Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
ハルトたちがネオデビモンとの戦闘を終えた頃――。
【ダークエリア:コキュートス】
ズズズン……ッ!!
地響きをあげながら、巨体を崩して倒れ伏す1体の凄まじい全身にブラックデジゾイドを纏う猛竜――ヘヴィーメタルドラモン。
「ヘヴィーメタルドラモン……フン、そこそこは楽しめたぜ……」
低く呟き、倒れたヘヴィーメタルドラモンの膨大なデータを吸収していくのは、黒いレザースーツを全身に纏った魔王――ベルゼブモンであった。
データの吸収を終えると、興が冷めたように踵を返して歩き出そうとしたベルゼブモンだったが、ふと目の前の空間に視線をやった。そこには、先ほどまで影も形もなかった金色の光を放つリングが浮遊していた。
「あぁん? 何だぁ、こりゃ……?」
怪訝そうに眉をひそめながら見つめていたが、退屈しのぎと思いついたように、迷うことなくそのリングの中へと脚を踏み入れた。
通り抜けた先に広がっていたのは、見たこともない透明感あふれる人工島の風景――パシオであった。
「ほう……。見たことのない世界だが、面白そうな生命体の気配が複数あるじゃねぇか……。ハハッ、こりゃあ退屈しなさそうだぜ!」
凶悪で獰猛な笑みを口元に浮かべると、ベルゼブモンは二丁の愛銃【ベレンヘーナ】の柄に手をかけ、感じ取った最寄りの強力な気配に向かって悠々と歩き出した。
【ハルト サイド】
ケイやユイたち4人に「デジモン」という存在について一通りの事情を説明している最中、ハルトのデジヴァイスがまばゆく発光! 空間を切り裂くように【ゲート】が開き、向こう側からアリサが姿を現した。
「お待たせしました、ハルトさん! 無事ですか!?」
「あ、アリサ……っ! 無事でよかった! ……って、アリサ、その格好は一体何……!?」
駆け寄ってきたアリサは、なぜか気密性の高そうな分厚い宇宙服か潜水服のような厳重な防護服を全身に着用していたのだ。
「あ、これですか……? ええと、ちょっと切実な理由がありまして……」
パチパチと留め具を外し、ヘルメットを脱ぎながら苦笑いするアリサ。
「そういえば、向こうのパルデアでもデジモンが出現したって言ってたよね? ショウ1人残してこっちに来て、大丈夫なの?」
「えぇ、それについても説明しますね」
アリサは防護服を畳みながら、ショウが現在置かれている壮絶な惨状について語り始めた。
【ショウ サイド】
「チクショーがッ!! なんでコイツら、こんなに大量にワラワラワラワラ湧いて出やがるんだよッ!!」
ショウが目の前の群れを殺気立った眼差しで激しく睨みつけていると、すぐ足元で「ベチャッ……!!」と何とも嫌すぎる音が響いた。
「汚ねぇぇぇぇぇッ!! この汚物系デジモン共がぁぁぁぁぁッ!!」
ショウの視線の先に群がっていたのは、黄金色や白金色に輝くウ○チそのものの姿をしたスカモン種、緑色のぬめり気のあるナメクジやカタツムリのようなヌメモン系種、黄色いウツボカズラのようなベジーモン種、そして一頭身のオヤジの顔をしたナニモンたちであった。
彼らの放つ最低最悪の必殺技――いわゆる汚物攻撃の痕跡が、あたりの地形や草木に所狭しと散らばり、あたり一面に凄まじい悪臭が立ち込めている!
「あったまきたぞオラぁッ!! こうなりゃ、このエリア一帯まるごと超高熱で完全滅菌・熱気消毒じゃあぁぁぁぁッ!! ヘクセブラウモン! シャイングレイモン! ムゲンドラモンッ!!」
ブチ切れたショウの叫びに、3体のパートナーたちが即座に最高火力の必殺技をチャージする!
「「「【ガイアフォース】!! 【ファイナルシャイニングバースト】!! 【ムゲンキャノン】!!」」」
ドカン大爆発とともに、パルデアの台地に超絶火力の熱線と破壊光線が吹き荒れたのだった――。
「……というような凄惨な現場でしたので、私が向こうの加勢に入ったら身も心も大変なことになると判断し、こちらへ避難……もとい救援に来たのです」
「だからアリサは、そんな宇宙服みたいな格好をしてたんだね……ショウ、強く生きて……」
ハルトたちがショウの不憫さに遠い目をして納得していると――突如、アリサのデジヴァイスから、今まで一度も聞いたことがないような不吉で甲高い緊急アラート音が狂ったように響き渡った!
ピピピピピピピピッ――――!!!!
