Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
バトル用にカスタマイズされたファーム島。特訓の終わりを告げるソウマの声が響く中、地面に突っ伏したショウはボロ雑巾のようにボロボロで、まともな返事すら返せない状態だった。
「よし、今日はこれで終わりだ」
「……ぐぬぅ……」
ソウマは苦笑しながらサブメンバーの【ミタマモン】を呼び出し、その神聖な治癒の力でショウの全身の傷と疲労を一瞬で綺麗に拭い去った。息を吹き返したショウが体を起こすと、ソウマは引き締まった表情で告げた。
「いよいよ後2日で『交流戦』が始まるな。ここ最近の交流戦はナイトクロウ側の勝ち越しが続いているからな。今回こそは俺たちライトファングが多く勝ち星を挙げられるよう、しっかり気合いを入れて踏ん張れよ」
ここ最近の敗北続きもあってか、今回の交流戦に向けたライトファング陣営の熱量は並々ならぬものがあった。
「あ! そうだ、師匠! 今回の交流戦、ハルトたちパルデアのメンバーも何人か観戦に招待しようと思うんですが……大丈夫ですかね?」
「ん、いいんじゃないか? 会場の枠やセキュリティの件もあるから、コウたちリーダー陣には事前にちゃんと通しておけよ」
「了解しました! さっそく許可をもらいに行ってきます!」
ショウは跳ね起きると、そのまま走ってユニオンルームへと向かった。
翌日。コウたちリーダー陣からあっさりと招待の許可を取り付けたショウは、放課後になるとさっそく行動を開始した。
パシオでの大騒動から無事に帰還していたハルトやネモ、ペパー、ボタン、そしてクラベル校長先生やハッサク先生に声をかけて快諾を得ると、最後に向かったのは校内の保健室だった。
「オッス! ミモりん、今ちょっと時間大丈夫か?」
「『ミモりん』言うなし! ちゃんと『ミモザ先生』って呼びなさいっていつも言ってるでしょ!」
お決まりのノリで応戦してくるミモザ先生に苦笑しつつ、ショウは本題を切り出した。
「実はさ……俺たちの世界の時間軸で明日、テイマーユニオンの『交流戦』があるんだよ。校長先生は、用事があるから断れたけどハルトたちやハッサク先生も誘ったら来るって言ってるんだけど、ミモりんも一緒にどうかなと思ってさ」
「ふ~む……交流戦ねぇ……」
顎に手を当てて少し考える素振りを見せたミモザ先生だったが、すぐに親しみやすい笑顔を浮かべた。
「まぁいっか! たまには羽を伸ばしたいし、1日くらいならお付き合いしてあげるわ♪」
「よし、決まりだな!」
あっさりと承諾したミモザ先生だったが、ふと気になったように首をかしげて尋ねた。
「そういえばショウ、ここ最近アリサと一緒にいるところを見かけないけど、何かあったの? いつも一緒に行動しているじゃない?」
「ん? あぁ、お互い明日の交流戦に向けた最終調整で忙しいからだよ。個別の特訓メニューもあるしな」
「ふ~ん……?」
理由を聞いたショウは「じゃ、明日な!」と用件を済ませてそそくさと保健室を後にしていった。
パタンと閉まった扉を見つめながら、ミモザ先生は胡乱げに目を細めて独りごちた。
「な~んか隠してるわね、あの顔……まぁいいわ。明日の現場でじっくり観察してあげるんだから」
疑いの眼差しを扉に向けたまま、ミモザ先生はとりあえずクラベル校長へ有給の報告と外出申請をしに向かうのだった。
そして迎えた週末。
約束の集合場所でハルトたちを待っていたショウのスマホロトムに、件の着信が入った。
「はい、ショウです。……あ、そうですか。分かりました、ご連絡ありがとうございます!」
通話を終えて息をついたタイミングで、ハルト、ネモ、ペパー、ボタンの4人がやってきた。
「ショウさん、お待たせ! 何かあったの?」
「実はさっきハッサク先生から連絡があってさ。急遽ポケモンリーグに強い挑戦者が現れたらしくて、今日は四天王の仕事で参加できなくなっちゃったんだよ」
「そうなのかぁ、ハッサク先生のバトル分析も聞いてみたかったから残念ちゃんだな」
「じゃあ、あとはミモザ先生とアリサだね!」
「あ、お嬢は皆の泊まるところの準備で先に向こうに行ってもらってるから、ここには来ないぞ」
「そうなん? 忙しそうだねぇ」
そんな会話を交わしていると、「お待たせ~!」と私服姿のミモザ先生も到着し、本日の参加メンバー全員が顔を揃えた。
「お~す、皆! あれ、ハッサク先生は?」
「四天王の緊急のお仕事が入っちゃったんだってさ」
「あらら、四天王も大変ねぇ」
「あ、ボタン。今回の交流戦の映像を中継してほしいってオモダカさんから頼まれたんだけど、機器の設定頼んでいいか?」
「ん、了解。デジヴァイスとロトム端末繋いでチャンネル確保するだけだから任せて」
