こうでも特訓サボるなよ!」

「おう、任せとけ! 楽しみにしてろよ!」

「アリサも、体に気をつけるのよ」

「はい、ありがとうございます!」

「2人とも、暇ができたらまたこっちへ遊びに来いよな!」

仲間たちの温かい見送りの声を背に受けながら、ショウたちは【デジタルゲート】の光に包まれ、再びパルデアの次元へと跳び立った。

光が収まり、周囲の風景がパルデアの荒野へと切り替わる。

「……あれ? ここって、最初に飛ばされたゼロゲートのすぐ近くじゃない?」

「どうやら、無事に元の場所へ戻ってこられたみたいだな」

「そうみたいだね、みんな怪我もなくてよかったぁ」

周囲の景色を見回して状況を把握するボタンの言葉に、ペパーとネモが大きく頷く。アオキがオモダカへ帰還の連絡を入れるためスマホロトムを起動させようとした、その瞬間――。

「……何と……?」

「どうしたんですか、アオキさん?」

「端末の日付を確認したんですが……私たちがあちらへ渡ってから、まだ『半日』しか経過していないことになっています」

「「うそっ!? まじで!?」」

ネモとペパーが飛び上がって驚愕する中、ショウとアリサは落ち着いた様子で肩をすくめた。

「あぁ、デジタルワールドは時間の流れるスピードが違うからな。向こうでどれだけ長く過ごしても、こっちの時間感覚だとほんの少ししか進んでないなんてザラだぜ」

「まぁ、クロックワーク的に時間を自在に操作することも可能ですから、あまり深く気にしないでください」

2人が涼しい顔でそう説明していると、突然、ショウとアリサのポケットの中でデジヴァイスがけたたましい電子音を響かせた。

「……おっと、どうやらこの近くに野生のデジモンが迷い込んだみたいですね。しかも、反応が2箇所……」

「なら、手分けして片付けますか。アオキさん、そういうわけなんで、俺たちはここで失礼します!」

「分かりました。お気をつけて」

「ハルトさんたちも、アカデミーに戻ったらクラベル校長へ無事の報告を頼みますね!」

「うん! 気をつけてね、ショウ、アリサ!」

「任せろちゃんだ! 」

「戻ってきたら、またみんなでポケモンバトルしようね!」

別れ際に爽やかな笑顔を交わしながら、ショウとアリサはそれぞれのパートナーを力強く呼び出した。

「行くぞ、ヘクセブラウモン!」

「頼みます、ベルスターモン!」

眩い光の中からヘクセブラウモンとベルスターモンが堂々と姿を現し、パルデアの青空の下へと駆け出していく。

――次なる戦いと日常が待つ現場へと、2人はそれぞれの相棒と共に、迷いなく足を踏み出していくのだった。

~ 完 ~

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