「嘘……でしょ……っ!?」
顔色を一変させたアリサが慌ててデジヴァイスの画面をスクロールさせ、詳細データを確認した瞬間、彼女の顔からスーッと血の気が引き、真っ青に染まり始めた。
「どうしたの、アリサ!?」
「そんなに顔色悪くして……何かまずいことでも起きたの!?」
「すごく嫌な予感がするよ……何が画面に映ってるの!?」
ケイやユイ、キリヤたちが心配そうに覗き込んでくる中、アリサはわななく唇を震わせながら、青ざめた表情で絶望的な事実を口にした。
「……この『パシオ』の世界に……最悪のデジモンが現れました……!!」
「『最悪の存在』って、一体どういうことなんだ……!?」
代表してキリヤが真迫した表情で問い詰めると、アリサは溢れ出そうになる汗を拭い、真剣な眼差しで答えた。
「私たちが所属するテイマーユニオンには、最高ランクである『プラチナテイマー』でさえ安易に手を出すことが許されない危険なデジモンが多数存在します。ですが……いまこの世界に解き放たれてしまったのは、その中でも真に最悪と称される【七大魔王】の一角――暴食を司る魔王、ベルゼブモンです。暗黒系デジモンにおける最高峰の絶対者になります……!」
アリサがその禍々しい名を告げた、まさに次の瞬間――。
【ベルゼブモン サイド】
パシオに舞い降りたベルゼブモンは、余計な雑魚や面倒な存在に邪魔されないよう、自らに認識阻害の魔法を施した。そして、この世界で自分がどこまで楽しめるかを推し量るため、島全体へ向けて一瞬だけ絶大な「殺気」を放射した。
その圧に屈せず、戦意を失わずに抗う気配を素早く選別すると、まずは手始めに一番近くにいた強力な気配の元へと向かった。
そこにいたのは、緑色の鹿のような姿をしたビリジオン、橙色の雲に乗ったランドロス、茶色の毛皮を持つ猛獣のようなエンテイ、そして氷の如き姿のレジアイスを従えたトレーナーの姉妹であった。
突然現れた異形の存在を「最優先の脅威」と判断し、主を守るべく襲いかかってくる4体の伝説のポケモンたち。ベルゼブモンは冷徹な眼差しでその動きを観察した。
「フン……強さとしては完全体の上澄みレベルといったところか。
繰り出される大技を余裕で受け流し、ベルゼブモンは二丁拳銃すら抜かず、圧倒的な肉弾戦と、これまで糧として吸収してきたデジモンたちの技のみで冷酷に叩きのめした。
絶大な力を持つはずの伝説のポケモンたちが、ものの数分で次々と崩れ去っていく。
「ふむ……次だ」
4体を瞬く間に戦闘不能へと追い込むと、ベルゼブモンは次なる獲物を求めて歩き出した。その後も立ち塞がる猛者たちを次々と薙ぎ払い、やがて島の一角から、ひときわ巨大で高密度の戦意とエネルギーが一点に集まりつつある気配を察知した。
「ふっ……どうやら俺様を誘い出そうとしてる度胸のある奴らがいるようだな。……面白い、その乗せられてやろうじゃねぇか!」
獰猛で不敵な笑みを口元に刻み、魔王は足取りも軽くその集結地点へと向かった。
【アリサ サイド】
ベルゼブモンの名を口にした直後、パシオ全域を押し潰すような凄まじい殺気と威圧が襲いかかったが、それは一瞬で消え去った。しかし、その刹那の威圧によって、島内のあちこちでパニック状態に陥ったり、気絶してしまうポケモンやトレーナーが続出していた。
「なっ……何だ今の殺気は!? まるで心臓を直接握り潰されたみたいだったぞ……!」
「うぐっ……息が、上手く吸えないくらいの圧圧感だった……」
「この異次元の圧……! やはり、現れたのですね……!」
「嘘でしょ……今の気味の悪い圧を放った奴が、その『ベルゼブモン』なの!?」
「はい。ですが……今のはおそらく『選別』です。彼は弱い者には一切の興味を示さず、強者にしか関心を持たない性質があります。……そして、その習性を利用すれば、彼をこちらが望む場所へ誘い出すことができるはずです!」
アリサは即座に思いついた作戦をケイ、ユイ、キリヤ、アオイの4人に共有し、一刻を争う誘導作戦を開始した。
ハルトたち4人は二手に分かれ、近くにいた伝説のポケモンをバディにもちなおかつ信頼できる強力な知り合いに緊急で声をかけ、広大な開けた広場へと強者たちの気配を一箇所に集中させた。
広場で警戒を強めながら待機すること数分。
「ねぇ……これで本当にあんな恐ろしい奴が来るのかな……?」
周囲を見回しながらアオイが不安そうに疑問を口にすると、ハルトがしっかりとデジヴァイスを握りしめて頷いた。
「アリサの立てた作戦だから、絶対に届いているはずだよ。きっと来る――!」
ハルトが言い終えた直後、周囲の空間がぐにゃりと歪み、立ち込める重厚な黒い靄の中から、闇を纏った一影が揺らめくように姿を現した。
「よぉ……随分と威勢のいい気配で俺様を誘い出してくれたじゃねぇか。さぁ――俺様を全力で楽しませてみろよッ!!」
現れるや否や、ベルゼブモンは挨拶代わりに漆黒の破壊球体【ダークスピリッツ】を容赦なくハルトたちへ投げつけてきた!
「「アギャッス!!」」
咄嗟に反応したハルトのミライドンと、アオイのコライドンが同時に飛び出した! 全力で放たれた【イナズマドライブ】と【アクセルブレイク】の強大なエネルギーが激突し、黒い球体を正面から見事に相殺してみせた!
ドガンッ――――!!
弾け飛ぶ衝撃波の中、ベルゼブモンは微かな驚きと興奮に瞳を輝かせた。
「ほう……! さっきまでの奴らなら避けるのが精一杯だった攻撃を、真っ向から打ち消すか!どうやら俺様の事を多少知っている奴がいるな、 ハハッ、こいつは期待できそうだぜ……!」
黒い靄がサッと晴れ渡り、二丁の愛銃【ベレンヘーナ】を手に取りながら、凶暴な笑みを浮かべた暴食の魔王・ベルゼブモンが、遂にその全貌を現したのだった。