「サンキュー! んじゃ、みんな行こうか!」
ショウがデジヴァイスを掲げて【ゲート】を開くと、眩い光の穴が広がり、ハルトたちは興味津々の様子で次々とその向こう側へと足を踏み入れていくのだった。
まばゆい光を抜けてデジタルワールドへと到着した一行は、待機していたアリサと無事に合流。用意されていた宿泊施設へと向かって各自の荷物を置き、いよいよ熱気に包まれた巨大コロシアムへと移動した。
コロシアムの敷地内はすでに凄まじい熱気に満ち溢れており、多種多様な姿をした無数のデジモンたちと、そのパートナーであるテイマーたちで行き交うのも一苦労なほど混み合っていた。
「うわぁ、すごい人の数だな!」「この人たち、みんなデジモンを連れたテイマーなの!?」
「一応そうなるな。……ただ、純粋な戦闘テイマーは半分くらいで、残りの半分くらいは研究者だけどな」
「研究者?」
「えぇ、デジタルワールドの構造やデジモンの生態・データを調査している専門の研究者の方々もたくさん参加されているんですよ」
「へぇ~! いろんな人がいるんだねぇ!」
広場の熱気にネモやペパーが目を輝かせていると、人混みの向こうから聞き覚えのある声が響いた。
「おーい! こっちこっち!」
声のする方へ目を向けると、そこには手を振るヒデトの姿があった。
「ここが君たち用に用意した観客席だから、自由に座って使ってくれ」
「特等席みたいにすごく見晴らしが良いけど……誰も使って無さそうだけど本当にいいの?」
「一構わんぞ。主に俺やソウマが普段陣取っているせいで、周りの奴らが恐れ多いと遠慮して誰も座ろうとしないだけだからな」
いつの間にか背後に現れていたヒョウガが、会話に参加してきた。
「お前ら、そろそろ開会の挨拶が始まるぞ。とっとと控室に向かえ」
「やべっ、もうそんな時間か!」「了解しました!」「それじゃあ皆さん、失礼します!」
ヒョウガに促され、ショウ、アリサ、ヒデトの3人は慌てて控室へと走っていった。その背中を見送ったヒョウガは、ハルトたちへ向き直った。
「さてと……今、ソウマの奴が飲み物を買いに行っているんだが、君たちの分も買ってくると言っていた。何か飲みたいリクエストはあるかい?」
「えっ!? 良いんですか?」
「構わんよ。こちらが招待したゲストなんだからな」
ヒョウガがフッと穏やかに笑うと、ハルトたちはそれぞれ飲みたいドリンクを伝え、ヒョウガは手元の端末からソウマへ連絡を入れた。数分後、大量の飲み物を抱えたソウマが戻ってくると同時に、会場のボルテージが最高潮に達し、開会式がスタートした。
大スピーカーから実況の威勢の良い声が響き渡る。
『――最後にルールの確認だ! 試合はすべてトーナメント形式! 3vs3の勝ち抜き戦で行う! 尚、バトル中のアイテム使用は復帰アイテムを入れて2回までとする!』
ルール説明が終わると、拍手と歓声の中でさっそく「ノーマルトーナメント」の火蓋が切って落とされた。
ノーマル、ブロンズ、シルバーと各階級のトーナメントが連日順調に行われていった。
そして――。
『さぁぁぁあ! ゴールドトーナメントもいよいよ大詰めだぁぁぁッ! ライトファングのヒデトが大躍進! 勝利が目前だぁぁぁッ!』
実況の絶叫がコロシアム全体を揺らす。観客席で、ショウが身を乗り出して呟いた。
「ヒデトの奴、前見た時より大分強くなってんな……!」
「まぁな。あの事件があってから、手持ちのメンバーを基礎から1から鍛え直したそうだからな」
隣で観戦していたエイジがそう解説を加える。グラウンド中央では、ヒデトがデジヴァイスを掲げて新たに数体のデジモンを素早くリアライズさせ、メインパートナーであるドルビックモンへと一瞬でデジクロスを完了させていた。
「キャノンドラモンから、ドルビックモンに進化させたんですね」
「えぇ。キャノンドラモン時代から元々高い戦術家としての素質があったから、よりその指揮能力と戦術を高めるのに最適だったそうなのよ」
アリサの呟きに、隣のサクヤがうなずきながら答える。
その直後、ヒデトの指揮のもとでドルビックモンが極大の必殺技を解き放ち、対戦相手のダンデビモンを正面から跡形もなく撃ち破った!
『BattleEnd!! WINNER!! ヒデト―――ッ!!』
『決まりましたぁぁぁッ! ライトファングが貴重な勝ち星を挙げ、これでナイトクロウと勝利数で並びました! 明日の【プラチナトーナメント】で、今年の総合優勝チームが決定します!』
実況者の興奮冷めやらぬアナウンスとともに、ゴールドトーナメントの全日程が終了し、この日は解散となった。
そして迎えた翌日。
全テイマーが固唾を呑んで見守る中、ついに頂上決戦である【プラチナトーナメント】が開始されたのだった――